1 みなさん、おはようございます。
弁護士をやっています安田と言います。
私は、今回、初めて韓国を訪問しました。
しかし、昔からの友人も、この席にいらっしゃいます。
皆様方にお会いできたことを感謝しています。
私は現在53歳になります。
弁護士になって20年あまりになります。
その間、12件の死刑事件や死刑再審事件を担当してきました。
今から12年前、日本で死刑を廃止しようと考え、死刑廃止フォーラムの結成を呼びかけ、今日まで、死刑廃止運動をやってきました。そして、政府や裁判所や検察あるいは法務省が死刑を行おうとすることに対し徹底して抵抗してきました。
2 今年の2月ですけれども、欧州評議会のジョンストン議長と面談しました。そして、日本の死刑制度が異常で残酷であること、また日本政府が世界の死刑廃止の動きにことごとく敵対していることを強調し、日本の死刑廃止への、そしてアジアでの死刑廃止への協力と支援を求めました。
そして、今年の2月の末ですけども、欧州共同体は、日本が昨年暮れ死刑を執行したことに対して抗議の声明を発表しました。
そして今年の3月、欧州評議会のヤンセン人権委員会委員長が、日本の死刑制度に対する調査をしました。そして、その調査に私は同行しました。
そして、今年の6月、第1回世界死刑廃止会議がフランスのストラスブールで開かれました。その中身については、後に、菊田さんから報告があると思います。
そして今年の6月、欧州評議会が米日両国政府に対して死刑廃止を要求する宣言を発表しました。
これらの経過を踏まえて、私は大変大きなことを学びました。死刑は人権問題だけにとどまらず、国際的政治問題であることを認識しました。そして、国際的な力で、国境を越えて死刑が廃止できることを確信したわけです。
経済的な発展だけでなく、むしろ経済的発展よりも、死刑を廃止しているか否かが、その国の国際的地位を高める、死刑廃止は内外ともに、その国のステータスの問題であると認識したわけです。
3 しかし、今の日本の状況は、私の人生の中で、最悪にしてきわめて危険な状況にあります。日本では、ファッシズムが、あるいは国粋主義が、排外主義が、そして警察・検察の政治支配が、正に、台頭しようとしていますし、すでに台頭しています。現に、私は、無実の罪で10ヶ月投獄されました。
4 私にとって、今回の韓国訪問は、韓国のみなさんから勇気を得る旅であり、アジアそして日本において死刑を廃止することを模索する旅でもあります。それは、私だけではなくて、私と同じく死刑廃止を願う日本のすべての人たちにとって、正に、死刑を追い求める旅であります。
私の現在の気持ちを率直に告白すれば、かつて、きわめて暴力的で保守的であったフランスが、ドイツ、イタリア、イギリス、スペインと周辺を死刑廃止国に包囲されてようやくにして1972年死刑を廃止することができた教訓を踏まえ、
日本の危機的な状況と国際社会の中でアメリカにますます強く追従する日本の状況にあって、日本における死刑廃止がますます困難になり、また絶望的になっていく状況を踏まえて、韓国で死刑が廃止されるならば、ようやくにして、現実に、日本で日本の死刑廃止への道が開けると考えるわけです。そうすれば、その波は、必ず中国にも伝わる。そうすれば、世界の大きな死刑を存置する勢力は崩れると、私は確信するわけです。
5 そのために、まず韓国で、韓国、台湾、日本が共同で、第2回死刑廃止アジアフォーラムを開きたい。そして、その成果と団結の下に、第2回死刑廃止世界会議を開きたい、そう考えています。
ヨーロッパ、アメリカ、そして、アジアの人たちが、韓国に集まって、死刑廃止のためのアジア会議及び世界会議を開き、世界に向けて、とりわけアジアの政府に向けて、終身刑など代替刑導入を提言するなど、直接的かつ具体的に死刑の廃止を求めていく、そういうことをやりたいと考えています。
そして、そのための組織委員会を準備したい。
とりわけ、死刑廃止世界会議は、アムネスティをはじめとする世界の非政府組織や欧州評議会をはじめとする国際機関の協力を得なければ実現しないものです。
そのためには、全世界に知られ、全世界から信頼される人に、その代表に就任してもらいたいと考えるわけです。
私が知る限り、全アジアにおいて、全世界に知られ、とりわけ死刑に関し信頼される人は、金大中大統領をおいてほかに存在しないと考えます。
韓国国内はもちろん、日本からも、そしてヨーロッパに呼びかけて、金大中大統領に対し組織委員長に就任することを要請することを提案したいと思います。
どうも、ありがとうございました。