森山真由美法務大臣の挨拶から(抜粋) 死刑の存廃の問題につきましては国際社会で関心を集めている事項の一つであり、 欧州評議会でも昨年我が国の死刑執行の停止を求めること等が決議されたことは承知 しております。しかし我が国といたしましては死刑の存廃については基本的に各国に おいて、それぞれの国の諸事情をふまえまして、独自に決定するべきものであると考 えております。 私といたしましては、死刑の存廃は刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題でございますので主権者である国民の意思に充分配慮しつつ、社会における正義の実現等、種々の観点から慎重に検討すべき問題と考えております。我が国では類似の世論調査におきまして、国民世論の多数が、極めて悪質凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えていること。残念ながら多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪が後をたたない状況、等もござまして、著しく重大な凶悪犯罪を犯したもに対しては、死刑を科することもやむを得ず、死刑を廃止することは適当ではないと考えております。 ところでこの様な世論調査の背景にある一つの事として、私が感じておりますこと を申し上げます。我が国では大きな過ちを犯した人が大変申し訳ないと言う強い謝罪 の気持ちを表す時に、「死んでお詫びをする」という表現をよく使うのです。この慣 用句には我が国独特の、罪悪に対する感覚 が現れているのではないかと思われます。 |
死刑執行停止法要綱(骨子)案※ ※注:本要綱(骨子)案は、「死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90」の 賛同人のみならず幅広い人々の間で、死刑廃止を具体的に進めるための議論のきっか けとしていただくために、フォーラム90の有 志によって作成し、提案するもので ある。これまでに発表されている死 刑執行停止連絡会議や日本弁護士連合会死刑制 度問題対策連絡協議会の案を参考にしながら叩き台として作成した。より詳細につい ては、本要 綱(骨子)案を提示するにあたっての経緯および解説を参考にしていた だきたい。 1 本法の目的 死刑制度は、すべての人に保障されている生きる権利を侵害するものであり、残虐 かつ非人道的な刑罰であるとの理由から、廃止されるべき ものであるとの前提に立 ち、この法律は、同制度の廃止をめざし、一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行 を停止することを目的とする。 執行を停止する間、死刑制度の廃止を前提とした刑罰制度ひいては刑事司法制度全 体のあり方を検討し、司法・行政・立法を担う各機関が、制度改善のために行うべき 具体的な課題を定めるものである。 2 死刑執行の停止 前記目的を実現するため、4に定める期間、死刑確定者に対する死刑執行を停止す る※。 ※具体的にどのようなかたちでの執行停止の方法をとるかについては今後の議論に委ねるが、死刑執行停止連絡会議による死刑執行停止法に関する提案では、刑事訴訟法第475条(死刑の執行)ないし479条(死刑執行の停止)の規定の効力を停止するとしている。 3 停止期間中に行われるべき作業内容および作業機関 死刑執行が停止されている間、(1)再犯防止のための刑罰制度のあり方、(2) 適切かつ公正な刑事司法制度のあり方、(3)犯罪被害者支援政策のあり方、その他 の項目について検討・見直しを行い、具体的な制度改善のための課題を提示する。 これらの作業は、政府によって設置される実務家・研究者・NGO等を中心とした特 別の作業機関(ワーキング・グループ)によって主に担われるが、そのあり方につい ては幅広い人々の意見が反映されるよう考慮されるべきである。 4 執行停止期間 死刑制度の廃止を前提とした刑罰制度ひいては刑事司法制度全体のあり方を検討し、司法・行政・立法を担う各機関が、制度改善のために行うべき具体的な課題を定めるため、死刑執行の停止期間を5年とする。 ※この期間については、5年〜10年の幅で意見が出ている。 |