抗議声明 2014.06.26

本日(6月26日)、川崎政則さん(68歳:大阪拘置所)に死刑が執行されたことに対し、強く抗議する。

谷垣禎一法務大臣による死刑執行は、昨年12月12日に次ぐ、5度目であり、被執行者は9人にのぼる。本日の死刑執行は、通常国会の閉会を待ち、7月に予定されている法務省幹部人事の前に周到に準備されたものであるといえる。

これで安倍晋三政権は、第一次政権で10人、第二次政権で9人、合計19人の死刑を執行したことになる。5年5か月に及んだ小泉政権での被執行者の数は8人であるから、安倍政権がいかに死刑執行に血道を挙げ、死刑制度存置に執着しているのかがわかろうというものである。

2007年に発生した「坂出3人殺害事件」の被告人とされた川崎さんには、知的障がいや発達障がいがあり、当初から刑事責任能力や訴訟能力についての疑念がもたれていた。

しかし、川崎さんの第一審は、2008年7月の初公判後の精神鑑定と期日間整理手続を経た2009年3月9日から12日までのわずか4日間の集中審理によって結審し、同年3月16日に死刑判決が言い渡されている。

この裁判は、2009年5月から施行された裁判員裁判を見据えた「モデルケース」とされているが、法律のプロでも判断の分かれる責任能力の有無の判断が裁判員裁判や短期間の集中審理に馴染むかという問題は、裁判員制度が導入された現在でも未解決となっている。

一審の裁判を傍聴していた記者によると、川崎さんは「自分は頭がおかしいのです。冷蔵庫にあるバナナが気になるので、早く帰りたい」などと証言をしており、弁護人も知的障がいや広汎性発達障がい等を理由に心神耗弱を訴えていが、裁判所は詐病と判断した。

加えて、2012年7月の最高裁での死刑の確定以降わずか1年11か月でのスピード執行となったことについては、誤った拙速裁判を糊塗するものであり、裁判員裁判での死刑確定者の執行に道を開くものとなることが懸念される。

また、本日6月26日は、国連拷問等禁止条約が発効した日であり、国連総会において「拷問被害者支援の日」と定められている。

日本も締約国である同条約の対日審査の場においては、日本が存置している死刑制度と死刑確定者の処遇が再三問題とされてきた。

それにもかかわらず、「拷問被害者支援の日」にあえて死刑を執行することは、国際世論に対する重大な挑戦といわざるをえない。

現在、「死刑大国」といわれる米国においても死刑執行や死刑制度そのものを見直そうという動きが全土で広がりつつある。

日本においても3月の静岡地裁による袴田巖さん対する再審開始決定以来、死刑の在り方を見直そうという雰囲気は醸成されつつあった。

しかるに今回の死刑執行はこうした動きに水を注すものであり、日本政府が死刑という究極の刑罰を手放そうとはしないことを世界に表明し、国際社会からさらに孤立する道を選択する機会となった。

死刑は、国家による殺人を肯定するものであり、応報感情を社会に蔓延させる極めて有害かつ危険なものである。死刑には犯罪抑止の効果はなく、また、被害者の救済や社会の平穏にも資するものではない。さらに、死刑は人道と民主主義に反する。

日本政府および法務省は、死刑廃止の国際世論に真摯に向き合い、死刑が恥ずべき誤った刑罰であることを認め、ただちに死刑執行を停止すべきである。

私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また、谷垣法務大臣に処刑された川崎政則さんに代わり、そして、死刑執行という苦役を課せられている拘置所の職員に代わって、谷垣法務大臣に対し、強く、強く抗議する。

2014年6月26日

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90

(※ 表記上の制限:「川崎」の「崎」のつくりの上部は、本来、「大」ではなく「立」になります)

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