抗 議 声 明
本日(12月18日)、津田寿美年さん(63歳:東京拘置所)、若林一行さん(39歳:仙台拘置支所)に死刑が執行されたことに対し、強く抗議する。
これで安倍晋三内閣は、第一次で10人、第二・三次で14人、合計24人という他に類をみない多数の死刑を執行したことになる。安倍内閣の人命軽視、人権無視の姿勢は際立っており、極めて危険な内閣と言うほかない。
とりわけ、岩城光英法務大臣は、就任後わずか2ヵ月あまりで死刑執行を行っており、慎重な検討をすることなく死刑を執行したことは明白である。今回の執行は、もっぱら1年のうちに複数回の執行をするというそのことだけのために行ったものであって、極めて政治的なものであり、強く非難されなければならない。
津田さんは、一審の裁判員裁判で死刑判決を受け、その後控訴を自ら取り下げて確定しており、三審の裁判を受ける権利が保障されていない。 また、今回、はじめて裁判員裁判によって死刑判決を受けたケースの執行である。しかし、今年2月には、最高裁判所第二小法廷が裁判員制度下でも死刑を選択するには、過去の裁判の判例を踏まえて判断しなければならないと指摘したうえで、一審の死刑判決を破棄した高裁判決を支持していることを踏まえれば、裁判員裁判のみで確定した津田さんの執行は、差し控えるべきであった。
若林さんは、一審では認めたものの、控訴審では真犯人は別にいるとして無罪を主張していたのであって、弁護人は上告審においてその客観的事実も指摘しており、その主張に対して十分耳を傾けるべきであった。
岩城法務大臣は、その職責として、すでに世界の大多数の国と地域が死刑を廃止していることに目を向け、また死刑に誤判が不可避であることを理解し、さらに先の世論調査で終身刑を導入すれば死刑廃止してもよいとする意見が40%近くに及んでいることを踏まえ、死刑執行を停止して、広く社会に向かって死刑の廃止に向けた議論を開始すべきであったのである。今回の執行は、これを真っ向から否定するものであって、強く非難されなければならない。
私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また、岩城法務大臣に処刑された津田寿美年さん、若林一行さんに代わり、そして、死刑執行という苦役を課せられている拘置所の職員に代わって、岩城法務大臣に対し、強く、強く抗議する。
2015年12月18日
死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90