死刑廃止国際条約の批准を求める FORUM90
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死刑執行は看護士の倫理に背く
南野法相は死刑執行しないでください
12月3日に臨時国会は閉会しました、この国会冒頭で新法相である南野大臣の珍答弁ぶりから、法務大臣罷免説が持ち上がりました。続いて「政治と金」の議論の中でも橋本派への日歯連からの一億円献金疑惑問題とともに、法相の資金関連団体である日本看護連盟からの献金が同時に問題とされ、政治資金規正の新たなルールづくりのきっかけとなっていくようです。この議論の中で南野氏はとても法相の器ではない、あるいは、あの人に死刑執行を命ずる資格はないなど露骨で失礼な「暴言」がまかり通っていたようです。
この国会では法務省関連の重要法案である「刑法改正法案」が審議されました。この質疑においては官僚が付ききりでアドバイスしていたようです。しかし南野法相は死刑についてはきわめて積極的な答弁を、法務省の作文のまま述べています(裏面・議事録参照)。法務大臣選定基準のなかに「死刑執行をやりきること」の裏取引があるかのような、名(迷)答弁ぶりでした。
このような中、注目すべき事も述べていました。自民党・川上委員に対する答弁で、死刑執行の現場に立ち会いたいと言い切ってしまったのです。川上委員の質問は、かつて亀井議連会長が森山前法相に、「執行命令にサインするのなら執行の現場に立ち会うべきだ」と申し入れたことが伏線となっています。サインするならそれだけの責任をとりなさいというこ
とですが、この執行に立ち会うという答弁は法務省当局の意志とは思えません。
「命を生み出すこと・命を救うことと密接に関わる仕事をしてきたことと、その尊い命を奪う死刑執行との間に、あなた自身の問題としてどの様に関連しているんですか」と南野法相は問われました。「ゆりかごから墓場まで」をパロって「出産から死刑までこの身で関わってみたい」と答えています。法相は自分がサインしたからには、処刑されるまでを現認する責任があると考えているのでしょうか。多分そうではない。議事録からは場当たり的な答弁としか読めません。
しかし関わりたいというのはいい答弁です。もし南野法相が執行命令を出し処刑する場合は、ぜひ法相が執行の現場に立ち会うこと、そして以降もこれを慣例化するべきです。法相の希望にも関わらず、法相立ち会いが不可能であるなら、今後一切死刑執行はなすべきではありません。
就任後半年に満たない、しかも「勉強中」と答える法務大臣が、まさか、死刑執行命令にサインは出来ないと思うのです。しかし南野法相は死刑執行については躊躇なく「職務に忠実でありたい」といいきります。
死刑執行するべきではないと強く訴えます。
死刑廃止議連も申し入れ
11月1日、死刑廃止を推進する議員連盟(亀井静香会長)の金田誠一、柏村武昭、井上哲士、山花郁夫の各議員は南野知恵子法務大臣に、在任期間中には死刑執行を行わないよう申入れを行いました。今時臨時国会での死刑についての直接の議論は次ページのように法務大臣の認識を探る程度に終始したようです。
議連懸案の「重無期刑の創設及び死刑制度調査会の設置等に関する法律案」(死刑執行停止法案)は昨年6月各党内での調整が行われ、次期通常国会には提出の予定です。11月17日には議連総会が開催され、亀井静香会長・土井たか子顧問などが再任されました。参議院議員改選により一時的に少なくなった会員が100名を突破した事が確認され、今後とも法案の採択に向けて力をあわせ進んでいくことが話あわれました。
韓国、死刑廃止法案上程へ
韓国では、刑罰から死刑をなくすこと、終身刑を導入することを要旨とした死刑廃止に関する特別法案が国会に上程されようとしています。
その提案理由に「国家が犯罪の予防と鎮圧の手段として死刑制度を維持するのは、人間の尊厳と価値を損なわせ、人間の存在そのものを根本的に否定」している、「殺人行為を犯罪としていながら、他方で犯人の生命を剥奪するのはそれ自体矛盾」である、死刑は「残酷で非人道的刑罰」だと宣言しています。
「死刑を廃止し、人間としての尊厳と価値を尊重し、犯罪者の人権保護および矯正・改善に向かう国家刑罰システムを樹立すること」を目的としたこの法案は国会議員の過半数を超える与野党議員で上程され、来年3月からの臨時国会で成立すると韓国マスコミは報じています。
いまや東洋一野蛮な国となった日本も、少しは人権先進韓国を見習うべきではないでしょうか。
議院法務委員会議事録での死刑についての議論
○山内おさむ委員(民) 大臣は死刑制度についてどう考えられるんでしょうか。特に、大臣就任中は死刑執行指揮書に判こを押されるのかどうか。
○南野国務大臣 (前略)法務大臣となった以上は、法律を正しく執行していくのが私の職務であると考えております。死刑は人の命に関する重要な事柄だと思いますが、裁判所において、法律に従って慎重に審査がなされていると聞いておりますので、死刑についてもきちんと対処したいと思います。
○山内委員 大臣は助産師ですから、つまり、母親のおなかにいるときから、元気で丈夫な子供として生まれてほしい、そして、母親以外に最初に知り合う人なわけですよ。そして、取り上げて、この子が本当に元気で丈夫に育ってほしいと願う、人の生命に対して最もかかわり合いを持っている職業だと思うんですが、その今までの経験と、死刑執行指揮書に印鑑を押すということとは、大臣の心の中でどういうふうに整理できるんですか。
○南野国務大臣 議員今触れられましたが、私とて助産師でございます。世界一とうとい仕事だと思っておりますので、私は助産師であることを誇りに思っておりますが、今は法務大臣という立場で、公平正大に物を考えなきゃいけないということでございます。そういう意味では、命がとうといということはもち
ろんでありますが、私の考えは先ほど述べたとおりであります。(10月12日)
○松野信夫委員(民) 死刑の問題について。私が調査したところでは、死刑の確定判決を受けて実際に死刑が執行されるというのが、大体平均して八年ぐらいたっているようであります。これは法務大臣の印鑑がないと死刑執行はされないわけで、死刑に対して現行法は確かに存在する、しかし、それぞれの考え方で、執行に賛成する場合もあれば判こをつかないという場合もあろうかと思います。大臣はどのようにお考えでしょうか。
○南野国務大臣 私といたしましては、国民的な方々の御意見が多様でございますし、いろいろな議論がございますが、大半が死刑を認めている方向であると存じておりますので、その場を預かる私としては、国民の大勢の声に耳を傾け、法を守っていきたいと思っております。
○松野(信)委員 大臣は、日ごろから、命を大事にと、赤ちゃんから子供、弱者に対して配慮すべきだというような御指摘をしておられるわけで、その限りでは私も賛成をしているんですが、死刑の問題については、やはり慎重の上にも慎重でなければいけないだろうというふうに思っております。
それから、死刑の確定判決が出てから実際に執行されるまで約八年あるんですが、しかし、最近、一年余りで執行されたというケースがございます。割合有名な事件ですが。実際の死刑の執行についてもそういう、人によって、一年ぐらいで執行してしまう、あるいは十何年もそのまま放置している、これはこれで議論していかなければならない問題だという点を指摘させていただきまして、時間が参りましたので、私の質問を終わります。
(11月18日)
○川上委員 私は実は死刑廃止議員連盟に所属しておりまして、大臣の死刑の廃止についてのお考えをまずちょっとお伺いしたいなと思っていまして、お答えをいただきたいと思います。
○南野国務大臣 お答え申し上げます。
死刑制度につきましては、いろいろなお考えがあることは承知いたしておりますけれども、死刑の存廃は、我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題であると思います。そのため、国民世論に十分配慮しながら、社会における正義の実現などさまざまな観点から慎重に検討すべき問題と考えております。
そして、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えておりまして、多数の者に対する殺人、強盗殺人などの凶悪犯罪がいまだ後を絶たない、そういう状況にあることなどからかんがみまして、重大な凶悪犯罪を犯した者に対しましては死刑を科することもやむを得ず、死刑を廃止することは適当ではないというふうに考えております。
○川上委員 大変明快でよくわかりましたが、大臣、では、死刑執行の命令書に判を信念に従って押されるということだろうと思います。要するに、信念に従って死刑執行の命令書には判を押す。
ついては、例えば、大臣、死刑執行の現場に赴かれる覚悟はおありでしょうか。
○南野国務大臣 まだその場には行ったことはございませんが、行くことも考慮しなければならないときが来れば、そのようなことも考えてはおります。(11月17日)
極めて異例 77才(女性)に死刑確定判決
年間12名もの死刑確定
今年は相次ぐ台風、地震と天変地異が多かったのですが、死刑の関連においても極めて異例な年となりました。12月2日現在、新たに確定となった人はこの一年で12名、このうちに共犯関係2組5名が含まれていますが、年間に10名を超える人が一気に確定させられたのは近年例がないのです(03-2,02-3,01-4,00-6)。また近年特徴的なのは最高裁の判断を経ずに1審、2審で自ら取り下げて確定してしまう人が多いことです。2000年以降確定者27名のうち9名が自ら取り下げて確定しました。「3審制のもと、きちんと審理している」との法務省・法務大臣の発言はここでもウソであることが証明されています。そして死刑確定者のうち3分の1の人が自ら確定して行く事実が物語るものは、この国が持っている裁判制度、刑事司法制度の行き詰まりにほかなりません。先の国会で成立した裁判員制度だけでは解決できません。また今国会成立の刑法重刑化は事態を逆行させる危険すらあります。
私たちはこれまでも日本の刑事司法制度に「必要的上訴」がないことを、大きな問題点として訴えてきました。
もはや3審制が機能していないということを法務省・法務大臣は真剣に考えるべきなのです。
77才の女性を確定囚にしなければならない理由が全くわかりません。法務省ばかりでなく、裁判所も硬直化しているとしか思えないのです。77才の死刑確定者をどの様に処遇していけばいいのか、現場の刑務官の苦悩一つを考えても、確定させることの矛盾は計り知れないものがあります。 法務省自ら死刑制度について検討し直すべき時にきていると。
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