NPO Q&A

■NPOに関する基本的な疑問について考えてみるコーナーです。

中村陽一さん(NPO推進フォーラム/都留文科大学助教授)に監修をしていただきました。

「認証」ってどういうこと?

Q――先日、埼玉県のNPO法についての説明会に出かけてみたのですが、そのとき、県の方は何度も「認証」ということばを使っていました。「認証」ってどういう意味ですか?

A――法人を設立する方法として、行政の許可が必要(許可主義)、行政の認可が必要(認可主義)、行政に届出が必要(準則主義)の3つの考え方があります。これはそれぞれ法人の設立に対する行政の関わり方の違いを表しています。
 このうち、準則(届出)主義というのは、法律に定めた要件をみたしていれば届出の手続きだけで、行政の判断はなくても法人になれるというものです。例えば、会社を作るには、必要な要件がそろっていれば、行政の判断は要りませんね。
 許可主義は、法人格を付与するかどうかは、行政の判断・自由裁量にまかされています。社会福祉法人、社団法人あるいは医療法人などの公益法人はこれにあたります。ですから公益法人というのは行政に対してはとても弱い立場です。法人格を取得するためにあの手この手で行政に働きかけて、それでも何年も待たされることもしばしばです。一方、行政もその公的責任(行政が担う公益)の一部を公益法人に委ねることになるので、その法人を管理する責任を持っています。行政は、法人に保護を与え、そのかわり管理権を持っていることになります。
 認可主義というのは、「法律に定める要件を備えていれば、行政は必ず認可を与えなくてはいけない」というものです。特定非営利活動促進法ではこの考え方を採用し、さらにとくに「認証」という表現になっています。認証を与えるのは自治体、あるいは経済企画庁ですが、原則的に書類審査によることなどから考えても、「認証」とは、限りなく準則(届出)主義に近い認可主義ということです。

Q――どうして特定非営利活動法人は認可ではなく認証ということになったのですか?

A――これまで、企業などの営利活動以外の社会的な機能については、すべて行政の責任という考え方が普通でした。しかし、行政が現実に社会におこる問題のすべてに対応することはできなくなっています。その一方で、阪神淡路大震災にみられたように、市民の自発的な活動の重要性ということが社会の中で認識されてきました。こうした背景があって、特定非営利活動促進法が作られたということですね。
 もしそこで、NPOの法人格取得について認可主義をとれば、その団体の活動が公益にかなっているかどうかを行政が判断する、ということになります。しかし、行政が判断するということになると、市民活動を応援するための法律なのに、市民団体を行政が選別して管理する制度になってしまいかねません。そこで、立法の段階から多くの市民団体がなるべく届出だけで簡単に取得できる=準則主義で法人格が取得できるようにと、強力に要望し、各党・各議員に働きかけた結果、限りなく準則主義に近い認可=認証制度になったのです。

Q――でも、先日、県の説明会では、説明された県の担当者の方は、「〜の場合は認証できません」という言い方をされていました。県が(判断して)認証する、しないを決めるというように聞こえたのですが。

A――そう聞こえたとしたらちょっと心配ですね。
 県による「認証」では、あくまで法律の求める最低要件を満たしているかどうかだけを判断するということになっています。この法律が作られる過程で、なるべく行政の裁量が入りこまないように、あらかじめこと細かく取得の条件を法律の中に書き込んであり、行政は、ただ「粛々と」手続きをするしかないようになっています。
 先日行われた経済企画庁の説明会では、「〜の場合は認証できないということもありますが、ほとんどそういうことはないし、また役所としても『限りなく準則主義に近い認証』という法の趣旨を踏まえて、なるべく事務的に通していきたいという方向で考えています」と言っておられましたよ。

Q――でも、そうすると問題がある団体も簡単に法人格がとれてしまいますね。少しは行政による監督があったほうがいいのではないかとも思えるのですが。

A――彩福祉グループの贈収賄事件でも明かになったとおり、行政がお墨付きを出した公益法人だったら信用できるなんてことは、もはやありません。
 NPO法で、わざわざ限りなく届出制に近い認証制をとっているのは、一人一人の市民に、個々のNPO法人についての判断をまかせているからです。
 たとえば、ダイコンは個人商店の八百屋さんにも、大きな会社が経営するスーパーにも売っていますが、どちらのダイコンを買うかは、お客さんが判断します。売っている店が法人かどうかで判断するわけではありませんよね。これと同じことです。寄付したり、参加したりするに値する中身をもっている団体かどうかを判断するのは一人一人の市民だという考え方なのです。

Q――実際の手続きをするうえでは、どうすれば認証基準にかなうかなど判断に迷うこともたくさんあるように思いますが、どんなことに気をつける必要があるでしょうか。

A――どんな原則にも例外やグレーゾーンはあります。例えば、配食サービスをするワーカーズコレクティブ(労働者生産協同組合)などの場合がそうですが、やり方次第で法人格を取得することも不可能ではないとも言われています。そのときに申請の窓口で行政の方とどんなやりとりをしていくかがポイントになるでしょう。たとえクレームをつけられても、「はい、そうですか」と簡単にひきさがるのではなく、自分たちの考えをしっかりと伝え、議論するということが大切です。「スタンダード」は行政が決めるのではなく、市民と行政がさまざまなやりとりをする中から創っていくものです。
 それから、この新しいシステムを実質的に活かしていくためには、NPOどうしの協力が欠かせません。相談しあったり情報の交換をしあったり、みんなでこの制度を使いこなすよう協力していくことが大切になります。


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