【SUPPORT CENTER】&【PROPOSE】
サポートセンターの管理・運営をする「受託団体」をめぐって紛糾
●10月 8日 連絡会が「サポートセンターの管理・運営はNPOに」と提案
●10月21日 県当局が「管理・運営は『(財)県民活動センター』に」と表明
●11月18日 検討委員会「将来、管理・運営をNPOにするための道すじ」を論議●県内の市民活動を支援するために埼玉県が来年秋の設立を予定している「市民活動サポートセンター」について、「埼玉NPO連絡会」は10月8日に埼玉県知事宛に下記のような「受託団体についての提案」をしました。サポートセンターの管理・運営にたずさわる「受託団体」がどういう団体になるかは、このサポートセンターが埼玉の市民活動にとって決定的な影響があると考えるからです。
●しかし、埼玉県は10月21日の実施計画検討委員会で、受託団体を「(財)県民活動センター」(伊奈町の「県民活動センター」を管理・運営する県の外郭団体)に委託することを表明しました。最後の委員会になるはずだったこの日の委員会は、この問題をめぐって議論が続いて結論にいたりませんでした。
●委員会は11月18日に再度開催されましたが、この日の論議は「将来、受託団体をNPOに変更するための道すじをどうつけるか」が大きなテーマとなりました。とくに「受託団体」のチェックのために設置される「評議委員会」のあり方と選考方法をめぐって、浅井委員が不満を表明、委員を辞任することを告げ、退席しました。
埼玉県知事宛に「市民活動サポートセンターについての提案」を提出しました。
みなさんにお願いしたアンケートやこの間の勉強会を踏まえて、9月11日に「市民活動サポートセンター」設立を検討している埼玉県の知事宛に「市民活動サポートセンターについての提案」を提出しました。
9月22日には、「サポートセンター検討委員会」(連絡会の浅井さん、二子石さん、山木さん、二子石さんのほか2月のフォーラムで講師をお願いした高木さんが委員になっています)が開かれましたが、事務局(県民生活課)から、この「提案」も各委員に配布されました。この提案にもりこんだ「貸し出し機能」や「サポートセンター独自の事業」などの案は、検討委員会の報告書に反映されることになりそうです。
問題は、どこがこのサポートセンターの運営を担うことになるかということ。埼玉NPO連絡会も組織体制を整えて委託を受けるべく手をあげようかという話がでています。1998年9月11日
市民活動サポートセンターの受託団体についての提案
埼玉NPO連絡会
私たち埼玉NPO連絡会は、大きな期待をもって注目してきた『市民活動サポートセンター』に関して、埼玉県が平成9年度に引き続き本年度も委員会を設置され、その中で委員長はじめ各委員が熱意と誠意をもって、長い時間をかけて審議されてきたことに敬意を表します。
とりわけ、平成10年3月に報告された『市民活動サポートセンター(仮称)構想』は、他県にひけをとらない素晴らしいものであると高く評価しております。「サポートセンターの受託団体」については、9月の実施計画検討委員会を傍聴した際にいただいた報告書の粗案資料のなかで、「ボランティア活動をはじめとする市民活動の促進について高い専門性を有するとともに、市民活動サポートセンター(仮称)の業務の実施のみならず、委託に伴う各種の事務を行い得る能力を有することが必要です」との要件になっております。
検討委員会でも論議されておりましたが、この文言の前段部分の「市民活動の促進について高い専門性を有する」を重視するか、後段部分の「委託に伴う各種の事務を行い得る能力を有すること」を重視するかによって、受託団体の性格がまったく違ってしまいます。
とくに後段部分を重視することになれば、いまだ特定非営利活動促進(NPO)法の施行にいたっていない現在、県内の市民活動団体はすべて任意団体にすぎず、サポートセンターの受託団体の資格対象外ということになってしまいます。●NPOを受託団体とすることを求めます。
『構想』では、サポートセンターは単なる場の提供ではなく、(1)交流・連携機能、(2)活動推進機能 (3)情報収集・提供機能(4)相談機能(5)コーディネイト機能(6)人材育成機能(7)その他、防災の拠点機能を持つべきであるとされています。
また、前記「粗案」においても、繰り返し「サポートセンターは、自主性・自発性をもった活動団体や活動実践者が、自主的に、交流・連携し、互いに支援し会って、活動の発展を図っていく施設」であること、「運営においても、活動団体や活動実践者の自主性の発揮と参画を図っていくことが重要」であることが述べられています。
『構想』や「粗案」で語られている、こうした主旨を基盤において考えるならば、求められる受託団体の要件は「場の管理」よりも、むしろこれらの「支援機能をになっていく能力」が最も重視されるべきだと考えます。
というのは、自主的な活動としての市民活動(団体)の支援とは、実際的には市民活動団体相互の助け合い、支えあいということであり、各団体の実践・経験の交流を通じて互いに発展を促進しあうことにほかならないからです。
そして『構想』や「粗案」の主旨を尊重すれば、サポートセンターの受託団体はNPOであることが望ましいことは言うまでもありません。
逆に、あらかじめNPOを資格外とするならば、それは埼玉県が「県内のNPOを信用していない」ということの表明にほかなりません。●パートナーシップの時代にふさわしく、選考基準、選考過程の情報公開を求めます。
行政とNPOのパートナーシップとは、「公共活動の共通目標を達成するために、行政とNPOとのお互いの立場を尊重した対等の関係で共同事業を行い、それを通じてお互いの組織や活動内容の刷新・向上をはかるための変革を前提とした行動原理」(NPO政策研究所・木原勝彬氏)という定義があります。こうしたパートナーシップのあり方は、「NPO法」の主旨でもあり、埼玉県と私たち「埼玉NPO連絡会」の共催した98年2月の「さいたまNPOフォーラム」の基底にあったものでもあります。
現在、全国的にも、従来の行政主導型の「市民参加」にかわって、市民・住民が計画立案の段階から「参画」し、その実行過程においても大いに汗を流すことで、従来にない成果をあげるという方向への転換が、ごくあたりまえのことになってきているという現状があります。
それゆえ、現在全国各地ではじまったサポートセンターづくりのなかで、自治体・行政が行う「支援」の限界が各地で指摘されてきています。仙台市などでは来年度に設置が予定されているサポートセンターについて、公設ではあるが民間のNPOに委託するという方向で、自治体・行政とNPOとの新しい協働関係が模索されています。「いかにしてセポートセンターに従来の公的な施設と違った機能をもたせることができるか」という視点で考えるならば、県とNPOが運営の面でも契約にもとづき、対等な関係のうえで協働するというパートナーシップが不可欠です。
したがって、受託団体は、行政とNPOとのパートナーシップの時代にふさわしい考え方と新システムにのっとって選任されるべきであり、具体的には、サポートセンターの受託団体を決定する際、県は広くNPOを募り、受託を望む団体には予算書や事業計画書を提出させ、また選考にあたっては、その選考基準、選考過程を情報公開して、受託団体を選ぶことを、私たちは望みます。また、先の「検討委員会」の事務局の説明で述べられたことですが、サポートセンターの受託団体について、条例にその名称を明記することには疑問があります。それでは、一度受託した団体が半永久的に受託し続けることになってしまいます。条例に受託団体の名称を明記せず、よりふさわしい受託団体が現れれば、そこに道を開くようにすることが、民主的であり、またサポートセンターの活動の活性化にもつながることと信じます。
●機能の面からもNPOが受託団体であることが望ましいと考えます
『構想』であげられている機能に添って見てみても、サポートセンターの受託団体にはNPOがふさわしく、NPO以外の団体が受託団体になることは、かえって十全な機能の展開をあやうくし、また矛盾をもたらす面があります。それは、たとえば以下のようなことです。(1)交流・連携機能、(5)コーディネート機能として、活動団体相互の交流があげられていますが、これをコーディネートする役割はNPO自体が行うことによって、市民活動団体の独立性が維持され、また市民活動の活性化にもつながることになります。
(3)情報収集・提供についても、実際に市民活動団体が欲しい情報とは、市民活動を実践するなかでさまざまな手間暇と労苦をかけた経験から生まれる「情報」です。この「生きた」「実際に使える」情報は、一般的なイベント等の広報とはその質を異にするとの指摘は県内の市民活動団体、あるいは先行する各地の支援センターからなされているところです。
(4)相談機能についても、たとえば特定非営利活動促進(NPO)法にもとづく法人格の取得に関しての相談や取得の支援などは、法人の「認証」機関である県やその関係団体が行うことは論理的にも不可能です。また、県の施策や方針に必ずしも合致した活動目標をもっていない市民活動団体などの支援についてどのように考えるのかということも十分に議論されるべきことです。
(7)その他の機能として、災害発生時のボランティア活動の「コントロールタワー」としての役割がうたわれています。これについても、阪神・淡路大震災での救援活動の際、実際に現場で活動している民間団体が相互に支援し、補いあう必要性があり、自主的に会議を持ち、調整・連絡・コーディネートが行われたことが、あのような大きな成果を生んだ重要なポイントだったという事実をあらためて想起していただきたいと思います。●埼玉のNPOはサポートセンターの受託団体に
ふさわしい力量を持っています。
埼玉県では、すでに「福祉」「国際協力」「人権・平和」「環境」「教育・文化」など各分野ごとに、すでに市民活動団体による全県的な横断組織が作られています。それぞれの活動分野では、20年、30年におよぶ市民活動の実践経験者も多く、またそれぞれが分野を越えた人的なつながりを持っています。こうした実態を鑑みれば、県内のNPOがサポートセンターの受託団体になれば、これまで以上に市民の自主的・自発的な活動が活発化することは容易に想像できます。
たとえば、各分野ごとの情報交換や自主的・自発的なセミナーの企画、分野を越えた市民活動団体どうしの交流、それらを統合したニュースやパソコンネットワークの実現など、「市民が自主的に交流・連携し、互いに支援し会って、活動の発展を図っていく」というサポートセンター設立の主旨に添う活動が、活発に展開されることになるでしょう。また、そうした活動は規模の小さいグループや、今後活動に参加しようと考えている人々にとって、大きな力になることと考えられます。逆に、NPO以外の団体がサポートセンターの受託団体になっても、それは既成の公的施設の域を抜けず、上記のような企画についても、「お仕着せ」のイメージを脱却できず、情報の収集と提供についても限界が生じ、かえって市民の活動の自主性・自発性をそこない、自発的であるべき市民の活動を、結果的に行政がコントロールすることにもなりかねません。
それでは、先の8月17日の検討委員会で、委員の質問に対して県当局が回答した「既存施設とは違う、新しい運営の形態」のサポートセンターとは、ほど遠いものになるでしょう。以上の理由により、埼玉県が、NPOをサポートセンターの受託団体とすることを、私たちは強く望みます。
1998年10月8日
●「埼玉NPO連絡会」は、上記のような「提案」をしましたが、埼玉県(県民生活課)は10月21日の実施計画検討委員会で、受託団体を県の外郭団体の「(財)県民活動センター」とすることを表明しました。この表明に対して委員の間から不満と疑問の声があがり、予定していた「報告書」の完成にいたりませんでした。
●それは、95年の阪神淡路大震災をきっかけに始まったこの構想が、「当初から『公設民営』をめざしていたはず」という認識が委員の中に強く、ほぼ同じメンバーが今年3月まで論議を重ねてきた「サポートセンター構想策定委員会」においても「運営は民間に」というトーンで論議がすすんできた経過があったからです。実際、97年2月の「埼玉県長期ビジョ ン」にもとづいた県の「新5か年計画」の中でも、「県民自身による市民活動サポートセンターの整備」として「さまざまなボランティア活動を総合的に支援するための拠点として、活動実践者(団体)が自主的に運営する市民活動サポートセンターを設置し」とうたっています。
●委員会は11月18日に再度開催されましたが、この日の論議は「将来、受託団体をNPOに変更するための道すじをどうつけるか」が大きなテーマとなりました。それは、「本来は受託団体はNPOが望ましいが、行政が「(財)県活」と決めているのなら、現実的な道を探ろう」というおおかたの委員の意向でした。
●この論議の中で、「3年後に受託団体の見直しを行う」ことが報告書に記されることになり、「受託団体」のチェックのために設置される「評議委員会」の構成についても市民主体にするなどの修正が行われましたが、「評議委員の選任を受託団体自身が行うとなっているのは『公正な第3者機関』とはいえない」と浅井委員が不満を表明、委員を辞任することを告げ、退席しました。
●これら一連のいきさつについてはさまざまに思うところがありますが、今回は経過だけを報告します。(東)