リクルート過労死裁判を考える会(仮称)
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原告ら代理人意見陳述要旨
1999年7月29日 原告側弁護団
頭書事件第1回口頭弁論期日(平成11年7月29日)における、原告ら代理人意見陳述の要旨は左記のとおりである。
記
一 石井偉の経歴
原告らの子である石井偉は、平成4年3月に北海道大学卒業後、同年4月に被告会社に入社した。入社後、約3か月間の研修を経て、週刊求人情報誌「B-ing」編集部に配属され、その後、亡くなった年である平成8年4月からは、「デジタルB-ing」編集部署へ異動となった。右異動後約5か月して、石井偉は、くも膜下出血発症により同年8月29日に死亡した。
二 「B-ing」編集部での業務の過重性
1 石井偉は、「B-ing」配属当初から継続的に長時間かつ深夜にわたる過重労働に従事していた。その労働時間は、年間約2,800時間に近いものと推定され、うち所定外労働は約1,000時間にも達する。
2 また、同部署の貴重な男子正社員として重い責任のもとで編集業務以外にも本来営業に属するような様々な業務を行っており、業務は質的にも過重であった。
三 「デジタルB-ing」編集部署での業務の過重性
1 被告会社において、インターネットホームページ媒体を利用した求人情報発信のために編集部署を立ちあげるために石井偉が抜擢され、平成8年4月「デジタルB-ing」編集部署へ異動となった。同部署は新しい部署でありシステムも確立していなかったため、週1回の画面更新のために、通常は深夜、時には明け方にまで及ぶ勤務を余儀なくされていた。
同年4月以降の労働時間は毎月200時間を超え、特に、画面公開が始まった6月以降は年換算で3,000時間あるいはそれ以上に達するような極めて過重な労働に従事していた。6月以降、所定外労働時間も月約100時間、深夜労働時間も月50時間を超えている。深夜あるいは明け方まで勤務した後、満足に睡眠を取る間もなく再び勤務を開始するという、人間の生体リズムに反する不規則勤務形態も多く見られる。
2 石井偉は「デジタルB-ing」編集部署において、被告会社内でも画期的なインターネットのホームページ作成更新にかかる多くの業務を、これまで全く経験がなかったにもかかわらず一人で行っていた。しかも、被告会社からヒット数や顧客獲得数を厳しく求められており、同業務の心理的負荷も計り知れないものであった。
四 業務と死亡との因果関係
石井偉は、入社時の健康診断ではほとんど異常は見られなかったにもかかわらず、かかる入社以来の過重業務により、血圧、及び血中脂質値に異常が見られるようになった。そして、更に引き続いた過重業務により、ついにくも膜下出血を発症し、死亡するに至った。石井偉の死亡と過重業務との因果関係は明らかである。
五 被告会社の責任
被告会社としては、その雇用する従業員に対する安全配慮義務を負うものであるが、前記石井偉の健康状態に配慮して労働軽減等の適切な措置をとるどころか、かえって「デジタルB-ing」編集部署でのより長時間過密労働に従事させた結果、石井偉を死に至らしめた。
被告会社の安全配慮義務違反は明白であり、その責任は重大である。
六 最後に
被告は、答弁書において「訴外で原告らの要望に従い、関係資料の提供、労災保険申請等についての協力を行ってきたものであり、原告が突然に本訴の提起に至ったことは大変に遺憾である」と主張する。
確かに、被告は、原告の要求に一定の範囲で応じて、労災保険の申請等に必要な資料の一部を提供した。
しかし、被告自らの安全配慮義務違反の点についてはこれを認めず、損害賠償請求には応じられない旨回答しており、提訴の直前にも再度、同様に損害賠償責任は認められない旨回答しているのだから、原告らの本件訴訟提起が非難されるいわれは何ら存しないものである。
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