リクルート過労死裁判を考える会(仮称)
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提訴に当たって
石井淳子
3年前の夏、息子・石井偉はくも膜下出血で倒れ、搬送された病院で4日後、29歳という年齢で死亡致しました。
息子が救急車で病院へ運ばれたという知らせを受けたとき、まっさきに私の胸中を駆け巡った言葉は「過労」という、その一言でした。
大学院への進学を考えていた息子が、進路を変更してまでリクルートに入社したのは、編集という仕事に興味を持ったからでした。『週刊ビーイング』『デジタル・ビーイング』という2つの編集セクションで、息子は精一杯の努力で仕事をこなしてきました。しかし、離れて暮らしている私の目から見ましても、その働き振りは身体を壊すのではないかと心配せざるを得ない状態でした。
長時間の不規則労働で、深夜残業当たり前、徹夜もしょっちゅうという日々の連続。たまに旭川に帰省していました折にも、夜中の12時過ぎに会社からの電話で起こされたこともありました。その時、息子は「リクルートでは夜中の12時は夕方感覚なんだ」と申していました。
とりわけ、亡くなる4か月前に配属された『デジタル・ビーイング』では、インターネット上に新しいメディアとして立ち上げるための業務に忙殺されていました。文科系出身の息子はほとんど独学でパソコン技術を習得する一方で、新しい執筆者の開拓から企画編集、ネットの管理まですべて1人でこなしていたのです。週1回、水曜日の深夜12時には待ったなしの画面更新というサイクルの中、息子の替わりを務めるリリーフもサポートもなしで、常に高い緊張下におかれて居ました。
息子が亡くなった後、息子と仕事を共にされていた社外の多くの方が「彼は過労死だと思います」と言って下さる声を聞きました。しばらくした後で私は、リクルートの方に息子の死と業務との因果関係を尋ねてみました。
その時、返ってきました回答書は、まるで息子は「無能で怠慢だから、勝手に好きで残業していた。あの程度の業務量はごく普通のこと。一切、会社には責任がない」といった内容でした。
リクルートは、就職情報誌など労働をテーマとしたビジネスを本来業務としている所で、労働法制を遵守する手本となるべき社会的責務を負っている会社の筈です。それが、自社の社員に対しては、深夜まで働くのが当然ととらえていて、労働安全衛生配慮義務違反があったのかと反省する点もありません。
息子の死を招いたのは、リクルートの長時間勤務と不規則労働、そして裁量労働制のもとで日常化しているサービス残業がもたらしたものと考えます。しかし会社の誠意ある回答が得られませんでしたので、ここに提訴という形をとりました。
息子の死と前後して、リクルートでは20代、30代の社員の何人もが過労で倒れていると聞いています。私共のこの提訴により、少しでもこのひどい現状が改善される事を、切に心から願っております。
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