平成十二年 月 日
国家公安委員会委員長
通信傍受規則
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 通信傍受の実施の手続等(第三条--第十四条)
第三章 通信傍受の記録等(第十五条−第二十五条)
第四章 補則(第二十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この規則は、警察官が犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(平成
十一年法律第百三十七号、以下「法」という。)の規定による通信の傍受を行
うに当たって守るべき方法、手続その他通信の傍受に関し必要な事項を定める
ことを目的とする。
(定義)
第二条 法に定めるもののほか、この規則において、次の各号に掲げる用語の
意義は、当該各号に定めるところによる。
一 令状記載傍受 法第三条第一項の規定による傍受をいう。
ニ スボツト傍受 法第十三条第一項の規定による傍受をいう。
三 外国語等通信 法第十三条第二項に規定する通信をいう。
四 外国語等傍受 法第十一三条第一項の規定による傍受をいう。
五 他犯罪通信 法第十四条に串定する通信をいう。
六 他犯罪傍受 法第十四条の規定による傍受をいう。
七 傍受記録作成用媒体 法第十九条第一項後段の規定により記録をした記録
媒体又は法第二十条第二項の規定により作成した記録媒体の複製をいう。
八 通信記録物等 傍受の原記録以外の傍受をした通信の記録をした記録媒体
及びその複製その他記録の内容の全部又は一部をそのまま記録した物又は書面
並びに傍受をした通信の内容の全部又は一部を要約して記載し又は記録した物
又は書証をいう。
第二章 通信傍受の実施の手続等
(令状請求の手続)
第三条 傍受令状の請求は、傍受の理由及び必要その他傍受令状請求書に記載
すべき事項について十分に検討してその検討結果を順を経て警察本部長(警視
総監又は道府県警察本部長をいう。以下回じ。)に報告し、事前にその承認を
受けて、行わなければならない。
2 前項の請求をするときは、傍受の理由及ぴ、必要かあることを疎明する参
考人供述調書、捜査報告書その他の資料並びに傍受の実施方法及び場所その他
傍受令状請求書の記載事項を明らかにする資料を添えて行わなければならない。
3 第一項の請求をするに当たっては、当該請求をしようとする指定警察官
(法第四条第一項の規定に基づき国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指
定する警視以上の警察官をいう。以下回じ。)その他の当該事件の捜査全般の
状況を把握している警察宮が裁判官の下に出頭し、裁判官の求めに応じ、陳述
し、又は書類その他の物を提示しなければならない。
(傍受ができる期間の延長請求の手続)
第四条 傍受ができる期間の延長の請求は、延長を必要とする事由及ぴ延長を
求める期間について十分に検討してその検討結果を順を経て警察本部長に報告
し、事前にその承認を受けて行わなければならない。
2 前項の請求をするときは、その必要があることを疎明する捜査報告書その
他の資料を添えて行わなければならない。
3 前条第三条の規定は、第一項の請求をする場合について準用する。
(捜査主任官等)
第五条 傍受を行う事件の捜査については、警察本部長が捜査主任官を指名し
なければならない。
2 捜査主任官は、警察本部長の指揮を受け、傍受の実施、通信記録物等の管
理その他の通信の傍受に関する事務を統括するものとする。
3 警察本部長は、傍受の実施ごとに、警部以上の警察官の中から傍受実施主
任宮を指名するものとする。
4 傍受実施主任官は、捜査主任官の命を受け、傍受の実施及びこれに付随す
る事務に従事する職員を指揮監督するものとする。
5 警察本部長は、通信記録物等の管理に関する捜査主任官の職務を補助させ
るため、警部補以上の警察官の中から通信記録物等管理者を指名するものとす
る。
(最小化等に関する指示)
第六条 傍受の実施に当たっては、警察本部長は、あらかじめ、次に掲げる事
項について、捜査主任官に対し、文書により指示しなければならない。
一 策十一条第五項、第六項及ぴ第八項の規定により警察本部長が指定する時
間
二 報道の取材のための通信が行われていると認めた場合に留意すべき事項
三 前二号に掲げるもののほか、傍受の実施の適性を確保するための事項
2 捜査主任官は。傍受の実施をしている場合においては、傍受実施主任官に、
前項の文書の写しを携帯させなければならない。
(傍受令状め記載事項の厳守)
第七条 傍受の実施に当たっては、傍受令状に記載されている傍受すべき通信、
傍受の実施の対象とすべき通信手段、傍受の実施の方法及び場所、傍受ができ
る期間、傍受の実施に関する条件その他傍受令状に記載されている事項を厳格
に遵守しなければならない。(傍受日誌)
第八条 傍受の実施に当たっては、逐次、法第二十一条第一項各号に掲げる事 項その他当該傍受の実施の状況を警察本部長が定める様式の書面に記載するも のとする。
(通信事業者等に対する配慮)
第九条 傍受の実施に当たっては、通信事業者等の規模、電気通信設備の概要
その他の通信事業者等の事情を理解し、通信事業者等に必要な限度を超えて迷
惑を及ぼさないように特に注意しなければならない。
2 電気通信設備に接続する傍受のための機器については、電気通信設備を損
傷し、又はその機能に障害を与えないものを使用するものとする。
(立会い)
第十条 傍受の実施に当たっては、あらかじめ、立会人に対し、次に掲げる事
項について.説明しなけれはならない。
一 法第十二条、法第二十条その他の立会人に係る主要な法令の規定
二 傍受令状に記載されている傍受の実施の対象とすべき通信手段、傍受の実
施の方法及ひ場所、傍受ができる期間並びに傍受の実施に関する条件
三 傍受のための機器の概要及びその使用方法
四 第六条第一項第一号に掲げる事項
五 法第二十条第一項の封印の具体的方法に関する事項
六 前各号に掲げるもののほか、立会人が適切な立会いをするため参考となる
べき事項
2 法第十二条第二項の規定による立会人の意見か述べられたときは、これを
勘案して、必要に応じて傍受の実施の適正を確保するための措置を講じなけれ
ばならない。
3 前項に規定する場合においては、立会人に意見書の提出を求めねばならない。
4 立会いをしていた期間中に立会人の意見が述べられなかったときは、立会
人にその旨を記載した意見書の提出を求めなければならない。
(スポット傍受)
第十一条 スポット傍受は、スポット傍受の開始時からあらかじめ設定した時
間が経過すると自動的にスボット傍受が中断される機能、スポット傍受をして
いる旨を標示する機能その他スポット傍受の適正を確保するための機能を有す
る機器を用いて行うものとする。
2 スポット傍受に当たっては、犯罪の組織的背景、既に傍受をされた通信の内
容その他スポット傍受をしている通信の該当性判断に資する事項を考慮しなけれ
ばならない。
3 傍受の実施の開始時に現に通話が行われているとき又は傍受の実施の間に
通話が開始されたときは、スポット傍受を開始するものとする。
4 スポット傍受をしている場合において次の各号にに掲げる通信が行われて
いると認めるに至ったときは、スポット房事を終了し、それぞれ当該書く祇王
に定める傍受を開始するものとする。
一 傍受すべき通信に該当することが明らかである通信 令状記載傍受
二 外国語等通信 外国語等傍受
三 他犯罪通信 他犯罪傍受
5 スポット傍受を開始した場合においては、前項の規定により同項各号に定
める傍受を開始し、又は第七項の規定によりスポット傍受を終アしたときを除
き、スポット傍受の開始時からあらかじめ警察本部長が指定した時間内にスポッ
ト傍受を中断しなければならない。
6 前項の規定によりスポット傍受を中断した時点からあらかじめ警察本部長
が指定した時間が経過した後において、当該スポット傍受を中断した時点にお
いて現に行われていた通話と同一の通話が行われており、傍受すべき通信に該
当するかどうかを判断するため必要があると認めるときは、スポット傍受を開
始するものとする。
7 スポット傍受をしている場合において、第四項各号のいずれにも該当しな
い通信であって傍受すべき通信に該当しないことが明らかであるものが行われ
ていると認めるに至ったときは、直ちに、スポット傍受を終了しなければなら
ない。
8 前項の規定によりスポット傍受を終了した時又は次第二項の規定により傍
受を終了した時に現に行われていた通話が傍受の終了時からあらかじめ警察本
部長が指定した時間を超えて継続しており、当該傍受の終了時時における通信
内容の異なる通信が行われていないかどうかを確認するため必要があると認め
るときは、スポット傍受を開始するものとする。
(令状記載傍受等)
第十二条 前条第四項各号のいずれかに定める傍受をしている場合において、
当該各号に掲げる通信以外の通信であって同項各号のいすれかに掲げるものが
行われていると認めるに至ったときは、当該傍受を終了し、それぞれ当該各号
に定める傍受を開始するものとする。
2 前条第四項各号のいずれかに定める傍受をしている場合において、同項各
号のいずれにも該当しない通信であって傍受すべき通信に該当するかどうか明
らかてないものが行われていると認めるに至ったときは、直ちに、当該傍受を
終了してスポット傍受を開始するものとし、同項各号のいずれにも該当しない
通信であって傍受すべき通信に該当しないことが明らかであるものが行われて
いると認めるに至ったときは、直ちに、傍受を終了しなければならない。
(外国語等通信についての該当性判断)
第十三条 法第十三条第二項後段の規定による傍受すべき通信に該当するかど
うかの判断のために行う翻訳、復号又は復元及び翻訳,復号、又は復元がなさ
れた通信の内容の聴取又は閲覧は、必要最小限度の範囲で行うようにしなけれ
ばならない。
2 外国語等通信であって、傍受の実施の場所でその内容を容易に復元するこ
とができる方法を用いて行われたものについては、当該場所の状況を考慮して
適当であると認めるときは、当該場所において立会人の立会いを得て前項の復
元若しくは閲覧、法第十三条第二項後段の規定による傍受すべき通信に該当す
るかどうかの判断又は傍受記録の作成を行わなければならない。
3 第一項の翻訳、復号又は復元の嘱託をする場合は、当該嘱託を受ける者が
通信の秘密を不当に害することなく。かつ、捜査の妨げとならないようにする
ための措置を講じなければならない。
4 第一項の翻訳、復号又は復元及び聴取又は閲覧については、これらを行っ
た者の氏名、これらか行われた年月日、傍受をされた通信のうちこれらが行わ
れた部分その他これらば行われた状況を明らかにするために必要な事項を書面
に記載しておかなければならない。
(相手方の電話番号等の探知)
第十四条 法第十六条第三項の規定による要請は、当該要請に係る通信を特定
するために必要な事項を告知して行うものとする。
第三章 通信傍受の記録等
(傍受の原記録用媒体への署名等)
第十五条 法第二十条第一項の規定により記録媒体の封印を求めようとすると
きは、あらかじめ、当該記録媒体の外面に、当該記録媒体に対する記録を終了
した年月日時分及びそれが法第十九条第一項前段の規定により記録をした記録
媒体である旨を記載して署名押印しなければならない。
2 犯罪捜査のための通信傍受に関する規則(平成十二年最高裁判所規則第六
号。以下「最高裁判所規則」という。)第九条に規定する書面の様式は、別記
様式第一号のとおりとする。
(傍受記録甲の複製の作成)
第十六条 法第二十条第二項の規定による複製の作成は傍受の実施の場所にお
いて立会人の立会いを得て行わなければならない。
(傍受記録作成用媒体への署名等)
第十七条 法第十九条第一項後段の規定による記録又は法第二十条第二項の規
定による複製の作成が終了したときは、直ちに、傍受記録作成用媒体の外面に、
当該記録又は作成が終了した年月日時分及びそれが傍受記録作成用媒体である
旨を記載して署名押印しなければならない。
(傍受の実施の状況を記載した書面の提出)
第十八条 法第二十一条第一項に規定する書面の様式は、別記様式第二号のと
おりとする。
2 前項の書面を裁判官に提出するときは、第十条第三項又は第四項の意見書
を添えて行わなければならない。
3 外国語等傍受をした通信について、当該外国語等傍受に係る傍受の実施の
状況を記載した書面を裁判官に提出した後において、当該通信が他犯罪通信に
該当すると認めるに至ったときは、遅滞なく、法第二十一条第一項第五号及び
第六号に掲げる事項を記載した他犯罪通信該当書(別記様式第三号)を裁判官
に提出しなけれぱならない。
(傍受調書)
第十九条 傍受の実施をしたときは、その状況を明らかにした傍受調書を作成
しなければならない。
(傍受記録の作成)
第二十条 傍受記録の作成は、傍受記録作成用媒体に記録されている通信のう
ち、法第二十二条第二項各号に掲げる通信の記録を当該傍受記録作成用媒体に
残し、それ以外の通信の記録を消去することにより行うものとする。
2 傍受記録を作成した場合において、他に通信記録物等があるときは、捜査
主任官は、通信記録物等管理者にその記録の全部を消去させなければならない。
ただし、当該通信記録物等が、傍受記録に記録された通信の内容の全部又は一
部を要約して記載した捜査書類であって、傍受記録を作成する前に行った捜査
の経過を示すために特に必要なものである切合には、この限りでない。
3 傍受記録から記録を消去したときは、捜査主任官は、通信記録物等管理者
に通信記録物等の当該記録に係る部分の記録の全部を消去させなければならな
い。
4 法第二十一条第一項の規定により書面を裁判官に提出した後において、傍
受記録から記録を消去したときは、速やかに、通信記録消去通知書(別記様式
第四号)により、当該裁判官に通知しなけれぱならない。
(通信記録物等の作成等)
第二十一条 通信記録物等の作成は、必要最小限度の範囲にとどめなければな
らない。
2 記録媒体に対する法第十九条第一項後段の規定による記録、法第二十条第
二項の規定による複製の作成、傍受記録の作成その他通信記録物等の作成が終
了したときは、速やかに、記録媒体作成調書、複製等作成調書、傍受記録作成
調書その他通信記録物等の作成の状況を明らかにした書類を作成するとともに、
その旨を通信記録物等管理者に通知しなければならない。
3 通信記録物等管理者は、警察本部長が定める様式の簿冊により、通信記録
物等の作成、保管及び出納の状況、その記録の消去の状況その他その適正な管
理のために必要な事項を明らかにしておかなければならない。
4 通信記録物等が刑事手続において使用する必要がなくなったときは、捜査
主任官は、速やかに、通信記録物等管理者にその記録の全部を消去させなけれ
ばならない。
(通信の当事者に対する通知)
第二十二条 法第二十三条第一項の書面の様式は、別記様式第五号の通りとす
る。
2 最高裁判所規則第十三条の書面の様式は、別記様式第六号の通りとする。
(傍受の原記録の聴取及び閲覧等の請求)
第二十五条 法第二十五条第三項の規定による聴取、閲覧又は複製の作成の請
求は、指定警察官がこれを行うものとする。
2 前項の請求は、順を経て警察本部長に報告し、事前にその承認を受けて行
わなければならない。
3 第一項の請求は、傍受の原記録聴取等請求書(別記様式第八号)により行
わなければならない。
4 第一項の請求をするときは、法第二十五条第三項に規定する聴取、閲覧又
は複製の作成の理由があることを疎明する捜査報告書その他の資料を添えて行
わなければならない。
第四章 補則
(通信傍受手続篇)
第二十六条 次の各号に掲げる措置を執った場合においては、通信傍受手続簿
(別記様式第九号)によりその手続等を明らかにしておかなければならない。
一 傍受令状の請求
二 傍受の処分の着手
(通知を発しなければならない期間の延長)
第二十三条 法第二十三条第二項ただし書(同条第三項後段において準用する
場合を含む。)の規定による請求は、指定警察官がこれを行うものとする。
2 前項の請求は、順を経て警察本部長に報告し、事前にその承認を受けて行
わなければならない。
3 第一項の請求は、通知期間延長請求書(別記様式第七号)により行わなけ
ればならない。
4 第一項の請求をするときは、通知によって捜査が妨げられるおそれがある
ことを疎明する捜査報告書その他の資料を添えて行わなければならない。
(警察官が保管する傍受記録の聴取及ひ閲覧等)
第二十四条 警察官が保管する傍受記録に係る法第二十四条の規定による聴取、
閲覧又は複製の作成については、当該傍受記録に係る聴取、閲覧又は複製の作
成をしようとする者が法第二十三条第一項の通知を受け通信の当事者であるこ
とを確認しなければならない。
2 前項の聴取、閲覧又は複製の作成は、必要な態勢を確立した上で、警察施
設において警察職員を立ち会わせ、その他所要の措置を講じて行わせるように
しなければならない。
三 傍受ができる期間の延長の請求
四 法第二十条第三項の規定による記録媒体の提出
五 法第二十一条第一項の規定による書面の提出
六 第十八条第三項の規定による書面の提出
七 傍受記録の作成
八 法第二十三条の規定による通知
九 法第二十三条第二項ただし書(同条第三項後段において準用する場合を含
む)の規定による請求
十 法第二十四条の規定により通信の当事者に傍受記録の聴取及び閲覧等をさ
せること
十一 法第二十五条第三項の規定による請求
附則
この規則は、法の施行日から施行する。