145回-参-予算委員会-08号 1999/03/02 平成十一年三月二日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員の異動  三月一日     辞任         補欠選任      石田 美栄君     円 より子君      浜田卓二郎君     沢 たまき君      岩佐 恵美君     小池  晃君      橋本  敦君     八田ひろ子君     日下部禧代子君     福島 瑞穂君  三月二日     辞任         補欠選任      沢 たまき君     浜田卓二郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 狩野  安君                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 松谷蒼一郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 若林 正俊君                 海野  徹君                 江田 五月君                 郡司  彰君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 円 より子君                 柳田  稔君                 加藤 修一君                 沢 たまき君                 浜田卓二郎君                 益田 洋介君                 小池  晃君                 須藤美也子君                 八田ひろ子君                 照屋 寛徳君                 福島 瑞穂君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 菅川 健二君                 山崎  力君                 佐藤 道夫君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     中村正三郎君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        運輸大臣        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君        労働大臣     甘利  明君        建設大臣        国務大臣        (国土庁長官)  関谷 勝嗣君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   尾見 博武君        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局次長      松田 隆利君        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        警察庁長官    関口 祐弘君        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        金融監督庁長官  日野 正晴君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        防衛庁人事教育        局長       坂野  興君        防衛庁装備局長  及川 耕造君        防衛施設庁長官  大森 敬治君        防衛施設庁総務        部長       山中 昭栄君        防衛施設庁施設        部長       宝槻 吉昭君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        科学技術庁原子        力局長      青江  茂君        科学技術庁原子        力安全局長    間宮  馨君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        環境庁水質保全        局長       遠藤 保雄君        沖縄開発庁総務        局長       玉城 一夫君        国土庁計画・調        整局長      小林 勇造君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務大臣官房司        法法制調査部長        兼内閣審議官   房村 精一君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省入国管理        局長       竹中 繁雄君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省経済局長  大島正太郎君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        国税庁次長    大武健一郎君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        運輸省運輸政策        局長       羽生 次郎君        運輸省海上技術        安全局長     谷野龍一郎君        運輸省航空局長  岩村  敬君        海上保安庁長官  楠木 行雄君        郵政省電気通信        局長       天野 定功君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省住宅局長  那珂  正君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      片木  淳君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十一年度一般会計予算(内閣提出、衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算(内閣提出、衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算(内閣提出、衆  議院送付)     ───────────── <0001>=委員長(倉田寛之君)= ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成十一年度一般会計予算、平成十一年度特別会計予算、平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。照屋寛徳君。 <0002>=照屋寛徳君= 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。  連日、総理を初め各閣僚、御苦労さまでございます。  私は、最初に真鍋環境庁長官にお伺いいたしますが、予算委員会の合間を縫って先日、初の沖縄視察をなされたようでございますが、視察の目的と成果、それから北部訓練場の国立公園化について、長官の御所見をお願いいたします。 <0003>=国務大臣(真鍋賢二君)= 去る二十七日、八日の両日、沖縄本島を訪問させていただきました。  今回の訪問の目的は、来年早々オープンいたしますやんばる野生生物保護センターをまず視察させていただきました。その後におきまして、北部の訓練場を含む山原地域の森林、そしてまた沖縄海岸国定公園のサンゴ礁の模様、そして国設漫湖鳥獣保護区などを拝見させていただきました。  地元沖縄県の知事さんを初めといたしまして、市町村長さんにお目にかかり、いろいろと御意見を伺いました。自然を守ることに対する地元の方々の熱意と、地域振興のためにこの地域を活用していきたいという切実な要望をお聞かせいただきました。  今回の訪問の中で、特に山原地域一帯について私自身は一度ぜひ訪問いたしたい、こう考えておりました。イタジイに代表される亜熱帯性の自然林に広く覆われた地をこの目で見て、改めてその自然のすばらしさを実感いたしたわけであります。  時あたかも新緑の候でございましたので、その景観は見事であったと、こう思うわけであります。  山原地域にはヤンバルクイナなど多くの固有種を含む野生生物が生息し、生物多様性の観点からも貴重な地域でございます。環境庁では、平成十四年度末に北部の訓練場が返還をされるわけでありますが、これを機に国立公園として活用することも念頭に置きながら自然環境等の調査を平成八年度から進めております。本年度からは地元の意見を伺うための検討委員会を設けまして、おかげさまで順調に調査が進んでおると伺っております。  今後とも、地元の御意見を十分伺いながら国立公園化に向けて努力していきたいと考えておりますので、関係方面、関係者の皆さんの一段の御理解や御協力をお願いいただけたらと思っておるところでございます。 <0004>=照屋寛徳君= 環境庁長官、本当に御苦労さまでございました。ぜひ、我が国で唯一の亜熱帯性気候、そして豊かな自然環境と生態系の保全のためにこれからもお力をかしていただきたいと思います。  ところで、五月にラムサール条約に登録される予定の漫湖鳥獣保護区を御視察されたようでございますが、その感想と課題、あるいはラムサール条約登録後の管理についての国の協力についてお伺いいたします。 <0005>=国務大臣(真鍋賢二君)= 実際に現地を視察した漫湖は、沖縄県の人口の集中する地域であります那覇市と豊見城村にまたがった所在地でありまして、渡り鳥の渡来地としてだけでなくて都市部に残された貴重な干潟であると認識をいたしております。その価値や保全の必要性を改めて感じた次第であります。  一方、当該地域は、ごみやマングローブの繁茂などによりまして鳥類の生息環境の悪化が指摘されておるところでございます。  環境庁としては、国設鳥獣保護区特別保護地区としての規制や、県へ委託して鳥類の利用状況の把握などを行ってきておりますが、指摘されている問題に関しても、沖縄県及び流域の七市町村が加わった協議会など、地元の取り組みと連携して対策を検討してまいりたいと考えております。 <0006>=照屋寛徳君= それから長官、サンゴの白化現象というのが今大変大きな問題になっておりますけれども、このたびの御視察で、サンゴの白化現象についての国の緊急調査と対策がぜひ必要だと私は思いますが、いかがでございますでしょうか。 <0007>=国務大臣(真鍋賢二君)= サンゴの白化現象につきましても、船上、海上よりその現場を見せていただきました。白化現象が非常に大きいことに驚いたわけであります。これはもう早急に対策を講じていかなければならないということを痛感いたした次第であります。  そこで、現在、環境庁と水産庁では、今年度、環境庁が所管しております環境基本計画推進調査費を活用いたしまして、造礁サンゴ群集の白化が海洋生態系に及ぼす影響及びその保全に関する緊急調査、これは予算額は千九百万つこうとしておりますけれども、これを活用してまいりたいと思っておるところであります。この調査では、平成十年の夏のサンゴ白化現象について、実態把握、生態系への影響、保全策の検討を行うことにいたしております。  それからなお、環境庁では東アジア海域のサンゴ礁モニタリングネットワークの拠点となる国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターの設置を沖縄県の石垣市において進めておるところであります。来年度以降、このセンターを中心にいたしまして、サンゴの回復状況について情報の収集、提供に努めていきたいと考えておるところでございます。 <0008>=照屋寛徳君= 環境庁長官にあと一点お伺いいたします。  今回の視察で、嘉手納基地から投棄されたと思われるPCBのため池を基地の外からですけれども視察されたということでありました。沖縄の基地問題はその環境問題でもあるわけですね。そういう意味で、この米軍基地内の環境対策、環境問題についてどういうふうにして取り組んでいこうと思われておりますか。 <0009>=国務大臣(真鍋賢二君)= 先日の沖縄訪問時に嘉手納地区の飛行場で過去にPCBが投棄されたという報道の場所を視察して、これは地位協定等々もございまして施設内に入れませんので、その周辺区域外から視察をさせていただいたわけであります。環境庁といたしましても、昭和五十一年度からずっとこの地域におきまして調査をし続けておるわけであります。そんな関係もございまして、その地区を見せていただいたところであります。  米側は環境専門家チームを昨年十月二十六日より十一月七日まで現地に派遣しまして、当該地区の土壌等のサンプリングを含め調査を実施し、現在調査結果を取りまとめていると承知をいたしております。  環境庁としては、この調査結果の取りまとめを待って、関係省庁及び沖縄県と連絡を密にして、環境にかかわる技術的知見を生かして本問題に適切に取り組んでまいろうと思っておるところであります。 <0010>=照屋寛徳君= それでは次に、嘉手納飛行場におけるパラシュート降下訓練の問題についてお伺いいたします。  来る三月六日に嘉手納飛行場で陸軍特殊部隊、グリーンベレーによるパラシュート降下訓練が行われるということで、今沖縄県民が不安におののいております。  外務省、この訓練通報はいつ日本政府にあったのでしょうか。 <0011>=政府委員(竹内行夫君)= 米側からそういう話がございましたのは先週の後半でございます。 <0012>=照屋寛徳君= 具体的な日にちを特定してください。  そして、通報された訓練の内容はどういうものでしょうか。 <0013>=政府委員(竹内行夫君)= たしか二月二十何日でございましたか、二十六日であったかと記憶いたします。ちょっと正確なところ、申しわけございません。  それで、米側におきましては、陸軍を中心といたしますパラシュート降下訓練を行うことが米軍の運用上必要であるということで実施をいたしたい、こういう話がございました。 <0014>=照屋寛徳君= 正確な日付、これ大事なことなんです。 <0015>=政府委員(竹内行夫君)= 失礼いたしました。二月二十三日でございます。二月二十三日、三月六日午前に嘉手納飛行場においてパラシュート降下訓練を実施予定しているという連絡がございました。 <0016>=照屋寛徳君= 外務省、こういうことじゃ困るんですよ。事は県民の命にかかわることですよ、安全にかかわることですよ。それをこんなあやふやじゃ困る。だから外務省は沖縄県民から信頼を得られないんですよ。日本政府の外務省でしょう、日本国の外務省でしょうが。アメリカ国防省の霞が関出張所かね。そうじゃないでしょう。  訓練内容、陸軍を中心とする云々とありましたが、もっと詳しく説明してください。 <0017>=政府委員(竹内行夫君)= 三月六日午前に嘉手納飛行場において陸軍の特殊部隊等の訓練を行いたいと、こういうことでございました。  これは従来から、米軍の運用の所要といたしまして一定のパラシュート降下訓練を行う必要がある、それが昨年からことしにかけましてその予定がなかなか進んでいなかったということで、嘉手納飛行場においてぜひ陸軍特殊部隊、グリーンベレーなどを交えた訓練を行いたい、こういうお話がございました。 <0018>=照屋寛徳君= 外務省、ごまかさないでくださいよ。陸軍特殊部隊等とはどういうことですか。それ以外の軍隊も参加するんでしょう。 <0019>=政府委員(竹内行夫君)= まことに申しわけありませんが、今直ちに資料を取り寄せてお答えいたしたいと思います。 <0020>=照屋寛徳君= ちゃんと質問通告しているのに、こんな大事なことをそんな、できないよ。質問通告もして、レクもやっているのに、人をばかするな。 <0021>=委員長(倉田寛之君)= 速記をとめて。    〔速記中止〕 <0022>=委員長(倉田寛之君)= 速記を起こして。  北米局長、事実関係については正確を期してお答え願いたい。答えられないものは、その理由を付して答弁にかえてもらいたい。こういう委員会運営では進行上妨げになるので、十分心してやっていただきたい。 <0023>=政府委員(竹内行夫君)= どうも申しわけございませんでした。  二十三日に通告がございましたところによりますと、米側からの通報内容によります訓練の概要でございますが、嘉手納所属の空軍の飛行機をもちまして陸軍の特殊部隊、この人数については通告の内容には入っておりませんでしたが、陸軍の特殊部隊を降下させる、こういう内容でございます。 <0024>=照屋寛徳君= 資料を取り寄せた上でこの内容ですか。外務省、グリーンベレーだけじゃないでしょう。空軍の飛行機だけじゃないでしょう。  皆さん、これはそんな簡単なことじゃないですよ。地域住民がおびえているんですよ、県民が。もっと通報内容を細かく言ってくださいよ。だめだよ、これじゃ。隠しているんだ。 <0025>=政府委員(竹内行夫君)= 二月二十三日に我が方に通告がございましたのは、嘉手納所属のMC130、これは空軍所属でございますけれども、それをもちまして陸軍の特殊部隊のパラシュート降下訓練が行われる、こういう通告でございました。 <0026>=照屋寛徳君= では、柳井事務次官がフォーリー大使にこの件でお会いになったようでございますが、マスコミ報道によりますと、二十三日以降判明した訓練内容を言ってください。 <0027>=政府委員(竹内行夫君)= 米側から二十三日以降の訓練内容について追加的な情報というものは私どもはいただいておりません。 <0028>=照屋寛徳君= では、フォーリーさんにはだれが会ったんですか。どういう内容の話をしたんですか。 <0029>=政府委員(竹内行夫君)= フォーリー大使と柳井次官の会合でございますが、これは二月の二十五日の夜でございます。フォーリー大使がかねて柳井次官を夕食に招いておられました。これは、日米関係全般につきまして意見交換を行うと、総理の訪米ということも予定されておりますので、そういう会合でございました。そこにおきまして、柳井事務次官の方からこの問題につきまして日本側の考えを米側にお伝えしたということで、そこで意見交換というものが行われました。  柳井次官の方から、それは昨年の例もございますし、いろいろ沖縄の現地におきます問題意識というものもございますので、そういう問題意識を踏まえた対応をお願いするというようなことでございました。  フォーリー大使の方からは、米軍にとっての運用上の所要というものについての説明がございました。特段そのときに結論が出たということではございませんけれども、この件については日米間でよく協議をしていきましょう、こういうことでございました。 <0030>=照屋寛徳君= これは、グリーンベレーだけじゃなくして、空軍も海兵隊も三軍合同でやるということが既にマスコミでも報道されているわけですよ。  外務省、正式にアメリカ政府に対して中止要求やりましたか。 <0031>=政府委員(竹内行夫君)= これは私どもの方といたしましては、いろんな問題を踏まえた検討をお願いするということで、その問題の中で、問題意識の中で、この時期に、しかも昨年の例にもかんがみまして沖縄県民の感情等を考えますと、この訓練を嘉手納飛行場で行うことはいかがなものであろうかという問題提起をいたしているところでございます。 <0032>=照屋寛徳君= たまたま招かれた夕食会で言うと。そんなことじゃ困るんですよ。どうして正式に日本政府として中止要求しないんですか。 <0033>=政府委員(竹内行夫君)= その先ほど申しました御質問の柳井事務次官とフォーリー大使の意見交換というのは、そういう場合でございましたけれども、そのほかの機会にも北米局長、私からこちらの在京米大使館の筆頭公使に対していろんな申し入れをしておりますし、そのほかのレベルでも毎日のように協議、意見交換は行っているところでございます。 <0034>=照屋寛徳君= 外務大臣、本当にこれは重大な事故の危険があります。それから、基地機能の強化にもつながるんじゃないかということで地元では心配しております。もう事務方じゃなくして、大臣が直接中止要求するというお考えはありませんか。 <0035>=国務大臣(高村正彦君)= 地元の方の御心配はよく存じているつもりでございます。  先週の金曜日に今米側と協議をしているという報告を受けて、そして事務方でだめであれば私が直接フォーリー氏に会うよというのを金曜日に事務方に言いました。事務方ではもう少し事務方同士でぎりぎりやらせてほしいと。それで、私が会って話すことあり得べしということは金曜日に外務省の中で決めていることでありますが、もう少し細かい点についてもぎりぎりやらせてほしいというのが事務方の話でありましたから、きょうもやっていると思っております。 <0036>=照屋寛徳君= さっきから答弁聞いていると、ぎりぎりどころじゃなくして、てんでばらばらじゃないですか。冗談じゃないですよ。今の時点で大臣として本当にアメリカ政府に申し入れられませんか。 <0037>=国務大臣(高村正彦君)= 今予算委員会で拘束されておりますが、事務方の報告をきっちり受けた上で何らかの形をとるということはもう金曜日に決定をしているところでございます。いたします、だから。 <0038>=照屋寛徳君= この軍事訓練について、沖縄県や関係市町村へは正式通報はやっておりますか。 <0039>=政府委員(竹内行夫君)= 正式通報という形でございますと、我々としましては、外務省としては、まさに今米軍と協議をいろいろしている最中でございますので、正式の通報ということは、手続はとっておりません。 <0040>=照屋寛徳君= なぜ通報しないんですか。多くの県民が今不安におののいているんですよ。アメリカから通報を受けた内容を速やかに知らせるというのがSACOの合意内容じゃないですか。 <0041>=政府委員(竹内行夫君)= 正式の通報ということでお答え申し上げましたけれども、当然沖縄県の方とは事務的にも緊密に連絡を行っているところでございます。 <0042>=照屋寛徳君= 官房長官、やりとりを聞いておられてどうですか。昨年五月の訓練のときには、当時の鈴木沖縄開発庁長官が米軍に自粛を求めたいというふうに公式にコメントをしております。官房長官がいつぞや批判をした、アメリカに対して弱腰なんですよ、外務省は。沖縄開発庁長官としてこの訓練問題についてどういうふうに考えておられますか。 <0043>=国務大臣(野中広務君)= 米軍が日米安全保障体制の上で我が国の平和と安全を確保するために米軍としての訓練を行うことは一般論としてあるべしと考えております。  ただ、嘉手納におきますパラシュートの降下訓練につきましては、昨年五月の経緯もかんがみまして、今、外務大臣その他から答弁がございましたように、外務省において米軍当局に、沖縄県民の昨年の経過も踏まえた上で一応対応を考えてもらいたいということを申し述べております。私も会見で記者からの質問に答えまして、けさほども、今外務省と協議を進められておるところでありますけれども、昨年の経過を踏まえまして、米軍当局におきましても、米国におきましても、よき隣人とし、同盟国として特別の配慮を期待するという旨を申しました。外務大臣の意向も踏まえまして私どもも対応してまいりたいと考えております。 <0044>=照屋寛徳君= それでは、法務大臣、お待たせをいたしました。法務大臣にお伺いをいたします。  この予算委員会始まって以来、民主党の角田委員、それからきのうは江田委員、そして社民党の大渕委員、共産党の橋本委員などなどから改憲発言や指揮権発動をめぐって辞任を求められておりますが、どうですか、まだおやめになられる気はありませんか。 <0045>=国務大臣(中村正三郎君)= いろいろ御答弁させていただきまして、御理解を賜りたいと思っております。 <0046>=照屋寛徳君= 何か急に声が小さくなったような感じがしますが、官邸のホームページによると、あなたの信条は「議会制民主主義の確立と社会正義の実現」と書いてあるんですよ。ところが、どうもやっていることはそれに逆行することばかりじゃありませんか。  これから具体的に聞いてまいりましょう。  さて、いわゆるオーバーステイ外国人の在留特別許可制度の法的な根拠と要件についてお伺いいたします。 <0047>=政府委員(竹中繁雄君)= お答えいたします。  在留特別許可の制度は、入管法の第二十四条に規定する退去強制事由に該当しているとの容疑により退去強制手続を受けている外国人が法務大臣に対して異議を申し出たときに、その異議の申し出に理由がないと認める場合であっても、法務大臣が特別な事情があると認めるときは、その者の在留を許可することができるという制度でございます。  特別の事情としましては、容疑者が永住許可を受けているとき、かつて日本国民として本邦に本籍を有していたことがあるとき、難民の認定を受けているとき、それから最後に、その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき、この四項が入管法の主に第五十条に列挙されております。 <0048>=照屋寛徳君= 入管局長、関連して、入管法で定める我が国への上陸の条件、あるいはまた上陸特別許可という制度について説明してください。 <0049>=政府委員(竹中繁雄君)= 上陸特別許可につきましても基本的に同じ発想でございまして、基本的に上陸する際には入国審査官の証印を受けなければ入国できないということになっておりますけれども、特別の事情があるときは法務大臣に異議申し立てができ、法務大臣が特に理由があると認めるときにはその上陸を許可することができるという制度でございます。 <0050>=照屋寛徳君= 法務大臣、あなたはアーノルド・シュワルツェネッガーという俳優を知っておりますか。 <0051>=国務大臣(中村正三郎君)= 存じております。 <0052>=照屋寛徳君= あなたもしくは奥さんかお嬢さんか、どちらかがシュワルツェネッガーのファンであるというふうに聞いておりますが、間違いないでしょうか。 <0053>=国務大臣(中村正三郎君)= そうだと思います。 <0054>=照屋寛徳君= どちらですか。 <0055>=国務大臣(中村正三郎君)= みんなだと思います。私もファンですけれども、みんなだと思います。 <0056>=照屋寛徳君= 昨年、シュワルツェネッガーが自家用機で関西空港に我が国への上陸を目的に来たことがありましたでしょうか。 <0057>=国務大臣(中村正三郎君)= ございました。 <0058>=照屋寛徳君= その際、シュワルツェネッガーはビザを持っておったでしょうか。何の目的で我が国に上陸しようとしたんでしょうか。 <0059>=国務大臣(中村正三郎君)= 日本のどこかの企業と提携した事業のキャンペーンで来られたと伺っております。それで、ビザでなくてパスポートを持っておられなかったんです。 <0060>=照屋寛徳君= 入管局長、具体的に、事業のキャンペーンと言っていますけれども、シュワルツェネッガーはそのとき入国審査官には何と言ったんですか。 <0061>=政府委員(竹中繁雄君)= 当時、入国の目的として、大阪市等が協賛する舞洲テーマパークの起工式に出席したいということで、同氏はこのセレモニーに不可欠の人間であるので特に上陸をお願いしたい、こういうことでございました。 <0062>=照屋寛徳君= 映画のプロモーションに来た、こういう目的を告げたのではありませんか。 <0063>=政府委員(竹中繁雄君)= 先ほど申しましたように、この舞洲テーマパークの起工式に出るという目的ということで、関係の資料も持ってまいりまして、それを我々も確認しております。 <0064>=照屋寛徳君= シュワルツェネッガーの上陸許可の手続はどういうふうになされましたか。 <0065>=政府委員(竹中繁雄君)= シュワルツェネッガー氏は、十月二十七日に自家用機で関西空港に到着しております。それで、同氏は、米国出国の直前に旅券を盗まれたということで旅券を所持していなかったわけでございます。それで、審査の結果、上陸のための条件に適合していないと認定されて、それに対して、法務大臣に対し異議の申し立てがあったものでございます。それに対して、先ほど述べたような経緯で最終的に法務大臣の許可が出たということでございます。 <0066>=照屋寛徳君= 旅券なしで入ってきた。それで、異議の申し立てがあって、大臣が上陸特別許可の裁決をされたわけですね。  どういう理由で決裁されたんですか。 <0067>=国務大臣(中村正三郎君)= 今申しましたような状況の中で、同氏の異議の申し立てについて、特別に上陸を許可するべき事情があるかを検討いたしましたところ、同氏は既に旅券の再発給を申請済みであり、我が国にある米国公館において速やかに新たな米国旅券の発給を受けることができる見込みであることなどの諸事情を総合的に考慮の上、同氏の上陸を特別に許可することが相当であると判断いたしました。 <0068>=照屋寛徳君= 大臣、その際に、シュワルツェネッガーに反省文、あるいは表題は上申書か何か知りませんが、そういうたぐいの文書を書かせたことはありませんか。 <0069>=国務大臣(中村正三郎君)= 通常、こういう特別な許可をいたしますとき、必要に応じててんまつ書を書いてもらうようにしておりますので、それはそういう手続をとったと思います。 <0070>=照屋寛徳君= 大臣御自身がそのてんまつ書をごらんになった上で上陸特別許可を決裁されたんですね。 <0071>=国務大臣(中村正三郎君)= 事務の内容は、ちょっといろいろ、それは夜中のことでありましたから、許可したときに、決断したのは夜中でありますから、そのときは、内容は聞いておりましたけれども現物は見ていなかったと思います。 <0072>=照屋寛徳君= そのてんまつ書の内容はどういうものでしたか。 <0073>=国務大臣(中村正三郎君)= 内容はよく覚えておりませんけれども、たしかパスポートを紛失したか──盗まれたと書いてありましたかね、盗まれたので再発給を要請してある、そういうことで特別に許可してくれないかということだったと思います。 <0074>=照屋寛徳君= 入管局長、シュワルツェネッガーのそのてんまつ書の原本はどこにありますか。 <0075>=政府委員(竹中繁雄君)= お答えいたします。  担当課のファイルにございます。 <0076>=照屋寛徳君= 担当課と。正式な課名と、その原本はいつ戻ったんですか。 <0077>=政府委員(竹中繁雄君)= 課は入国管理局審判課でございます。  時間の問題につきましては、内部の事務処理のことでもあり、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。 <0078>=照屋寛徳君= 大事なことだ。これは続く質問とも重大な関連がありまして、入国管理行政そのものにかかわる問題なんです。いつ戻ったんですか。 <0079>=政府委員(竹中繁雄君)= 申しわけございません。内部の事務処理のことでもあり、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。 <0080>=委員長(倉田寛之君)= 速記をとめて。    〔速記中止〕 <0081>=委員長(倉田寛之君)= 速記を起こして。 <0082>=照屋寛徳君= 入管局長、シュワルツェネッガーのてんまつ書の原本はいつ戻ってきたんですか。 <0083>=政府委員(竹中繁雄君)= 済みません、前と同じお答えになりますけれども、内部の事務処理のことでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。 <0084>=委員長(倉田寛之君)= 速記をとめて。    〔速記中止〕 <0085>=委員長(倉田寛之君)= 速記を起こして。 <0086>=政府委員(竹中繁雄君)= お答えいたします。  昨日、大臣室より返戻されたものと承知しております。 <0087>=照屋寛徳君= これは恐ろしいことですよ。入管記録の中の、しかも特別に上陸を求めた外国人のてんまつ書の原本が、私が質問通告をしたら、昨夜でしょう、戻ってきたのは。歩いてきたの。どこから戻ってきたんですか。冗談じゃないですよ。 <0088>=政府委員(竹中繁雄君)= 先ほど申しましたように、大臣室から返戻されたと承知しております。返ってきたということでございます。 <0089>=照屋寛徳君= 法務大臣、大変なことですよ、これは。このシュワルツェネッガーのてんまつ書の原本が大臣室にあったんですか、それともあなたの御自宅にあったんですか、はっきり答えてください。 <0090>=国務大臣(中村正三郎君)= これは今事務の内容だからよく話せないとありましたけれども、よく話したいと思います。  最初はファクスが参りました。ファクスが来て、それで決裁されて、そのファクスがずっとあったんだと思います。それからかなりたって、原本が来ましたので御確認くださいと持ってこられて、それを私、秘書に返却するように言ったんですが、それがあったんだと思います。ほかに出たことはございません。その二重になったということで誤解を生んだんだとすれば、最初はファクスで来て、それで決裁して、それがあって、それから大分たってから来て、それがたまたま置いてあったんだと思います。 <0091>=照屋寛徳君= 大臣、あなたが原本を預かり保管して、コピーを一件記録に添付しておったんでしょうが。 <0092>=国務大臣(中村正三郎君)= そういうことは絶対ございません。  最初に来たファクスで決裁したので、最初の文書はコピーであります、ファクスのコピーであります。その次に送られてきたのが原本でありましたけれども、それがかなりおくれて来ました。来て、それが、私は秘書に返却するように言ったのが大臣室に忘れられてあったんだと思います。 <0093>=照屋寛徳君= 法務大臣、この一件をもってもあなたは本当に法務大臣としての資格がない。しかも、入管行政というのは国家の主権にかかわることですよ。それをあなたは秘書が秘書がと、また言い逃れしようとしている。  これは私が通告してレクをした、大慌てで昨夜戻したんでしょうが。そんなことじゃ困るんですよ。しかも十月に入ってきた、もう半年近くも返すように言ったけれども自分のところにありました。それで済むと思いますか、あなた。 <0094>=国務大臣(中村正三郎君)= 事実を申し上げるしかないんですが、最初ファクスで来て、そのコピーでもって決裁して、それから随分おくれて原本が参りまして、これをよく確認してくださいというのでそれを大臣室に置いてあって、それを返却すべきときに返却すべきことですが、法務大臣室に置いてあったものが、それが返却されないでいたんだと思います。そして、秘書にこれは返却しろと言ってありましたから、秘書が返却したんだと思います。 <0095>=照屋寛徳君= 法務大臣室のどこに置いてあったんですか。秘書が持っておったんですか。しかも、なぜ昨夜になってから大急ぎで返したんですか。おかしいじゃないですか。そんなことで国民の理解が得られますか、入管行政に対する、大臣。  本当はあなたの御自宅に持ち帰っておったんじゃないですか。 <0096>=国務大臣(中村正三郎君)= 自宅に持ち帰っておりません。  私の部屋に来た方はよく御存じですけれども、私は部屋にずっと書類を置く癖がありまして、そこの中にあったそうでございます。 <0097>=照屋寛徳君= 入管局長、だれの指示で、しかも昨夜遅くになってからその原本を戻したんですか、何のために。答えてください。正直に答えなさいよ。 <0098>=政府委員(竹中繁雄君)= 昨日、大臣室から返戻があったということで、我々の方は受け取ったということでございます。だれの指示ということではございません。 <0099>=国務大臣(野中広務君)= 先ほど来、照屋議員の御質問、法務大臣、法務省の答弁を通じて、私ども入管問題について御指摘の事項については到底満足すべき御理解をいただくような答弁になっておらないと思いますので、実態を内閣において調査いたしますので、御猶予をいただきたいと存じます。 <0100>=照屋寛徳君= 総理、これは本当に大変な問題になりますよ。今、官房長官が内閣の責任で実態調査をやられると言った。いつまでにやるのか、その結果を予算委員会を含めて国民に明らかにして、その責任を法務大臣にしっかりとらせる。約束できますか。 <0101>=国務大臣(小渕恵三君)= ただいま官房長官からも御答弁させていただきました。事実関係につきましては、正直申し上げて照屋委員と法務大臣との質疑応答しか、私は内容にわたりまして承知をいたしておりません、事務当局もいたしておりますが。したがいまして、官房長官が申し上げたような趣旨でございますので、御理解いただきたいと思います。できる限り早くそのお答えができますように努力いたしたいと思います。 <0102>=照屋寛徳君= では、委員長、今の官房長官、総理の約束をこの総括質疑をやっている間に調査の上明らかにする、こういうことを約束してください。 <0103>=国務大臣(野中広務君)= 可能な限りそう努力いたしたいと存じますけれども、総括質疑は本日いっぱいでございますので、締め総を含めて御猶予をいただきたいと存じます。 <0104>=照屋寛徳君= 私の調査によると、これは大臣室以外から昨夜運び込まれたというふうに明らかになっておりますので、私はぜひしっかりした責任ある調査をお願いしたいと思う。これは大変な問題ですからね。  さて、法務省にお伺いをいたしますが、入管局長から地方入国管理局長、支局長あての平成四年四月八日付、平成八年八月十日付の通達の内容について説明をしていただきたいと思います。 <0105>=政府委員(竹中繁雄君)= お尋ねの通達は、出入国管理及び難民認定法に基づく上陸及び在留に関する法務大臣の裁決に関するものであろうかと思います。  この通達は、異議申し立て案件のうち一定の範囲のものについては地方入管局長に専決させることを内容としております。  具体的には、政治、外交等に影響を及ぼすおそれがあるもの、政策決定等の参考となるもの、報道により一般の関心を引いたもの、そういうもの以外の案件であって、かつ上陸または在留の特別許可を与えることにこれまでの例から見て特段の問題がないと認められるものにつきまして地方入国管理局長限りで専決ができるとするものでございます。  なお、このような案件であっても、地方入国管理局長において専決することが適当でないと判断した件については、やはり本省に進達するということになっております。 <0106>=照屋寛徳君= この専決案件それから進達案件、このことが通達で決めてあるわけですね、要件で。どうですか。 <0107>=政府委員(竹中繁雄君)= おっしゃるとおりでございます。 <0108>=照屋寛徳君= 時間が少なくなりましたので、入管局長、この通達に基づき長年入管行政で行われておった専決案件、進達案件の取り扱いが、中村法務大臣就任後に変わりましたね。 <0109>=政府委員(竹中繁雄君)= 大臣が御就任されてから、上陸及び在留いずれにつきましても、どういう流れになっているのか一度自分で見たいという御希望でございまして、基本的にすべて少なくとも概要は大臣に御説明して決裁をしているところでございます。 <0110>=照屋寛徳君= 全然答えになっていない。  中村正三郎法務大臣が就任する前に、歴代の法務大臣でみずから直接に決裁をした人がおりましたか。 <0111>=政府委員(竹中繁雄君)= 私が承知している限りでは、そういう方はおられなかったというふうに聞いております。 <0112>=照屋寛徳君= それで、通達による専決処分は、地方入管局長が専決をやっていた、文字どおり。それから進達案件については、裁決委員会がつくられて、そこで裁決委員会が裁決を代行しておった。歴代の法務大臣でみずからやった人はいないんです。  ところが、中村さんが法務大臣になって後、この専決案件、進達案件の取り扱いが全部変わりましたでしょう。どう変わったか説明してください。 <0113>=政府委員(竹中繁雄君)= 先生が御指摘になりました裁決委員会というのは、実は最近余りもう行われておりませんで、昔、本省に上がってくる件数が余り多くなくて、比較的時間に余裕があったときはそういうことをしておりましたけれども、今は特にそういうことをしておりませんで、事務的に決裁でもって決めているというのが実情でございます。  それで、どこが変わったかということでございますけれども、先ほど申しましたように、上陸特別許可それから在留特別許可双方につきまして、すべての案件を大臣にお目通しするというふうにしております。 <0114>=照屋寛徳君= 入管局長、旧専決案件については今や大臣が全部決裁しているんでしょう。大臣は記録を読んでいますか。一々全記録を読んだ上で決裁していますか。 <0115>=政府委員(竹中繁雄君)= 基本的に在留特別許可の案件につきましては、件数も多いものですから、数十の案件を束ねまして、それをある種分類して、それで私どもの判断を付して、余り問題のないもの、特にこれは大臣に見ていただいて御判断いただいた方がいいもの、そういうものをピックアップして大臣に御説明して御決裁をいただいているということでございます。 <0116>=国務大臣(太田誠一君)= ちょっと私、関係をするところがありますので、お答えさせていただきますが、文書決裁規則を各省に設けておりまして、これは大臣の訓令として文書決裁規則が置かれているわけでございます。その文書決裁規則につきまして、さきの橋本内閣のときに調査をされまして、閣僚懇談会の申し合わせとして、決裁事項が、大臣が実際にする部分が大変少ないというか、限りなくゼロに近い状態でありましたので、それでは大臣自身の決裁権限が十分発揮されていないということでもって、なるべく大臣の決裁をみずから行っていただくようにということを初閣議のときに申し上げまして、恐らくそのことでもって法務大臣も決裁事項をふやすという努力をされたのではないか、運用上も工夫をされたのではないかと思います。それは御参考までに申し上げたいと思います。 <0117>=照屋寛徳君= 総務庁長官、せっかくですが、あなたが思うのは結構ですが、中身は全然違うんです。  入管局長、旧専決案件について大臣に記録を送っていないでしょう。氏名と国籍と事件番号だけをリストアップして、それでマル・バツで決めているんじゃないですか。どうですか、本当に。正直に言ってください。 <0118>=政府委員(竹中繁雄君)= 件数が多いものですから、基本的にだれが見ても余り問題がないものについてはそれこそある種簡便なやり方で御説明しておりますけれども、問題になる、判断を要するものについてはそれなりの資料を添えて御説明申し上げて御決裁をいただいているということでございます。 <0119>=国務大臣(中村正三郎君)= 御説明申し上げます。  それほどやり方が変わったわけではございません。  裁決委員会というのは最近やっていない制度であり、通達は通達で出ておりますけれども、今お話ございましたように、難しい問題は大臣みずからが決裁するべきであろうという考えを私は持っております。  そして、ちょうど決算行政委員会から、去年の九月ごろだと思いますけれども、出入国管理の厳正化についての申し入れがございました。それは、ビザの発給の厳格化とか水際での取り締まりの強化とか、外国人の不法就労の防止、密航組織の実体解明、出入国管理体制の強化等でございました。  そこで、新聞でいろいろ問題があるのではないかというような指摘をされたこともございますので、改善するべき事項はないんだろうかということでもって、私が、これは大臣許可でありますから、大臣の責任においてやることでありますから、目を通そうということでいたしました。  実態は、これも内部の事務ですから御説明はあれなんですが、申し上げますと、いっぱいの案件があります。それを全部持ってこられまして、担当の人が、これは従来の基準でいくと許可すべきものですので自分たちの権限で許可させてくださいと言うので、許可して、その中で特に問題のありそうなものをピックアップして判断を仰ぐと。そして判断をいたしますが、事務当局の判断と私の判断と違ったということはございません。 <0120>=照屋寛徳君= 歴代法務大臣がみずから決裁しなかった、にもかかわらず、突如としてあなたになってから内部通達も全部変わった、手続も。大変大きな問題を含んでおりますが、先ほどのてんまつ書の原本の保管問題を含めてまた引き続いて追及をしてまいります。  さて、通告しておりましたシカゴ条約と周辺事態法との関係でお伺いいたしますが、一点運輸省にお伺いいたします。  二月二十三日付の朝日新聞で、朝鮮有事を想定した際の我が国への作戦支援の問題でございますが、その中で、アメリカが成田空港も使わせろ、こういうふうに言ってきたというんですが、それは事実でしょうか。また、成田空港を米軍に使わせるようなことも考えておるんでしょうか。 <0121>=国務大臣(川崎二郎君)= 報道されたようなことは運輸省には全く届いておりません。  それから、成田空港につきまして少し申し上げますと、米軍機は地位協定第五条に基づき我が国の民間空港の一時的使用が可能であります。大体年間千回ぐらい全国の民間飛行場の離発着がございます。ただ、優先使用は認められておりません。したがいまして、混雑空港、民間の利用でいっぱいな空港につきましては基本的には難しいと考えております。  それから、成田の問題については、空港建設の経緯がございます。国会で歴代の運輸大臣が答弁されております。そういった意味では慎重に対応しなきゃならないな、こう考えているところでございます。  いずれにせよ、周辺事態という場合には当然基本計画を設定いたすことになりますので、基本計画の設定の段階におきまして今私が申し上げたことを十分配意しながら調整を進めてまいりたい、こう考えております。 <0122>=照屋寛徳君= 大臣、周辺事態法がもし成立したならば場合によっては成田を使わせることもある、こういう御趣旨でしょうか。 <0123>=国務大臣(川崎二郎君)= 今申し上げたように、成田は今、地位協定がありますが、使っていません。それから、周辺事態法が成立をして、そしてその事態が起きて、そのときに基本計画というのが組まれることになります。そのときに今私が申し上げたような経緯というものを大事にしながら米軍とお話をします、こう申し上げているわけです。 <0124>=照屋寛徳君= 外務省にお伺いいたしますが、いわゆるシカゴ条約第三条二項の有権解釈というのでしょうか、外務省、どういうふうに考えておられるかお聞かせください。 <0125>=国務大臣(高村正彦君)= シカゴ条約は、第三条(a)において、「この条約は、民間航空機のみに適用するものとし、国の航空機には適用しない。」、こう規定しているわけであります。そして同条(b)においては、「軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は、国の航空機とみなす。」、こう規定しているわけであります。  そして、シカゴ条約上、軍、税関及び警察の業務以外に用いられる航空機については特段の規定はないわけであります。シカゴ条約上、具体的にいかなる航空機がここに言う民間航空機あるいは国の航空機に当たるか、また、軍、税関及び警察の業務に用いる航空機に当たるかについての明確な基準が設けられていないわけであります。  我が国としては、具体的にいかなる航空機がシカゴ条約上の民間航空機に当たるかについては、航空機の所有形態、使用形態あるいは使用目的等に照らして個別に総合的に判断されるべきものである、こういうふうに考えております。 <0126>=照屋寛徳君= そうすると、外務大臣、周辺事態法九条で民間機による武器弾薬の輸送が行われるようになりますと、個別具体的な事例によっては、その民間機がシカゴ条約で言う国の飛行機と認められて、相手、交戦国から攻撃をされる可能性もある、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。 <0127>=国務大臣(高村正彦君)= 今申し上げましたように、具体的にいかなる航空機がシカゴ条約上の民間航空機に当たるかについては、航空機の所有形態、使用形態あるいは使用目的等に照らして個別に総合的に判断されるべきものであると考えているわけで、どういう場合を想定して言っておられるかよくわかりませんので、そういう可能性が想定されるのかどうか、今ちょっと具体的な事例でないとなかなかわかりにくいというふうに思っております。そして、具体的な事例といっても、大変難しい問題でありまして、まさにその時点で総合的に判断する、こういうことになるのだろうと思います。 <0128>=照屋寛徳君= せんだっても外務大臣と撃墜の可能性、安全だという保証について議論がありましたけれども、九条で、民間が協力をして、民間の飛行機で周辺事態のときに武器弾薬を運ぶ、具体的に想定されますでしょう。そういう場合のことですよ。どうですか。 <0129>=政府委員(大島正太郎君)= 民間航空条約に関連しまして解釈を御説明申し上げたいと思います。  政府が民間航空機を利用しまして米軍の武器弾薬の輸送をする場合であっても、そのことのみをもって直ちに当該民間の航空機が国際民間航空条約の対象外になるとかそういう話ではございませんので、その場合は、先ほど来大臣からお答え申し上げているとおり、航空機の所有形態、使用形態、使用目的等、具体的な事態に照らして個別総合的に判断されるということで、一概には申し上げられないと思います。 <0130>=照屋寛徳君= 防衛庁長官、在日米軍基地のうち、米軍の武器弾薬庫というのはどこにあるんでしょうか。 <0131>=国務大臣(野呂田芳成君)= 本件に関しましては、提供施設・区域内における米軍の管理運用にかかわることでありまして、当庁としては所掌事務上そのすべてについて掌握することは困難でございますが、現在、当庁として承知しておりますのは全国で十一施設、本土の川上弾薬庫ほか八施設と、それから沖縄嘉手納弾薬庫地区ほか一施設であります。  その他につきましても、提供施設・区域内において米軍が弾薬貯蔵施設として使用するものがあると推測されますが、その詳細については承知していないところでございます。 <0132>=照屋寛徳君= ガイドラインをつくって、今ガイドライン関連法を立法しようとするのに、しかも九条で武器弾薬を輸送するというのに、武器弾薬庫がどこにあるかも知らない、十分承知していない、そんなことで通らないでしょう。防衛庁長官、しっかり答えてくださいよ。 <0133>=国務大臣(野呂田芳成君)= 委員御案内のとおり、米軍の管理運用にかかわることについては防衛施設庁の所管でないことを御理解いただきたいと思います。 <0134>=照屋寛徳君= どこの所管ですか。外務省ですか。では、外務省答えてください。 <0135>=政府委員(竹内行夫君)= お答え申し上げます。  我々の承知しておりますところでは、先ほど来防衛庁長官も触れられましたけれども、例えば浦郷倉庫地区、秋月弾薬庫、川上弾薬庫、佐世保弾薬補給所、針尾島弾薬集積所、三沢飛行場、厚木海軍飛行場、岩国飛行場等にも弾薬庫があると承知いたしております。それから、辺野古弾薬庫、嘉手納弾薬庫地区というところが承知しているところでございます。 <0136>=照屋寛徳君= 防衛庁長官、せんだって私は、安保条約や地位協定上、沖縄に基地を置きなさいという根拠は何にもない、にもかかわらず沖縄に集中している理由について外務大臣からお伺いいたしました。あなたは外務省と全く同じだと言いましたが、改めて防衛庁としてはどう考えているかお聞かせください。 <0137>=国務大臣(野呂田芳成君)= 改めて申すまでもありませんが、沖縄県には全国にある米軍施設・区域の七五%が集中しており、沖縄県の面積に対し一〇%を占めておる現状でございます。特に、沖縄本島の中部の枢要な部分については施設や区域の多くが存在することから、その存在が沖縄の開発、振興、発展の制約になっていることは私どもも深く認識しているところであります。また、これに加えまして、米軍による高密度な訓練活動に伴う騒音の発生や事故の問題など多くの要因から、県民の方々の生活や経済活動を圧迫し、地域の自立的な発展への活力が阻害されてきたことは否めないと考えております。  したがいまして、当庁としては、このような実態を解消するため、SACO最終報告の内容を着実に実施することが沖縄県民の御負担を軽くするゆえんであるということで、一歩一歩着実にこれを解決してまいりたいと思っております。  なぜ基地が沖縄に集中するかということでございますが、米軍が沖縄に駐留する理由としては、地理的に米本土やハワイ、グアムよりも日本を含む東アジアの地域に近く、同地域に急速な戦力投入を行うに際しての迅速性が確保できる一方で、周辺諸国の間に一定の距離があること、また、練度、即応性の維持向上に必要な演習場及び後方支援施設が県内に存在していることが挙げられると思います。  そういうこととか、あるいは歴史的な経緯から見てもそういうふうに沖縄に基地が集中しており、私どもとしては、そういう意味で県民の皆さんに大変な御負担をかけておるので、前段で申し上げたとおり、ひとつSACO最終報告というものを確実に前進させてまいりたい、こう思っておる次第でございます。 <0138>=照屋寛徳君= 防衛庁長官、防衛白書で沖縄に基地を置く理由として、本土では得られない縦深性を確保できる地理上の利点と、こういうふうに言っていますが、この本土では得られない縦深性の確保というのはどういう意味なんですか。 <0139>=国務大臣(野呂田芳成君)= 防衛白書におきます縦深性についてでありますが、これは、沖縄は周辺諸国から一定の距離を有する地理的位置にあることから、沖縄に展開している米軍部隊に対する警戒及び経空脅威は東アジアの他の地域に展開している部隊に対するものとはおのずから異なるという意味で、沖縄の位置が有する地理的有利さについて述べたものだと考えます。 <0140>=照屋寛徳君= 防衛庁長官、あるいは外務大臣でしょうか、沖縄県民が海兵隊の削減あるいは撤退を強く望んでいる、そのことを日本政府が本気になってアメリカと交渉してほしい、そういう願いを持っていることは承知していますか。 <0141>=国務大臣(野呂田芳成君)= 国際社会におきまして引き続き大変な不安定要因、不確定要因がある中で、沖縄に駐留する海兵隊は、その高い機動力、即応性を通じ、在日米軍の重要な一翼を担っているわけでございますが、我が国の安全及び極東における国際の平和と安全の維持に不可欠の役割を果たしていると認識しております。  県民が海兵隊の削減や撤退について求めていることについては聞いておりますけれども、今申し上げたような観点から見ますと、現時点においてはその削減や撤退を求めることは考えておりません。 <0142>=国務大臣(高村正彦君)= 確かに沖縄に基地が集中しているわけでありますから、沖縄県民がそういう願いを持っているということはよく承知しているところでございますが、今、防衛庁長官が述べられたような理由で、直ちにアメリカ側にそういうことを要求するという考えは持っていないということでございます。 <0143>=照屋寛徳君= 防衛庁長官、私はたびたび言いますが、五十三年余ひたすら安保と防衛の犠牲を県民は強いられてきた。今あなたは、海兵隊は機動力、即応力があると。何を根拠にそう言っているんですか。沖縄に海兵隊が何名おって、仮に朝鮮有事を想定したときに、機動力、即応力を発揮できるような戦略体制ですか。 <0144>=政府委員(佐藤謙君)= 現在、沖縄には海兵隊は一万六千ないし一万七千所在している、こういうふうに認識しております。  それから、海兵隊につきましては、これは地上部隊と航空部隊が常に一緒に行動をとるというようなことで、非常に即応性の高い部隊であるというふうに認識しております。 <0145>=照屋寛徳君= 時間がありませんので、改めてこれはやりますけれども、政府は、県民がどんなにお願いしてもそれは今は求めないと言う。あるいは台湾海峡の有事、朝鮮半島の有事を想定しているかもしれませんけれども、沖縄に一万七千人とも八千人とも言われる海兵隊がおる。第三海兵遠征軍の一個師団を置いている。その一個師団で約六千名、運ぶ船がないじゃないですか。運ぶ船は佐世保にしかないじゃないですか。そんなに機動性、即応性と言うのなら、沖縄から九州やそこらに移したらどうですか。運べないんですよ。それを知っていますか。海兵隊を運ぶ船はないんですよ、揚陸艇は。最後にその一点だけ。 <0146>=政府委員(佐藤謙君)= 確かに、沖縄に所在します一つのMEUに対応いたします艦艇、これが佐世保にいるということはそのとおりでございますけれども、沖縄に所在します海兵部隊の移動につきましては、その艦艇だけに移動手段が限られるわけではございません。いろいろな対応手段も考えられるところでございます。 <0147>=照屋寛徳君= 福島委員に関連質問をお許しいただきたいと思います。 <0148>=委員長(倉田寛之君)= 関連質疑を許します。福島瑞穂君。 <0149>=福島瑞穂君= 総理、一年間警察に家族の電話も含めて盗聴し続けられた場合、どういう気がなさるでしょうか。 <0150>=国務大臣(小渕恵三君)= 仮定の問題についてなかなか答弁することは難しゅうございますが、法令に基づきまして対応すべきものは対応すべきものと考えております。 <0151>=福島瑞穂君= 国会に提出されている捜査のための通信傍受法案、略して盗聴法について議論したいというふうに思います。  緒方靖夫さんは、一年間盗聴され続け、東京高裁で国家賠償請求が認められました。一九九七年六月二十七日判決でこれは確定をしています。先日、二月二十五日、住民訴訟の判決が東京高裁で出ました。「本件盗聴行為は現職の警察官により、その所属する県警の警察活動の管轄区域外に所在する日本共産党の幹部自宅の電話を継続的に盗聴していたというものであり、しかも、それが合法的捜査活動であると認め得る証拠が全く認められないことに照らすと、警察組織の末端に位置する一部の警察官限りで敢行されたものであるとは考え難い」。組織的犯罪を警察がやっていたということを判決ははっきり認めています。  警察は違法盗聴をしていたことを認めますか。 <0152>=国務大臣(小渕恵三君)= 通信傍受法案についてかと思いますが、これは厳格な要件を満たす場合、裁判官の発する傍受すべき通信及び傍受の実施の対象とする通信手段を明示する令状によりまして通信の傍受を行い得るものとするものであることから、令状主義の趣旨を満たすものと考えております。  なお、ただいまの案件につきましては、詳細について法務大臣あるいはまた政府委員から答弁することをお許しいただきたいと思います。 <0153>=政府委員(関口祐弘君)= 先生お尋ねのいわゆる緒方宅事件でございますけれども、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査におきまして警察官による盗聴行為があったと認められたこと、またその後の民事訴訟におきまして同様の行為があったことが推認されたことは警察といたしましても厳粛に受けとめておりまして、まことに残念な事態であったというふうに考えております。  警察といたしましては、本件の反省を踏まえまして、今後とも国民の信頼を裏切ることのないよう厳しく戒めてまいる所存でございます。 <0154>=福島瑞穂君= 再度確認しますが、警察は違法盗聴を行っていたということをみずから認められるわけですね。 <0155>=政府委員(関口祐弘君)= ただいま申し上げたとおり、本件の反省というものを踏まえまして、いやしくも国民から疑惑を招くことのないよう適正な法執行に努めてまいる、かようなことでございます。 <0156>=福島瑞穂君= 端的に答えてください。  違法捜査を認めるのか認めないのか、それを答えてください。 <0157>=政府委員(関口祐弘君)= 再度のお尋ねでございまして、答弁でございますけれども、今申し上げましたように、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査におきまして警察官による盗聴行為があったということが認められた、またその後の民事訴訟においても同様な行為があったことが推認された、警察としてこうした事態というものを厳粛に受けとめる、そして反省をしたところでございます。  こうした反省を踏まえまして、今後とも国民の信頼を裏切ることのないよう厳しく戒めてまいる、かように考えるところでございます。 <0158>=福島瑞穂君= そういう事態になったことを反省しているかどうかを聞いているのではありません。  端的に答えてください。違法捜査があったことを警察は認めるんですか認めないんですか。イエスかノーかだけ今お答えください。 <0159>=政府委員(関口祐弘君)= 同じ答弁で恐縮でございますけれども、深く反省をしているということで御理解を賜りたいと思います。 <0160>=福島瑞穂君= 済みません。反省しているかどうかなどを聞いているのではありません。違法捜査があったと警察が認めるか認めないかについてイエスかノーかを今答えてください。 <0161>=政府委員(関口祐弘君)= 恐縮でございますけれども、答弁はただいまのとおりでございます。 <0162>=委員長(倉田寛之君)= 速記をとめて。    〔速記中止〕 <0163>=委員長(倉田寛之君)= 速記を起こして。 <0164>=福島瑞穂君= では、自治大臣にお聞きします。  違法捜査があったことを認めるのか認めないのか、イエスかノーでお答えください。 <0165>=国務大臣(野田毅君)= これは、今、警察庁長官が答弁を何遍か申し上げましたが、判決において、本件盗聴行為は現職の警察官によりその所属の管轄区域外で云々ということで、合法的捜査活動と認める証拠はないというようなことが判決で言及されております。今、東京地方検察庁の捜査においても警察官による盗聴行為があったと認められたということは警察庁長官が申し上げたとおりであります。  そういう点で、警察庁の立場としては正しいことをやったという思いがあったとはいえ、客観的に見て合法的捜査活動を超えておったというような結果が判決によって出ておるということであると思います。 <0166>=福島瑞穂君= 判決を聞いているのではありません。イエスかノーか、警察が違法盗聴をかつてやったかどうかについて今認めるのか認めないのか答えてください。 <0167>=国務大臣(野田毅君)= ですから、東京高裁がそのように判決で述べているということでありますから、合法的捜査活動であったということについては警察庁の主張はそれを通すことはできなかったということは客観的に認めざるを得ないということだと思います。 <0168>=福島瑞穂君= 人からどう言われたではなく、警察として今どう認識しているかについて端的に答えてください。 <0169>=政府委員(関口祐弘君)= お尋ねのいわゆる緒方宅事件でございますけれども、当時の警察の内部調査の結果におきましては、警察は組織として本件に関与したことはなく、職務命令を発したこともないと承知をしているところでございます。  しかしながら、一連の本件関係訴訟におきまして警察の関与に言及した判決もあり、結果といたしまして警察活動に疑惑を招くことになったということ、再三申し上げているように、警察としてこうした事態を厳粛に受け取っているということでございます。 <0170>=福島瑞穂君= 済みません。イエスかノーかを答えてください。 <0171>=委員長(倉田寛之君)= 速記をとめて。    〔速記中止〕 <0172>=委員長(倉田寛之君)= 速記を起こして。 <0173>=国務大臣(野田毅君)= 先ほどちょっと回りくどいように聞こえたかもしれませんが、先ほど申し上げたのは、本件盗聴行為は現職の警察官が行ったわけでありますが、そのこと自体は、現職警察官が行った行為自体は合法的捜査活動と認めるわけにはいかないということであります。ここまで言えばはっきりわかっているでしょう、合法的捜査活動ということではないということを言われておるということを認めておるわけでありますから。ただし、それに組織全体が云々という話ということとは別問題であるということをあえて申し上げておきます。 <0174>=福島瑞穂君= 警察が違法盗聴をやったかどうかを認めるかどうかについて答えてください。 <0175>=国務大臣(野田毅君)= 警察という言葉を一般的に使われる場合に誤解が生じます。したがって、具体的な個別の警察官が行った行為ということと警察という組織が行ったという行為ということとはおのずから違うということをあえて申し上げたいから申し上げておるのです。 <0176>=福島瑞穂君= 確定した東京高裁の判決は組織的犯罪であったと認めています。それを踏まえて、なお否定されるのでしょうか。東京高裁判決、先日、二月二十五日に出たのも組織的なものであったことを認めております。  ですから、きょう私はお尋ねしたい。そうでなければ、盗聴法の審理などには入れません。 <0177>=国務大臣(野田毅君)= 御指摘のような断定ではなかったと思っております、判決は。「疑うべき余地がある」ということの言及、判断はございますけれども、そういうお話しのような断定には至っていないということであります。 <0178>=福島瑞穂君= 「上司であった被控訴人山内及び金田が、その所掌する事務として、組織的にこれを指揮命令していたものと推認することが相当と判断されるのみならず、その上司で」云々とあります。 <0179>=政府委員(関口祐弘君)= 今、委員が読み上げられたとおりでございまして、「推認」ということ、それから私ども、大臣が御答弁申し上げましたように、「疑うべき余地がある」というふうな言い方でございまして、断定をしているということではないと私どもは理解をしております。 <0180>=福島瑞穂君= 裁判所からこれほど指摘をされ、ある程度客観的な事実がわかっているにもかかわらず、真っ正面から違法盗聴したということを認められないということがわかりません。  再度、最後にお尋ねします。どうですか、警察が違法盗聴したことをやはり認められないのでしょうか。 <0181>=政府委員(関口祐弘君)= 先ほども大臣が御答弁申し上げたとおり、警察組織として盗聴というふうなことをやっていたということは、私ども、まずあり得ないことでありますし、今後ともそうしたことはないものと明言をいたしてまいりたいと思います。 <0182>=福島瑞穂君= 警察が過去のうみをきちっと出して、もう二度と違法盗聴などしませんということであれば別ですけれども、違法な盗聴がここまで客観的に指摘されているにもかかわらずそれを認めないのであれば、盗聴法が成立した後どんな事態に一体なるでしょうか。  質問します。この緒方事件に関して第三者を入れてきちっと査察をし、レポートを提出するなどという行為はされたのでしょうか。 <0183>=政府委員(関口祐弘君)= 第三者を入れて云々ということでございますけれども、私どもの内部におきまして関係者多数から当時の状況を詳しく聞いたというふうに報告を受けております。 <0184>=福島瑞穂君= 報告の結果を教えてください。 <0185>=政府委員(関口祐弘君)= 先ほども御答弁申し上げたと思いますけれども、当時の内部調査の結果では、県警は組織として本件に関与したことはなく、また職務命令を発したこともないということでございます。 <0186>=福島瑞穂君= 当該警察官は懲戒処分あるいは刑事処分に付せられたのでしょうか。 <0187>=政府委員(関口祐弘君)= 当時、検察庁の方におきまして起訴猶予処分になったということでございまして、そうした疑惑を招いたということで、当時懲戒処分を受けたというふうに報告を受けております。 <0188>=福島瑞穂君= 懲戒処分の内容を教えてください。 <0189>=政府委員(関口祐弘君)= 戒告でございます。 <0190>=福島瑞穂君= 総理、こういう態度が改められない限り、盗聴法の審理には入れないというふうに考えています。不誠実ではないでしょうか。  済みません、総理、答えてください。 <0191>=国務大臣(野田毅君)= ただいま予算を御審議願っておる段階だと思っておりますが、少なくとも、盗聴法という言い方は私はいただくわけにはまいらないと思っています。この通信傍受という問題について、これはその法案審議の際にしっかりとあるいは法務省、私どもの方から御説明はさせていただきたいと存じます。  この問題を先ほど来個別の案件と絡めていろいろ御議論ございましたが、先ほども申し上げましたとおり、神奈川県における事案については少なくとも個別の事案として現職警察官が盗聴行為ということを行った、そしてそのことについては合法的な捜査を超えている事柄であるという意味で私どもはそのとおり申し上げておるわけであって、しかしそれがいわゆる警察の組織的な行動ではないと。組織としてはそういうことは今日までやっていないし、今後もやることはないということは先ほど来申し上げておるとおりであります。  同時に、今度の法案そのものは、少なくともむしろ今までのそういうやり方よりも、一定の重大な犯罪について、十分な嫌疑があって他の捜査方法では捜査が著しく困難であるというような極めて厳格な要件を満たす場合に初めて、最後の手段として今度は裁判官による審査の結果、厳格な審査を経た上で通信傍受は行うことができるという形になっておるわけであります。  特に昨今の国際的な国境を越えた組織犯罪に対して、あるいはマネーロンダリングの問題であったり、麻薬であったり、言うならサミットなり国際会議においても今は極めて大事なテーマになっておるという客観情勢の中において、私どもは捜査の実を上げるために、そういう意味で捜査当局が恣意的にこの運用をすることのないように、厳格な要件の中で裁判官による厳格な審査を経た上で限定された中で行うんだ、しかもその運用結果についてまとめて国会にも御報告を申し上げる、そのような内容の法案を提案しておるということは事実でありまして、今の盗聴という、盗聴法とかいうような角度からの物の言い方は私はいただくわけにはまいらない、そう思っています。 <0192>=福島瑞穂君= かつて違法な盗聴が行われたことが裁判で確定をしているわけです。そういう状況で、今後、警察が通信傍受を行うとしても、私たちはそれが果たして合法的に行われているかどうかという確信を持つことはできません。  総理、何よりも自浄作用がないという点が問題ではないでしょうか。イギリスでも今、黒人に対する差別事件、白人が黒人を殺した件で差別があったのではないかと大問題になっています。しかし、それについて第三者を入れ、きちっと問題解決を図っております。私が一番懸念をするのは、自浄作用が全くない、やったことについて真っ正面から認め、懲戒処分、刑事処分ができない、であるならば、通信傍受の法律が出た後、私たちはその違法な捜査が万が一行われた場合にきちっと手続ができるかどうか、非常に不安を持っております。  先ほど総理は令状主義についておっしゃいました。現在、捜索差し押さえの令状の却下率はどれぐらいか御存じですか。 <0193>=政府委員(林則清君)= 令状の却下率ということでございますけれども、手元に資料がないので正確なことはお答えできませんが、極めて少ないものというふうに考えております。 <0194>=福島瑞穂君= 〇・〇七%と言われています。これは令状主義と言えるでしょうか、総理。 <0195>=国務大臣(小渕恵三君)= 現行法に基づいて対処しておるものと思っております。 <0196>=福島瑞穂君= では次に、郵政大臣にお聞きいたします。  この通信傍受の法ができた後、NTTの中に警察が入って盗聴をするというふうに言われております。どうやって通信傍受をするか、その点についてお答えください。 <0197>=国務大臣(野田聖子君)= 福島委員の御質問は恐らく通信傍受法案についてのことだと思いますが、これは先ほど総理がおっしゃったとおりで、一定の要件を満たす場合に裁判官の発する令状により捜査機関が通信傍受することができるものとすること等を内容とするものであります。  通信傍受に関しましては、憲法二十一条二項の通信の秘密を侵す行為ですが、しかし憲法の保障する各種の基本的人権も公共の福祉の要請に基づき必要最小限の範囲でその制約が許されると考えられます。  さらに、これは弁護士の委員御承知のとおりと思いますけれども、従来の判例や学説においても、重大な犯罪の手段方法として通信が利用されている場合に、事案の真相を究明するため、厳格な要件のもとで必要最小限の通信傍受を行うことは憲法に違反するとは言えないとされているところであります。  郵政省は、電気通信の主管庁として、捜査機関による通信の傍受手続については、利用者の通信の秘密を不当に制約しないこと、電気通信役務の円滑な提供を阻害しないこと、電気通信の利用者や電気通信事業者の立場への一定の配慮が必要という観点から、法務省と調整を行ってきました。  この法案は、通信傍受の手続について、要件の厳格性、実施内容の必要最小限性といった観点から、通信の秘密保護に必要な配慮がなされているとともに、電気通信役務の円滑な提供についても配慮されているものと考えております。 <0198>=福島瑞穂君= 具体的にお聞きしたいんですが、警察がNTTの中に入るのでしょうか。 <0199>=政府委員(天野定功君)= お答え申し上げます。  先ほどから申し上げておりますように、令状に基づきまして、必要に応じて、電気通信の設備のありますNTTの施設に入ることがあり得ると思います。 <0200>=福島瑞穂君= 具体的にどうやって通信傍受をするのでしょうか。 <0201>=政府委員(天野定功君)= 技術的な細かいことまでは申し上げることはできませんけれども、令状に基づいて検察官あるいは司法警察員がNTTの施設に入りまして、責任者がそれを見まして、そして一定の傍受できる施設に案内しまして、そこで恐らく機器の接続等の案内があって、そして傍受に入るというふうに思われます。 <0202>=国務大臣(与謝野馨君)= 実は、この問題はずっと照屋先生とも一緒にやってまいりまして、電話局にも見学に行ったことがございますので、技術的なことだけ御参考までに御説明申し上げます。  裁判所の発する令状には傍受の対象となる電話番号が特定をされております。したがいまして、その番号だけに関しまして交換機から音を乗せている電気を取り出しまして、それを増幅させて聞いているということでございます。当然、録音機も持ってまいります。  ただ、警察だけでそういう作業をするのかといいますと、そうではなくて、そこには法律に定められている立会人を置くということになっております。 <0203>=福島瑞穂君= 刑事訴訟法上要求されている立会人は、この場合だれになるのでしょうか。 <0204>=国務大臣(与謝野馨君)= その場合は、NTTの職員にお願いする場合もありますし、地方公共団体あるいは消防署等にお願いをすることも、いろいろあります。  ただ、この通信傍受法が成立する前に、山梨県において覚せい剤事犯を捜査するために裁判所が特に令状を出した場合には、多分あの場合には消防署の職員に立ち会っていただいたと、そういうように記憶をしております。 <0205>=福島瑞穂君= その検証令状で有効とした裁判所の範囲は切断権があったと思います。  NTTの職員によく最近話をしますが、警察官を見張ることはできないというふうに言われています。NTTの職員は果たして警察官の電話をどうやって聞くのでしょうか。 <0206>=政府委員(林則清君)= 要所要所において立ち会いということになっておりますけれども、法に定められた要件のもとで立ち会いを行うということになっております。 <0207>=福島瑞穂君= 会話は将来発生するものですから、いろんな人の会話が入ります。無関係な会話もたくさん入ります。そのときの切断権など一切ありません。  要所要所にNTTの職員が聞くとして、警察が万が一違法捜査をやっている場合、どうやってチェックするんでしょうか。 <0208>=政府委員(林則清君)= 万が一違法捜査をということでございますけれども、私どもとしては、法律が成立しましたら、その法律に従いまして、万が一にもそのような違法な、要件を外れた捜査を行わないという前提に立っておりますので、これをもってお答えといたしたいと思います。 <0209>=福島瑞穂君= ですから振り出しに戻るわけです。違法捜査があったということを認められない警察が将来違法捜査をやった場合にどうチェックするんでしょうか。裁判所で十年かけて違法と言われて、まだこのざまです。刑事処分も受けられてはおりません。そんな段階で今、つまり問題なのは、違法な捜査をNTTの中で万が一やった場合に、それを法的に担保する制度がないことです。 <0210>=政府委員(松尾邦弘君)= この法案を所管しておりますのは法務省の刑事局長でございますので、御質問に私からお答えしたいと思います。  先生お尋ねのような疑問といいますか、そういう危険はないのかということにつきましては、この法案を策定する前に法制審議会でいろんな角度から論議されておりまして、そこでも議論があったところでございます。  そうしたことを踏まえまして、今法案の中には、傍受している電話の内容につきましてはこれをすべて記録いたしまして、これを原記録と言いますが、これを裁判官に保管していただくというような手続とか、あるいはその実施状況を記載した書面を裁判所へ提出するとか、さらには通信の当事者に対する事後の通知とか、そういったことでこの適正の担保を図っているということでございます。  先生御指摘のように、一刻一刻の電話の通話の内容を中断するというのはなかなか現実には難しい場合も確かにございます。そういったことにつきましては、記録をこれはすべてとっておりますので、事後のチェックを手厚くする、また当事者にも実施後、適当な期間を置いてこれを通知してチェックを受けるというようなことで担保いたしているところでございます。 <0211>=委員長(倉田寛之君)= 残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時開会 <0212>=委員長(倉田寛之君)= ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。福島瑞穂君。 <0213>=福島瑞穂君= この写真を見てください。(資料を示す)これは緒方靖夫さんのところで盗聴されていたもので、電信柱の上の端子函のものです。こういう手の込んだものを使って盗聴していたわけです。  それで、NTTの職員に聞きますと、一一三がそうですけれども、その管区内の電話は全部聞けるということだそうです。緒方さんの件もそうなんですが、もし警察官が違法捜査をした場合に、NTTの中でそれをチェックする担保の方法について教えてください。 <0214>=政府委員(松尾邦弘君)= 午前中にも、通信の傍受についての手続については非常に厳格な要件のもとに令状が発付され、また実施の手続についてもいろいろな担保措置がなされている、乱用にわたらないような担保措置がなされているということでございます。  今、先生のお尋ねの点につきましては、実施の段階になりますと、まず、その当該の通信傍受の機器を管理する者に対しまして令状を提示いたします。それから、職員の立ち会いを確保します。原則としてその通信機器を管理しているところの職員が立ち会うということでございます。  それから、傍受をしました記録につきましても、これはすべて記録をする、その上で、今申し上げました他の機関の立会人ということになりますが、立会人がこれを封印いたします。それを裁判官が保管するという二重三重の手続がなされております。  それで、傍受しました原記録も含めましてでございますが、記録をされたときから三十日以内に、原則としてでございますが、これは通信の両当事者ということになりますが、当事者に対しましてこういう傍受を行いましたよという通知をいたします。  そうなりますと、この通知の当事者、通信の当事者は傍受記録の自己の通信について、テープであればテープを聞く、あるいは閲覧をするとかあるいは複製をつくることができることになっております。その上でまた、この一連の手続につきましてはその当事者からの不服の申し立てがなされるということでございまして、具体的な実施段階におきましてはこのような何重ものチェックがかかるような仕組みになっております。  以上でございます。 <0215>=福島瑞穂君= NTTの職員が三百六十五日二十四時間張りつくことは可能なのでしょうか。 <0216>=政府委員(松尾邦弘君)= この法案を作成する過程で郵政省等関係の機関とも十分な協議をいたしました。原則として立会人を確保していただくということで了解をいただいております。  ただ、極めて例外的な事例かと思いますが、確かに原則十日間という長期間にわたります。そんなこともありますので、先生がおっしゃるように、二十四時間びっしり立会人が張りついておられるかどうかということについては、確かに御相談申し上げた機関から場合によると難しいこともあり得るというお話はございました。その際には、確かに職員のやりくりとかそういうことでそれが非常に難しい場合もあるという御相談もありましたので、例外的にはそういう立会人がいないということもあり得ることであると承知しております。 <0217>=福島瑞穂君= 午前中、要所要所に立ち会うとおっしゃいました。要所の判断はだれがどういう形で行うのですか。 <0218>=政府委員(松尾邦弘君)= それは、立会人も立ち会うからには責任を持ってこれを監視するといいますか、手続が実施されるのを見守るわけでございますので、立会人の判断ということに基本的にはなろうかと思います。  その際にも、どうしても立ち会いが難しいということになりますと、実施している捜査機関の者と協議をいたしまして適宜の方法をとるということになろうかと思います。 <0219>=福島瑞穂君= 立会人といってもNTTの職員で、立ち会わない時期もある。違法捜査が起きた場合の担保には全くならないというふうに考えます。  ところで、郵政大臣にお聞きします。  このチラシをお配りしているのですが、「韓国でのパニック」、韓国は、政府が新聞に広告を掲載しました。「安心して通話して下さい」「国民の皆様の私生活保護は、国民政府が追求するトップ課題です」という広告を打ちました。  通信の秘密が侵され、電話をかけるときに、もしかして盗聴されているのではないかと思われる社会は、まさに経済活動も不活発な、政府が信用されない社会だと考えます。いかがでしょうか。 <0220>=国務大臣(野田聖子君)= 先ほどの答弁で申し上げましたけれども、今回の通信傍受法案というのは、極めて要件に厳格性がありますし、また先ほど来御説明があるように、実施内容の必要最小限性というのが確保されているので、そういう心配はないということで理解しているところでございます。 <0221>=福島瑞穂君= 緒方事件で違法に収集されたテープは廃棄されたのでしょうか。 <0222>=委員長(倉田寛之君)= どなたに尋ねますか。 <0223>=福島瑞穂君= 警察庁長官です。長官、お願いします。 <0224>=政府委員(松尾邦弘君)= ただいまお尋ねの件につきましては、検察庁で事件を捜査いたしましてこれを処理しておりますが、その過程で、先生の今お尋ねのテープについても、恐らくそういうものがあるのであればそれは証拠として提出されていると思いますが、その処分がどうなったかということにつきましては、今手元に記録がございませんので、直ちにお答えはいたしかねるところでございます。 <0225>=福島瑞穂君= その御報告をお願いします。  盗聴の場合は、将来発生する会話をすべてとりますので、無関係な人の会話も全部入ります。ですから、そのとられたテープがどうなるのか。情報としては集積をしていくわけです。  御存じFBIのフーバー長官は、新聞にもありますが、四十九年間FBI長官として君臨をしました。彼の力の源泉は要人のファイルです。政治家の弱みを握る、情報収集するファイルを持っていて、彼に弱みを握られた政治家たちは、歴代大統領も含めて刃向かえなかった、そういう構造があります。  日本でいずれそういう状態が発生するだろう。ここにいる私たち政治家が政争の具、あるいは盗聴の対象にされることも非常にあるだろうと。ミッテラン大統領、それからハビビ大統領の盗聴、エリツィン大統領への盗聴、ウォーターゲート事件、すべて政治、政争の具と盗聴は極めて密接な関係を持っています。そういう意味では、むしろ私たち国会議員に一番関係があるのがこれではないかというふうに思っています。  それでは次に、男女共同参画社会基本法についてお聞きをいたします。  これが早く成立するようにということを望むわけですが、この法案には女性に対する暴力あるいは雇用の場における担保の方法がありません。  東京都が作成している男女平等推進条例案は、夫から妻への暴力についての取り組み、それから企業に対して男女平等を進めるための報告などを盛り込んでおります。この二点について、総理、いかがでしょうか。 <0226>=国務大臣(小渕恵三君)= 男女共同参画社会基本法案は、男女の人権が尊重され、かつ少子高齢化の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力のある社会を実現することが緊要であることから、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とするものであります。  したがいまして、女性に対する暴力の問題等、個別具体的な施策は同法案の中には具体的に規定はいたしておりませんが、同法案には、基本理念として男女の個人としての尊厳が重んぜられること等、男女の人権の尊重を盛り込んでおり、女性に対する暴力は当然のことながら許されるべきものではない、このように考えております。 <0227>=福島瑞穂君= 地方公共団体の計画策定が義務づけとなっておりませんが、この点についてはいかがか。 <0228>=国務大臣(野中広務君)= 男女共同参画社会の担当としてお答えをいたします。  今、この法案でそれぞれ地方公共団体の関与についてのお尋ねでございますけれども、本法案におきましては、委員御承知のように、都道府県においての計画の作成を義務化したところでございます。  他方、市町村につきましては、その規模がさまざまでございますので、こういう問題を画一的に策定を義務づけることは適当でないものと判断をいたしまして努力義務としたところでございますが、市町村におかれましても、本法案の趣旨にのっとりまして積極的に取り組みが進めていかれるよう期待をするとともに、今後また市町村関係との協議を進めたいと存じております。 <0229>=福島瑞穂君= 人権侵害の救済について独立性と強力な権限を備えた機関の設置が必要だと考えますが、この点についていかがですか。 <0230>=国務大臣(野中広務君)= この法案は御承知のように基本法でございますので、具体的にどのような措置を講ずるかにつきましては規定をいたしておらないところでございます。  男女共同参画社会の形成を促進いたしますためには苦情の処理等が重要でありますことは言をまたないのでございまして、国は政府の施策についての苦情の処理のために必要な措置及び人権が侵害された場合における被害者の救済を図るために必要な措置を講じなければならないと考えたところでございます。 <0231>=福島瑞穂君= 日本はILO百五十六号条約を批准しております。職業生活と家庭生活の両立、それから家庭責任を理由に雇用の場で差別されてはいけないことが要求されております。  この点について六条の規定は弱いと考えますが、いかがか。 <0232>=国務大臣(野中広務君)= 男女共同参画社会の形成のためには、家庭生活における活動とその他の活動とを両立させることが重要であるわけでございまして、この法案におきましてはその旨を基本理念として明記をしたところでございます。  また、そうした基本理念を生かしていきますために、国民の責任規定といたしまして、「国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならない。」という旨を織り込んだところでございまして、この規定に基づきさまざまな立場の国民が男女共同参画社会の形成に向けた取り組みを進めていくように期待をしておるところでございます。 <0233>=福島瑞穂君= では次に、MOX輸送容器の問題についてお聞きします。  MOXというのはプルトニウムとウランの混合燃料ですが、関西電力のMOX輸送容器も、プルサーマルが予定されている東京電力のMOX輸送容器も中古品だということが問題です。放射性物質の輸送容器は、設計承認申請、設計承認、容器承認申請などの手続を経て最終的に認められます。しかし、今回のはかつて一度廃止届けを出されたものをもう一度使うという点が問題です。MOX輸送容器としての容器承認申請では証明する資料が添付されていない。過去の段階においてはどうかわかりませんが、一たん廃止届けを出した容器を今回MOX輸送の容器として使う。この点について御説明願います。 <0234>=国務大臣(川崎二郎君)= MOX燃料輸送容器の問題でございますけれども、今お話ありましたように、平成七年に輸送容器の設計承認を行いました。平成八年三月二十六日、承認を行い、その後容器承認申請がなされた段階で輸送容器の中性子遮へい材の成分データ改ざんがございました。これは科学技術庁が中心になって検討され、結果としてこれが取り下げられた、そして今改めて設計承認を求められているところでございます。  この設計承認に関しましては、放射性物質等海上輸送技術顧問会の意見、学識者の意見を聞きながら科学的にどうであるかというところを詰める、これが大事なところだろうと思います。  今、委員が言われた、過去使った容器であるとかいう話ではなくて、出てきた容器が科学的に耐えられるかどうか、そこが肝心なところであろうと思いますので、御理解を賜りたいと思います。 <0235>=福島瑞穂君= 運輸省はどうやってこの容器が試験条件を満たしていると判断されたのでしょうか。 <0236>=国務大臣(川崎二郎君)= まだ判断いたしておりません。設計承認が求められ、今、先ほど申し上げました学識経験者の意見を聞きながらそれを詰めているところでありますので、まだ進行中でございます。 <0237>=福島瑞穂君= きょうは、通信傍受、こちらとして略称して盗聴法と言わせていただきましたが、について説明をしました。きょう問題になったことは、自浄作用が果たしてあるのかということです。きちっと過去に起きたことを分析、検討、何が問題かということを踏まえなければ、将来、違法捜査が起こり得る可能性も十分あるわけで、それを担保する制度がない限り盗聴法の審理には、通信傍受の法律には審理に入ることはできないというふうに考えます。  それで、今回、緒方靖夫さんの件で内部で調査をされたということですが、何が問題であったのかというレポートを私は寡聞にして見ておりません。この予算委員会にぜひその調査結果、きちっとしたレポートを提出してくださるように要求いたします。 <0238>=委員長(倉田寛之君)= ただいまの福島君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議することといたします。 <0239>=福島瑞穂君= 終わります。 <0240>=委員長(倉田寛之君)= 以上で照屋寛徳君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ───────────── <0241>=委員長(倉田寛之君)= 次に、月原茂皓君の質疑を行います。月原茂皓君。 <0242>=月原茂皓君= 自由党の月原です。  主として安全保障の問題を中心にお尋ねします。  まず、冒頭、防衛庁長官にお尋ねいたします。  中期防、これは十二年度で終わります。この中期防の中にTMDのこと、要するに弾道ミサイル、これについてはもう既に合意を見て共同技術研究が始まるという段階でありますが、もう一つ大きな問題として空中給油の問題があると思います。そして、その空中給油についての記述は、「結論を得、対処する。」となっております。TMDよりもっと強い表現であります。  そういうことからいって、常識的に言えば平成十二年度の予算でこれの結論を得たものを対処するというふうに思われるんですが、長官の御意見をお願いします。 <0243>=国務大臣(野呂田芳成君)= 最近の航空軍事技術の進歩に伴いまして、レーダーが目標を発見してから戦闘機が地上を発進して要撃していたのでは間に合わない、こういう場合が生じますために、今、委員御指摘のように、戦闘機による空中警戒待機、いわゆるCAPの必要性が高まっており、防衛庁としては、空中給油機能の導入はこのようなCAPの支援等のために有用なものだと考えているところでございます。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  この空中給油機能につきましては、月原委員がよく御承知しておられるとおり、前々中期防衛力整備計画、これは昭和六十一年から平成二年度まででございましたが、から既に研究、検討されてきたところでありますが、今お話がありましたように、現中期防計画、平成八年から十二年度までの策定時におきまして、空中給油機が空中給油機能とともに輸送能力をも兼ね備えていること等も考慮し、なおまた空中給油機能の具体的な運用のあり方や費用対効果等に関する検討を行うことが必要であると考えられたため、現中期防におきましては、「空中給油機の性能、運用構想等空中給油機能に関する検討を行い、結論を得、対処する。」という、ただいま委員が御指摘のとおりに書かれているわけであります。  現在、防衛庁としては、かかる中期防の考え方に従いまして、内部において鋭意検討を行っているところであります。まだ最終的な結論が得られない段階でございますが、本件につきましては、引き続き所要の検討を行い、結論を得た時点で適切に対処してまいりたい、こう考えております。 <0244>=月原茂皓君= 大臣の最後の言葉でありますが、念を押しますと、中期防衛力整備計画は十二年に終わる、だからことしの夏、予算要求するぐらいまでにこの問題を検討しなければ、私は中期防の大きな欠落になる、こういうふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  さて、外務大臣にお尋ねいたします。  KEDOです。KEDOの前提となる米朝枠組み合意というものが一般には、何でも、ミサイルも含めて、それから大量の殺りく兵器も含めて、そういうものが対象になっておるような誤解もありますから、ここで米朝枠組みの合意の対象は何か、どういう考え方でそういう枠組みができたんだということを簡単に御説明願いたいと思います。 <0245>=国務大臣(高村正彦君)= 北朝鮮の核兵器開発問題は、国際的な核不拡散体制にかかわる問題であるとともに、我が国自身が直面する安全保障上の重大な懸念ですが、米朝間の合意された枠組みは、この核兵器開発問題に対処するための最も現実的な、かつ効果的な枠組みであると承知をしております。 <0246>=月原茂皓君= その枠組み、九四年十月ですが、それ以前に少なくとも核を持っておったんじゃないか、プルトニウムを持っておったんじゃないかということがいろいろ言われております。  そこで、お尋ねいたしますが、以前に生産された核が存在するとすれば、米国なんかの見方から見てどの程度のものを持っているのか。また、北朝鮮の生物化学兵器の現状、これは今まで国会でも議論がありましたので、議論というか答弁がありましたので、簡単で結構ですがお話し願いたいと思います。 <0247>=国務大臣(高村正彦君)= 現在、北朝鮮が核兵器を保有しているということは確認されておりません。米国の政府機関の中には、北朝鮮が合意された枠組みの署名以前に、少なくとも一個、恐らくは二個の核兵器を製造可能なプルトニウムを生産したと分析するものもありますが、北朝鮮による核兵器の保有について確たる証拠を明らかにしているものがあるとは承知しておりません。  それから、生物化学兵器の現状でありますが、我が国政府は、北朝鮮が生物兵器や化学兵器を保有しているとの確度の高い情報に接しております。米国政府による分析の中に、北朝鮮は多種の化学剤を製造し使用する能力を有するとともに、限られた量ながら生物兵器を生産する能力も有する旨指摘するものがあります。 <0248>=月原茂皓君= 最近言われておる地下核疑惑、金倉里のことが言われておりますが、これは米朝合意の違反となるんですか、あるいはどういう関係になるんでしょうか。 <0249>=国務大臣(高村正彦君)= 北朝鮮は金倉里の地下施設において、合意された枠組みに違反する活動を行っている疑いがあり、まさにそれゆえに現在米朝間で協議が行われており、米国は北朝鮮に対しこの施設への訪問を要求しているわけであります。我が国は、このような米国の努力を支持しており、この協議を通じ、北朝鮮が合意された枠組み違反の疑いを解消することを強く望んでいるということでございます。 <0250>=月原茂皓君= 今の外務大臣の答弁では、これは米朝枠組み合意の違反だと、こういうふうにとらえられるわけです。あるいはそれはグレーゾーンだというふうになるのか、そこらのところが今後米朝合意のときの非常に大きな焦点になってくるんじゃないか、こういうふうに思うんです。  さて、NPTとIAEAを脱退するときの手続というのはどういうふうな方法があるのか、そして現在北朝鮮はNPTとIAEAについてはどういう立場に立っておるのか、そのことをお願いします。 <0251>=国務大臣(高村正彦君)= 北朝鮮はNPTの締約国であります。また、北朝鮮は一九九四年六月十三日、IAEA憲章の寄託国政府である米国政府に対し、IAEAから脱退することを通告し、同日、加盟国の地位を失っているわけであります。  NPT第十条は、「各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。当該締約国は、他のすべての締約国及び国際連合安全保障理事会に対し三箇月前にその脱退を通知する。」旨、規定をしております。また、IAEAについては、IAEA憲章第十八条Dに、加盟国は、寄託国政府たる米国政府にあてた書面による脱退通告により、IAEAから脱退することができる旨、規定をしているわけであります。 <0252>=月原茂皓君= 今の外務大臣の御答弁で明らかなように、NPT等も周りの国が非常に我々にとって脅威になってきたと言った途端に脱退することができる、だからNPTに入っておるからといって安心はできない、私はそのように思います。当然同じ御意見だと思います。  それでは次に、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、弾道ミサイルとよく言われているもの、弾道ミサイルというのはどういう利点があって登場したのか、そのことを教えていただきたいと思います。 <0253>=国務大臣(野呂田芳成君)= これはもう釈迦に説法のたぐいでございますが、弾道ミサイルというのは、一般に、発射後数分の間推進ロケットで打ち上げられ、その後みずからの慣性によって放物線のような弾道を描いて目標に向かって飛んでいくミサイルを言うと思います。  弾道ミサイルは、戦闘機等と比較して極めて速い速度で高高度を飛翔し、着弾するまでの飛行時間が短く、その際、極めて高い進入角度で落下してくるとともに、レーダーが発見する電波を反射する面積が小さいために発見することは極めて困難であるといった特徴を有しております。  こうした特徴を有する弾道ミサイルは、例えば核兵器とか生物化学兵器とか化学兵器といった大量破壊兵器の運搬手段となり得るものであり、大量破壊兵器を搭載した弾道ミサイルが発射された場合には、御指摘のように大規模な兵力を用いることなしに他国に対して大きな破壊効果を与え得るものと、そう認識しております。 <0254>=月原茂皓君= 今、防衛庁長官のお話のように、そういう条件を持っておるから、むしろそうお金をたくさん持っていない国、そういうものにも適した兵器であります。そしてまた、大量破壊兵器と結合したときには非常に大きな効果を発揮するものであるというふうに防衛庁長官のお話からうかがえるわけであります。  さて、北朝鮮のノドンそれからテポドンの開発、それから配備状況とミサイル輸出の現況。さらには、この前のテポドンの発射が、米国がかつての世界各国の経験から思ったより、非常に速いスピードでこれが実現しておる。これはどういう背景があってそういうふうにスピードが上がってきたのだろうか。そういう点について、防衛庁長官の御意見を伺いたいと思います。 <0255>=国務大臣(野呂田芳成君)= 北朝鮮ミサイルの開発や配備状況等につきましては、これまでも何度か本委員会でもお話ししておりますので省略させていただきます。  このミサイルの開発や配備が予想より速いテンポで進んでいる理由もしくは背景についてでございますが、先般のミサイル発射においても示されましたように、北朝鮮はミサイル開発を急速に進展させていると見られておりますが、その背景には、一般に各種の外部からの資材、技術の流入等も推測されるところであります。  こうした技術拡散の問題に対しては、ミサイル輸出管理レジーム、MTCR等による対応が極めて重要であり、我が国を含め国際社会全体で適切な対応をしていく必要があると考えております。 <0256>=月原茂皓君= 今の防衛庁長官のおっしゃった外部から入っておるということについては最近いろいろなところで見かけるんですが、くしくも、イラク、イラン、パキスタンの例を挙げると、昨年の四月に発射実験を行ったガウリ、そしてイランでは昨年七月に発射実験を行ったシャハブ3、これは北朝鮮のノドンミサイルだとの指摘もあるぐらいであります。  ということは、ある雑誌の言葉をかりれば、ミサイルコネクションだと。そういうものがお互いに技術の交流をしながら、まず旧ソ連の技術がイランに入ってくる。そして、勤勉な、技術水準の高いのが北朝鮮である。それらが中心になってまたその北朝鮮を経由してパキスタンに行くと、そういうふうなことすら言われておるわけであります。そういうふうな大変な、それぞれの国の特色を生かしながら、水面下で協力が行われておると見るのも一つの大きな見方だと私は思います。  そこで、外務大臣にお尋ねしますが、今、防衛庁長官がおっしゃったミサイル輸出管理レジーム、MTCRというものについて、北朝鮮のミサイル開発、配備、関連機材の輸出を規制する方法はどういうのがあるんだと。そして、今申し上げたミサイル輸出管理レジームにもし入ったとしても、これの限界というか、これの対象はどういう話なんだということを外務大臣にお尋ねしたいと思います。 <0257>=国務大臣(高村正彦君)= ミサイル輸出管理レジーム、MTCRでありますが、この参加国は北朝鮮のミサイル開発を支援しないように、ミサイル関連物資・技術の輸出について特に厳格な審査を行うこととしているわけであります。  我が国としては、米朝ミサイル協議における米国の努力を支持すると同時に、米韓等と緊密に連携しつつ、さまざまな方法によって、北朝鮮に対しミサイルの発射、開発、配備及び輸出等の活動を行わないように求めているわけであります。 <0258>=月原茂皓君= 今まで外務大臣、防衛庁長官にお尋ねいたしましたが、それは結局、KEDOがうまくいっても、それ以前の核のことについてはコントロールできない、破棄できないと。不拡散だと、これから先の開発をやめさせたのであって、それまでに開発したものがもしあるとするならば、今、外務大臣もおっしゃった、あるかないかわからぬけれども、一、二発分プルトニウムがあるとすれば、それはどうなるんだと。依然として私は存在すると思う。  そしてもう一つ、ミサイルの規制にしても、この間北朝鮮がテポドンを打ち上げたときに、おれのところの国の権利じゃないか、こういうふうに言っている。ということは、ミサイルをもう既に、今までの国会で答弁されましたが、ノドンなんかも配備されておる。そうすると、これは何ぼミサイル輸出管理レジームでやろうとしたって、それは違う話なんだ。外国に出したらいかぬのだ、自分の国のものについてはさわることができるということを言うと、結局日本の国にとってはそういうものが順調にいっても大変な問題を残しておると。  この前、ちょっと新聞で読んだんですが、町村政務次官もアメリカの方にその旨の話をしたということが出ておりましたが、過去のものも含めてやってくれよというようなことを言ったというふうなことを私は新聞で読みましたが、そのとおりだと思うんです。  だから、それぞれの国の国益が違うわけで、もちろん共通のことについて力を入れることは大切だと思いますけれども、我が国自身が一番大きな問題を抱えておるという認識が私は必要でないかなと、こういうふうに思います。  そこで、こういうふうなことの現状を踏まえて、これにどういうふうに対処していくか。日米安保の問題もあるでしょう、それから自衛隊の欠落した機能あるいは自衛隊に新しい力を付与するという方法もあるでしょう。こういうものに対してどういうふうに考えておられるのか。  外交に絡みますから外務大臣ももちろんですが、それから防衛庁長官、最後に総理にその決意を述べていただきたいと思います。 <0259>=国務大臣(高村正彦君)= さまざまな面で外交努力をして北朝鮮が建設的な対応をするように努めていくことは当然でありますが、そういったことを米国、韓国と特に協力しながらやっていきたい。国際社会全体と協力するわけでありますが、そういうことをやっていきたいと思っていますし、日米安保条約の信頼性を高めていかなければなりません。  そういったことから、今国会に提案している周辺事態安全確保法案、これはもちろん特定の地域、特定の国を対象としたというものではありませんけれども、日米安保条約の信頼性を高めるためにそういったこともきっちりやっていかなければいけないと、国会に対してもお願いする次第でございます。 <0260>=国務大臣(野呂田芳成君)= 冷戦終結後も依然として、委員御指摘のとおり、不安定性と不確実性が存在している中で、我が国の平和及び安全に関する重要な影響を与える周辺事態に対する日米協力の枠組みを構築しておくことがまず大変大事なことだと考えます。  御指摘のとおり、今国会に提出している周辺事態安全確保法案は、日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものであり、政府としてはまずこの早期成立が極めて重要と考えております。  また、政府としては大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散状況にかんがみまして、弾道ミサイル防衛、BMDにつきまして我が国国防政策上の重要課題と考えまして、昨年十二月二十五日の安全保障会議の了承を経て、政府として平成十一年度から弾道ミサイル防衛に係る日米共同技術研究に着手することを決定したところであります。  こういうものを総合的に整備しながら対処していくべきだと考えております。 <0261>=国務大臣(小渕恵三君)= 外務大臣並びに防衛庁長官から御答弁申し上げたとおりでございます。  備えあれば憂いなしというのは自国を守る最大の問題だろうと思っております。そういった意味におきまして、みずからの国をみずから守るという確固たる信念とともに、日米における信頼性を高めまして、そして我が国の安全、また周辺地域における我が国に対する攻撃その他が起こり得ないように万全を期していくことが政府の責任と心得ております。 <0262>=月原茂皓君= 今責任ある答弁いただきましたが、日米防衛協力の指針というものの中にも、この間答弁にもありましたが、「自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。」と。こういう非常に大きな、私はそういう意味で日米関係はさらに緊密にしておかなければならないな、こういうふうに思いますが、ただ、よくよく考えていただいたら、自衛隊についての今後の整備の仕方というものもおのずから姿が浮き上がってくるんじゃないかな、こういうふうに思っております。  過去の話ですが、一九八一年六月七日、イスラエル空軍はバグダッド近郊のオシラック原子炉を奇襲攻撃した。これを完全に破壊した。バビロン作戦と命名すると。F16四機編隊で二つ、八機。F15二機編隊三、計六。F16は基地から六百マイルの目標に向かって、ヨルダンを迂回して、ヨルダン、サウジアラビア、イラクのレーダーを避ける細い回廊を百フィートの超低空飛行で行った。そして、攻撃した後は四万フィートの高高度でヨルダン領空を通って帰投した。無傷で帰ってきた。  こういうことはいろいろな背景があることでしょうが、やっぱり国を憂える、民族の生存のためにはというこの決意は私は見なければならない、こういうふうに思います。そして、もしこのことがなかったら、クウェートにイラクが侵攻したときに、核を持って侵攻した場合にはどういうふうな結果になっていたのかと、そういうふうに思うわけであります。  次に、信頼醸成のことについてお尋ねいたします。  防衛庁長官にお尋ねします。  東南アジアからの留学生の受け入れ状況及び最近の施策を御説明願いたいと思います。 <0263>=国務大臣(野呂田芳成君)= これももう委員がよく熟知のとおりでございますが、防衛庁は、自衛隊法百条の二の規定に基づき、防衛大学校、防衛研究所、各自衛隊の幹部学校等において外国人留学生の受託教育を実施しているところであります。  東南アジア諸国については、これまでにタイやシンガポールなど五カ国から約三百五十名を受け入れたところであります。このうち、平成十年度についてはタイ、シンガポール、インドネシアから二十三名を受け入れたところであります。  外国人留学生の受け入れは、留学生との交流を通じ、日本人学生の国際的視野を広げ自己啓発を促すという教育効果が大変大きく期待されているわけでございますが、それだけではなく、我が国の防衛政策とか自衛隊の実態などに関する留学生の理解と認識を深めさせ、我が国と留学生派遣国との間の相互理解や信頼関係を増進させる上で大変大きな意義や効果を持つものと考えております。このような観点から、防衛庁では留学生の受け入れを積極的に進めているところであります。  これまでに、授業料の徴収免除とか防衛大学校本科への留学生に対する食事の無料支給とか、あるいは宿舎費の徴収免除、自衛隊の病院等における医療費の徴収免除等のほか、平成十年度から教育訓練履修給付金の支給など、留学生の受け入れ基盤の整備を行ってきたところであります。  平成十一年度予算につきましては、陸海空各幹部学校、統合幕僚学校及び防衛研究所における外国人留学生のための家族用宿舎の建設に係る経費を計上したところであります。 <0264>=月原茂皓君= 今、防衛庁長官からのお話のように、東南アジア諸国の人たちを防衛大学校に受け入れる、幹部学校、研修所にも受け入れる、私は、非常にいいことですし、また長官がおっしゃったような効果は非常に大きいものと思います。  その延長線上の問題ではありませんが、私は最近このように思うことがあるんです。  東南アジア諸国の若手軍人が日本を知るために、またお互いが、アジア全体の若い軍人たちが個人的な信頼関係を築くために、指導層になるような人たちの短期研修を、日本がその場を提供して、もう旅費も全部持つ、そのくらいのことをやったらどうかな、こういうふうに思うわけであります。それは、東南アジア諸国は特に軍人の方々が将来の各層の指導者になっていく可能性が非常に高いからであります。  そして、私が昔インドネシアに行ったころ、ちょうど田中総理が行かれたときに自動車が焼かれたあの後ぐらいに行ったのですが、そのときに迎えてくれたのが向こうの一流の歌手だというのですが、歌ってくれたのが「ブンガワンソロ」と「愛国の花」だった。「愛国の花」という歌は、私は初めてそれで知ったわけで、こっちに帰ってきてからよく訓練したのですが、とにかく日本のことについて、いろいろなことがあったかしらぬけれども、日本人というものを知り、心を通じている人たちがたくさんおった。しかし、今考えたら、その人たちはもう年齢が来て、もうこの指導層からかわってしまった。若い人たちがどんどん出てきている。  御承知のように、最近防衛庁の方にも各国の、例えば中国とかそういうところの方が来られますが、その国防長官、国防大臣なんかは、やっぱりパーロ軍のときからの長征から鍛えた人間だから、腹は据わっておるんでしょうが、技術的な問題はなかなか、大局の判断はできるけれども、そうでない。しかし、ついてくる人々がほとんど米留しておる。そして、トップグループがついてきておる。そういうことを考えたときに、韓国でもそうだしインドネシアでもそうだし、周りの国々で軍人の優秀な連中は全部米国へ留学しておる。それはそれでいいんですが、そういう人たちの中から日本に短期研修に来てもらう、そしてお互いに知り合う、そういうことが私は大切でないかなと、こういうふうに思うわけであります。  この前、マクナマラさんが出たベトナムの戦った相手方との会があって、それをたまたまテレビでやっておりまして、見せていただいてびっくりした。プレイクの攻撃は、アメリカ的に言ったら、中央から指令が出て第一陣が来たんだ、後から続々来ると、こう思っておった。ところが、この間の会議で向こうが言ったのは、いや、そうではありません、あれはもう統制のきかない小さいやつがちょっと行っただけですと、こういうふうに。そういうことによってあの和平が非常におくれたというようなことからいっても、いろいろなパイプをつくっておかなきゃいかぬ。  日本の国は、幸いに自分の国自身が東南アジア諸国に自分の立場を説明しなければならない、そういうことから考えたら、そういう場を提供できないかな、こういうふうに思っておりますが、防衛庁長官と総理大臣に御答弁をお願いして、私の質問を終わります。 <0265>=国務大臣(野呂田芳成君)= 防衛庁としては、御指摘を踏まえ、相互理解や友好親善を推進するという観点から、外国人留学生施設の有効活用等により、東南アジア諸国の若手軍人を含めた諸外国からの留学生の受け入れ、今、委員御指摘のとおり、短期研修をぜひ推進してまいりたいと思っております。また、その宿舎等の手当てについても万全を期したいと思っております。 <0266>=国務大臣(小渕恵三君)= 東南アジア諸国のかつての軍人が日本を知り、お互い個人的な信頼関係を築くことは、我が国の安全保障やアジアにおける立場を高める上でも重要だと考えております。  特にアジアの中では、そう言ってはなんですが、それぞれの国の中で優秀な若者が軍の中に入って力をつけてくるというケースがございます。そういった意味でも、そうした方々が日本をよく知るということは極めて大事なことだと思いますので、防衛庁長官もお話ありましたが、防衛庁のみならず、アジアとの友好親善という立場からもそれぞれ日本の実態を知っていただく、そのために努力をしたいと思っております。 <0267>=月原茂皓君= どうもありがとうございました。  それでは、関連で入澤議員にお願いします。 <0268>=理事(竹山裕君)= 関連質疑を許します。入澤肇君。 <0269>=入澤肇君= 私は、各省各般にわたる政策の構造的改革を促進するという視点から御質問申し上げたいと思います。  まず、経済戦略会議の報告も出ましたし、それからその前には生活空間倍増計画、さらには産業再生計画、これが閣議決定されているわけでございます。この三つで一応構造改革を示す文書がそろったのではないかというふうに私は考えます。  しかし、構造改革と一口に言いましても、業界の現状によって違います。農政と福祉では全く異なります。しかし、共通な項目としてそれぞれに貫かれているものは、例えば、民主主義を一層徹底させる、それから生活者の視点、消費者の視点を重視する、それから民間でできるものは民間で徹底して行う。生産者へのこれはシグナルにもなるわけであります。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  それから、規制が必要な場合でも必要最小限にする。それからさらに、一部の分野によってはグローバルスタンダード、これがどこまで貫かれるかどうかという視点もございます。それからまた一方で、ジャパニーズスタンダード、これも主張し得る分野もございます。こういうふうな共通の視点からの政策の見直し、検討が要求されているのじゃないかというふうに私は思うわけであります。  きょうは、そういう中で、最も基本的な立法政策につきまして各般の御質問を申し上げたいと思います。  きのう時点で調べたところによりますと、今国会の法律の提出件数は、衆議院に閣法で五十七、議員立法で三本、参議院に閣法で十二本、それから議員立法で九本、合わせて八十一本の法律が出されております。一本が成立していると。  私は、自由党の各部会に出まして、各部会に出される法案を聞いておりまして、今国会は、ガイドライン関連法だとか、あるいは自自連立によります行政改革に関する法律とか、たくさんの重要な法案を抱えているにもかかわらず、百二十数本に上って非常に法律が多い。しかし、よく聞いていますと、法律としては当然なんでしょうけれども、あるべき姿、それからレベルという観点からしますと、疑問になる点も多々あるわけであります。  例えば、法律事項がないのに無理に法律事項を捻出して、そして法律に仕立て上げている。あるいは実績の評価がないにもかかわらず、実績の評価を十分しないまま期限が来たから単純に延長する。あるいは行政改革の関連の法案につきましても、十分な業務の見直しがないまま合体させる。あるいは基本法につきましても、実定法の裏づけが十分に念頭にないまま基本法として打ち出される。いろんな疑問を感じていたわけでございます。  そこで、まず法制局長官にお伺いしたいのでありますけれども、ちょうど主計局長が夏の予算編成の前に主計官を集めまして、来年度の予算編成の重点事項はどうか、それから査定に当たる態度はどうかということを訓示しますけれども、法制局長官といたしましては、その時々の通常国会の前の法案審査に当たりまして何か特別な訓示をされるのかどうか、お聞きしたいと思います。 <0270>=政府委員(大森政輔君)= お尋ねの件でございますが、法制局におきましては通常国会が繁忙期でございまして、毎年一月、御用始めが終わりますと早々に法律案の提出予定省庁の文書課長等から法律案の内容の説明を受けます。これが事始めということになるわけでございます。  そこで、その聞き取った内容を踏まえまして、私主催の幹部会を開くことになっております。通常全一日、時には深夜にわたるまで法律案の内容、そしてそれの含んでいる問題点、これを提出予定法案ごとにそれぞれ全般的に検討いたします。そして、その上でまさに用意ドンということで各参事官のもとで最終的な審査が行われる。大体毎年そのような手続を繰り返しているところでございます。 <0271>=入澤肇君= 毎日毎日の法律審査に当たりまして参事官が大変な御苦労をされているということは、私は心から敬意を表したいと思うのであります。  そこで、当然のことながら、毎年の法律の審査に当たりましては、法律事項がないものはもちろんでございますけれども、ただいまの内閣の重点項目、重要政策であります規制緩和あるいは地方分権、構造改革、こういうふうな基本方向に即していないもの、あるいはもっと即するようにするもの、あるいは予算措置で奨励すれば済むもの、こういうふうなものについては重点的にとにかく前向きの形で法律をつくれ、それにもとるものは可能な限り各省に差し戻して各省でもう一回内容を検討してもらえというふうな指導がなされてもいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。 <0272>=政府委員(大森政輔君)= ただいま御指摘の点、一々ごもっともでございます。  ただ、そのようなことを毎年その都度指摘しなくとも、参事官においてもうそれは重々理解して、大体法案の相談と申しますのは、その前年の秋ぐらいから下相談が始まりまして、いろいろな観点からの検討を重ねた上、先ほど申しました翌年の文書課長会議に至るわけでございます。したがいまして、そのあたりはその都度私が申さなくとも、各担当参事官においては十分留意して審査しているはずでございます。  これは一般論でございますが、特に委員御指摘の規制緩和との関係について若干申し上げますと、御承知のとおり、最近では平成十年三月三十一日に閣議決定がございまして、これは規制緩和推進三カ年計画と題する規制緩和計画でございますが、この中でも「規制の新設に当たっては、原則として当該規制を一定期間経過後に廃止を含め見直すこととする。法律により新たな制度を創設して規制の新設を行うものについては、各省庁は、その趣旨・目的等に照らして適当としないものを除き、当該法律に一定期間経過後、当該規制の見直しを行う旨の条項を盛り込むものとする。」という基本的な方針が内閣から示されまして、法制局といたしましても、このような趣旨、目的に照らして相当としない事情があるかどうかということを含めて、厳格な審査を総務庁とともに行っている次第でございます。 <0273>=入澤肇君= 今の長官の御答弁は、私も長官の立場で見ればそうだと思うんです。しかし、私もかなりの法律をつくってまいりましたけれども、必ずしもそうなっていない、実際の運用の現場では。もしそういうことであれば、昭和二十九年からずっと続けている法律、また今度の国会に延長法として出てまいります。単純な延長であります。  こういうものについては、何か工夫があっていいのではないか。五年間の実績を踏まえてさらにその次の五年間は何をするんだというふうなことも、各省がもちろん検討して法制局に持ち込んで十分に説明するマターでありますけれども、法制局の方も単純延長は認めないよと、単純延長そのものは法律事項じゃありませんから。そのような指導指針が示されていいのじゃないかと思うんです。  さらに、基本法の世界について申しますと、基本法というのは、各省にわたる基本法でございます。例えば農業基本法で言えば、これは農林省の基本法じゃございません。農林省だけじゃなく政府全体の基本法であります。こういうものにつきまして、私は一度内閣ベースで十分に法案の中身につきまして検討して、そして各省に協力を要請すると。  聞きますと、今、九日の閣議に出すべく連日担当者が徹夜でやっているそうですが、徹夜する大部分は各省の設置法にどう抵触するか、縄張り争いはかなり熾烈だというふうなことを聞いております。こういうものは、内閣ベースでまず重要法案として位置づけて、そして内閣の方から各省に十分なる協力を、円滑な制定のための協力を、成立のための協力を要請するというふうなぐあいがあっていいんじゃないかと思うのであります。これは意見として申し上げておきます。  ところで、現在、日本の法律の数というのは何本あるんでしょうか。さらに、このうち実効性を失っている法律は何本ありますか。もし、わかっておりましたら教えてください。 <0274>=国務大臣(中村正三郎君)= お答えいたします。  昨年末現在で把握している慶応三年以降の法律の総件数は四千百四十三件でございますが、廃止等により明らかに効力を失い、または執行を停止されているものは二千二百十七件でございまして、実効性を喪失したものとして取り扱っている現行法令は二百十一件でございます。その意味で、現在効力を有するものとして取り扱っている法律の数は千七百十五件でございます。  ただ、法律が効力を失ったか否かということは、各法令の所管省庁において判断されることでありますので、今ここに挙げました数字は法令編さんを法務省が担当します観点から実効性を喪失したものとして取り扱っている現行法令を引いたものでございます。その数字は千七百十五件でございます。 <0275>=入澤肇君= 大変ありがとうございました。  もう間もなく二十一世紀を迎えるわけでございますけれども、ここら辺で二十世紀の影を引きずらないで新しい世紀に向けて、この法律制度につきましてもさらに一層実効性を失っているかどうかの総点検をして臨むべきではないか。そういうことをいいますと、ことしが最後のチャンスなんです、来年の通常国会に向けて総点検してもらうわけでございますから。そこで、きょう私はこういう質問をしているわけでございます。  例えば、臨時金利調整法というのがございます。これは昭和二十二年にできました。その内容は、当分の間、金利調整審議会を置くと。当分の間ということで五十年以上続いているわけです。周辺地域の法律じゃありませんけれども、周辺という概念に地理的概念が含まれないということはあり得ない、これは日本語として。しかし、当分の間というので、五十年が当分の間と言うことはできるかというと、私はちょっと疑問なんです。当分の間で五十年以上も一つの法律が続く、あるいは臨時ということで続くということは、私は問題があるんじゃないかと思うんです。  したがいまして、こういう臨時金利調整法、これは実効性を失ったとは恐らくカウントされない法律だと思うんですけれども、こういうことも含めて、行政改革の視点から政府全体として見直しを行うべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか、総務庁長官。 <0276>=国務大臣(太田誠一君)= まことにごもっともな御指摘でございます。  私も総務庁に参りましてから主として行政管理局、行政監察局の仕事ぶりをずっと見てまいりまして、本来ならばこれは新たに法律が出されるときにそれに付随した許認可の権限や、あるいは補助金がついてくるわけです。それについては総務庁がそのような権限を与えることがいいことかどうかという判断をいたしますし、またそれに伴って機構ができれば予算がつくわけでありますから、それは大蔵省が予算の査定ということでされるんだと思います。それから、法制局がされる仕事は、その法律と既存の法律との整合性いかんということを判断されるわけでございますから、政策的な整合性というのはむしろ総務庁と大蔵省が見るべきであって、法体系上の整合性は法制局が見られるものだと理解をしております。  そういたしますと、過去の仕事からいいまして、そこまで踏み込んで新しい法律について審査をしておるかどうかというところは、またそこは深みにおいて私もちょっと疑問がございますけれども、努力する方向ははっきりしておる。ところが、できてしまった法律が果たしてそのときに、例えば十年前、二十年前にできた法律が今も効果があるかないかということも実は同次元の判断の対象であろうと思うわけでございますが、過去の解釈としては、そこは既存の法律の改廃について踏み込んでいくということには事実上は仕事としてはなっていないわけでございます。  何かの枠組みをつくって見直す、既存の法律を改廃するということについては、やはり考えなければいけないとは思っております。 <0277>=入澤肇君= そこで、いい前例があるんです。  佐藤内閣のときに五回にわたって法律の整理をいたしました。これは許可、認可等の整理に関する法律というふうに整理いたしまして、私も事務官で覚えていますけれども、あのときは一省一局削減のほかに、一律一割の法律を削減しろという指示が来たのを覚えています。四十二年八月一日、四十三年六月十日、四十五年六月一日、四十六年六月一日、四十七年七月一日というふうに五回にわたって法律の整理をいたしました。  そのときの基本的な考え方は、法律制度の基礎とされている行政目的が既に達成されその使命が終わったかどうかを点検して、終わったものについては廃止しろ。二つ目には、国民の権利義務に直接的な関係がなく法律の規定によることを要しない事項を規定している法律を点検し、こういう法律を廃止しなさい。これは今の法制局の審査基準にも連綿として続いているわけであります。三つ目が、各省共管事務等で改廃、統合または簡素化することが可能な事務を規定している法令を点検して、これに該当するものは廃止しろというふうなことを言っているわけであります。  私は、今度の小渕内閣でもし法律の総点検をやっていただくのであれば、さらにこれに加えまして、二十一世紀に向けて各般の構造改革を促進するという観点から、特に経済政策に関する法律につきましては点検をしていただくことがいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。 <0278>=国務大臣(太田誠一君)= 本来、内閣全体でお答えをすべきことかもしれませんけれども、今の法律の改廃ということについては、総務庁が全体の根っこからそこまで対象かどうかというのは疑問があるわけでございますが、当然法律に付随した許認可や権限ということについては私どもが責任があるわけでございますので、頭の中ではそれは早急にやらなくちゃいかぬことだというふうに思っております。  ただ、今中央省庁等改革は機構の再編成の方に専念をいたしておりまして、なかなかまだそこまではエネルギーが回らないというのが実情でございます。必要性はよくわかっております。 <0279>=入澤肇君= 実態といいますか、物理的な事務が今は中央省庁の再編成に重点を置かれているからなかなかこっちに向かないというのは私わからないわけじゃないんですけれども、これはタイミングを失しますとなかなかできないんです。  御存じだと思いますけれども、行政というのは一年おくれると効果の発生、実施が三年おくれるんです。ことし予算要求をする。例えば今予算編成、法案の審査もやっていますけれども、来年度予算に向けてことし要求をする。来年の通常国会で法案が通る。実際に法案が施行されるのは来年の秋であります。それをさらに実効あらしめるためにはその再来年になる。一年おくれますと三年おくれるというのは、これは行政経験からする一つの行政実務、鉄則でございますけれども、ぜひこういうのは前倒しで、早手回しでスケジュールを組んでいただけたらいいんじゃないかと思うんです。  そこで今度は、許可、認可等の整理に関する法律が六十三回国会、六十四回国会、六十八回国会に提出されましたけれども、今般、規制緩和についての一括法あるいは地方分権についての一括法、この関係で、特に規制緩和についての一括法でどのくらい許認可が整理されるでしょうか。 <0280>=国務大臣(太田誠一君)= 今、規制緩和の委員会につきましては、昨年の三月に規制緩和推進三カ年計画をつくって、それを昨年の十月にフォローアップをしまして、今月末にこの改定をしようといたしておりまして、どのぐらいになるのかというのは、今ちょっとここでは即答できないわけでございます。 <0281>=入澤肇君= ぜひ徹底して、お題目に終わらないで中身のある規制緩和のための一括法を出していただきたい。今までの経験からしますと、例えば報告書を五部出せと言ったのを三部にしたからこれは規制緩和だとか、そういうふうなことは官僚の世界ではよくやるわけであります。しかし、今度は自主的に規制緩和がなされるように、ぜひ総務庁としては見張っていただきたいと私は思います。  それから、さらに続けて申しますと、いよいよ今度の国会が終わりますと臨時国会から政府委員制度が廃止になります。さらに、そういう状況のほかに、小選挙区制のもとでは、各議員が一つの専門だけじゃなくて、どちらかというとオールラウンドプレーヤーとしていろんな知識を持たないと演説がぶてません。そういう意味からいきまして、私は立法政策として法律についてもう少し工夫があっていいんじゃないかと。毎日毎日提出される法律を見ていますと、私自身も経験があるんですけれども、文章が正確を期する余りに難しくて読めない。  一番往生しましたのは、例えば政府提案の金融安定化緊急措置法でございます。私はこの法律を、常にあるようにチャートに落として、そして条文を移しかえてやってきましたけれども、どうにもわからない。大蔵省の職員に来てもらいまして、二人でこの条文はこういうふうに落とすんじゃないかというふうにやった記憶がございます、ついこの前。そのときに、閣僚の皆さん方はこの法律をどう理解しているのかねと申しましたら、ある閣僚の言葉としまして、いや、この法律は難しい、地図の上で住所を探すようなものだというふうに言われた方がいたそうでございます。私はなかなか頭のいい言い方だなと思う。本当に難しいんです。それはなぜかというと、金融実務を知らないとか実態を知らないというんじゃなくて、文章そのものが難しい。例えば協定銀行なんという言葉ですね。私は協定銀行と言うからこれは特定な銀行かと思いますと、これは普通名詞で出ていたり、要するに文章がなかなか練れていない。  そこで、私はできるだけわかりやすい法案を書くように、言ってみれば散文的に書くようなことがあってもいいんじゃないかと、法制局長官、思うんですよ。  例えば計算式ですね。計算式を文章にします。何とかに加えて得た額から何とかを減じて得た額、それに何とかを乗じて得た額、それに何とかを除して得た額とか、こんなことを文章にするのもいいんですが、場合によっては参考として、計算式は次のとおりと、並立して置いてくだすっていいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか、そういうふうな工夫は。 <0282>=政府委員(大森政輔君)= 御指摘の、法律中に計算式を組み入れたらどうかと。これは賛成でございます。現に産炭地域振興臨時措置法、これは題名は少し古めかしいんですが、この中でもそういう算式を組み込んだ例がございますし、これ以外にもかなりの法令中に書かれていることがあると思います。  そこで、時間をとるつもりはございませんが、法令の平易化というのは、これは永遠の課題であるとともに、私どもは常々これを第一義の課題として行わなければならないということは痛感しております。日々そのように努力しているわけでございます。  ただ、若干弁解をいたしますと、国民の権利義務に関する事柄については正確に書かなければならないということとの衝突がございます。また、法律に盛り込もうとする政策が複雑になってきますと、それに応じて法文もますます複雑にならざるを得ないという点もあるということではございますけれども、全くおっしゃることはそのとおりだと思いますので、今後、法令文の平易化、これは最大の努力をいたしたいと考えている次第でございます。 <0283>=入澤肇君= 今まで積み上げてきたいわゆる官庁文学、法令文学、これを一挙に覆すことはなかなか私は難しいと思います。しかし、例えば一部改正法などは、改正方式をもう一工夫、二工夫すれば我々としてもわかりやすい。例えばかぎ括弧何々を改めとずうっと続く年金法の改正なんかあります。こういうのは、全文を次のように改めると一挙にできないものでしょうか。そうすると非常にわかりやすい。  もしそれができないのであれば、二つ目の提案としまして、法制局は審査していないらしいんですけれども、法律案要綱というのを必ず出させますね、新旧対照表とそれから参照条文と法律案要綱というのを三点セットで必ず法案提出時に出させられます。この法律案要綱がまたある意味ではおざなりになっている。法律の条文をただ短くしただけであって、中身を具体的に示すようなものになっていない。そこで、法律案要綱、これを解説的にもう少しわかりやすく書くというふうに書式を改めたらどうか。  さらに、チャートだとか図ですね。金融再生化法とか健全化法のときにブリッジバンクがどういうふうに位置づけられるという図がございました。ああいうのは必ず法律案要綱に添付するんだということをひとつ原則として、統一方針として決めて御指導されたらいかがでしょうか。 <0284>=政府委員(大森政輔君)= まず、後半の法律案要綱、これは御指摘のとおり審査の対象じゃございません。ただ、法案審査の過程で参事官がそのような趣旨を徹底するという場はございますので、おっしゃるような方向で努力させたいと思います。  ただ、常にチャート等を入れてわかりやすくするという方式が成り立たないものもございますので、それはケース・バイ・ケースでということになろうかと思います。  次に、一部改正方式の点でございますが、これは、淵源をたどりますと、法令全書等をたどりますと、どうもドイツの改正方式を採用したんじゃないかと思いますが、おっしゃるとおり、確かに全文改め方式の方がわかりやすい場合は多々ございます。特に最近はワープロその他を活用いたしますので、どちらが字数が多いかなんということを一々数えるのはばかげております。できるだけ、私も全文改の方がわかりやすいじゃないかというのは何回も言った記憶がございますので、この点においても委員のおっしゃることはもっともだと思います。賛成でございます。 <0285>=国務大臣(太田誠一君)= 別に法制局長官と仲が悪いわけじゃありませんが、これは、法律を出すときにだれの責任でもって法律を出すのかというと、内閣の責任でございます。とりわけ所管の大臣の責任で出すわけでございますから、それがわかりやすい、わかりやすくないということはありますが、そこはわかりやすい表現にするとか、あるいは今おっしゃったようなことをつけるということは各大臣の責任でもってやるということで御理解をいただきたいと思います。  総務庁は、情報公開の法案を今参議院にお願いしているところでございますけれども、情報公開は、国民にわかりやすく見えやすくするということについては私どもの所管だと思いますので、今の法律の体裁あるいはそのさらなる工夫というのは、一般的には、私よくまた法制局長官とも相談をいたしまして、何か工夫ができる余地があるというふうに思っております。 <0286>=入澤肇君= 各大臣の責任においてというのはよくわかるんですが、説明を聞いていますと各省ばらばらなんですよ。  私は、法律において罰則というのは、その法律の社会経済的な意味づけを決定する重要な条文だと思うんです。その罰則の内容、例えば罰金刑か懲役刑かあるいは禁錮刑か、あるいはその罰金についても五十万なのか二十万なのか十万なのか、その軽重ですね、こういうものはその法律の性格を示す重要なシグナルだと私は思っているんですけれども、省によっては解説書にこの罰則のことを全然書いてこない。ですから、運動論として、善意の発動としてこういう法律をつくるんだと言っていながら、この法律案要綱なり法律案を見ますと大変な罰則がついている。  この間もこれをちょっと指摘して議論があったところなんですけれども、そういうふうに省によってまちまちだから、私はこれはひとつ内閣でモデルとしてこういう書式があっていいんじゃないかということをお示しされた方が各省とも一斉に動きやすいんじゃないかと思って言っているわけでございます。 <0287>=国務大臣(太田誠一君)= 御趣旨はよくわかります。ただ、私が言っておりますのは、各省においてと言っているのではなくて、各大臣がリーダーシップを発揮してされる部分が相当ある。そして、それは行政改革の観点からしても、従来よりももっと大臣が法律については主導権を発揮されなければいけないということを申し上げたかったわけでございます。 <0288>=入澤肇君= 法律というのは、いろんな行政をやる場合に、予算と並んで車の両輪でありますから、この法律が難しくてすぐに理解できない、読めないとなりますと立法府の責任も十分に果たすことができない。そこで、立法形式についての改善を急ぐべきじゃないかという視点で私は今るる御質問申し上げたわけであります。  もう一つ大きな問題点としまして、定員削減問題について若干お聞きしたいと思います。  今度の自自連立で国家公務員を十年間で二五%削減するというふうになりました。これは、これから各党の同意を得て国会に出されて法律として制定されるかどうかということになりますけれども、現行の第九次の定員削減計画と今後進めようとする、十年間で二五%削減しようとする公務員定員削減計画、これとはどのように関連するのか。  それからまた、現行の定員削減計画、これは総務庁もなかなかうまくて、各省にあなたのところは何人削減しなさいと言って、最終トータルは一覧表にしますけれども、削減する理由あるいは増員する理由というのは明確に示さないままやっているわけです。削減計画というのはどういう基準でつくっているのか、増員計画はどういう基準でつくっているのかということについて、ひとつ教えていただきたいと思うんです。 <0289>=国務大臣(太田誠一君)= 例えばことしあるいは来年あたりはどういうことでいくかといいますと、去年の査定で申しますと、二〇%削減をするということが二年後に控えておるということで、それに近いところでもって定員削減をやらなければいけないということで、たくさんのファクターを組み合わせながら各省との折衝、必要性あるいは組織全体としての大きさというか、何と言えばいいかわかりませんが、このぐらいはのんでいただけるんじゃないかというふうなことで、たくさんの要素を組み合わせながら折衝をしていることと思います。  計画といいましても実際に私が一つ一つやっているわけではないので、もしお許しをいただければ、行政管理局長が参っておりますので答弁をさせたいと思いますが、いかがでしょうか。 <0290>=入澤肇君= お願いします。 <0291>=政府委員(瀧上信光君)= お答えいたします。  定員管理におきましては、毎年の各省庁からの新規行政需要を踏まえました増員要求と、それから一定期間の定員削減計画の実施というのがございます。そして、定員削減計画によりまして政府部内の要合理化部門の要員を削減いたしまして、それをプールいたしまして新規行政需要の生じている増員部門に充当するということで定員査定を行っているところでございます。  そして、先ほど御質問のありました定員削減計画のそれぞれの算定につきましては、計画の策定に当たりまして各省庁と十分協議をしまして、合理化、効率化等による定員削減の難易度等を勘案し、それぞれの各省庁の定員事情等も踏まえまして、所要の調整を行った上で削減目標数を定めているところでございます。 <0292>=入澤肇君= 最後の質問になりますけれども、今の御答弁で、私は、今度二五%というと相当各省間でいろんなきしみが出るんじゃないかと思うんですよ。そのときに、やっぱり基準というのは透明性がなくちゃいけない、それから公平性がなくちゃいけない。  そこで、きちんと業務量というのを識者の意見も聞きながら客観的に定めて、そしてその上で各省の了解を得てやっていくことが私は必要じゃないかと思っています。強力な内閣府ができるわけですから、ぜひ内閣においてきちんとやっていただきたいと思います。  以上で終わります。 <0293>=委員長(倉田寛之君)= 以上で月原茂皓君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ───────────── <0294>=委員長(倉田寛之君)= 次に、菅川健二君の質疑を行います。菅川健二君。 <0295>=菅川健二君= 参議院の会の菅川健二です。  いつも、はしたの時間しか与えられないのでございますが、きょうは久方ぶりにじっくり時間がございますので、ひとつそれぞれの問題につきまして一つ一つ御質問をさせていただきたいと思います。  主な内容といたしましては、景気対策、行政改革、雇用問題等々についてお聞きいたしたいと思います。  まず、景気の見通しでございますが、これはもう再三政府の見解というのをお聞きいたしておりますので、これ以上正式の見解をお聞きするつもりはないわけでございますが、堺屋長官には、就任当初は、正確で的確な見通しを立てなければならないという大変な意気込みで、私ども新鮮な感覚で受けとめておったわけでございますが、最近の景気見通しになりますと、客観的な指標をさらに飛び越えまして、非常に強気の発言が目立つわけでございます。これは昨年の、やはり前の長官と同じような並の長官になられたかなという、まことに失礼でございますが、そういった印象をぬぐえないわけでございます。  そこで、景気判断につきましてはもとより諸説があるということは当然でございますが、最近、民間の学者等のいろいろな景気判断の説の中で、私、非常に説得力があると思われますのは、いわゆる政府によってなされる政策、これは公共投資とかあるいは減税等が主でございますが、それによる景気の下支え効果というのはそれなりに期待できるけれども、しかしながら景気の主要な浮力の要因としましては、御案内のように、個人消費であり民間の設備投資であるわけでございます。それにそういった下支えのいろいろな政策というものが点火して、さらに持続的な成長をもたらすかどうかということになろうかと思うわけでございます。今までの段階で見ますと、なかなか個人消費とか民間設備投資に火がつかないという状況ではないかと思うわけでございます。  そこで、ことしの上半期におきましては、昨年来やっておるいろいろな財政措置がございますので、そういったものの下支え効果がありまして、若干の浮力はつくにしても、年の後半になりますとそれが切れてまいります。切れてまいったときにはまた再び景気は下落するのではないかということで、下り階段の踊り場とかあるいは厳冬の前の小春日和とか、そういった説があるわけでございますが、これについて長官、どのようにお考えでしょうか。 <0296>=国務大臣(堺屋太一君)= 景気判断につきましては、お説のように各種、将来の見通しでございますので、意見があることは十分承知しております。  私は、決して楽観的なことを無理に言っているわけではございませんで、私自身として信念を持って現在の状況を申し上げております。それは、繰り返し申し上げますと、現在の景気状況は甚だ厳しい、しかし一部に変化の胎動が見られるということでございまして、それを言い出しましてから既に三カ月たちます。その間に動きはやや広がっているのではないかと思います。  委員御指摘のように、政府が行っております公共事業、これは当然のことながら去年の秋からかなり伸びてまいっております。  そして、次の問題といたしまして住宅でございます。住宅が、減税措置及び低金利によってこのところ、この一月に入ってからいささか活発な動きを見せるようになりました。  消費でございますが、十二月の統計を見ますと、勤労者世帯の統計等を見るといい数字が出ております。一方、百貨店やスーパーマーケットなど売り場の方から見た統計は依然と厳しいものを示しておりまして、この点は動きがまだ判明しない状況が残っておりますけれども、少なくとも下げどまり現象が出ていることは明確だと思います。  さて、ここで委員お説のように、これが続くのか、公共事業等が息切れをして、その後に消費の本格的な回復、設備投資に燃え移らないのか、これが一番問題のところでございます。見通しでございますから、これ見ろ、このとおりだということはございませんけれども、私は、消費を初めとして明るさが少し広がってきている、それから耐久消費財の買いかえ需要時期も延びておりますが回転してきている、したがってここで住宅需要がふえ少し景気がよくなってまいりますと、これがことしの後半以降消費に拡大し、やがて設備投資にも続くのではないか、こう考えている次第でございます。 <0297>=菅川健二君= 長官の希望的な観測でございますが、そうありたいと思うわけでございます。  宮澤大蔵大臣には、今度の予算というのはハマの大魔神を第一回から登板させたようなものだという御発言があったわけでございますが、ハマの大魔神が途中で打たれて交代しなくちゃならぬといった場合に次の打つ手というのはあるんでしょうか。 <0298>=国務大臣(宮澤喜一君)= 先ほどのお話ですが、つまり普通のときでしたら政府の公共投資が先導して、そして消費と設備投資という二段目のロケットに火がついて動くというのがパターンでございますけれども、今度はそうはいかないだろうというのは大体私も、菅川委員のおっしゃるようにもともと考えておるわけです。  ですから、そういう例えですと非常にわかりにくいんで、私はもう少し、仮に全体に非常に過剰な在庫があると、数年間の。在庫というのを少し広い意味にとらえていただきまして、流通在庫も在庫でございますし、それから過剰な設備投資もそういう意味で在庫である。それから、家庭に持っておりますものもある意味で在庫である。したがって、何度も何度も設備投資をやっていくうちに在庫の水準が少しずつ落ちていって、つまり少しずつ水が引いていくような、そういうふうに考える方が私は正確かもしれないというような気がしています。  したがって、そんなに早く設備投資に火がつくことはないし、家庭も節約疲れというか何というか、持っていたものが少しなくなってきたと。それでそれが少し要るようになる。したがって、回復もそんなに火がつくように早いわけはないがというふうに私は本来考えてきているものですから、もともと設備投資はちょっとまだまだこの稼働率、この在庫水準では無理と思います。そういうことで、ようやく何か水が引きかけているという感じが当たっているかどうか、私はそういうような気がしております。  ですから、ここはどうも、早い方がいいんですが、悪い方になっていっているわけではありませんから、少し辛抱が必要であるかもしれない。外国の人がよくいつだと言いますから、それはもう長年こういう目をして苦労しているんでいつまでたってもということはないでしょうというふうに私は心底そう思っています。  したがって、今度の場合これがなくなっちゃったら何かあるかとおっしゃいますけれども、いやそれはやっぱり辛抱してこの道をずっと続けていったらいいんだというふうな感じが私はしておるわけです。 <0299>=菅川健二君= いずれにしても、この見通しにつきましては水かけ論でございますので、しばらく辛抱してその様子を眺めておきたいと思います。  もう一つ、やはり持続的な成長をもたらしますためには、日本経済の高コスト構造、非効率な経済体質というものをこの際思い切って転換、体質改善を図る必要があるんじゃないかと思うわけでございます。その一環として、公的部門の肥大化とか非効率等に対しまして抜本的な改善を進める必要があるわけでございます。公務員制度の改革とかあるいは財投の改革等が重要でございます。  総理におかれましては、大変優しくえびす顔で借金を元手にして随分財政をばらまいておられるわけでございますが、これらの中でやはり体質改善を図るためには痛みを伴うわけでございます。痛みを伴う改革につきまして、最初の就任の所信表明で言われたように、鬼手仏心の心でもって思い切って外科手術に立ち向かわなくちゃならない、立ち向かっていただきたいと思うわけでございますが、今のところどうもその様子が見えないんですが、いかがでございましょうか。 <0300>=国務大臣(小渕恵三君)= 痛みをいとわず鬼手仏心で政治に立ち向かえという御叱正をいただきました。  簡単に言えば、国民に多くの税負担を求めるというふうなことになれば、これは一番痛みだろうと思いますが、これは前の内閣で財政構造改革におきましていろんな制約を加えるということでございますし、また昨年来九兆円に上るところの国民負担というものが経済に対する大きな影響を与えた、こういう御指摘もございまして、この内閣としてはかなり大きな予算を編成することになりました。  でありますゆえに、俗にばらまきとかいろいろ御批判をされておりますが、この際はいつも申し上げておりますように、日本経済を再生する、そのためにはなすべき手段はすべて実行する、こういうことでいたしておるわけでございます。  今御指摘がありましたが、例えば公務員制度につきまして、その定数の削減の問題とかコストを、十年ではありますけれども三割削減をするというようなその第一歩を踏み込もうということも、ある意味では厳しい対応を考えておることでございまして、一遍にというわけにはいきませんけれども、決して唯々諾々といいますか、ただひたすらに財政を膨張させようというようなことでないことだけはぜひ委員にも御理解いただければと思います。 <0301>=菅川健二君= ただいまの公務員の定数削減につきましては、先日も本委員会で私は質問申し上げたわけでございますが、小渕総理には大体九〇%は理解していただいたと思うわけでございます。ただ、実効性ということになるとやや心もとないかなという感じがいたしたわけでございます。  ただ、総務庁長官はどうも定数削減の意義、基本的な考え方についての理念といいますか、そういったものがどこにあるのかという点にもう一つ理解が及んでいないんではなかろうか、大変失礼ではございますが、そんな印象を持ったわけでございますので、ひとつ定数削減の意義につきまして、大変教科書どおりで恐縮でございますが、もう一度復習してもらいたいと思います。 <0302>=国務大臣(太田誠一君)= おまえはわかっていないんじゃないかというお話でございますが、委員がおっしゃっていることは定数削減が行政コストの削減を目指しておるというふうにお考えになっておるのではないかと思います。  確かにそういう面はあるわけでありますけれども、政府をスリム化するということはどういうことかというと、一つはやらなくてもいい仕事はやらないようにするとか、あるいは同じ仕事でも効率的にやるとか、そういう事柄ですね。そのために行政改革をやっておるわけでございます。  その中で独立行政法人化というのはどういうことかということをこの間から申し上げているわけでありまして、それは外から見て自分が何をやっているかということが各行政機関ごとにはっきり見えてくれば、おのずから目標はこのように達成をしておりますとか、あるいはこのように効率的にやっておりますということを国民に見えるような姿にしなければいけない。そこで、みずから定員を管理し、負債や資産を管理してみずから効率性あるいは目的達成型の組織になっていくであろうということに努めているわけでございます。  この間も申し上げましたように、要するにそのように組織を切り分けるということの痛み、さっき鬼手仏心という言葉を言いましたけれども、我々はまさに小渕総理の鬼の手の部分をやっておると思っております。組織を裂く、生木を裂くということでどのぐらい痛いかということと、かんなを削るということでどのぐらい痛いか。どっちが痛いかというと、どっちも痛いわけですよ。それをどう見るかということでございまして、定数削減というのは結果としてそれがどうなるかというゴールのようなものだと思っております。 <0303>=菅川健二君= 定数削減につきましてはいろいろな意味があるということは確かでございます。しかしながら、行政のスリム化に伴う行政コストの削減というのも大きな目標の一つではないかと私は思うわけでございます。  そういった点で、例えば定量的に十カ年二五%といったら当然数字が出てくるわけでございます。そうすると、それを年々減らすことによって人件費がどれぐらい減るのかという定量的な一つの目標値というのがあると思うんですが、そういった面の試算はなされていないんでしょうか。 <0304>=国務大臣(太田誠一君)= それは総定員法の対象になる人件費がどのぐらいかということは計算をすることができますし、もしベースアップがなければことしの水準でもって幾らかというのは当然すぐに計算ができると思います。  しかしながら、これは独立行政法人になったという場合には、それはそういう会計から外れるわけでございまして、その新しい独立行政法人の中のカウントになりますから、国の方の、内閣が責任を持つ方の人件費からは外れるわけでありますから、それは先生がおっしゃるとおりに減っていくはずでございます。それは減っていきます。 <0305>=菅川健二君= 今申し上げたのは、定数削減計画をつくるときに、つくった段階で同時に行政コストをどれだけ人件費が削減になるかということをつくらなければならないということを申し上げたわけでございます。まず定数削減ありきで、その次に計算しようと思ったら計算できるわいというのでは、まともに何を考えておられるかなというふうに私は思うわけでございます。  私自身の古い話になりますけれども、県で総務部長をやっておるときに、やはり五年で一〇%定員削減をやるというのを実行した記憶があるのでございます。これは、一〇%実質削減というのは大変なことでございまして、そのときは必ず人件費でどれだけ削減になるかというのをずっと年次を追って計画を立てて、それで最終目標時には経常収支比率が何%になるか、それによって県財政は健全になるんだという一つの青写真を示して着実に実行した経過があるわけでございます。  国の方としても、本気になってそういった定数削減をやるんであれば、それらの計量的な数字も当然用意しておかなければならないと私は思うわけでございます。 <0306>=国務大臣(太田誠一君)= 先生がおっしゃっていることはよくわかりますけれども、今おっしゃったようなことをやったとして、それは国の総事業費の中で国家公務員の方々にお支払いしております人件費が一体どのくらいのウエートを占めるのかということは、これはちょっと県の場合と違うと思うんです。たくさんのお金を事業費に使っておるという、その事業費の方のことを管理するということはあると思うんです。  いずれにいたしましても、今の話は行政改革をやろうとするときの視点として確かに一つの視点ではありますけれども、そこが本質ではないということは御理解いただきたいと思います。これはだから、答弁で御不満のように私は感じられるんですけれども、それはまず何にもしていないというふうにおっしゃるから、あるいはさっきも小渕総理に対する御質問でも、鬼手仏心で仏の心ばかりで鬼手じゃないじゃないかと、こういうことをおっしゃるから、それはやっておりますよということを、まずその前提となっている、まくら言葉になっていることについて私も答えなくちゃいけないわけです。黙っていればそれを認めたことになりますから、私はそれをお答えしているだけでございます。  それともう一つは、今のおっしゃった視点は、これはむしろ主計局の視点ではないかと思います、要するにどうなるかというお金の計算の問題は。私は、行政と国民との関係をどうやって見直していくかということが大事だと、そこが仕事だと思っております。  もうちょっとそれは早く数字を出してお示しができればと思いますけれども、一応そのようにお答えをしておきます。 <0307>=菅川健二君= 相変わらずそれぞれがそれぞれのところを主張しておる感じがいたすわけでございますが、いずれにしても、税金の使い方をいかに効率化するかということにおける人件費の役割というのは大変大きいわけでございます。そういった認識のもとにやはり考えていただきたいと思うわけでございます。  それから、昨日、国に学んで地方もひとつ行革をやったらどうかというお話がございましたけれども、私は国と地方に両方おった経験から申し上げますと、地方団体というのは三千三百ありますから、非常に優良な団体、優良児と不良児とあるわけでございます。どこに照準を当てるかということは大変重要であるわけでございますが、少なくとも行政改革について進んでおる県というのは、国はかけ声だけで実際にまだやっておりません、しかし地方団体ではもう進んでおるところはたくさんあるわけです。しかも、今地方財政は大変厳しいですから、去年からことしにかけて昇給延伸をやったり、いろいろな給与カットなりやっておるわけです。国家公務員はそんなことやっていますか。全然やっていないわけです。  そういった面で私は、総務庁長官というのは地方の先進県にひとつ学んでいただきたいということを一言申し上げたいと思うわけでございます。  それで次に、野田大臣にはかねてから同じ新進党で御指導いただきまして、その御見識には高く敬意を表しておるわけでございまして、地方分権を進める上でかなめのポストにつかれたことに対して期待をいたしておるわけでございます。  そこで、まず国の地方出先機関のあり方につきまして、地方分権推進にあわせまして、整理合理化すべきことについては地方分権推進委員会の報告、勧告にも明らかになっておるわけでございます。特に私、問題となりますのは、都道府県単位に置かれておる地方出先機関については、都道府県との間に非常に二重行政が行われるおそれがあるわけでございます。もとより、例えば税務署をどうする、基準監督署をどうするという現業的な役所というのは当然あってもしかるべきでございますが、それを除いて、いわゆる行政権限を持っておる役所というのは都道府県単位で国の出先機関は基本的に廃止すべきだというふうに思っておるわけでございますが、自治大臣の御所見をお聞きいたしたいと思います。 <0308>=国務大臣(野田毅君)= 国の地方出先機関の見直しという問題、これは御指摘のとおり、地方分権の推進あるいはいろんな事務の再配分等が行われていくことによって基本的に国の地方機関自身の事務量そのものが減少していく、その事務量の減少に伴って国の地方出先機関自身も言うなら統廃合という、むしろその流れの中でのとらえ方だと思っております。  そこで、国の事務と地方の事務とをはっきりと分けよう、役割分担を明確にしようということが今回の大きなテーマであり、そして国、地方の関係をいわば対等、協力の関係に改めていこう、こういうことでありまして、そういう角度の中から、分権推進委員会の中で地方の事務と国からの受託事務ということに仕分けをしたという中における国の仕事をつかさどるという役割を担う地方出先機関ということでありますので、ここは仕事の性質に応じて仕分けをするという発想ではなかろうか。  ただ、今御指摘のお話は多分地方事務官にかかわる話なのかなという気がしないでもありませんが、この点についても地方分権推進委員会からは一応話として事柄が出ておりますので、これはこの後の質問につながっていくのかと思いますから、先走った答弁は控えたいと思います。  なお、冒頭おっしゃっていただきました地方自治体における定員管理について、せっかくですから参考のために数字を申し上げておきたいと思うんですが、自治省から平成九年十一月に既に地方行革指針を通達いたしておりまして、その主要事項の中に定員管理の適正化、そして定員適正化計画をみずからつくるようにということを要請したわけであります。  平成十年十二月末現在、昨年十二月末で十九団体を除く全自治体で既に定員適正化計画を策定いたしておる。したがって、九九%が既に定員適正化計画を作成し着実に実施しておりまして、そこで過去四年間、平成七年から七、八、九、十、四年連続して地方公務員の総数は減少している。そして、どれくらい減少したかというと、四年合わせて三万二千八百七十四名減少しているということが実績としてあるということは申し上げておきます。  そして同時に、この場をかりて恐縮ですが、やはり中央におけるそれぞれの仕事の大事さがよくわかるんですが、実際の仕事の担い手である地方の自治体にいわゆる職員の必置規制という形で、地方公務員の言うなら義務的な手当てをしなければならぬというようなことが地方公務員の数の問題を論ずる上で大変頭の痛い問題であるという意味で、これは自治省としてもさらに積極的に取り組んでまいりますし、各自治体もそのように御協力をいただいているところでありますが、関係各省庁におかれても、やっぱり必置規制ということについて、さらなる見直しもしてもらわなければならぬということはこの機会に申し上げておきたいと思います。 <0309>=菅川健二君= 今、野田大臣の言われたとおりでございますけれども、次の質問に移ります。  御指摘のように、中央省庁等改革大綱におきます地方事務官の廃止に関連いたしまして、新たに都道府県単位に労働局を設置する動きがあるやに聞いておるわけでございます。  先ほど私が申し上げましたように、都道府県単位の国の出先機関は地方分権推進上あるいは行革という観点からしますと好ましくないわけでございまして、都道府県の事務との間で調整することによって相互にスリム化を図りながら能率を図っていくというような方式がとれないものかどうか、この点について労働大臣の御見解をお聞きいたしたいと思います。 <0310>=国務大臣(甘利明君)= 今二つの御指摘がありました。一つは、地方がやるか国がやるか、そのどちらに所属するかという話と、それから行革に資するかという話であります。  御承知のとおり、憲法二十二条一項に職業選択の自由という項目がございます。二十七条一項に勤労の権利義務が規定をされております。つまり、憲法で規定をされていることを保障していくために国家がやらなければならない責務があると思うわけであります。  そこで、新たに県の労働局を設置することが行革に沿っていないかどうかということでありますが、新たにつくるという感覚よりも、既にある三つを一つに効率的にまとめるというふうに御理解をいただきたいと思います。  つまり、都道府県にあります労働基準局と女性少年室、それから県の中にあります国家公務員組織、国家公務員であります職安を所掌する雇用安定主務課、この三つを一つにまとめて都道府県労働局ということにいたしまして、効率的な行政推進を図っていくということを考えておりまして、まさに行革に沿ったやり方だというふうに理解しております。 <0311>=菅川健二君= 今、国のやるべき事務と地方のやるべき事務というのはそれぞれ機能分担すべきであると。職業紹介につきまして、国の役割を否定するものではございません。ただ、御案内のように、雇用行政で雇用創出ということを考えますと、今問題になっております介護医療とか福祉とか教育とか、ベンチャー企業育成というのはほとんど都道府県あるいは市町村を中心として地方団体が主体的に推進しなければならないような仕事でございます。  それで、今のまま地方事務官を、はい国で吸い上げますよということになりますと、私は県で労働担当の部長もやっておりましたのでわかるのでございますが、県の労働担当部局というのはもぬけの殻になっちゃうんです。事実上もぬけの殻になっちゃうわけです。そうしますと、国の方はそれなりに格好はつくけれども、地方の方は労働行政が進まないという状況になるわけでございます。  私は、したがって、そういう面では都道府県単位でやれることでしかも地方自治体になじむ雇用行政というのはできるだけ地方自治体にやらせていく、それで広域的にやらなくちゃならぬということでありますと、ブロック単位でも出先機関を設けてやったらどうかというふうに思っておるわけでございます。  雇用行政における地方団体の役割についてどう思われるか、ちょっと労働大臣にお聞きいたしたいと思います。 <0312>=国務大臣(甘利明君)= もちろん、県が独自に行う労働行政、雇用政策については、小さくなりますけれども残るんであろうというふうに思います。  そこで、広域的にやる必要があるかないかということが一つ論点になろうかと思います。つまり、職業紹介というのは県単位でぶつ切りになるものではなくて、本人の居住の移動とか、あるいは御主人の異動に伴う奥さんのパートの仕事等々ありますから、広域的にカバーしていかなければならないというふうに思います。  アメリカでは州単位に確かにやっております。全国組織というよりも州政府が中心、あそこは州、国の集まり、連合体のようなものでありますからそうやっていますが、しかしそれでも州境の移動に関しての情報がスムーズにいくようにアメリカは全国的に網羅するということで、これは恐らく連邦政府だと思いますが、アメリカン・ジョブセンターというのをつくっていて、それで州政府の情報を把握しなけりゃならない。そこを通じてさらに移動していくということになるわけでありますから、やっぱり全国網羅的という必要があると思います。  それから、アメリカは州単位に雇用保険の給付もやっているものでありますから、これは失業率がばらつきまして給付水準がばらばらです。ですから、アメリカは失業保険の給付がばらばらの給付状況であります。  全国一律にやりませんと、例えば沖縄のようなところは失業率が物すごく高いわけでありますから、保険給付の量が物すごくなります。そうすると、会計が破綻するか、給付水準をうんと下げるか、あるいは保険の保険料、掛金をうんと上げるか、どっちかしないとうまくいかないのでありまして、平準化ということも考えますと、一律行政はどうしても必要だというふうに考えております。 <0313>=菅川健二君= 先ほど申し上げましたように、一律行政を否定しておるものではございませんで、国と地方の役割をきちっと明確にした上で、国は職業紹介を中心とした広域的な紹介業務をやっていく、あるいは雇用保険等についてのやはり統一的、基準的なものをやっていく、それは結構だと思います。  しかしながら、雇用創出していくという分野においては、国はほとんど実は無力に近いんじゃないかと思うわけでございます。もちろん、制度をつくるのは各省でございますから、そういった面ではもとより各省の役割というのは大きいわけでございますが、民間のいろいろな企業誘致をして雇用を確保するという役割というのは地方団体が皆やっておるんです。  そういう面で、雇用創出面の地方団体の役割というのは大いに私は評価し、かつそれについて労働省としても十分な手当てをすべきではないかと私は思うわけでございます。 <0314>=国務大臣(甘利明君)= 先ほども申し上げましたけれども、地方行政と独立してやっているということを言っているわけではありませんで、広域的に職業訓練と保険給付と職業紹介とが三位一体でやっているものでありますから、何か一つを切り離してやるということは行政効率上効率が落ちるということを申し上げているのであります。  そこで、先ほども申し上げました県との連携等、地方との連携等についても当然規定がございまして、雇用対策法においては、国と地方公共団体の雇用政策に関する役割分担とその位置づけを明確にする旨の規定を置いておりまして、国と地方公共団体がお互いに連絡協力する旨の規定がきちんと置かれておりますので、そのとおり推進をしてまいります。 <0315>=菅川健二君= この問題は、いずれ法案として出てくると思うわけでございますので、その段階でまた議論を進めさせていただきたいと思います。  次に移りますと、地方分権を妨げておる大きなもの、しかも国の行政のスリム化を妨げておる大きなものの一つには、やはり国庫補助金の問題があろうかと思うわけでございます。  野田自治大臣には、かねてから主張しておられる国庫補助金の中でも、その中核となる公共事業の補助負担金につきまして、これを国が一つ一つ箇所づけまでやっておくということは大変な非効率を生む、またむだな投資を生む可能性があるわけでございます。  そこで、ある程度基準を設けて、その基準に基づいて都道府県なり市町村に一括して資金を交付していく、そういう補助金システムを転換する必要があるんじゃないかと思うわけでございます。  これは野田大臣にかつて教わったことでございまして、私も全く同感ということで、ひとつ大臣になられましたのでさらにプロモートしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 <0316>=国務大臣(野田毅君)= 御指摘のとおり、やはりいろんな角度から見て地方自身の自主性、自立性を高めていく、そして地方のことは地方みずから自己責任でやっていってもらう、そのためには権限と同時に財源ということもきちんとした手当てをしなければいけない。そういう発想の中から、個別の補助金で中央の役所が地方をコントロールしていくというやり方を卒業していかなければ、本当の意味での地方自治は達成できないのではないか。そういう考え方の中で、補助金というよりも包括的な交付金という形に切りかえていくということを一刻も早くやるべきだ、こんなことをかねてから新進党あるいは自由党においても言ってきたことはそのとおりでありますし、私自身、その思いは何ら変わるところはございません。  ただ、現在、地方分権推進委員会から第五次勧告ということで、昨年十一月十九日に勧告を政府としてはちょうだいをし、それをもとにして補助金の、いわゆる統合補助金を初めそういう公共事業のあり方論を含めた形での勧告をいただいておる。それをどうやってこれから具体的な計画、法案の前の計画という形につくっていって実施するかということが今現在のテーマになっております。しかし、事柄はそれだけでこの問題が終わりということでは私はないと思います。ただこの点は、自治省だけが突っ走ってみても率直に言ってできる話ではございません。特に、補助金を交付する関係各省庁が、やはりその足並みをそろえて本気になってその方向に動いていかなければならない。  そのためにはぜひこれは、特に政党レベルにおいてもこの部分を積極的に、本当に総論はみんな賛成なんだけれども、各論になりますとなかなかそれぞれの各省の所管する事業の執行上のいろんな理由ということもあって、実際に前進しにくいというこの現実をしっかり踏まえた上で、これはやっぱり政治主導で決めていくということが必要だ、このように思っておりまして、さらに努力をしていきたいと思います。 <0317>=菅川健二君= 御指摘のように、この問題は何十年来の懸案でございまして、各省で綱引きしておる間は一向に進まないというのが今までの実情でございます。我々立法府に席を得る立場としても、思い切ってやはりそういった後押しをする、あるいは一つの対案を出していくということはぜひ考えさせていただきたいと思うわけでございます。  それから次に、特殊法人の整理合理化の一環につきまして、政府系金融機関が三つに統合される、六つが三つになるわけでございます。国際協力銀行、日本政策投資銀行及び国民生活金融公庫とあるわけでございますが、依然といたしまして、その中身を見ますと、特殊法人の整理合理化という名には余り値しなくて、統合前の業務をさらに拡大してみたり、あるいは業務は同じである。それから人員につきましても、役員は一律三割カットというようなことが一つの申し合わせになっておるということで、役員は減らすようでございますが、職員についてはほとんど手つかずであるというような、いろいろやはりこの辺につきましても問題を持っておるというふうに思うわけでございます。  それぞれの所管の各大臣に、特殊法人の合理化、スリム化の観点から、どのような対応を図っておられるか、御見解をお聞きいたしたいと思います。 <0318>=国務大臣(堺屋太一君)= 日本輸出入銀行と海外経済協力基金が合併いたしまして国際協力銀行というのが設立されることになります。これは、御指摘のように特殊法人の合理化の一つでございます。  これまで日本輸出入銀行の方は一般的な貿易金融を、そして基金の方はODAを担当しておりまして、これを合併することによって、役員の数は現在両方合わせますと十七人でございますが、これが五名削減して十二人になります。職員の方は、実を言いますと八百九十一人から八百八十九人に二人しか減らないんで、私自身もちょっとがっかりしたところでございます。それから事務所その他は、合併前に六十二部局ありましたのが五十三部局になる、それで海外事務所は三十五合計ありますのが二十八になると。  これはある程度減っておりますが、職員はやはりなかなか生首が切れないということもありまして減らないので、私もいろいろ聞いてみました。そうすると、それぞれ理由があります。これは、役人が理由を考えるのはすぐに考えつくことでございまして、私も昔はそんなことをやっておりましたけれども。やはり一遍にということはできませんので、今後ともこの職員のスリム化、海外業務は非常に拡大する、ODA、輸出入関係の金融は拡大する分野でございますけれども、極力将来的に人員は抑えていくように努力したいと思っております。 <0319>=国務大臣(宮澤喜一君)= あとは私の方ですが、開発銀行と北海道東北公庫が一緒になりますのと、国民金融公庫と環衛公庫が一緒になるわけでございます。私もこの政治の世界に随分長くお世話になっているものですから、この二つとも、北東公庫と環衛公庫できたときのことを覚えていますので、できてまた一緒になるのかというか、またなくなるのかというのが感じでございますね。  役員は確かに二十五人いたのが十七人になりますのがこれが開銀と北東公庫の方です、それから国民公庫と環衛公庫は十五人が十人になります。  私は、この二つの合併は割合に理屈が合っていると思っていまして、本来、開発銀行に地方融資のデパートメントがあったわけでございます。それが、いろんなことで北海道東北というものが誕生いたしました。それから環衛公庫の方は、国民公庫が受託業務をやってきているわけですから、これも一緒になってもむしろそれはそれでいいんじゃないか。その時々で、生まれたときは北海道の方、東北の方大変なことでしたし、環衛の方もそうでございましたが、ここへ来て一緒になるなら比較的害のない、いい方の出来事だろうと。  と申しますのは、みんないいことばっかりはきっとないんでして、これ余計なことを私申すようで、結局は賛成なんですから反対とお思いにならずに聞いていただきたいんですが、輸出入銀行と協力基金、これが一緒になる問題は対外的に見ますと、両方とも非常にいい仕事をしていて、片方はいろいろ投資やなんかしますし、片方は援助でございますから、日本のイメージとしてはなかなかよかったと私は実は思っておりました。おりましたと申します、過去で、今ここにおりますから。  ですから、それに比べると北東公庫と開銀とか、国民金融公庫と環境衛生公庫はまあ無理のないいい節約だなとは思っております。 <0320>=国務大臣(宮下創平君)= 厚生省の所管の環衛公庫と国民金融公庫の統合でございますが、今御指摘のように、確かに役員、職員定数の削減を行いましたが、役員で申しますと定員で五名、実員で四名の減ということになります。そしてまた、総務とか経理とか監査部門を統合することによりまして整理合理化をやっておりまして、職員数の減少は四千八百四十五名のところ八名ということでございますから、確かにそう縮減にはなっていないとは思います。それから、組織も十六部を十五部にするというようなことがございます。  この環衛公庫は、発生の経過からいいまして、保健衛生その他、ある意味では弱小と言っちゃ失礼でございますが、非常に力の弱い業界をサポートしようとして設立したものでありますが、最近の融資の状況等から見て、かえって環衛と国民公庫が一緒になった方が委託するよりも独自の判断が総合的にできるだろうというように思っております。また、扱い店が百五十二店舗あるようでございますが、専門的な指導がかえって行き届いていくのではないかということで、機能的には合併した方がよかろうという評価をしているわけでございます。 <0321>=菅川健二君= 今御指摘のように統合のメリットはそれぞれあろうかと思うわけでございますが、反面、統合に伴う、例えば間接部門について統合すれば必ずそのダブりが出てくるわけでございまして、その分の人員は浮いてくるというのはどこでもよくやることでございます。そういった面からしますと、やはりスリム化についての努力がまだまだ足りないんじゃないかというふうに考えます。  それからもう一つ、政策投資銀行では、いわゆる北東公庫のお荷物になっておる苫東とかむつ小川原のいわゆる損失、これは苫東についてはもう既に損失が確定しておりまして、六百七十億円。それから、むつ小川原につきましてはこの銀行が設立するまでに解決するというふうに聞いておるわけでございますが、それらを合わせますと、巷間伝えところによりますと大体一千億以上の損失が生まれるんじゃないか、その損失は開銀が持っております準備金を取り崩すことによって充てるというふうに聞いておるわけでございます。  そうしますとどうも、損失のツケ回しをやって、責任はあいまいになり、もともと開銀が持っておる財務内容の悪化につながるんじゃないかと思うわけでございますが、この点はいかがでしょうか。 <0322>=国務大臣(宮澤喜一君)= 今の苫東もむつ小川原も我が国の、四十年たちますでしょうか、全国総合開発計画、何度か十年ごとぐらいに改めてまいりましたが、その所産であるわけでございます。  そのうち苫東の方は、私本当に時期が悪くて気の毒だったなという思いがしていまして、ああいうふうに世界経済が急に変わりましたものですから、我々のホープだと思ったあの地域の地域づくりが途中で挫折をして、地元に金利負担が残ってという思いがあるんです。しかし、日本の将来を考えると、何とかあれはやっぱり残しておくべきであろうというふうに私自身は実はいろいろいきさつもあって考えておりましたが、北海道開発担当の大臣とお話をいたしまして、地元の方もこれは何とか、じゃ自分たちも半ばしょいましょうということになられましたから、それは私は日本の将来のために残しておいた方がいいと思いましたので、それで北東公庫が六百五十五億円赤を上げておりますから、これはどこへも持っていけないので、開銀がかなりの蓄えを持っておりますから開銀の方へくっつけたわけでございます。  ツケ回しといえばツケ回しでございますが、ただこれは外で欠損を出すよりは、幸いにして開銀がそれだけの余裕を持っておりましたから、やっぱりそこで抱えていって、北海道の将来というか日本の将来のために私は苫東というものは残しておいた方がいいんじゃないかと。ここに北海道の方がいらっしゃいますと賛成していただけるんですが、そうでなくても、少し大きな目で見て私はそういう感じがしておるんです。  ですから、苫東の方は私自身はそれで納得しておりますし、新たに国に御迷惑をかけることはないわけですが、むつ小川原の方が実はちょっと話が締まらない。話の中心になる方々といいますか、県もそうですし公庫もそうですし、一部経団連がずっと関係しておられるんですけれども、ちょっと話がまとまらないのでございます。それは、将来が苫東ほどよかれあしかれはっきりしているというところがないものですから。  それで、私はむつ小川原の方は少し待っております。皆さん方のお話で、地元でこれだけ担いで前向きにやるのだというふうにおっしゃれば、これには財界も出ていただかないといけないのですが、どういうふうになさるかを私は今拝見しておるというか、待っておるということでございます。  ここも将来、苫東ほどではありませんけれども、とっておいた方がいいというような、御関係の方々あるいは皆さんの御意向なのか、これは総理にも最終的には伺わなきゃならぬことなんですが、それによりまして対応を決めなきゃならないと思っておりますが、まだちょっと先が読めておりません。 <0323>=菅川健二君= せっかく新しい立派な名前の銀行ができるわけでございますので、ひとつ銀行ができるまでにむつ小川原についてもきちっとしていただきたいと思います。銀行ができた途端に、ツケがどんどん回ってくるという状態も決していい状態ではないわけでございますので、その辺のけじめはきちっとしていただきたいと思うわけでございます。これもまた法案の段階でより審議を深めさせていただきたいと思います。  それから、雇用問題につきまして、きょうの新聞記事によりますと、政府は好転の兆しが見えない雇用情勢の改善につきまして、五日にも新しい政策を出す方向であるやに伝えられておるわけでございますが、現段階でその骨格がわかりましたらお伝えいただきたいと思います。 <0324>=国務大臣(甘利明君)= 五日に産業構造転換・雇用対策本部の会議が開かれます。ここでは、近い将来にわたって雇用創出効果が期待をされております幾つかの分野、福祉であるとか情報通信であるとかあるいは住宅等につきまして、関係省庁から見通しについて、現時点で把握できる報告があるというふうに承知をいたしております。そして、その会議の席上、私からは雇用活性化総合プランの進捗状況、通産大臣からは産業再生計画についての報告があるという、そういう段取りで行われるというふうに承知いたしております。 <0325>=菅川健二君= 百万人の雇用創出計画があるわけでございますが、政府サイドはマクロな数字でばばっと数字を出しておられるわけでございますが、日経連と連合は、例えば福祉については四十二万人、住宅については十一万人、教育については十万人とそれぞれ具体の数字を出しておられるわけでございます。これらにつきましては、それぞれ所管の大臣にやはり汗をかいていただかなくてはならないのではないかと思うわけでございまして、その点、労働大臣はどのような働きかけをされておるのでしょうか。 <0326>=国務大臣(甘利明君)= 昨日も御質問をいただきまして、百万人、しかも安定効果がかなりの部分を占めるそういうようなけちな案ではなくて、五百万とか一千万とか労働大臣はぶち上げたらどうだという御質問がありました。私も、一度でいいからそういうことを言ってみたいのでありますけれども、そうしますと、その裏づけは何ぞという質問が必ず来るのでありまして、裏づけのない発表はなかなかしづらい。  それで、百万人の内訳は、三十七万の創出と六十四万の安定というふうに申し上げました。ただしこれは、三十七万はプラスアルファがありまして、そのプラスアルファが現数値よりも大きくなる可能性も私は大いに期待をいたしております。  そこの部分で、政労使雇用対策会議で労使から、先生が今御指摘になったような項目についての具体的な彼らなりの試算がありました。そこで、事務局会議で各省に来ていただいて、これを精査してくれという作業を行いました。そうしますと、数字はあれほど大きくはないのでありますけれども、少なくとも相当な数字が上がってきております。  私の方からは、いろいろな機会をとらえて、具体的にそれぞれの省庁が抱えている部分で創出効果を精査してもらいたいという要請を閣僚懇その他でさせていただいているところでございます。 <0327>=菅川健二君= これらの雇用創出計画を見ますとかなり財政資金を伴うものがあるわけでございまして、なかなか財政上の制約があるのは大変だなと思うわけでございます。精いっぱいの努力を各省にお願いいたしたいと思うわけでございます。  あわせて、やはり雇用対策の大宗というのは民間企業に元気を出してもらう、そのために新規事業や新分野の開拓ができるように規制緩和とか税制面での優遇策を進めて雇用を吸収するべきではないか。これは原則論でございますが、それをさらに進めていただきたいと思うわけでございますが、総理それから通産大臣に御見解をお聞きいたしたいと思います。 <0328>=国務大臣(小渕恵三君)= 御指摘のような民間事業者の新規分野への進出等につきまして、従来から新分野進出を行う事業者に対する種々の設備投資促進税制を講じてまいりました。ベンチャー企業に対する資金供給を支援する観点からも、いわゆるエンゼル税制を講じる等、税制面からもさまざまな支援措置を講じておるところでございます。さらに、平成十一年度改正におきましても、設立後五年以内のベンチャー企業を含む中小法人について欠損金の繰り戻し還付措置を講ずることといたしております。  いずれにいたしましても、これらの措置を通じまして税制面からの支援の活用が図られることを期待いたしておるところでございます。 <0329>=国務大臣(与謝野馨君)= 今の総理のお話で尽きていると思いますが、そのほか、国にあります技術を移転するとか大学の技術を移転するとか、あるいは特許の利用を拡大するとか、あらゆることをやってまいりたいと思っております。  いずれにしましても、百万人という大量の雇用に対してその場をつくり出すということは容易な作業ではありませんけれども、やはり二十一世紀の日本を安定した豊かな国にするためにも、今は大変な時期でございますけれども、今苦労することによって将来の明るい未来を築くというのが内閣の責任であろうと思っております。 <0330>=菅川健二君= いずれにいたしましても、雇用問題が現下の最大の課題ではないか。特に、国民にとって一番関心の高い問題でございますので、全力投球をしていただきたいと思うわけでございます。  最後に、個別の問題につきまして農水大臣にお聞きいたしたいと思います。  現在、新しい農業基本法の制定作業を急いでおられると思うわけでございますが、農山村地域の活性化につきましては、耕地面積、農業生産活動の約四割が中山間地域で占められておるわけでございます。これらの地域におきましては、食糧生産のみならず、国土保全とか水源涵養とか多面的な機能を果たしておるわけでございますが、耕地条件が不利なために農地の荒廃が進んでおるわけでございまして、こういった耕作放棄を防止し、公益的機能を維持するために、農業者に対する直接所得補償のための方策が講ぜられるやに聞いておるわけでございまして、基本的に評価いたしたいと思います。  特に、私の出身の中国地方におきましては全国的にも地形条件が最も劣悪でございまして、広島県では傾斜二十分の一以上が三分の一を占めておりまして、棚田率は全国一高いわけでございまして、直接所得補償の方策の具体化については高い関心を示しておるわけでございます。  そこで、これからいろいろな学識経験者等を交えて話を進められるやに聞いておるわけでございますが、現段階におきます所得補償の対象地域とか対象者とか対象行為をどのように考えておるかお尋ねいたしたいと思います。 <0331>=国務大臣(中川昭一君)= 今、先生御指摘のように、新しい基本法の中で中山間地域をどういうふうに守り発展をさせていくかということにつきまして、その大きな柱の一つが直接補償方式をどのようにしていくかということでございます。  欧米では既に導入されている手法でございますが、我が国では初めてということで、慎重かつ効果のあるように、しかも国民的な理解が得られるようにということで、今、先生御指摘のように対象者、対象地域、支払い方法、あるいはまた自治体の役割等々につきまして、まさに今、去年の九月にいただいた答申あるいは大綱あるいはプログラム、そしてまた基本法の御審議を国会でいただきながら、先生御指摘の検討会の場でいろいろと御指摘、御議論をいただき、ことしの夏、つまり来年十二年度の概算要求に間に合う時期までに検討会での御議論をいただき、最終的な方針をつくっていきたいと思います。  いずれにいたしましても、中山間地域における条件不利地域の差をどういうふうにしていくか、あるいはまた、その地域をどういうふうに守り発展をさせていくかということを国民的理解を得ながら効果的にできるように、今検討を進めていただいている最中でございます。 <0332>=菅川健二君= 今、検討を進められておるわけでございますが、中山間地の実情というのは、私の広島県は広島県としての一つの地理的、地形的条件がありますし、他の地域は他の地域でまた違った条件があろうかと思います。非常に千差万別でございまして、導入に当たって薄く広くばらまくと、御案内のように効果がないわけでございます。  したがいまして、国は一つの基準は示すものの、地域の実情に合ったような交付の仕方、対象地域を決めていくというふうに考えますと、その点、大綱は国で決めつつも、具体的な実施に当たっては地方団体に主体性を持たせるべきではないかと思うわけでございますが、この点についてはいかがでしょうか。 <0333>=国務大臣(中川昭一君)= 先生御指摘のように、特に中山間地域はそうですけれども、全国の農地はそれぞれ特色を持ち、長所あるいはまたいろいろな条件不利な面、それぞれあるわけでございます。  したがいまして、昨年それぞれの関係自治体にアンケートをいただきまして、それも大いに参考にしながら対象者、対象地域、対象行為あるいは支払い方法、そして先ほど申し上げましたように自治体の役割等についてどのようにしていったらいいのか、それぞれの地域に合う、できるだけ効果のあるようにしていきたいという面も大いなるポイントといたしまして、検討会でその自治体のあり方も含めて今検討をしていただいている最中であり、また国会の場でもいろいろと御議論をいただきたいというふうに思っておるところでございます。 <0334>=菅川健二君= 中山間地の活性化のために、ぜひ有効な方策を見出していただきたいと思います。  以上で私の質問を終わりますが、関連質問をお許しいただきたいと思います。 <0335>=委員長(倉田寛之君)= 関連質疑を許します。山崎力君。 <0336>=山崎力君= 私は、いわゆる小児ぜんそくに関連いたしまして、医療行政との問題点、これを厚生省を中心にお伺いし、いわゆる集団的自衛権と国際連合の関係で日米ガイドラインに関連して関係省庁、それで余裕がありましたら日債銀のいわゆる第V分類についてお伺いしていきたいと思います。  まず、小児ぜんそくでございますけれども、これは小児慢性特定疾患治療研究事業ということで予算がついてやっているようでございます。  そういったところでの研究事業の適正化が昨年来行われておって、それには患者の保護者に対して医師の意見書を提出させるようにしてある、こういうことでございますが、この辺の施策の考え方はどのようになっておりますでしょうか。 <0337>=国務大臣(宮下創平君)= 小児慢性特定疾患治療研究事業という長い言葉の事業でございますが、これは疾患名が十くらいございますが、その中に小児ぜんそくも入っております。そして、この研究につきましては、今後の一層の推進を図るために、平成十年度から本事業の開始や継続の申請の際に保護者から提出される医師の意見書等に記載されております対象児童の症状とか検査結果等のデータを国が登録管理することとしたところでございます。  このことを指していらっしゃるかと存じますが、小児ぜんそくにつきましても本事業の対象疾患となっておりますことから、登録された患者の医療情報を集計、分析、評価して、今後の小児ぜんそくの診断、治療の向上とかあるいは研究の推進に役立たせたい、こういうことでこの対策がとられているところでございます。 <0338>=山崎力君= 基礎データとして、小児ぜんそくの全国の患者数、重度、軽度という軽重の問題、それから国が補助の基準としている入院日数三十日以上、そういった分類での患者数はどのようになっておるのでしょうか。 <0339>=政府委員(横田吉男君)= 平成八年度の厚生省の患者調査によりますと、二十歳未満のぜんそくの患者の数が全国で五十万七千人と推計されております。これら患者の症状別の数につきましては、統計等が現在ございませんで、不明でございます。  私どもの小児慢性特定疾患治療研究事業の対象にしておりますのは一カ月以上の入院を必要とするぜんそく患者ということでございますが、平成九年度の実績によりますと対象者数は八千百七十六名ということになっております。 <0340>=山崎力君= そうすると、今度の意見書を提出させるのはこの一カ月以上の八千人を対象にしているんでしょうか、それとも五十万人を対象にしているんでしょうか。 <0341>=政府委員(横田吉男君)= 私どもが行っております小児慢性特定疾患治療研究事業の対象者ということでございます。 <0342>=山崎力君= 数字で言うとどちらに当たるんでしょうか。 <0343>=政府委員(横田吉男君)= 八千百七十六名の方でございます。 <0344>=山崎力君= この件について、五十万人を対象としているのではないかということで全国各地で、そういった方々に対して医師の意見書を各都道府県のところで出させるようにということは承知なさっておられるでしょうか。 <0345>=政府委員(横田吉男君)= 国が行っておりますこの小児慢性特定疾患治療研究事業のほかに、これは一カ月以上ということでございますので、それより軽度のぜんそくの方あるいは外来のみのぜんそくの方等を対象にした助成事業を県単独で行っているところが数県ございます。そういったところにつきましては、それぞれの県の御判断において手続等を定めているということでございます。 <0346>=山崎力君= そういったところでは、三十日以上の患者さんとそれ以下の県の単独でやっている患者さんの違いというものを区別して国に報告しろというふうになっておりますか。 <0347>=政府委員(横田吉男君)= 私どもが求めておりますのは、私どもが行っておりますこの小児慢性特定疾患治療研究事業の対象者ということでございますが、県によりましては、県の中の管理システムといたしまして県単独の事業と国の事業とをあわせて管理しているところがございます。そういったところにつきましては、私どもに対する報告の方も両方を一緒にというところもございます。 <0348>=山崎力君= 例えば東京都の場合、国の事業とは別に独自で医療助成を行っていて、それは極めて緩やかといいますか、範囲を広げていると聞いております。そういったところでは、一カ月以上の入院患者、必要とする国の対象者というものが、東京都だけで助成されるものですから、報告、数字に出てこないというふうにも聞いておりますが、例えば八千百七十六人中、東京都の患者さんは幾らでしょうか。 <0349>=政府委員(横田吉男君)= 東京都におきましては、私どもの小児慢性特定疾患治療研究事業とは別に、都独自の公害等健康被害のぜんそく患者に対する助成ということで、十八歳未満のぜんそく患者に入院あるいは通院を問わず助成している仕組みがございます。  ぜんそく患者といたしましてはどちらかを選択して申請するということでございますが、東京都の場合におきましては、独自の助成事業の方を申請する方が多いということで、国の方に申請される方は八名ということでございます。 <0350>=山崎力君= ということで、お聞きになった方はおわかりと思うんですが、これは全国平均とかなんとかと、とても統計としてできるような調査じゃないんですね。ある県は入院一日くらいでやった人を小児ぜんそくとして出す、ある県は三十日以上の国の基準に見合った人をやっている。東京都は全然ほとんどそういったことは関係なしで、数字が上がってくるとしたら八人しかいない。これでまともな統計数字が出るんでしょうか。 <0351>=政府委員(横田吉男君)= この小児慢性特定疾患治療研究事業は、全体で十疾患五百疾病ほど、主に治療に大変長期間を要し費用も高額なものについて自己負担分を助成する、あわせて研究も行うという仕組みでございまして、どちらかと申しますと、今まで助成事業の方に重点が置かれておりまして、患者個々の情報を中央に集中してこれを治療研究に役立てるという面では非常に薄かったということもございまして、十年度から改正し、患者情報の登録システムというものをつくったわけでございます。  東京都のように制度を独自に持っておって分かれているものにつきましては、そちらの方に申請された方は上がってまいりませんので、その分確かに少ないという面がございますが、私ども、全国的なシステムといたしましてそれは仕方がないかなと思っております。必要に応じまして東京都の方の協力なり連携も図るようにしながら治療研究の実を上げてまいりたいと考えております。 <0352>=山崎力君= それでは、ちなみに各県、大ざっぱで結構です、県単位で結構ですから、厚生省さんの三十日で補助をしている自治体、あるいはそうでない、もっと自主財源をもとにその辺の補助をしている自治体の数の比率はどうなっておりますか。 <0353>=政府委員(横田吉男君)= 私どもの事業の上乗せ等を行っております県といたしましては、七県でございます。これに全く独自の助成事業を行っている東京都を加えますと、八県ということになります。 <0354>=山崎力君= そうすると、その八県なりなんなりにそのプラスの部分をカットしてもらうか、あるいは全体でやるか、どっちかしなければ、これは全国トータルの数字をもとにいろいろな施策ができないと思うんですが、その辺は検討されたんでしょうか。 <0355>=政府委員(横田吉男君)= 治療研究を行う上におきましてはデータが多い方がよろしいわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、県によりましては、県のシステムとして国の事業対象の患者と独自の事業対象の患者とが分けられないようなシステムになっているところもございます。こういったところにつきましては、私ども分けて情報が得られるように今後努力してまいりたいというふうに考えております。 <0356>=山崎力君= この辺のところは算数をやった人間ならば、平均が出ないということから考えれば、東京都は削除されているわ、七県の数字は軽度の人の数字が入ってくるわ、これどう考えるんだということを検討されたとはとても思えないんです。  ただ、この問題はそれだけじゃございません。要するに、今回で新たなところというのは、今までそういった形で補助をされていた方、軽度の方、軽度というんですか、国の基準になっていらっしゃらない方に一斉に診断書、意見書に伴う診断をしろ、それをつけろというふうになっておりまして、ある県ではその診断書料にある程度のお金を払えと。それも医者側から言うと非常にトータルが難しいので、例えば二千以上は取りなさいというような通達がなされているわけです。  さらにもう一つ言えば、こういった調査が出るということによって、きっとこれは自治体における福祉の切り捨て、費用の切り捨てになるんじゃないかという不安が医師、患者側両方にありまして、実際の切り捨てにならないように、それじゃ重目にしておくかというようなことまでうわさされているんですが、その辺の感覚というのは厚生省お持ちでしょうか。 <0357>=政府委員(横田吉男君)= この事業の対象になるかどうかにつきましては、従来から医師の意見書、診断書を添付して、審査して決定することになっていたわけでありますけれども、県によりましては、非常に簡単な、診断名とかだけで審査するとか、あるいは審査を行います対策協議会の構成が非常に不十分であるとか、いろいろな問題が指摘されたわけでありまして、私どもこういった点につきまして、小児慢性特定疾患対策協議会という審査を行う場所の委員の充実とともに、患者の出す医師の診断書につきましても、疾患群ごとの様式というものを定めたわけでございます。これに伴いまして、各県それに合わせた意見書等の添付を行うようになったわけでありますが、その際、従前と比べまして診断書料が上げられたというようなところもあるというふうに聞いております。  この診断書の料金につきましては、これは私どもとして統一的な指導は全くしておりませんで、それぞれ個々の医療機関ごとに医療機関の判断で決定するというふうになっているところでございます。 <0358>=山崎力君= ちょっと変だと思いませんか。国としては、三十日以上の入院患者、それだけ重い人に対してちゃんとしたデータを出してくださいという形になっているわけです。ところが、そうでない県、一日入院すれば一応補助しましょうというところは、そういった軽い人たちもかなりの検査をしてやってくださいということに当然なるわけです。そういった人たちは、ある意味では不必要な検査をしなければ医師の意見書が出せない。医師側、県の側からすればそういった思いになるというふうに私は思うんですが、その辺厚生省はどう判断されたんでしょうか。 <0359>=政府委員(横田吉男君)= 私どもが行っております国の助成事業としての小児慢性特定疾患治療事業の診断書の様式なり審査体制というものにつきまして通知等を出したわけでありますが、県が独自に行っております事業につきましては、県の独自の判断におきましてそれぞれが決定されているということでございまして、私どものように全部同じにしたというところもありますし、また違ったところもあるのではないかというふうに考えております。 <0360>=山崎力君= ですから、それが全国のやっているところからすれば、全部のそういった軽い人も含めて検査するんだということであればわかるんですよ。ところが、本来、三十日以上の重い人たちだけのデータが欲しいんですよと、それも東京都が欠けているよというところからで、そのときに、そういったものを各県に通達するときにその旨注記なさっているんでしょうか。 <0361>=政府委員(横田吉男君)= 国の助成事業についての指導基準等は出しておりますが、それ以外のものについては一切指導通知等は出していないところでございます。 <0362>=山崎力君= 厚生大臣にお伺いしますが、こういった形で検査事業が行われております。そして、それに対して担当する医者あるいは患者というものが、国の方針が変わったんだろうか、本来なら各県の問題なんですけれども、国のあれでということで動き出したものですから、そのような誤解がかなりある。医師会ですら、これは国と連動しているんだろうと思っているところがあるくらいです。  その辺について、いわゆる一般的な厚生行政を担当する大臣としての所感をお伺いしたいと思います。 <0363>=国務大臣(宮下創平君)= ただいま診断書料等につきまして局長の方から詳細な説明を申し上げたところでございますが、そもそもこの制度は研究事業ということで重症患者ということに限定をして、しかもそのメリットは自己負担分を国庫で負担するというところにメリットがあると言ってよろしいかと思います。そういう体制でございますので、一律に医療費補助をするとかそういうことではありません。したがって、軽度の方々はこの診断書料等をいただくという前提に立っていないと思うんです。今、委員のおっしゃられるように誤解があるとすれば、これは正していかなければなりません。  私どもは、あくまで地方自治体のおやりになることはおやりになることとして、国としては一定の、一カ月以上の入院患者等々重症な方々を研究対象にして、なお自己負担分を見ておるということでございますから、これはそういうことで御理解をいただくしかないと思います。  同時に、診断書料としてまちまちではないかという御指摘も確かにそのとおり、局長の答弁したとおりでございますが、ある程度こういうものは指針として一定の額である方が私は望ましいとは思います。検討させていただきます。  なお、これはしかし全部国庫で見ればいいじゃないかという考え方もあるかもしれませんが、そういった点は、この事業の特性からして、御負担をいただくということが筋ではなかろうか、このように思っております。 <0364>=山崎力君= それでは、こういったことに対して、一つの特定疾患、七県が使えないデータをよこす、東京都が抜けているといったことが果たして研究事業の対象になり得るのかという根本的な疑問も私は捨て切れません。それと同時に、これは別の問題として、地方自治体がある特定の疾患に対して補助をする、地域性もあるかもしれないし一つの県民性もあるかもしれない。そのこと自体について厚生省としてはどのようにお考えでございますか。 <0365>=国務大臣(宮下創平君)= 国民に対して良質な医療給付を行うというのがこの保険制度の任務でございますから、一定の条件のもとに、大体、最小限度といいますか、基準を設けて給付することが公平な道であると国の立場としては思っております。  しかし一方、自治体におきましては、そこに非常に焦点を合わせて重視したいという市町村もございますから、それ以上の、国の基準以上のメリットを与えるという制度を提示したところもあることは今お話しのとおりでございます。しかしこれは、それであるからといって地方団体のレベルにみんな合わせるとか、あるいは地方団体が独自にやっているのを国の保険システムで全部見るというわけにもまいりませんので、自治体のやっていることを否定するわけにはまいりませんけれども、国の措置としては、一種のスタンダードでやるということが妥当ではないかと思っています。 <0366>=山崎力君= そういったときの考え方が地方も非常に難しいので、地方分権だからどんどんやらせろ、そういうのはその地方の特色なんだという考え方もあれば、国民の医療というのはなるべく平等であるべきだ、負担も平等であるべきだという考え方からすれば、これは行き過ぎがあるならばやっぱりそこはちょっとスタンダードをつくらなくちゃいけないのではないかという考え方も出てこようかと思うんですが、自治省としてはどのようにお考えでございましょうか。 <0367>=国務大臣(野田毅君)= この問題、御指摘のとおり、特に小児慢性特定疾患治療研究事業でありますが、これは現在都道府県などに対する国庫補助事業として行われて、制度発足以来、逐次対象疾患の拡充、対象年齢の延長などが図られてきておるわけですが、事業主体である都道府県などにおいては、地域の実情に応じて自主的な判断に基づいて地方単独事業として対象疾患の拡大などを行ってきておるというのが実情であります。  自治省としては、制度の趣旨に照らして全国的に対応が必要なものについては国庫補助制度によって対処することが基本である、その上で地方団体が福祉施策的な観点も考慮して独自の対応を行うということは地方団体や地域住民の選択によるものであると、こう考えておるわけです。  そこで、このような地方団体独自の福祉施策に対する財源措置として、地方財政計画においては、地方単独事業にかかわる社会福祉系統経費、十一年度の地方財政計画では約四兆円計上しておるわけですが、これに基づいてまた地方交付税措置をとっているところでございます。  率直に言って、どのレベルまでが標準的なことなのかというのは、ある意味ではどこまで、特に医療の世界あるいは福祉の世界でどこまで自己負担をお願いすることが妥当なのかどうかということについて国としてどう考えるのかという問題と、あるいはその辺についてそれぞれの自治体における、あるいは地域住民がどこまで判断するかということとの兼ね合いなのであって、一般論として画一的な基準というのはなかなか設けにくいので、結局具体的なそういったことでそれに即して判断していくしかないのではないか。  いずれにせよ、最終的には地域住民の選択の世界に入ってくる部分がかなりあるというふうに思います。 <0368>=山崎力君= この問題は、ほかの部分でも共通の部分がございまして、例えばただの、いわゆる補助制度が充実した自治体へ住居移転の自由のもとに行ってその医療を受けたいという実例ももう現実に、これは小児ではありませんけれども出ております。もう一つその点で関連して言えば、今回、次に実施が問題とされる介護保険で、これを自治体でプラスアルファしていきたいという声は絶対出てくると思うんです。  その辺についての公平性、国と地方との役割分担、その辺について自治大臣並びに小渕総理に考え方をお伺いしたいと思います。 <0369>=国務大臣(野田毅君)= 現在、平成十二年四月からの実施に向けて、特にその実施主体である市町村においては大変な努力を願ってその前提となる作業を精力的に今やっていただいておることは御承知のとおりでございます。  その中で、率直に申し上げて、特に保険料の問題についていろんな御意見がございますが、特に介護保険の高齢者に係る保険料については昨年十月に厚生省から粗い推計を行う方法が示されて、現在市町村においてそれに従って計算を行ってサービスと保険料の水準についていろいろ検討している、そういう準備作業をしておると。  その中で、市町村にとって不可抗力的に生じてくる問題としての後期高齢者の割合、これは市町村によって異なってくるという部分がございますし、所得水準の格差ということもあるわけで、これらが結果的に保険料の格差ということに反映されてくる。この部分は国庫負担金の中の調整交付金によってならされることにはなっておるわけですけれども、一方で、介護サービスの水準の違いに起因する保険料格差ということについては、結局、地方団体や地域住民の選択によるのだ、こういう位置づけになっておりまして、各市町村の首長さんが大変悩んでいるというような現状をよく承知しております。  今のところ自治省としては、当面、準備作業をいろいろ市町村に努力していただいておる最中でありますから、特に厚生省に対しても、市町村などの意見を十分に尊重しながら介護制度の円滑な運営が確保されるような準備を進めてもらいたいということを申しております。  ただこの中で、今御指摘のような視点からの問いかけというのはなかなか厄介な問題であって、まさに人口移動、どこに住むかということについては制約をするわけにいかないというようなこともあって、本当にそういった点も含めてどう対応するかというのは頭の痛い問題だと思っています。  いずれにしても、自治省としては、このことが市町村の全体的な事務運営に大きな障害にならないような形に持っていかなきゃならぬということは当然のことであると思っております。 <0370>=国務大臣(小渕恵三君)= 保健、医療、福祉分野における介護サービスの供給体制の整備につきましては、基盤整備がおくれている市町村もありますが、御苦労いただいている市町村の協力を得ながら、地域の実情に応じた介護サービスの展開が図られるよう多様な手法の活用を推進しておるところであり、国としても必要な支援に努めておるところでございます。  今後とも、平成十二年四月からの介護保険制度が円滑に実施されるよう、新高齢者保健福祉推進十カ年戦略、新ゴールドプランの達成に全力で取り組んでまいりたいと思っております。  山崎委員が御指摘をされました御主張といいますか御意見を拝聴いたしておりまして、小児慢性特定疾患治療研究事業に関連いたしまして、自治体ごとの格差やばらつきの問題についてお触れになられました。なかなか難しい問題であろうと、厚生大臣、自治大臣の御答弁を聞いておりました。  いずれにしても、国民全体に関しましてせっかく導入する介護保険にばらつきがあるといいますか、そういうことがあってはならぬというような気もいたしておりまして、難しい問題でありますが、政府を挙げて研究させていただきたいと思っております。 <0371>=山崎力君= ちょっとこの問題で視点を変えますと、やはり保健、医療に対する金のかかり方というのが非常に大きくなっているというのが背景にあろうと思うんです。介護保険も、全部医療保険でできるなら介護保険制度は必要でなかったという意見もございます。  そこで、基本となるんですが、文部大臣にお伺いしたいんですが、現在の医療教育においてなるべく金のかからない医療をどうしたらいいかという教育は大学医学部等で行われているんでしょうか。 <0372>=国務大臣(有馬朗人君)= 現在、二十一世紀医学ということについて医療懇談会でさまざまな問題を議論してもらっております。  いずれにいたしましても、最も重要なことは最善の治療を施すという、この教育に関しては一生懸命やっていると思いますが、患者の生活のことまで考えて医療費のこととか医療保険というふうなことにまで十分教育をしているかどうか、これは私もつまびらかではございませんが、これを充実する方向に進んでいきたいと思っております。 <0373>=山崎力君= 要するに、医者が薬の値段を知らないでどんどん使っているという実態があるわけで、どこでも教育されていないわけです。開業するときに初めてこの薬の値段は幾らかということもあり得るということになると、大学病院あるいは国公立の病院、そういったところでも医者になる資格を取るまでは一生懸命治療の方法を覚えるかもしれないけれども、これからの治療が国民の医療体系全体の中で、どの薬を使ってどの薬を使わない、似たような効果でこっちが安くてこっちが高いということくらいは当然医者の方も患者のために必要だと思うんですが、その教育体系が全然ないというふうに私は感じるわけです。  改めて、大学教育だけでなくて国公立あるいは一般の病院についてこれがないのかあるのか、その辺を含めて文部大臣並びに厚生大臣にお伺いしたいと思います。 <0374>=国務大臣(宮下創平君)= 医者の資質といたしまして技術が高いということはこれはもう当然のことでございますが、同時に、患者のニーズとか、高齢化もしておりますので、そういったことに配慮をする、あるいはその患者、家族の抱える身体的、心理的ないろいろの諸要素、あるいは社会的な問題も的確に認識をして総合判断できることが必要かと存じます。  今、厚生省の方としては、こういったことを医者が身につけられるように、医師の国家試験の適正な実施ということと、それから卒後の臨床研修の充実ということをやっておりますが、まず第一の医師の国家試験の出題基準につきましては、社会保障制度と医療経済を出題の項目と最近いたしております。そこで、今、委員のおっしゃられたような視点も理解度を深めていく必要があろうかと思います。  それから、卒後の臨床研修につきましては、医療における経済性を学ぶという項目がございまして、これを研修の中でしっかりと身につけていただきたいということでやっておりまして、試験を通じ、あるいは臨床研修を通じまして、こうした医療の社会的側面への配慮をいたさなければならないと、一応そういう体制になっております。  なお、お薬の問題について言及がございましたが、確かに委員のおっしゃるとおりでございまして、やはりこれからの医療は、患者もそれから医療提供者も医療コストという問題は頭から離れるわけにはまいりませんので、いかに効率的、合理的な医療の給付をどういう安価な薬を用いてやることができるかということも、国民医療もこれからどんどん増嵩いたしますから大切な視点だということで、薬価基準制度についても今おいおい私ども検討中でございますが、そういった合理的な制度にすることはぜひとも必要だとこの際申し添えておきます。 <0375>=国務大臣(有馬朗人君)= 先ほども申し上げましたように、二十一世紀医学・医療懇談会というのがございまして、実はつい最近、二月二十六日に第四次報告を文部大臣の方に提出してくださいました。その中に、「医学・歯学教育においては、医療経済、医療政策、医療保険制度、医療・病院管理などの医療の社会的・経済的側面に関する教育の充実を図っていくことが必要である。」という提言をいただいております。  今まで私も十分だったと思いませんけれども、こういう提言をいただきました以上、医療の社会的、経済的側面に関する教育をさらに充実してくださるよう各大学に期待をいたしたいと思っております。 <0376>=山崎力君= この問題はこれだけにしておきますが、要するに、ある地域の小児ぜんそくを抱えた患者さんにとってみれば、今までしたことのないような検査をしなくちゃならなくなって、検査料も払わされて、そのあげくの果てに、あなたは軽いから今まで県の方で出していたお金は払えませんよと、こういう事態が想起されるようなことが行われているということを厚生省が放置していたということは、ちょっと私はいかがなものかというふうに思う次第でございます。  続いて、ちょっと別の問題として、日米ガイドライン絡みの前に自衛隊のことす。  最近ではないんですけれども、米軍機のF16戦闘機による低空飛行訓練というものが、F16だけではないんですが、あるんです。ついせんだって岩手県に墜落しまして、その際、ヒドラジンというんでしょうか、そういう猛毒物質が積んであって、その辺のところの対策が、消火に当たった人たちに悪影響がないかというのが心配されておりました。その辺について、自衛隊機でも使っているのかどうかを含めて防衛庁から説明を受けたいと思います。 <0377>=国務大臣(野呂田芳成君)= 米軍のF16につきましては、緊急動力装置の液体燃料としてヒドラジンを使用していると承知しております。自衛隊が保有する航空機についてはヒドラジンを全く使用しておりません。なお、米軍等の軍用機におけるヒドラジンの使用については、現在のところF16の緊急動力装置以外は使用していないと承知しております。  念のために、緊急動力装置と申しますのは、一般的にエンジンが飛行中に停止し、通常使用する発電機に動力が供給できず、機体の電気系統の機能が喪失した場合に緊急発電機に動力を供給し、一定期間必要最小限の電気供給を維持させる装置であります。  なお、このヒドラジンは、現在人工衛星用姿勢制御装置等にも用いられると承知しております。 <0378>=山崎力君= それで、もう一つ、私の地元のことなんですが、世界遺産に指定されている白神山地もその低空飛行訓練の対象になって、そこのところで絶滅に瀕するといいますか、貴重な生態系、イヌワシとかいろいろいるんでしょう、私も見たことはないんですが、それの飛行高度にまでおりた訓練をしている、こういうことが言われております。  これは、どこを訓練するかしないかという問題もそうですけれども、そういった貴重な自然体系のところである、もちろんあと牧場であるとかそういったいろんな地域があるんでしょうけれども、同じ山の中で人が住んでいないところならというふうな軽い気持ちで米軍がやっているとしたらこれもまた問題なんですが、その辺の米軍への周知徹底その他についてはどのようになっておりますでしょうか。 <0379>=国務大臣(野呂田芳成君)= どっちの所管でもありそうでなさそうなものですから、私からかわって答弁させていただきます。  念のために申し上げますが、私も山崎委員と白神山地を隔てた裏側に住んでいるものですから大変心配しているところですが、低空飛行の問題がありまして、当庁としては米軍機の飛行訓練に際しまして、事故や被害の発生防止に万全を期するとともに、地上への影響を最小限にするよう努めることは当然であると考えております。御指摘のケースについては事実関係がつまびらかになっているわけではございませんが、二月二十二日、仙台防衛施設局から米軍の三沢基地に対しまして新聞報道の内容等をつまびらかに伝え、強く注意喚起を行ったところでございます。  なお、低空飛行の問題につきましては、外務大臣と先般来日したコーエン国防長官の間での取り決めもございますので、外務大臣からも御答弁していただいた方がよろしいかと存じます。 <0380>=国務大臣(高村正彦君)= 一般的な話でありますが、米軍機の低空飛行訓練に関しては、去る一月十四日、私とコーエン国防長官との間で安全性の確保及び住民への影響軽減のための具体的措置につき意見の一致を見たところであります。その上で、例えばICAOや我が国航空法に規定された最低安全高度基準を適用して飛行する等の内容を公表したところであります。  それで、今の御指摘の件につきましては、防衛庁長官が述べられたとおりであります。この報道に接して、米側に対しては米軍機の可能性が強いという内容を伝えるとともに、同地域は世界遺産にも登録され、野生動物が生息する地域として環境保全に対する地元住民の関心が高い地域である点に注意を喚起しつつ、事実関係につき今照会しているところでございます。 <0381>=山崎力君= この件はそのくらいにしまして、今回いろいろ問題になっているガイドラインの問題でございます。  つまるところ、やはり最終的には憲法というか集団的自衛権の問題にこの問題というのはどうしても入ってきちゃうと思うんです。まず、基本的なことで恐縮でございますけれども、集団的自衛権とはということになってくると、これは長いスパンで見て新しい概念だと思うんです。ここ百年以上前には集団的自衛権というのはまず概念としてはなかったはずですが、国連憲章上あるいは国際法上どのような経緯でこの考え方が出てきて、今どのように国際社会において認識されているのか、その辺のところをお答え願いたいと思います。 <0382>=国務大臣(高村正彦君)= 国際法上、集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利をいうわけであります。  国連憲章との関係については、国連憲章の制定以前に既に地域的な相互援助条約を締結していた米州諸国等の主張を入れて、起草過程において集団的自衛権が国連憲章五十一条で明示的に規定されるに至ったものと理解をしております。 <0383>=山崎力君= 我が国のごとく、この集団的自衛権を否定している国がほかにあるんでしょうか。 <0384>=国務大臣(高村正彦君)= スイス等の永世中立を宣言している国がそうであると、こういうふうに理解しております。 <0385>=山崎力君= そういった国が国連に加盟する際、国連との協力に関して、その理由をもってスイスは長い間国連に加盟していなかったという事実があるわけですけれども、永世中立を標榜してスウェーデンのごとく加盟している国もあるんですが、そういった国々は国連に対する武力的な協力というものをどのような考え方でやってきておるんでしょうか。 <0386>=政府委員(東郷和彦君)= お答え申し上げます。  委員御案内のように、国連憲章のもとでは原則として武力の行使が禁止されております。しかしながら、その武力行使の違法性を阻却する事態として、広い意味での国連のもとでの集団安全保障措置をとる場合、それから自衛権を行使する場合、その自衛権を行使する場合の中に、個別的な自衛権を行使する場合と集団的な自衛権を行使する場合、これが入っているということでございます。  したがって、国連加盟国は、今申し上げたこの二つの武力行使の違法性を阻却するというこの状況に対応するということを念頭に置いて国連の中で活動しているということかと思います。 <0387>=山崎力君= それでは、具体的な問題として、かつての朝鮮国連軍と言われた、今でもあるという、法的にはあると言っていいと思うんですが、これはどのような立場の国連軍だったんでしょうか。 <0388>=政府委員(東郷和彦君)= お答え申し上げます。  朝鮮国連軍につきましては、一九五〇年六月二十七日未明にいわゆる朝鮮事変が勃発いたしまして、これを受けまして国連安全保障理事会で三つの決議が採択されております。  この三つの決議の中の安保理決議八十三、この勧告に基づきまして、加盟国が自発的に兵力を提供したものでございます。さらに、七月七日付安保理決議八十四、これに基づきまして米国のもとにある統一司令部の指揮下に編成されるとともに国連旗の使用が認められた、こういうことでございます。  したがいまして、国連の集団安全保障制度、このよって立つ基本的な考え方に沿った、そういう国連軍というふうに認識しております。 <0389>=山崎力君= その当時、我が国は国家、いわゆる独立国家だったんでしょうか。 <0390>=政府委員(東郷和彦君)= 当時は、日本は連合軍の占領下にございました。したがいまして、日本は国家ではございましたが、国家の主権の行使が一部制限されている状況にあったというふうに考えられます。 <0391>=山崎力君= その際、我が国は、国としてといいますか、個人ではなくて組織立った形態の行政機関を通じて大分その当時の朝鮮国連軍に協力していたと思うんですが、一番鮮明なのは、当時日本人が機雷掃海を行って朝鮮周辺まで行って戦死者まで出している、こういう時期がございますが、これは国として協力したんでしょうか、それともそのような技能を持つ人が米軍もしくは国連軍に雇われたんでしょうか。どちらなんでしょうか。 <0392>=政府委員(楠木行雄君)= お答えいたします。  私どもの古い記録で海上保安庁の三十年史にそういう記述がございます。  海上保安庁は、当時米国の極東海軍司令官の指令に基づきまして、昭和二十五年十月からその同じ年の十二月まで約二カ月間、四個の掃海隊を朝鮮沿岸における機雷の掃海作業に従事させました。先生御指摘のように、この間触雷をした掃海船が粉砕、沈没いたしまして、一名の死者、また十八名の負傷者も出す事故が発生しております。要するに、海上保安庁の職員が米軍の指令に基づき従事した結果、こうなったということでございます。 <0393>=山崎力君= そこでお伺いしたいんですが、このような協力をした国が、独立をしたというか上がなくなった時点で、これは国連への協力だったわけですね、そういう国連への協力の実績のある国が今現在同様な協力ができるんでしょうか。 <0394>=政府委員(東郷和彦君)= お答え申し上げます。  その後の歴史的な事実関係にかかわることでございますが、いわゆる朝鮮国連軍、これは一九五三年七月二十七日に休戦協定が成立して以降、それなりの変質を遂げております。  我が国との関係につきましては、休戦協定成立の約半年後の一九五四年二月十九日に国連軍地位協定を締結しております。したがいまして、朝鮮国連軍と我が国との関係は、基本的にはこの国連軍地位協定によって律せられるということになります。  もう一点補足的に申し上げますと、米国との関係では、その後一九六〇年六月二十三日に岸・ハーター交換公文、これは吉田・アチソン交換公文に関する岸・ハーター交換公文というものが締結されておりまして、これに基づきまして国連軍、いわゆる朝鮮国連軍の中の米軍に関しましては安保条約及びその関連取り決めによって規律されると、こういう状況になってきております。  したがいまして、朝鮮と今我が国との関係では、今私が申し上げたような法律関係が生きているということでございます。 <0395>=山崎力君= そういう事実関係はわかったんですけれども、そういった協力ができるのかできないのかという質問を私はしておるんで、そのお答えを願いたいと思います。 <0396>=政府委員(竹内行夫君)= ただいま条約局長が御答弁申し上げましたとおり、朝鮮国連軍と我が国との関係、朝鮮国連軍の我が国におきます地位に関しましては国連軍地位協定に定められておるところでございます。  そこで、その国連軍地位協定におきまして、これは現在でも有効でございますけれども、我が国の支援といたしましては、例えば施設の使用を認めること、それから調達を我が国で行いますときに免税措置を認めること等が認められております。  ただ、国連軍地位協定上、もちろん朝鮮国連軍がみずから、またはその役務調達の一環としまして我が国の民間業者に委託していろんな調達を行うとか役務を調達するということは地位協定上認められているわけでございますけれども、例えば自衛隊がその役務を提供するというようなことはこの国連軍地位協定では想定されておりません。国連軍地位協定におきましても、我が国におきます活動というものはあくまでも兵たん活動ということが決められておるわけでございます。 <0397>=山崎力君= そうすると、朝鮮戦争当時の機雷掃海に対する協力、国連に対する協力というのは、地位協定があるから今はできないんだということでございますけれども、これは先ほどの集団的自衛権の制約という問題からいって、今から振り返って見ればこれは違憲の行為だったんでしょうか、どうなんでしょうか。 <0398>=政府委員(大森政輔君)= お尋ねの件につきましては今までも何度か尋ねられたことがございます。  要するに、当時のような形態における掃海活動を現在行うとすれば憲法との関係でどうかということは、裏返して言えば、当時はどういう憲法の適用関係であったかということになろうかと思います。その点に関しましては、当時の特別掃海部隊の派遣は、連合国最高司令官の指揮のもとにある米国極東海軍司令官の指令に基づき行われたというふうに承知しておりまして、我が国が連合国の管理下にあった当時としては、我が国としてはこの指令に従わざるを得なかったということでございます。  そこで、当時の憲法と連合国最高司令官の指令との関係でございますが、これは既に最高裁判所が昭和二十八年七月二十二日付の大法廷判決におきまして、連合国の管理下にあった当時にあっては日本国の統治の権限は一般には憲法によって行われているが、連合国最高司令官が降伏条項を実施するため適当と認める措置をとる関係においてはその権力によって制限を受ける法律状態に置かれているというふうに判示しておりまして、場合によりましては、日本国憲法にかかわりなく憲法外において法的効力を有する指令を出し得る状態であったと。そこで、当時我が国として行えたからといって、現在も憲法上行うことができるということには当然にならない。  したがいまして、平和条約発効後におきましては、結論から申しますと、あのような形態における掃海部隊の派遣、その部隊による掃海活動というものは許されないんであろうというふうに考えております。 <0399>=山崎力君= 今の御答弁を裏返して言えば、あの当時、我が政府は憲法違反のことをやったんだというふうに考えてよろしいのでございますか。 <0400>=政府委員(大森政輔君)= 憲法違反という言葉は非常に語弊がございまして誤解を生ずると思いますが、当時は一般的には憲法の適用下にあったわけではありますけれども、それを超える連合国最高司令官の指令というものが有効に出し得た、したがってそれに従ったんであると。その関係では、結論から申しますと、憲法違反というふうに評価すべきものではなかったんだろうというふうに感じられます。 <0401>=山崎力君= とすると、今できないとはおっしゃっているんだけれども、今回これからそういうことをやると、集団的自衛権というところからいくと問題があるんだけれども、憲法違反とは言えないねということになるんでしょうか。 <0402>=政府委員(大森政輔君)= 先ほど私の言葉の選択がまずかったんではなかろうかと思いますが、当時は、もし連合国最高司令官の指令がなければ憲法上は行い得なかった行為であるということが前提でございまして、したがって現在同様のことを行うとすれば、日本国憲法との関係で行い得ないという結論になるということでございます。 <0403>=山崎力君= そういうふうないろいろ微妙な問題があるんですが、一言で言えば、朝鮮戦争当時の我が国の関係というものは今の憲法下、特に集団的自衛権の問題で許されないことが多々ありますよと、多々かどうかは別としてですが。  そういったときに、国際協力、要するに当時は国際連合、国連に対して、幾ら連合国最高司令官の命令とはいえ、一たん協力した協力内容を、その後独立したあるいは国連に加盟したからといって、その当時の国連憲章とその当時の日本国憲法は生きているわけですから、それを今回はできないねということを対外的に説明するというのはどのような論理構成で説明すればよろしいのでしょうか。 <0404>=政府委員(東郷和彦君)= お答え申し上げます。  現時点におきます我が国の国際社会における権利義務関係、これは先ほど私及び北米局長から申し上げましたように、朝鮮との関係では国連軍地位協定それから日米安保条約及びその関連取り決め、そういうものによって成り立っているわけでございます。  したがいまして、我が国が現在国際社会に対しまして今申し上げましたような国際協定に基づく義務を履行する、このような説明で国際社会に対する納得というものは十分に得られるというふうに考えております。 <0405>=政府委員(大森政輔君)= 要するに、現在は日本国憲法の適用を制約する日本国憲法を超える権力というものはないわけでございますから、日本国憲法に禁止されていることはなし得ないということに尽きるんではなかろうかと思います。 <0406>=山崎力君= ということは、今のお言葉でもあったんですが、朝鮮への掃海艇のあれは日本国憲法を超えた行為であったということだろうと思うんです。  法律論はともかくといたしまして、視点を変えまして、民間業者、民間人が米国あるいは国連軍と相対契約のもとにそういった行為、あるいは弾薬を運ぶとか、そういった行為というのは法律あるいは憲法上規制されているんでしょうか。 <0407>=国務大臣(野呂田芳成君)= 周辺事態安全確保法の第九条二項では、周辺事態に際し、関係行政機関の長は国以外の者に対し必要な協力を依頼することができることとしておりますが、今、委員から御質問があったような場合は、国からの依頼に基づかない民間運送事業者の自由な意思に基づく契約による物資の輸送でございますから、そういう部分については何ら制約を課するものではないと考えます。  民間運送事業者による物資の輸送については、安全基準等関係する法令に従って実施する限りにおいては自由に実施できるものであり、必要に応じ安全に関する情報の提供を行うことなどはあり得ると考えておりますが、米軍と民間運送事業者の間における民事上の契約に対して政府として干渉できるものではないと考えております。 <0408>=山崎力君= それで、またもとに戻るような格好ですが、いわゆる朝鮮国連軍への弾薬等の輸送についてはその地位協定上どのような扱いになっておりますでしょうか。 <0409>=政府委員(竹内行夫君)= 国連軍地位協定におきましては、例えば御指摘の弾薬の輸送に関する便宜を図るとかいったような規定は全くございません。  ただし、このことは、今そういう実戦部隊はございませんので仮定の問題でございますけれども、地位協定の仕組みといたしましては、国連軍がみずから、もしくは民間業者と契約をいたしまして、それでいろんな役務、資材を調達するということは認められているわけでございます。その際に、弾薬を輸送するというようなことを民間業者に委託することについては特別の規定はないということを申し上げているところでございます。 <0410>=山崎力君= その際、例えば自衛隊あるいはその他公的機関の協力というものの要請があった場合は地位協定上どのようになっておりますでしょうか。 <0411>=政府委員(竹内行夫君)= 国連軍地位協定におきましては、そのような場合に例えば自衛隊が武器弾薬を国連軍のために輸送するというようなことは全く予想されておりませんし、規定もございませんし、そういうことは地位協定上ないと考えます。 <0412>=山崎力君= それでは、この問題はまた後刻やらせていただきます。  時間も足りなくなっておりますが、金融監督庁が主だと思いますけれども、またぞろ紙面をにぎわせております日債銀への出資問題です。  これは、第V分類の額というものが二つあると。この間の衆議院での参考人質疑においても、それぞれ自分なりの考えで、片方が正しくて片方が違っているというふうにはなっていないということなわけです。  それで、日債銀側はあくまでもあれは第V分類七千億でよかったんだというふうに言っておるわけで、その辺と、出資した者たちへの説明及び大蔵省と日銀との連絡、そういった大蔵省の検査結果が出た後の、例えば今回新聞に出たところによりますと、日本生命へ、実はあのとき七千億と思われていたあれが、うちで調べたら一兆円を超えていたよということを言っていなかったのではないかと。その辺の問題がすぐ思い浮かぶわけでございますけれども、まず大蔵省がその出資先にV分類は自分たちの検査結果では一兆一千億だったということを説明すべきだったと思うんですが、なぜしなかったんでしょう。守秘義務とも違うと思うんですが、いかがでしょうか。 <0413>=政府委員(日野正晴君)= お答えいたします。  ただいまお話がありましたように、日債銀は平成九年五月当時、増資の要請先に対しまして、将来の回収に懸念がある債権の額は約七千億円であるという説明を行いました。これは、当時日債銀が何らかの形でその資産状況を増資の要請先に対しまして説明する必要に迫られまして、途中段階でありましたが、大蔵省検査の状況をも踏まえましてみずから積み上げた計数を説明したものと承知いたしております。  今御質問がございましたのは、なぜそれを増資要請先に対して大蔵省が、平成九年九月に検査結果が出たわけでございますが、これを増資要請先、つまりもう既に増資が完了しておりますけれども、増資の決定を行い、増資をした先が三十四ございますが、そこに対して言わなかったかという御質問でございます。今お話がございましたように、結局、国家公務員の守秘義務の観点から、当局としては原則として検査の対象となりました金融機関に対してのみこの検査結果を通知しておるわけでございまして、たとえ出資をした金融機関といえどもその内容を伝えることはできないということであったと思いますので、御理解をいただきたいと存じます。 <0414>=山崎力君= そこの原因となったというのは、もう大分新聞にも出ております、いわゆる飛ばし用の、不良債権隠しのための関連会社への出資、それを不良と認めるか認めないかと。銀行からすれば、あそこはつぶさない会社だから引き当てをするだけの第V分類にはならぬだろうということでやって、そこの会計基準がしっかりしていなかったから、この問題の数字が二つ出たんだというふうには伝えられているんですが、そういうふうに理解してよろしいんでしょうか。 <0415>=政府委員(日野正晴君)= お答え申し上げます。  金融行政につきましては、御案内のとおり従来のいわゆる護送船団行政とは決別いたしまして、現在は明確なルールに基づく透明かつ公正な行政を進めることを基本としているわけでございます。そして、資産の分類基準につきましても、これは早期是正措置制度が導入された後に、金融検査における資産の査定はいかにあるべきかということで平成九年の三月に検査部から通達を出しておりまして、これによってその内容も公表されているところでございます。  日債銀に対します平成九年四月を基準日とする大蔵省検査におきましても、御指摘のように第V分類の額が相違した主な原因というのは、日債銀が今後とも支援を続ける方針を有しており、日債銀の意思に反しては倒産することはないと考えられる日債銀の子会社のグループに対する債権につきましては日債銀はU分類としていたわけでございますが、検査官はその会社自体の財務内容等から見て第V分類と査定したものでございます。  しかし、これは先ほど申し上げました平成九年三月に出されておりまして、かつその内容も公表されております「早期是正措置制度導入後の金融検査における資産査定について」と題する通達で言うところの分類基準に照らしますと、これは当然第V分類と判断されるべきところでありまして、これを日債銀が第U分類、こういう主張をしていたわけでございます。決して、先ほど御指摘がありましたような資産の分類基準が不明確であったということではないということを御理解いただきたいと思います。 <0416>=山崎力君= ところが、そうだとすればごめんなさいで謝って、そこのところでいけばいいんですけれども、大蔵省からその示達結果が出された後も日銀へ古い金額のまま日債銀は報告しておる。  それから、この間の衆議院での参考人でも、これはこれで正しかったんだと、そういうふうに居直ったと言うと言葉は悪いんですが、信念を持って最後まで突っぱねた。これを行政側としては、何も言えないというところが非常に私はわからないという気を国民自体も持つと思うんですが、その辺についてはどう考えたらよろしいんでしょうか。 <0417>=政府委員(日野正晴君)= お答えいたします。  平成九年の四月に日債銀が経営再建策を樹立いたしまして、またさらに昨年三月には公的資金の注入が行われました。その時点で把握されておりました財務状況を前提にいたしまして、当時整備されておりましたセーフティーネット、現在とはかなりというか全く違ったセーフティーネットと言ってもよろしいかと思いますが、そういったセーフティーネットの整備状況や、あるいは金融システムの安定性確保のための必要性を勘案いたしまして、当時としては最善と考えられる手法がとられたものというふうに理解しているわけでございます。  確かに、昨年十一月に通知いたしました金融監督庁の検査結果におきまして、日債銀は平成十年の三月末時点で債務超過と見込まれたことを踏まえまして、所要の手続によりまして昨年十二月十三日に金融再生法三十六条によって特別公的管理の開始が決定されたわけでありますが、私どもといたしましては、いずれにいたしましてもこの現下の金融問題については適切に対応して、預金者等の保護と信用秩序の維持、内外の金融市場の安定性確保に今後とも万全を期してまいりたいと考えております。 <0418>=山崎力君= 今の御答弁で信頼回復できるかどうかというのは非常に疑問なんですが、きょうは最後になりますけれども、そこの中間施設としての飛ばし用の関連会社、これを多数やってそこで全部不良資産を集めておいてということで、これが四千億あったということに、これは細かくわかれば別でしょうけれども、一応四千億だと。こういった会社というものは、特に銀行に関連した会社というのは、ある意味では公序良俗に反するんじゃないかという気もするんですが、その辺、行政はこれまでどのような措置を講じてきたのでしょうか。 <0419>=政府委員(日野正晴君)= お答えいたします。  金融機関の財務の健全性の確保につきましては、まずもって金融機関がみずから健全かつ適切な業務運営に努めることを前提といたしまして、監督当局としても、これまで検査あるいは検査結果を踏まえた指導や監督によりまして、与信の審査、管理あるいは内部管理が適切に行われるように留意してきたところでございます。  日債銀につきましても、検査結果等を踏まえまして、不良債権の早期処理、回収、収益力の強化等につきまして指導するとともに、その改善状況につきましてもフォローアップするなど、その時々の業務や財務の状況についてそれに対応する方策を図ってきたものと承知しております。  先ほどの御質問と関連いたしますが、先般の参考人の質疑で、東郷前頭取が、いわゆる受け皿会社につきまして、大蔵省から回収の極大化に有効との指摘を受けていたという御答弁がありまして、大蔵省は当時こういった受け皿会社を認容したのではないかといったような御質問を受けることもございますけれども、日債銀の東郷前頭取が大蔵省検査で受け皿会社の活用が有効であるとして評価されたと発言している点につきましては、実は東郷前頭取は検査報告書の一つのパラグラフの中の前段の部分だけを御引用になっているように私は思います。  検査報告書におきましては、この日債銀及び関連ノンバンクの不良資産を子会社、孫会社へ移行する手法は、回収財源の確保、ひいては回収額の極大化の面で有効な面もあるけれども、損失拡大のリスクを内包していることから、当初は回収を促進するため用いた手法が資産内容悪化の大きな要因となっている旨指摘している箇所を指しているものというふうに思われます。  しかしながら、これは当時、大蔵省としては、受け皿会社を活用する方法を有効であるとして評価したものではございませんで、資産内容の悪化の大きな要因となっているということを指摘したものと承知しております。 <0420>=山崎力君= この問題は引き続き集中等で質問させていただくとしまして、時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。 <0421>=委員長(倉田寛之君)= 以上で菅川健二君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ───────────── <0422>=委員長(倉田寛之君)= 次に、佐藤道夫君の残余の質疑を行います。佐藤道夫君。 <0423>=佐藤道夫君= しからば残余の質疑を行わせていただきます。  ラストバッターでございます。どこのチームでもラストバッターというのは打力が最も振るわない者が置かれておりますので、どうかひとつ御気楽に対応していただければと思います。  そこで、前回に引き続きまして、富国有徳の有徳の方につきまして、政治家の徳のあり方ということで総理にお尋ねしたいと思います。  最初に、総理は四文字熟語に格段御堪能でございますので、先憂後楽、この言葉の意味、当然御承知と思いますが、ちょっと御説明いただければと思います。 <0424>=国務大臣(小渕恵三君)= 読んで字のごとくだろうと思います。先に憂えて後に楽しみを持つ、こういうことだろうと思います。 <0425>=佐藤道夫君= まことに申しわけございませんけれども、その答案では中学校でも合格はいただけないのかと思います。  この言葉は、千年ほど前に、中国は宋の范仲淹という政治家が説いた言葉でありまして、天下を統べる者、政治を統べる者の心構え、基本的な心の持ち方について述べた言葉でありまして、天下を統べる者はやっぱり天下をまずもって憂える、自分の楽しみはその後にする、これは当たり前といえば当たり前のことであります。そういう意味で御理解いただきたいと思います。  それから、日本の天子にもこういうことを言った者がおりますけれども、これは当然御承知と思いますが、いかがでしょうか。  十六代の仁徳天皇の、「民の竃はにぎはひにけり」という言葉がこれに当たるわけであります。仁徳天皇は難波宮におられたわけでありますけれども、宮殿が古くなりまして、これの建てかえの話が起きたときに、高台に上って満天下を見はるかすと、民の家からかまどの炊事の煙が全然上がってこない。それだけ民というのはもう食事にも事欠くありさまなのかと。そういうときに自分の宮殿をつくる、自分の楽しみを先にするというわけにはいかないということで宮殿の計画は取りやめまして、そして専ら民生に力を入れまして、何年かたってもう一度仁徳天皇が高台に上って満天下を見はるかすと、あちこちもうすべての民家から炊事の煙が立ち上っておる。そのとき思わず、「民の竃はにぎはひにけり」と、こうおっしゃいまして宮殿の建築を許されたという、これは有名な話であります。私があれこれ言うまでもないと思います。  そこで、私は、総理官邸の新営、公邸の新営、この問題をちょっと取り上げさせていただきたいと思います。  総理の公邸、官邸が大変古くなっている。つくられたのが一九二七年、田中義一内閣、今から七十年ほど前であります。それはよくわかります。そういうことを言いますと、この国会だってそのころつくられておるものですから大変古くなっておる。あちこち水漏りの跡もあるようではありますけれども、補修してもっていけば、今までも随分補修もしておりますけれども、これから三十年、五十年は十分に使えるんじゃないか。そのころの建物というのは、大体非常に堅牢にできております。今の建物とは違います。  五十年でも三十年でも使える、こういうふうに私は思っておりますが、総理官邸の方につきましては、十年ほど前中曽根さんが、バブルの絶頂期でもあったとみえまして、新築をお命じになりまして、隣地を買収する、それからいろんな基盤整備を行うということで今までにほぼ二百七十億余りも投入されておるんですが、これは二年前に橋本内閣のときに凍結されておるわけであります。橋本さんはやっぱり先憂後楽の精神。今は日本の経済が大変な時期にある。企業倒産、リストラのあらしが吹きまくる。一家心中も後を絶たない。失業率もふえかかっておる。それから、ホームレスもまたふえておる。こういうときに、首相官邸あるいは公邸の新営は自分は許しがたいと、こう考えられたんでしょう。彼ははっきりと凍結を宣明いたしまして、私はそれを大変高く評価したわけであります。  天下を統べる者はかくあらねばならないと、こう思ったわけでありますが、昨年、小渕内閣になりましたらいとも簡単にこの凍結は解除されて、総理官邸、公邸の新営に向けて真一文字に走り出しまして、何と何と四百五十億余りを費やして立派な、けんらん豪華なものをつくる。官邸は何か五階建てで、ヘリポートを備える。それから最新鋭の情報施設もつくる。それから、公邸の方もまた立派なものにする。何しろ敷地が五倍ぐらいに広がるんですから、どんな立派なものができ上がるか、もう想像するだに大変うれしい話だと思います。  やってくる外国の指導者たちは、招かれましてそれを見て、さすが経済大国の日本はすごい、こんなものをつくるのかと言う方もおるでしょうし、聞くところによると日本の経済はもう破綻に瀕している、破産国家がこんなものをつくる、一体何を考えているんであろうかと言う指導者もおるでありましょう。まあ、何と言うのかは、それは見せてみなければわからないわけであります。  これは一体、先憂後楽という精神から見て、こんなことが許されるんだろうか。民主主義国家にあっては、よほど封建時代の天子以上の心構えが指導者にとっては必要なんじゃないか、私はこう思っておりますが、どうもそうではないようであります。  しかし、こんなことで恐れ入ってはまだまだ済まないわけでありまして、今現在、首都移転の計画がこれまた着々と進行しておりまして、最終決定はまだですけれども、もう走り出した車はとまらないと思います。法律ができ、国会決議があり、審議会がつくられている。そこにおられる堺屋長官も首都移転の審議会委員の一人であって非常に熱心に首都移転の必要性を説いておられて、その本までも出されておる。もう走り出した車をとめることはできない。  総理官邸それから公邸の工事が完全に終わるのが二〇〇三年と聞いております。何と、翌二〇〇四年からこの首都移転の工事が始まるわけであります。──いや、私は笑い事ではないと思います。これは笑い事じゃございませんよ。どうか知りませんけれども、そこに立派なまたけんらん豪華な都ができ上がりまして、この国会と総理官邸、これは行政を代表するシンボルとも言うべきものですから、東京の官邸に六百七十億かかった、こういうことになると、新しい都ではやっぱり千億ぐらいかけないとつり合いがとれない、こういうことになるんだろうと思います。一つの国に総理官邸が二つ、十年ぐらいの間を置いてでき上がる、これは一体何だろうかと、だれだってそう考えると思います。本当に不思議な現象だと思います。一体これは何だろうかと考えざるを得ないわけで、私も大変疑問に思っているわけです。  そして、それができ上がりますと、東京につくった新しい官邸はどうするのかと、こう担当に聞いてもはかばかしい返事はもらえないわけなんですよ。それは政治が決めることです、何でも第二官邸、第二公邸として利用するというふうに聞いておりまするがと。第二官邸、第二公邸とは何だともう少し詳しく聞きますと、総理が東京に戻ってきたときに、一年のうち何回戻ってくるのか知りませんけれども、ちょっと公邸に入ってお休みになると。第二官邸の方では何をするか。外国から人が来た場合にそこで接遇をする、あるいは在京の経済人、その他各界の要人を集めてそこで会議をする、そのために使う、それを第二官邸、第二公邸と言うのだというふうに理解しておるというのが事務の話であります。  私は、冗談を言ってもらっては困ると。日本の総理大臣というのは大体東京にこれまた超豪邸を構えておりますから、東京に戻ってこられたらその自宅の方で十分間に合う話であります。それから、外国の要人を接遇したいと言えば、成田に着いた外国の要人はヘリコプターですぐ新首都に来てもらえばよろしいわけです。二十分もあれば来るでありましょう。当然のことです。それから、在京の経済人なんかと会いたいと言えば、経済人はヘリコプターあるいはまた新幹線、それから高速道路であっという間に新しい都に駆けつけて総理に面会を求めればよろしいわけで、そのためにわざわざ第二官邸、第二公邸をつくる必要があるんだろうか。  日本が今金が余って困る、何とか使い道はないのかと、こういうことなら別でございますけれども、世界の先進国の中で最悪な財政状況にある、こうも言われております。もう赤字、長期債務というのは一千兆も超えかかっておるという話もありまして、これをどうやって解決するか、これからの歴代内閣の大変な私は課題になろうと思います。  その先頭に立つ総理大臣の官邸、公邸が新しくなる。新しくなるだけでなしに二つもつくって、先につくった方は、暇なときに来てちょっと見てみるわというぐらいでお使いになる、こんなことが一体、道義が支配しているこの日本国で許されていいんだろうか、私は不思議でしようがないわけであります。  何年か前に昭和の三大ばか査定と言った大蔵の主計官がおりました。これは何かといいますと、戦艦武蔵と大和をつくったこと、それから伊勢湾の干拓か何かをやったこと、それから三番目が最近の話ですけれども青函トンネルをつくったこと、これを三大ばか査定、税金のむだ遣いだと、こういうふうにその主計官は言ったわけであります。  一番新しいのは青函トンネル、これは税金のむだ遣いかどうか見解の差異でありまして、今はもうあのトンネルの中を列車が一日何十本となく往復しておりまして、それが大体満員で人々が乗っておる。国民のために役立っておるわけであります。これならば許されていい。ばか査定と言った主計官は今反省しているのかなという気もいたします。  ところが、これからでき上がる東京のこの総理官邸と総理公邸、それから新しい首都にでき上がる官邸と公邸、二つ並べて一体後世の歴史家はこれを何と言うんだろうか。そのころの日本というのはよほど金が余っていたんだな、こんなむだ遣いをやったのかなと、こういうふうに考えられるかもしれません。  それから、人類の最大愚挙というのは万里の長城とピラミッドだ、こういう説もあるんですけれども、万里の長城はそれなりに異民族を防ぐために役立った、ピラミッドだって今はもう観光名所として活用されておる。そうすると、これから何千年かたつと、東京の総理官邸というのは観光名所にもなるのかと、そういう問題もないわけではないのであります。  私、真剣に実はこの問題を取り上げたいと思っておりまして、ついでに申し上げますけれども、霞が関はただいま建築ラッシュということで次々に官庁が建っておるわけであります。つい最近は中央合同二号館が完成いたしました。五百億だそうで、二十数階、プールつき、ヘリコプターつき。それから、今度は七号館が建ち上がるそうで、これもまた五百億、同じような立派なものをつくるんでしょう。  そして、完成したころはまた首都が移転して、そっちの方で新しい工事が始まる。これもまた一体どうするんだと、こう問い合わせますと、それらしい回答はいただけない。第二官庁としてつくるんじゃないでしょうか、あるいはもう何かに役立たなきゃ売ればいいですよと、平気でこういうことを言うんです、担当者が。売却する、こんなこと許されるんでしょうか。最初からせいぜい十年もたてば売るつもりでけんらん豪華な役所をつくる。政が政なら官が官、こう言われても仕方がないのじゃないんでしょうか。  総理、今私が取り上げましたこの問題につきまして、大変恐縮で失礼ではございますけれども、どうぞお考えを国民にわかりやすいように、今現在どうしても必要なんだ、これをやらないと私の執務に重大な支障が生ずるんだと、私の家族だってホームレスみたいに住むところがないんだというようなことでもおっしゃっていただくか、あるいはまた、私は大変不思議なのは、どうしても新しい都ができ上がるまで数年間必要だというなら、この国会と同じようにやっぱりちょっとした手当てをして辛抱していただけないか。それが先憂後楽、「民の竃はにぎはひにけり」と、こうおっしゃられた天子あるいは天下を統べる者の心構えではないのかと、こう思うわけでありますので、あえて失礼とは存じながらもお尋ねしているわけであります。 <0426>=国務大臣(小渕恵三君)= 失礼でも何でもないと思っております。一つのお考えだと思います。  現在の総理官邸は築後七十年を経過いたしまして老朽化、狭隘化が著しく、耐震性にも不安があり、危機管理機能を初めとする内閣機能を充足するにもはや限界を露呈しておりまして、新官邸を早急に整備することが必要であると認識をいたしております。  過去にも何回かそういう機会があったんだろうし、既に土地その他につきましては、従来その付近にございましたビルディング等の撤去も行われておりまして、この計画はかなり前からあったことでありまして、そういった意味でこの機会に建てかえをしようということだろうと思います。  金額その他につきまして、けんらん豪華という、佐藤先生、私と異なりまして形容詞が大変立派かと思いますけれども、決してそういうものではないだろうと思います。機能的にも、実際私は今執務をさせていただいておりますけれども、恐らくこの内容の電気通信機器その他を初めといたしましても、ほかの企業体のオフィス等に比べましても機能的には大変シンプルと思いますけれども、決して言われるようなものではないというふうに実は認識をいたしております。  それからもう一点、新首都のお話もございました。確かに、この問題についてはこれから御決定をされていくことだろうと思いますが、実際問題としてこれが新首都としてどういう形態になるかもこれからいろいろ国会での御議論も経なけりゃならぬと思いますけれども、仮にそれが、国会あるいはまた行政機関がすべて移転するということになりましても、新しい首都が建設をされ、機能を発揮されるということにはかなりの時間的な経過もあるのではないか、こう考えております。  したがいまして、現在のこの状況の中で、やはり政治の中心として官邸としての機能を発揮するためには、新しい機能を備え万全の体制を整えて対処することが望ましい、こう考えまして、私といたしましてはそのような結論に導いた次第でございます。 <0427>=佐藤道夫君= 総理は首都移転に反対なのでございましょうか。その点を、はっきり賛成か反対かこの場で申してくださいませ。 <0428>=国務大臣(小渕恵三君)= 先生の言われる首都移転ということがどういうことをお話しされるかわかりませんが、いわゆる首都機能の移転かどうかということもございます。  そういった意味で、これからいろいろな方々の御議論を承りませんと、私といたしまして、首都移転、首都というもののまたこの概念、すなわち皇居も含め国会も含め行政機関すべてを移転することをもって申されるのか、いろいろの考え方がございまして、まさにこれはやはり我が国にとりましても大変大きな最大の課題でございますので、これは今の段階で私が是非をここで申し上げることはできかねる、こういうことでございます。 <0429>=佐藤道夫君= 言葉のことはどうでもよろしいのでありまして、それでは首都機能の移転と言い直しましょう。  それから、国会の機能移転、まずもって国会を移転する、こういう話にもなっておるようでありまして、国会が移転すれば当然行政府もしかるべきものは皆移転する。裁判所をどうするかこうするか、それは若干議論の余地があろうかと思います。宮中はあのまま動かさないだろう、こういうふうにも言われております。いずれにしろ、国会と行政府というのはもう表裏一体でございますから、どちらかがどこかに移転しちゃって、こっちはこっちに残るんだと、そんなことは通用するわけもありません。  いずれにしろ、審議会も設けられまして、大体移転するという方向で現在鋭意審議中と。ですから、もし移転するということになれば、二つダブって総理官邸、総理公邸ができ上がる、あるいは役所ができ上がる。これを一体どうするのか。今大分先だとおっしゃいましたけれども、二〇一四年が首都機能の移転の工事の完了日です。要するに、そのときをもって新しい首都がオープンする、こういうことでありますから、今から十数年先、あっという間でございますよ。  いずれにしろ、首都機能を移転するかどうか、右か左か結論がはっきり出るまで、少なくとも新営は見合わせるべきじゃないでしょうか。  この国会だって、ですからそういうことになれば、今水漏りもする、なかなか使いにくい、そういう時代になっておるわけですけれども、我慢して頑張ろうや、こういうことになるんだろうと思います。今現在、国会の建て直しを言い出せば、国民からごうごうたる非難が出ることは間違いありません。そんなことは国会移転するかどうかそれを決めてからにしろ、当たり前のことでございます。総理官邸が特別だなんて私は考えません。  今の状況で、なかなか我慢しにくい、雨漏りがするんだ、古くなったんだ、いろいろおっしゃいますけれども、そこはそれ今まで何十年となくみんなが使ってきたものでありまして、私も何回も入ったことがありまして、あれがそうにわかに崩れるとか、そんなふうには全く考えられません。あれが崩れるなら国会だって崩れるだろうと思います。  ですから、首都機能移転の話がきちっと右か左か結論が出るまで、この総理官邸、公邸の再建は見合わせたらどうでしょうか。もう間もなく出ることになっておりますから、私が聞いておる限りでは。それまで待てないのでございましょうか、不思議でしようがないんです。 <0430>=国務大臣(小渕恵三君)= 長い経過の中で、今回、こうした官邸並びに公邸の建設を決定いたしました。細かいことは十分承知しておりませんが、たしか公邸の方は、今存在しております官邸を移動させてこれを活用するというように聞いております。 <0431>=政府委員(尾見博武君)= 事実関係のことでございますので、私の方から若干御説明をさせていただきたいと思います。  総理の御答弁の中に、まず現在の官邸の耐震性に不安があるというふうな御説明がございました。実は、この官邸につきましては、阪神の大震災がございました後に、やはり官邸というのは国の中枢機能でございますので、その耐震性はどのようなものになっているかということについて専門家に調査をしていただきました。そうしましたときに、その結論といたしましては、現在の官邸は残念なことにその構造を支えます壁とかそういった基礎的なものが欠けておって、耐震に極めて問題があるというふうなことになったという点がございます。その点を私の方から御説明させていただきます。 <0432>=佐藤道夫君= そんなことは二年前に橋本内閣が凍結したときに、これは一体何年ぐらいもつのかと十分調査された上だと思いますよ。耐震構造にちょっと不安があるけれども、手当てをすればあと何年かもつ、それじゃ凍結しようと、橋本さんはそう考えられたことは間違いないと思います。そうやみくもに、あした崩れるらしい、じゃそれを凍結しようとおっしゃるわけはないわけですから。ところが、今になってくると急に耐震性が非常に問題だということをおっしゃる。二年前は一体どういう調査をしたのか、疑問で仕方がないと思います。  それから、これは堺屋長官にもお尋ねしたいと思いますけれども、委員として首都移転につきましてかなり活発に議論された、積極的にお考えだったというふうに聞いております。今度は内閣に入られて、来年度の予算を審議する際に、閣僚の一人として、総理官邸の予算が計上してありますから、それはどうなんだろうか、ちょっと首都移転の話がきちっと決まるまでこれは見合わせたらどうかと。本当にあすにでも崩れるような建物だとすれば、今現在お住まいになっていることすら危険でございましょう。ですから、それはそれとしてどこかに仮住まいすればよろしいわけで、大変それはそれでまた評価されるんじゃないでしょうか。総理たるものが仮住まいをする、これは歴史に残るような話でございますよ。そういうこともなさらないで、今お住まいでございましょう。危険性は感じておられないんですか。大変不思議でしようがない。  その辺もあわせて、何が何でももう新営に踏み込んだんだ、やるんだという御決意ならそれはそれで結構でございますから、もう一度存念のほどを説明していただければと思います。 <0433>=国務大臣(堺屋太一君)= 私の今の職務ではございませんが、長く首都機能移転の委員をしておりまして、そのときに、当然この総理官邸、公邸の建てかえの問題は話題になりました。  そのときにどのように考えたかといいますと、首都機能を移転するまでにどれぐらい時間がかかるか、そして委員おっしゃるように、二〇一四年にできたといたしましても、移転の段階がどのように移っていくか。例えば各種審議会がどこでどのように行われるか。今のようにすべて首都機能のあります東京に委員を集めてやるのか、各国の状況も調べました。それから、ベルリンにボンから移転するときにはどういう手順になっているか、ブラジリアのときにはどうか、あるいはイスラマバードのときはどうか、いろんなことを調べましたところ、いずれも首都機能の移転というのは逐次行われるものでございまして、一遍に行われるわけではありません。  そうすると、新しくできた官庁、これは現在あります官庁の耐用年数も次々と違うわけでございますが、そういうものがどういうぐあいに回転するか。それで、この新しくできます首相官邸につきましては、その間どういう利用がどの程度の期間必要であるか、そういう点もかなり大きくいろんなグラフをつくりまして、PERTシステムを引きまして、こういう使い方が適切で、決してむだではないというような結論を出しております。  一遍に何もかも移転するわけではございませんから、東京において審議会を開くとか、あるいは東京関係の情報、経済情報を集める機関を設けるとか、これはベルリンに移転する際にボンに残される機関もそうでございました。日本の歴史を見ましても、平安京に移転するときに平城京に南都というのが残りました。そういうような歴史も調べまして、必ずしもむだではないというような結論に達して、そのようにつくられていく、私が委員のときにもそのような説明を聞きましたし、私自身もそういうことを調べてみたことがございます。だから、丸々むだだということでは全くないと考えております。  耐用年数丸々全部使えるかどうかというのは、移転の状況と関係ございまして何とも言えませんが、十分利用価値がある。そして、今の建築物というのは永久でございませんが、相当な年限これは確実に活用できるものだと思っております。 <0434>=国務大臣(小渕恵三君)= 橋本総理が一年間これを凍結いたしました。引き続いて、先生の御趣旨によれば、新首都が建設をされましてすべての行政機関も含めてそちらに行くまで、そういうものは建てかえるべきではないという御主張は御主張だと私思います。  ただ、建物が古いとか、あるいは古ければ古いなりに歴史的な価値もあろうと思いますし、二・二六は終わりましたけれども、かつてそういう事件もあの舞台に起こったことを考えますと、歴史的な建物としての存在というものも私あり得ると思います。私個人からいいますと、いずれの場所でもそれは執務をし責任ある政治をとることができればと思っておりましたが、代々の総理大臣も、今申し上げたように一年凍結した総理もおられますが、長い間この件につきましてはずっと計画をされてこられました。  完成をいたします時点まで私自身がこの役にとどまるかは存じませんけれども、やはりここ十数年も含めまして十分な機能を発揮する官邸として存在することは、私は国民に対する責務も果たし得るというふうに考えておりますので、そうした観点で私は結論をつけた次第でございます。 <0435>=佐藤道夫君= 私は極めて常識的な話をしておるわけでありまして、これは普通の民家でも、引っ越すことになった、その傍ら自宅を新営しておればだれだってみんなびっくりする。何でむだなことをするんだ。いや、これはセカンドハウスとして使うんだと。それにしてもセカンドハウスならもっと質素なものを、今の家屋を手当てするだけで十分じゃないかと考えるのが世間の常識、国民の常識であります。移転を前提にして話が進んでおるのにかかわらず、東京の住宅を新しくすると言ったらみんなびっくりすると思います。  国会だって先ほど言いましたように同じことであります。この国会古くなったから新しくしよう、いずれ首都移転するぞ、それはそのときだと、そう言ったらとても国民の常識じゃ納得できないことだろうと思います。  不思議でしようがないんですよ、なぜこんなことを強行されるのか。ある人に、ある人というのか、マスコミの一部に言わせると、何かゼネコンと話がついていて、ゼネコンから突き上げられているんだと。私、そんなことは信じませんけれども、もし本当だとすれば、ゼネコンのゼネコンによるゼネコンのための行政かということも言いたくなるわけでありまして、四百五十億、総トータル七百億といえば相当な工事でありまするから、それを期待している向きもあるのかもしれませんけれども、そんなものではない。総理官邸、総理公邸というのは、私、国民のシンボル、国のシンボルだと思います。それが状況いかんによっては二つできることが大いにあり得るわけで、これとこれとは一体何なんだと。  先ほど堺屋長官は丸々むだではないとおっしゃいました。丸々むだではないとすれば半分ぐらいはむだなのかと国民だれだってそういうことを言うわけであります。しかし、こんなことが本当に許される、それを実行した政治家が、これ予算案を審査して最後に決めるのは我々国会議員ですから、国会議員自体も連帯責任があるわけであります。多数で押し切るとかそんな問題でもないと思います。やっぱり問題のある予算についてははっきりと国会の意思を出しまして、我々もあと何年かはこういう古い建物で頑張るんだ、総理も頑張ってほしい、どうしてもだめならばできるだけつつましやかな質素な簡素なものでちょっと我慢してほしい、情報機器の関係は、それはそれで別途立派なものを必要なものをつくればいいわけですけれども、公邸と官邸ぐらいは本当に質素なもので頑張ってほしいなと、こう私は思いますし、国民のすべてもそう思うんじゃないでしょうか。  この話、公開討論でもすれば、国民はどっちに投票するでしょうか。やっぱり小渕総理の言うとおりだ、総理官邸はもう古くなったから新しくしろ、私は賛成だと言う国民がいるんでしょうか。総理以外はだれかいるんでしょうか。本当に疑問で仕方がないのであります。圧倒的に国民は私に票を投ずるんじゃないでしょうか。先生の言うとおりだ、むだなものはやめてほしいと。日本の財政が立派に立ち直った、金が余ってしようがない段階ならいざ知らず、この段階ではそういうことはすべきではないと思うのが私は国民の普通の常識だと思います。  余りくどいようで恐縮でございます。最後にもう一度、私の今の話を踏まえて存念のほどを、どうしても必要なんだ、これがないともうあすにでもつぶれてえらいことになるんだ、執務にも支障が生ずるんだということらしいですから、そういう類を具体的に話して国民の理解を得るように努力していただきたいと思います。 <0436>=国務大臣(小渕恵三君)= 国民に理解を求める努力はしていかなければならないと考えております。 <0437>=佐藤道夫君= 私の意見を踏まえてというふうに、私、申し上げたわけでありまして、国民の意見を聞く機会があれば、凍結を解除する段階で当然、首相の立場を考えて、今の官邸は古い、これではもうろくな仕事もできないということを強く訴えて国民の理解を得べきであったと思いますけれども、そういう話は、私、聞いたことがないのであります。国民だって恐らくこの問題を知らないんじゃないでしょうか。二つもできるのかと、こういうことを言われたら、まずだれだって反対反対と言い出すと思います。いかがなんでしょうか。  これからのことを私は言っておるわけであります。もしできましたらこれはやっぱり中断をして、凍結をして、首都移転の話、機能と見合わせて、それがそういうふうにいつごろまで、あと二十年もかかるならこれは仕方がないとか、いや十年ぐらいで実現するとすればもうこれは見合わせようとか、いろんな考えがあると思います。少なくともことしぐらいは凍結していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 <0438>=国務大臣(小渕恵三君)= 既に来年度予算にこれを予算化しておりますので、この判断は国会にお願いしたいと思います。 <0439>=佐藤道夫君= そう言われたら反論はできませんので、国会議員の良識ということだろうと思います。大変失礼申し上げました。  以上でございます。 <0440>=委員長(倉田寛之君)= 以上で佐藤道夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて総括質疑は終了いたしました。  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十三分散会