『盗聴法ニュース』5号

「告発・私は警察に盗聴器を納入した」
警察は昔から盗聴を行ってきた!

―丸竹洋三氏の証言―
 (元リオン株式会社聴能技術部次長)


● 警察盗聴器納入調査団

 「盗聴法」(組織的犯罪対策三法案)をめぐる情勢が、大きく変化しつつあります。自民・自由・公明3党は、四月二十八日、衆院法務委員会で、「議事進行」、「委員長不信任」などの怒号が飛び交う大混乱の中、審議日程を強行採決しました。以来、堰を切ったごとく、「盗聴法」を批判する報道や論説が、連日、メディアを賑わせています。世論の関心も、急速に膨らんでいるようです。
 そして、五月上旬に発売された写真週刊誌『フラッシュ』(光文社)には、警察に盗聴器を納入したという爆弾証言までが飛び出しました。この報道を重視した超党派の国会議員有志たちは、「警察盗聴器納入問題調査団」(坂上富男団長)を結成し、五月二十二日、衆議院第二議員会館の会議室で、丸竹洋三氏(リオン株式会社 元聴能技術部次長)を招き、ヒアリングを行いました。
 丸竹氏によると、約四十年前に補聴器メーカー「リオン(株)」に入社してから、約百三十台のワイヤレスマイク方式の盗聴器を警察庁に納入するなど、修理や開発など警察が発注する盗聴システムに業者として関わってきたそうです。そして「警察はずっと昔から盗聴を行ってきた」などと語りました。
 また、緒方靖夫共産党国際部長(当時)宅盗聴事件が発覚した後に、「見つかりにくい」ことを最優先の条件として、警察から新型盗聴システムの開発を依頼されたことも、島根県警からの依頼書を調査団の国会議員や報道陣に提示しながら、証言しました。
 警察による「違法盗聴」の存在が、改めて確認される結果となりました。

● 真の狙いは「情報収集」か

 本紙「盗聴法ニュース」では、盗聴令状などの法的規制が、実際には機能しないことを、アメリカの事例やNTT現場職員の証言などから、度々、お伝えしてきました。
 また、衆議院法務委員会での審議において、捜査員はレシーバーで通信を盗聴するため、立会人が通信を聴くことはできず、犯罪と関係ない盗聴をストップさせる権利(切断権)すらないことが、明らかになっています。
 不思議なのは、公明党の「立会人を弁護士など法的資格を持つ中立者とする」「立会人には切断権を」などという常識的な提案を政府が拒絶していることです。
 政府は、ことあるごとに、「盗聴法」が諸外国と比べて非常に厳格であると説明しています。ですが、現行法の枠内でも、切断権を有する立会人の下での盗聴捜査は、裁判所に認められています。「盗聴法」では、明らかに現行よりも要件を緩和するものです。
 どうしても立会人に通信内容を聴かせたくない「理由」があるとしか思えません。
 「盗聴法」では、裁判の証拠として使用する際に、原則として令状盗聴が要求されています。(但し、別件盗聴も認められている)
 しかし、令状を申請せずに盗聴し、そこで分かったことを「捜査の端緒」として犯罪を立件するという、「情報収集」活動には、全く法的規制がありません。令状が機能するのは、あくまで盗聴した通信記録を裁判で証拠として使用することが前提です。
 法案では、盗聴捜査を電話局の中で行い、管内の電話に関しては、全て盗聴することが可能です。立会人は、通信内容を知ることができない上に、切断権もありません。(「中立性」も怪しい)
 もし、暴力団事務所など、盗聴要件を満たしやすいところで令状をとれば、管内の通信は、自由に盗聴できるという訳です。
 こうなると、対象は犯罪捜査のための「情報収集」にとどまりません。政治家を盗聴し、その情報が警察官僚出身の政治家に流れて、政治的な謀略や脅しに使われることも充分にあり得る話です。
 また、一般の市民生活が監視の対象にもなってきます。「犯罪のおそれ」は、誰にでもあるからです。
 政府は、戦前の特高(特別高等警察)でも復活させるつもりなのでしょうか。