自民党Webサイトに掲載されていたQ&Aに対する批判

株式会社市民電子情報網 代表取締役 安田幸弘

自民党のWebサイト(http://www.jimin.or.jp/jimin/)に掲載されていた盗聴法案に関するQ&Aの内容にコメントします。「Q.」と「A」の部分がサイトのページからの引用(資料等は省略)で、「→」以下が安田によるコメントです。


Q.1 最近、組織犯罪が多発しているとのことですが、ここ数年の事件の発生状 況等は、どのようになっていますか。

A  薬物事犯については、平成7年以降、覚せい剤事犯の検挙人員が2万人に迫る 勢いで推移しており、また、覚せい剤の押収量は、本年5月末で既に過去最高の 年間押収量を超えるなど、「第三次覚せい剤乱用期」という厳しい情勢にありま す。(別表1)
 銃器事犯については、銃器を使用した凶悪な犯罪が増加傾向にあるなど、極め て憂慮すべき状況にあり、薬物・銃器の密輸入・密売には、暴力団が深く関与し ています。(別表2)
 集団密航事件については、依然として多発傾向にあり、わが国の治安上重大な 問題となりつつあります。その背景には、国際的な密航請負組織である蛇頭の関 与があり、密航を請け負う過程で一部わが国の暴力団との連携も見られ、また、 殺人等の凶悪事件を発生させた例も見られます。(別表3)
 組織的殺人については、暴力団の対立抗争などが多数発生し、一般市民巻き添 えにするケースもあり、不安と恐怖を与えています。さらには、暴力団関係者に よる企業幹部を対象としたテロ行為などもしばしば発生しています。(別表4)

→ 犯罪を防止するのが警察の義務です。職務怠慢の誹りを免れません。

Q.2 通信傍受法案とは、どんな法律ですか。

A「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案」や「刑事訴訟法 の一部を改正する法律案」と並ぶ、三法案の一つです。
 通信傍受法案は、暴力団等の組織的な犯罪を摘発するため、捜査機関による電 話等の通信の傍受を限定的に認めるもので、その対象範囲や具体的な手続きを明 確に定める法律です。

→ 傍受法案は限定的ではありません。また、その対象範囲や具体的な手続きについても全く不明確です。たとえば「電話等の通信の傍受」に、インターネットの電子メールなどが含まれると言われていますが、インターネットの通信手段は電子メールだけではありません。また、「電子メール」という言葉自体、技術的には非常にあいまいです。インターネットでは、通信の手順を「プロトコル」と呼び、電子メールは「SMTP」と呼ばれる電子メール用のプロトコルが主に使われます。しかし、HTTPというプロトコルを使った電子メール(Webメールなどと呼ばれる)を盗聴しようとすれば、SMTPとは別の盗聴方法が必要になります。この他にもさまざまなプロトコルを電子メール用に利用することができるのですが、「どのプロトコルか」に対しては、明確な返答はできないはずです。それは、盗聴の「対象範囲や具体的な手続き」がまったく定められていないからです。

Q.3 犯罪捜査のために、なぜ通信の傍受を行う必要があるのですか。

A  最近、薬物や銃器にかかわる事件が多発し、国民の生命、財産が脅かされると いう深刻な事態に陥っています。通信傍受の対象となる犯罪は、薬物関連犯罪、 銃器関連犯罪、集団密航の罪、組織的殺人ですが、これらの犯罪は組織的、密行 的に行われ、犯行後にも証拠を隠滅したり、犯人を逃亡させるなどの工作が行わ れることも少なくありません。
 また、犯行に関与した末端の者を検挙しても、首謀者等の氏名や関与の状況に ついて供述を得ることは容易でなく、組織の根絶のためには、その特定が不可欠 です。
 そこで、通常の捜査方法では真相の解明が困難であるこれらの犯罪のための特 別な捜査手法として通信傍受を認めることが、今日の組織犯罪に対抗するために は、どうしても必要なのです。
 主要先進諸国のほぼすべてにおいて通信傍受制度に関する法整備がなされてお り、わが国がこのまま放置しておけば、日本が組織犯罪の"抜け道"となりかね ず、組織犯罪対策の強化は、国際社会からの強い要請でもあります。

→凶悪な犯罪者の特定のために通信傍受が不可欠というのは正しくありません。特に盗聴法案が通れば、盗聴法案が想定する凶悪な組織犯罪では、当然「秘話装置」や「暗号通信」など、当局が解読不能な方法により通信が行われるようになるでしょう。実際、米国などでは暗号通信が使われ、捜査当局が捜査の困難を訴え、盗聴だけでなく、「暗号規制」を叫んでいる状態です。つまり、盗聴さえできれば特定ができるわけではありません。また、米国の暗号政策には軍が深く関与しており、「犯罪防止」という以上に、軍事目的、公安目的の性格が強いのです。
 なお、「国際社会からの強い要請」が、具体的にどの国からどのような内容の要請なのかが明らかではありません。私たちは、米国のCIAからの(FBIではなく)要請があったらしいという話は聞いています。また、捜査協力に関しては米国を除き、「各国の事情にあわせて」行われるもので、自民党の言う「国際」は単に米国の当局のことでしかありません。

Q.4 通信の傍受を認めることは、通信の秘密を保障する憲法に違反しないので すか。

A  憲法第21条第2項は、通信の秘密を保障しており、これについては最大限尊 重すべきことは言うまでもありません。他方、憲法第12条及び13条は、公共 の福祉の制限を規定しており、通信の秘密の保障も、絶対無制限のものではな く、公共の福祉の要請に基づく場合には、必要最小限の範囲でその制約が許され るということは、憲法解釈の常識と言えます。
 通信傍受法案は、凶悪な組織犯罪の捜査を目的とする公共の福祉の要請に基づ き、要件を厳格に定めるなど、必要最小限の範囲に限定して傍受を許すものであ り、決して憲法に違反するものではありません。

→仮に「必要最小限」であれば認められるとしても、それなら「必要最小限」の盗聴しか許さないような法律にするべきです。われわれは、今回の法案が「必要最小限」どころか、最大限に当局の恣意的な解釈で運用される余地があることに強く反対しています。

Q.5 通信傍受が認められると、犯罪に関係のない一般市民の通話が自由に聞かれるおそれはないのですか。

A  本法案の通信傍受は、対象となる犯罪が薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密 航の罪、組織的殺人に限定されています。これは、限定されたその具体的な犯罪 があり、他の捜査手段がない場合に最後の手段として行うものであり、犯罪にか かわる電話番号等を令状で特定し(一令状に一番号)、その電話等における犯罪 の実行に関連する通話のみが傍受の対象になります。一般の市民がこのような犯 罪や電話に関係することはおよそ考えられません。
 また、通信傍受は、厳しく制約された裁判官の令状に基づき、立会人の常時監 視のもとに実施される等、その手続は極めて厳格であり、犯罪と関係のない一般 市民の通話が広く傍受されることはあり得ません。

→ 全くの詭弁です。われわれは、特にインターネットの盗聴は、インターネットの通信の性格上、「その電話等における犯罪の実行に関連する通話のみが傍受の対象」とすることができず、また、何の権限もない「立会人の常時監視のもとに実施」される盗聴は、あまりにも手続きが曖昧であると考えています。つまり、インターネットの盗聴に関して言えば、犯罪と関係のない一般市民の通話を広く盗聴しなければ、令状に記載された人の通信を特定することができないのです。

Q.6 捜査機関は、どういう場合に通信傍受を行うのですか。

A  通信の傍受は

     
  1. 組織的殺人等の対象犯罪そのものが犯されたと疑うに足りる十分な理由 があること  
  2. 対象犯罪が犯され、同様の犯罪が引き続き行われると疑うに足りる十分 な理由があること  
  3. 無差別大量殺人を行う計画・謀議のもとで大量の毒物を違法に製造して いる場合のように、対象犯罪の準備のためにこれと一体として他の重い 犯罪が犯され、引き続き対象犯罪が犯されると疑うに足りる十分な理由 があること
 が前提となります。
 さらに、通信傍受は、通常の捜査方法では真相の解明が困難である場合の特別 な捜査手法であり、通信傍受以外の他の方法によっては、犯人を特定し、犯行状 況等を明らかにすることが著しく困難な場合に、最後の手段として、裁判官の令 状を得てこれを行うことができます。

→「犯人を特定……が著しく困難な場合」ということは、犯人を特定することができない場合に盗聴が行われることを意味しています。特定できない犯人の通信を盗聴するには、万人の通信を盗聴し、その中から怪しい人物の通信をふるい分けるしか方法がありません。つまり、無関係な市民の通信の内容が逐一、検討されることになります。

Q.7 裁判官が捜査機関の言いなりに令状を出すおそれはないですか。

A  令状請求を受けた裁判官は、独立した立場から、法律に定められた要件につい て慎重な令状審査を行いますので、捜査機関の言いなりになることはあり得ませ ん。
 なお、日本は、米国などに比べ、逮捕状請求や勾留請求に対する却下率が低い ことが指摘されますが、これは、捜査機関内部においても、逮捕状等の請求に当 たって厳しいチェックを行っていることや、令状請求に際して、裁判官から疎明 資料が十分でないと指摘された場合には、警察官がその令状請求を撤回して持ち 帰る場合も少なくないことなどの結果です。決して、裁判官がいいかげんな令状 審査をしている結果ではありません。

→ これについては、最近の犯罪報道などを見る限り、残念ながら信用できないというしかありません。

Q.8 通信の傍受は、誰がどこで行うのですか。

A  通信の傍受は、検察官又は司法警察員が、令状に記載された傍受の実施場所に おいて行います。通常は、NTT等の通信事業者の施設等において行うことにな ります。
 彼らが違法な傍受を行った場合は、厳しい罰則が科せられます。

→ そうであれば、「通信事業者の施設などにおいて行う」と法案に明記するべきではないでしょうか。しかし、以前、法務省から「通信事業者から協力を拒否されたら、自力執行する」という回答を受けています。つまり、「施設」の外で行うこともあり得るということです。また、令状に、施設の外(具体的には警察の庁舎内など)で盗聴を行うように記載されていれば、そのようになるのでしょう。また、それは可能です。非常に不安が大きいとしかいいようがありません。

Q.9 捜査官は、傍受の対象となる電話等を継続的に聞くのですか。

A  捜査機関は、裁判官の発した令状に記載された傍受すべき通信、すなわち犯罪 に関係する通話しか聞くことができません。これに該当するかどうか明らかでな い場合には、これを判断するため、必要最小限度の範囲に限り、断片的に通信の 内容を聴くこと(スポット・モニタリング)が許されています。
 したがって、傍受すべき通信に該当しない通話を継続的に聴くことはできませ ん。

→ インターネットの通信は、瞬間的に行われます。したがって、すべての通信を記録し、その後に記録内容を調べて関係の有無を選別する以外に盗聴の方法はありません。  したがって、インターネットではあらゆる通信を継続的にすべて記録し、その内容を調査しなければならないのです。

Q.10 立会人は、具体的にどんなことをするのですか。

A  立会人は、傍受が令状に従って行われていることを確認したり、通信傍受記録 の封印を行うことなどによって、傍受が適正に行われていることをチェックする 役割を果たします。
 そのため、立会人は、傍受の実施に関して、意見を述べることもできますが、 立会人に傍受をしている通信の内容を確認する役割まで負わせるのは適当ではあ りません。
 そこで、この点については、傍受した通信がすべて記録された上、立会人が封 印して、裁判官が保管することにより、捜査機関がどのような内容を傍受した か、後から確実にチェックできる仕組みになっています。

→ 立会人はどの通信が盗聴されているかがわかりません。「令状に従って行われていることを確認」することができないということです。意見を述べることはできても、不適切な盗聴を防止する権限もありません。また、傍受をチェックすると言っても、すべて記録されたことを確認する以外のチェックは事実上不可能です。つまり、立会人は「設備が操作され、通信が盗聴された」という事実を確認することができるだけでしかありません。

Q.11 捜査官が捜査に関係のない通信を傍受し続けた場合、立会人がこれを切 断することは可能ですか。

A  立会人に切断権を与えるべきだとの意見も一部にはあります。しかし、そのた めには、立会人に事件の証拠関係や通話をしてくるであろう関係者の人間関係な どを知らせた上で、通信の内容を聴いてもらうことが必要になります。
 しかし、立会人にそこまでの関与を求めることは、立会人に負担がかかり過ぎ ることはもちろん、かえって関係者のプライバシーを犯すことになりかねませ ん。

→ 通信事業者の立場としては、まるで意味のない立会人として長時間の盗聴行為に同席させられることに対し、いかなる積極的な意味も見いだせません。
 しかし、それは別としても、何も通信の切断には、「立会人に事件の証拠関係や通話をしてくるであろう関係者の人間関係などを知らせた上で、通信の内容を聴いてもらうことが必要」ではありません。盗聴用機器の不適切な操作や、目的外の操作などを制止することは可能です。

Q.12 通信傍受が行われた事実が、すべての当事者に通知されないのはどうし てですか。

A  犯罪と何らかの関係があり傍受記録に記録された通信の当事者に対しては通知 がされます。
 しかし、そのような通信に当たるかどうかを判断するために聴いたに過ぎない 犯罪と何ら関係のない通信は、当事者に通知をしないこととしています。
 このような該当性判断のための傍受は、通信の一部を断片的に傍受するにとど まり、その部分の記録は、消去されて捜査機関の手元には残りませんし、通知を 行うためにだけ、犯罪と関係のない通信の当事者を特定するための捜査を行うこ とは適当ではありません。
 さらに、犯罪に関係のない通信の当事者、例えば、被疑者の友人や一般の取引 先にまで広く通知をすることは、かえって、被疑者の不利益になると考えられま す。

→ インターネットの盗聴は、広く無関係な通信まで盗聴しなければならないため、すべての当事者に通知すると騒ぎが大きくなるだろうという心配をしているものと思われます。この回答は、まさに無関係な通話を広く盗聴する可能性があることを意味しています。  もちろん、これまでにも書いたように、「このような該当性判断のための傍受は、通信の一部を断片的に傍受する」にとどまりません。「犯罪と関係のない通信の当事者を特定するための捜査を行うことは適当ではありません」というのは、捜査機関にとって「適当」ではないだけで、われわれ市民は知る権利があります。また、それでこそ、違法な盗聴の市民によるチェックが可能になります。

Q.13 通信傍受に当たり、捜査機関の濫用を防止するための制度的な担保措置 はありますか。

A  通信傍受を行う場合、もちろん傍受令状が必要でありますが、その請求には厳 しい制約があり、裁判官の厳格なチェックを経なければなりません。その令状に 基づき通信の傍受を実施している間は、第三者が常時立会うことになっており、 立会人は、傍受の実施に関し、意見を述べることができるとされています。
 また、傍受をした通信は全て記録し、立会人が封印をした上、その記録は裁判 官によって保管されることになっています。そして、不服がある関係者は、その 記録をもとに、裁判官に不服を申し立てることができますし、違法な手続によっ て傍受された通信の内容は、裁判で証拠にできないこともあります。
 さらに、捜査・調査を行う公務員が通信の秘密を侵した場合には、3年以下の 懲役又は100万円以下の罰金という重い刑罪が科せられることとされており、 これらの罪については、検察官が起訴をしなかった場合でも、告訴・告発をした 人から、裁判所に、審判を開始するように請求することができる制度も採り入れ られています。
 このように,通信傍受制度が捜査機関により濫用されないように、十分な制度 的手当てが尽くされています。

→ 立会人により不法な盗聴が防止できる制度的担保措置を求めます。「違法な手続によって傍受された通信の内容は、裁判で証拠にできないこともあります」ということは、「証拠にできることもある」のでしょうか。それなら、違法な手続きによる盗聴はなくならないでしょう。まったく制度的な担保措置になっていません。
 「重い刑罰」は、少々軽すぎるように思います。

Q.14 諸外国では、通信傍受の法制度が既に完備されていると聞いています が、わが国の通信傍受法案と比べてその要件、手続にどのような違いが ありますか。

A  諸外国では、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、イタリアなど 主要先進諸国のほぼすべてにおいて通信傍受制度に関する法律が整備されていま すが、わが国の通信傍受法案は、これら諸外国の法制度に比べて、傍受の対象犯 罪を限定し、犯罪の嫌疑については、逮捕の要件である「相当な理由」よりも厳 しい「十分な理由」まで必要としています。さらに、傍受ができる期間について も、例えば、アメリカの連邦法では、最初は30日以内で、延長すれば更に30 日以内で実施することが可能であり、その延長の回数に制限がないとしているの に対し、わが国の法案では、最初の期間は10日以内で実施し、延長は10日以 内まで可能ですが、最初の10日を含め、最大限で30日を超えることができな いとするなど、厳格な要件を定めています。
 また、傍受の実施の手続についても、傍受の実施時における通信事業者等の常 時立会い、傍受した通信すべてを録音等で記録し、これを封印して裁判官が保管 するなど、諸外国よりも厳格な手続の適正を確保するためのシステムを設けてい ます。

→ 「諸外国」として列挙されている各国の性格を見ると、いかにも、といった国々であることに不安を感じます。

Q.15 「国会での審議が不十分」との野党の批判がありますが、審議は十分に なされたのですか。

A  衆議院の法務委員会では、本法案に関し、40時間にも及ぶ審議を行い、11 人もの参考人からの意見聴取が行われています。過去の重要法案の審議時間は2 5時間程であり、今回は、異例の慎重な審議であったと言えます。
 もちろん、本法案は重要法案ですから、今後、参議院においては、更なる真剣 な議論が望まれることは言うまでもありません。

→ それほど、異例に問題の多い法案であるということを示しています。

Q.16 警察が信頼できないので、プライバシーを侵害するおそれのある通信傍 受を認めるべきでない」との意見が一部にありますが、このことをどう 考えますか。

A  全国各地の交番・駐在所は、地域住民に溶け込み、安全の確保に十分な役割を 果たしていることは、国民の認めるところであり、また、日本の警察は、海外か らも高い評価を得ています。国民が警察を信頼していないと言う指摘は、事実に 反すると考えます。
 しかしながら、通信傍受法案の重要性を考慮し、捜査当局においては、この法 律を厳格かつ慎重に運用し、国民の信頼に応えていかなければならないことは当 然です。

→ 過去の違法な盗聴を頑として認めないようでは、信頼以前です。過去の違法な盗聴をきちんと整理した上で「信頼できるかどうか」が論じられなければなりません。

Q.17 警察は、通信傍受法案を具体的にどのように運用していくのでしょうか。

A  通信傍受については、警察としても、基本的人権に深くかかわるものであるこ とを十分認識していますので、通信傍受法案が成立した場合には、法に定められ た厳格な要件と手続が、警察部内に周知徹底されることになります。
 また、通信傍受法案の慎重かつ適正な運用を担保するため、

  • 傍受令状の請求に当たっては、警察本部長の決裁を必要とし、組織としての 責任を明確にすること
  • 裁判官の発した令状に記載された傍受すべき通信に該当するかどうかを判断 するため、必要最小限度の範囲に限り傍受を行う場合の具体的方法をマニュ アル化すること
などをはじめ、運用の基準や留意事項が国家公安委員会規則等で規定され、これ についても警察部内に周知徹底されることになります。

→ 問題は、「必要最小限度の範囲に限り傍受を行う場合の具体的方法」が何も決まっていないということです。いや、実は決まっているのでしょう。つまり、電子メールなどは、一括してすべての通信を記録し、後で選別する、といったように。
 しかし、その具体的な方法については、何も言及されていません。おそらく、故意に言及されていないものと思われます。その理由は、たとえば電子メールの盗聴のための「具体的な方法」としては、無関係な通信まで広く盗聴、記録し、それを持ち帰って分析するなど、無関係な市民のプライバシーの著しい侵害につながる方法しかないからです。


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