1999年6月3日
沖縄県マスコミ労働組合協議会
議 長 比嘉 稔
捜査機関による盗聴を認めた「盗聴法案」(通信傍受法案)など組織犯罪対策3法案が1日、自民、自由、公明各党の賛成により、衆議院本会議で可決された。このうち市民の日常生活と最もかかわりの深い盗聴法案は、対象となる犯罪を限定しているものの、憲法21条で保障された通信の秘密=個人のプライバシーを国家権力が侵すものであることは明白だ。私たちは3党による法案可決に強く抗議するとともに、参議院が徹底した審議を通じて法案の問題点を広く明らかにし、これを廃案とすることを要求する。
法案では、まだ発生していない「将来の犯罪」を捜査当局による盗聴の要件とし、予備盗聴や「緊急性」を理由とした別件盗聴まで認めている。通信管理者の常時立ち会いや裁判所による歯止めがどこまで有効かは、きわめて疑問であり、個人のプライバシーと尊厳が限りなく侵されるおそれが強い。なおかつ「捜査に必要」との名目で盗聴の対象が報道機関にまで及び、記者個人の通話が盗聴されるおそれも出てくる。そうなれば、記者の自由な取材が妨げられ、取材源の秘匿が保持できなくなる。ひいては自由な言論・報道活動そのものが大きく脅かされるだろう。権力を監視し、民主主義と人権を守るべき報道機関が、権力によって監視されるとは、考えただけで身の毛がよだつ恐ろしさだ。
憲法をないがしろにし、基本的人権を侵す盗聴法を断じて成立させてはならない。私たちは、ガイドライン関連法に続いて自民、自由、公明3党が憲法違反の悪法を成立させようとしていることを座視することはできない。沖縄サミットを来年に控え、当局が市民に対する監視を強めつつある中で同法が成立すれば、県民の生活はいっそう息苦しいものとなるだろう。しかも、だれ一人それと気付かないうちに。個人の生活に密かに忍び込み、電話を盗み聞きし、メールを盗み読むことは、政府や捜査当局がいかなる理由を付けても許されるものではない。
私たちマスコミ労協は「盗聴法」に重ねて強く反対し、廃案を求める姿勢を明確にするとともに、県民一人ひとりがみずからのプライバシーと尊厳を守るため、同法案に反対の声を上げるよう心から呼びかける。