小倉です。
1999年6月6日づけの、ACLUのバリー・スタインハードさんが米国の情報公開法に基づいて請求した公文書開示請求にたいして、CIAが書いた返事が下記のウエッブ上で公開されている。
スタインハードさんは、米国自由人権協会副理事長で、盗聴問題の専門家である。3月に日本の超党派国会議員と市民運動団体、ネットワーカー団体がお招きし、米国の盗聴捜査と人権侵害についての実情を聴いた。その際、スタインハードさんはしきりに、日本の盗聴法成立の動きの背後に米国政府の圧力があるのでは、と語り、情報公開法で資料を請求してみると語っていた。
スタインハードさんは、日本における盗聴法制定に関して、米国政府の関係者と日本政府の関係者のあいだで話し合いがあったかどうかについて、公文書の開示請求を行った。
これに対するCIAの回答はきわめて興味深い。CIAは次のように回答している。
「(前略)CIAは、あなたの請求に係る記録の存在も不存在も確認することも否定することもできない。こうした情報は----それが公式に認められないとすれば---大統領令12958にもとづく国家安全保障の理由によって機密扱いとされる。こうした記録の存在、あるいは不存在の事実はまた、直接諜報機関の情報源や情報収集の方法に関する情報と関わる。中央情報局の長官は、こうした情報を1947年の国家安全保障法のサブセクション103(c)(6)および1949年のCIA法のセクション6にしたがって認められていない開示から保護する責任と権限を有している。したがって、あなたの請求はFOIAの開示義務免除条項(b)(1)および(b)(3)によって拒否される。(後略) 敬具。情報・プライバシーコーディネーター、リー・S・ストリックランド」
このCIAの回答は、開示請求を拒否したとはいえ、この拒否の事実とその理由だけでも極めて興味深い。なによりも。CIAは日本の盗聴法が米国の安全保障や情報収集活動と関わりがあることをみとめている。そもそもCIAが回答を寄せているということに注目すべきである。日本の国会ではもっぱら盗聴法は麻薬だとかの組織犯罪問題であるとされ、軍事や政治と関わる国家の安全保障問題であるなどという議論はまったくでてきていない。ところが、米国政府は、日本の盗聴法がCIAが関与するような領域の問題であり、したがって国家安全保障と関わるものであるという理解を示している。しかも、情報の取得と関わる問題だとまで書いているから、要するに、盗聴法が成立すれば、捜査当局が取得した盗聴情報はCIAにも渡されるのだ、ということである。CIAが欲しがるのは、薬物売買をする日本の若者たちの情報などではないことは明らかである。
国際的な犯罪組織やYAKUZAの情報ならがFBIやインターポールは欲しがるかも知れないが、はたしてCIAは日本政府に立法化をさせてまで欲しがるものだろうか。
今回の盗聴法は、かなりおおがかりな米国を中心とした国際的監視システムと関わりがあるかもしれない。EU議会で大問題になっているエシュロンともどこかでリンクしているかもしれない。
いずれにせよ、盗聴法の性格については、私たちは、対象犯罪の盗聴であっても無関係盗聴が意図せざる結果として行われるのではないか、などという暢気な話では片付かないこと、むしろ日本政府はこの法律を隠れみのに、意図的にさいしょから立法の趣旨も、歯止めも無関係に、大規模な盗聴と監視を行おうとしているとみるべきかもしれない。また、盗聴の合法化が必要なのはたんに隠れみのとしてだけではなく、通信事業者を合法的に巻きこみ、公然と莫大な国家予算を使うことができるという大きなメリットがあることに注目する必要がある。
---------------------------- ((((((((((^0^)))))))))) Ne! Kasxkonekto legxprojekto toshimaru ogura ogr@nsknet.or.jp http://www.jca.apc.org/~toshi/ ((((((((((^O^))))))))))
<文中、すべての強調(赤文字、ボールドなど)は転載・編集者(今井恭平 pebble@jca.apc.org)による>