組織犯罪対策三法案に反対する決議
通信傍受法案を含むいわゆる組織犯罪対策三法案は、一部修正を経て衆議院を通過し、参議院における審議が始まっている。
これら三法案に国民の基本的人権を侵害することとなる重大な問題が含まれていることは、当会がかねてより指摘してきたところであり、マスコミによってもくり返しその問題点が指摘されてきた。
にもかかわらず今日まで国会の審議において、提起されている疑義は解明されたとはいえない。いうまでもなく、通信の秘密は内心の自由、思想信条の自由を保障するものとして憲法上最大限尊重されなければならないものである。ところが、通信傍受法は、対象犯罪の範囲を絞ったものの、犯罪の重大性との関係での比例原則も、他の方法では得られない場合に限るという補充の原則も考慮することなく、捜査の必要性があるという理由のみで、傍受の対象を際限なく拡げることができ、これに対する歯止めがない。立会権も立会権者に切断権がない以上警察による傍受の濫用を防止する機能を期待することはできず、結局本法案には、その濫用を抑制するものがないのである。
また、犯罪に関連のない会話が聴取された場合、それが刑事手続に使用されない限り、会話当事者に傍受されたことすら告知されないこととなっているため、これについての不服申立制度も有名無実となる可能性が高い。
さらに、傍受記録の保管・利用は警察の判断に委ねられているなど、本法案は捜査の必要性のみを重視しており、国民の基本的人権を侵害する危険性を軽視していると言わねばならない。マネーロンダリング罪についても、対象犯罪をいわゆる組織犯罪に限定せず、しかも、犯罪収益などの使用は従来不可罰の行為とされていたにもかかわらず、これを広く犯罪としようとしている点において、社会・経済上の取引の安全に大きな支障をきたすことが懸念される。
さらに、証人などへの尋問制限は、今直ちにこの制限をしなければならない緊急の状況にはなく、しかも制限する場合の要件が不明確なことなどから、憲法上保障された被告人の証人尋問権を侵すものである。
以上のとおり、三法案はいずれも憲法上重大な問題が含まれており、これについて提起されている問題点が解決されていない以上、当会はこれに反対である。
以上のとおり決議する。平成11年7月6日
大阪弁護士会