盗聴法案の撤回を求める意見書
上記の意見書を次のとおり提案する。
平成11年6月8日提出
小金井市議会議員
漢 人 明 子
渡 辺 大 三
青 木 ひかる
長谷川 博 道
6月1日の衆議院本会議で、通信傍受法案(盗聴法案)が可決された。多くの国民、刑法学者などから懸念の声があげられる中の採決に、あまりにも拙速といわざるを得ない。
憲法第21条第2項には、「通信の秘密は、これを侵してはならない」とし、国民の通信における基本的人権を保障している。
政府案は、警察官が犯罪捜査のためとして、犯罪に関係あるかどうかもわからない電話などを、繰り返し、継続的に1日24時間、最長30日間も聞くことができるようになるものである。盗聴の範囲は、犯罪とは無関係の善良な市民の電話や、ファックス、インターネットまで含まれる。また、当事者には何も知らされず、個人情報が筒抜けになる。
政府は、裁判官の「令状」をとってやるから乱用防止ができるといっているが、令状の却下率は1%にも満たないのが現状である。捜査員が請求すればほぼ100%、裁判官は令状を出している。衆議院法務委員会の参考人質疑の中でも、「裁判官は判断材料を何も持っていない。乱用を防ぐのは難しい」と指摘している。
また、盗聴の対象範囲を「組織的に行われることの多い麻薬、銃器関連犯罪、集団密航、組織的殺人の4種に限定したので、市民の人権侵害にならない」と言っているが、予備的盗聴や事前盗聴など盗聴の範囲は、制限されず、盗聴行為が無制限に広がる危険がある。
さらに、立会人を常時置くとしているが、立会人に傍受の内容は知らされず、傍受の切断権も与えられない。「傍受」されていることを知らずにかける一般市民に一層被害を与えることになり、何の歯止めもかからない。
盗聴法案は、どんな修正を加えても、憲法が保障する「通信の秘密」やプライバシーなど基本的人権を侵害する「盗聴」という捜査手段を警察に与えようという法案であり、憲法とは相いれない法案である。
小金井市議会は、平成9年(1997年)12月に、組織的犯罪対策法の立法化に反対する意志を表明してきたところであるが、衆議院を可決した現時点において改めて市民生活のプライバシーと人権を脅かす盗聴法案に再び反対を表明し、政府に撤回を求めるものである。
以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出する。
平成11年6月 日
小金井市議会議長 井 上 忠 男
内閣総理大臣 様
法務大臣 様
警察庁長官 様
この議案は1999.06.08に提出され、1999.06.09に可決、その日に意見書として提出された。採決の結果は次のとおり。