1994年6月8日、東京都国分寺市第五中学校の戸塚大地くん(中3・14歳)が、体育の授業中に跳び箱から転落して死亡した事件で、両親は指導教諭の過失責任をめぐって国分寺市を民事裁判で訴えてきた。一審は原告側の全面敗訴。2002年10月29日、控訴審の東京高裁で和解が成立した。裁判所から原告側に送られてきた「和解案についての考え方」の文書を許可をいただいて、ここに掲載させていただく。なお、慰謝料など具体的な金額については、ここでは控えた。 |
平成14年10月16日 控訴人ら代理人 小笠原 彩子 様 東京高等裁判所第2民事部 裁判所書記官 上山 厚美 【事件の表示】 平成14年 (ネ)第1570号 控訴人 戸塚 弘 外1 被控訴人 国分寺市 |
和解案についての考え方 14.10.15 1.被控訴人の責任について K教諭による体育の授業の実施方法について、安全配慮義務の観点から、次の点が指摘できる。 (1)同教諭はマット運動のテストの監督・採点を行わなければならないために、それ以外の運動を行う生徒の動勢に十分な注意を払うことができないことが容易に予測されたにもかかわらず、器械体操という相当程度の危険を伴う活動を、特段の監督者を置くことなく、生徒の自習にゆだねた点 (2)現実の授業を開始した後、マット運動のテストを受ける者以外の生徒が必ずしも秩序だった状態で自習しておらず、あまつさえ、本件事故直前に亡戸塚大地が跳び箱の課題とされていた技とは明らかに異なる危険を伴う技を行って成功させ、それを見た他の生徒が歓声を上げるという状態であったにもかかわらず、特段の措置を採ることなく放置した点 2.被害者側の過失について 本件事故は亡大地が跳び箱の課題とされた技とは異なる危険を伴う技を自ら行ったことに起因すること、同人の事故当時の年齢(14歳)、本件が体育の授業中に発生したものであること、1に述べた本件事故発生までの経緯等本件に関するあらゆる事情を考慮すると、被害者側の過失は約4割と考えられる。 |
平成14年(ネ) 第1570号 和解案骨子 1 被控訴人は、控訴人らに対し、本件和解金として合計 円の支払義務があることを認め、これを本和解成立後数週間以内に支払う。 2 控訴人らその余の請求放棄 3 以上のほか、控訴人、被控訴人らの間に何らの債権債務関係のないことを確認 4 訴訟費用各自負担 (参考) ・遺失利益 賃金センサス平成6年男子労働者学歴計 × (1−0.5:生活費控除) × 53年(67−14)の係数 × 4年(18−14)の係数 ・慰謝料(本人) ・慰謝料(遺族) ・過失相殺 4割 ・損害の填補 ・遅延損害金(9月末まで) 8年115日 ・弁護士費用 |