子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
S860807 学校災害 2004.6.6 2005.5.15更新
1986/8/7 千葉県の県立船橋高校の相撲部の滝口浩二くん(高1・16)が他校との合同合宿の訓練中に熱中症を発症。翌日死亡。
経 緯
8/7
12:30頃 浩二くんは、T高校、N高校、船橋高校等の合同合宿に相撲部顧問のS教師に引率されて参加(船橋高校からは浩二くんのみ)。T高校に到着。
浩二くんは昼食をとらないまま稽古に参加。
校庭で四股踏み100回後、道場内で摺り足。高校生3人、中学生7人との勝ち抜き戦。高校生1人と10回(十番勝負)、大学生1人と5、6回、相撲をとる。
整理運動として四股踏み30回。この時、浩二くんの足は十分に上がらず、足元がふらついていた。腰割10回を開始するが、浩二くんは途中で止めてしまった。
S教師が土俵の外に出ようとする浩二くんを制止すると、尻餅をつくように寝ころんだ。
T高校相撲部顧問のY教師が、浩二くんに注意しようと道場の上がり座敷に呼んだ。
浩二くんは起き上がり、Y教師によろけるように近づき、上がり座敷に手をついて、Y教師に寄り掛かるように、腰から座り込むように寝てしまった。唾をたらしていた。
S教師は、浩二くんが稽古を嫌がり、駄々をこねていると判断して、そのまま放置。
13:30頃 練習が終わって、S教師が浩二くんを起き上がらせ道場から連れ出そうとしたところ、浩二くんは突然、道場入り口付近からグラウンドへ走り出し、ネット裏付近で倒れた。
S教師が、バケツ半分くらいの水を顔にかけた。
そのまま日なたのグラウンドに寝かせておく。
14:00頃 Y教師に言われて、浩二くんを日陰になっている体育館北側のコンクリートのたたきに連れていき、寝かせた。
15:40頃 S教師は声を掛けたが、浩二くんは嘔吐。まわしを取ると下痢状の脱糞をしていた。
S教師は、T高校の生徒2人と浩二くんの肩を支えてシャワー室に連れて行き、浩二くんの体を洗った。その際にも、浩二くんは脱糞。
16:00頃 S教師はY教師と相談して、T高校近くの診療所に診察してもらおうとしたが、その場にいた生徒から休診日と聞く。そのため、別の病院に電話。休診時間中ということだったが、折り返し電話があり、病院から至急連れてくるようにと言われた。
16:40頃 Y教師が救急車を要請。
17:11頃 救急車で病院に搬入。浩二くんは意識が全くなく、全身性けいれん、低血圧(96/50)、高体温(腋下温39.9℃)、頻脈(164)だった。
20:00 

22:00頃
血圧が上がり始め、脈拍も安定しだし、尿も出始めた。
ジュースが飲みたいと言い、母親が分かる程度まで意識を回復。
8/8 多量の吐血後、心停止状態になる。
04:02 急性心不全により死亡。

背 景 屋内相撲場は、三方に窓があるが、開閉できる窓は一カ所のみだった。
窓および出入口はさほど大きくなく、通気が特に良いとは考えられない。
稽古中、塩分や水分の補給を行なっていなかった。
被害者 小学校4年生から相撲を始める。高校入学後に相撲部に入部。
部活動 相撲部は3年生4名、2年生2名。1年生は浩二くんを含め2名だったが、もうひとりは退部を申し出ていた。2、3年生は試合に出るだけで、平素は浩二くんが1人で練習することが多かった。
クラブは週2、3日。1回の練習時間は1、2時間程度。
裁 判 両親が、高校の相撲部員の息子が合宿中に死亡したのは、熱射病にかかっているのに放置した教師の責任だとして、県を相手どって約4000万円の損害賠償を求めて提訴。
判 決
(一審)
1991/3/6 千葉地方裁判所で、教師の過失責任を認めて、原告勝訴。
判 決
(二審)
1994/10/26 東京高裁は一審判決を支持。県に約3600万円の支払い命令。
清水湛裁判長は、浩二くんの死因を熱射病を原因とする心不全と認定したうえで、、救急車を呼ぶなど「顧問が十分注意していれば命を救えた可能性が高い」と判示し、顧問教師の応急措置と医療機関に搬送する注意義務違反の過失が肯定され、学校側の過失を認めた。
参考資料 1994/10/27東京新聞(月刊「子ども論」1994年12月号)、「学校災害ハンドブック」/喜多明人/1993.9.12草土文化、「教育判例ガイド」/船木正文/有斐閣、1994/10/27 毎日新聞/学校災害ハンドブック/喜多明人)、(判例タイムズ757号142項、判例時報1407号170項、判例タイムズ888号170項)/熱中症のHP http://heat.gr.jp/



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