注 : 被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。 また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。 |
S.TAKEDA |
S070216 | 寮生活 | 2010.218.2013.7.21更新 | ||||||||||||||
2007/2/16 | 北海道江別市の私立とわの森三愛高等学校の寮の自室で、体調不良で学校を早退してきた関川智和くん(高2・17)が死亡しているのが発見される。急性心停止と診断。原因不明。 | |||||||||||||||
経 緯 |
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死 因 | 直接の死因は「急性心停止」。死亡原因は不明。 | |||||||||||||||
背 景 | 直前の2月11日から15日まで、寮でインフルエンザの患者が出ており、空室に隔離されていた。しかし、当該空室は、智和くんの部屋と同じ階にあり、隔離中も同じトイレを使用していた。 寮のスチーム暖房はタイマー式で、午前6時、午前10時、午後3時、午後6時及び午後8時からそれぞれ約1時間運転されていた。 1000人を超える生徒数に対して、養護教諭は1人しかいなかった。 当日の午前0時45分から、午後0時50分までの間に5人の生徒が記載されていた。 (公立高校については公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準数に関する法律第10条2号で、高等学校の本校に置かれる生徒の収容定員が801人以上の全日制過程については、養護教諭及び養護助教諭の数を2人とする旨定められている。ただし、当該高校は私立) |
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被害者 | 智和くんは、解離性障害の持病があった。両親は職員らに、何かあったら連絡してほしいと依頼していた。 早退は、高校入学してから初めてだった。 亡くなる1週間前から、毎日のように、発作を起こしていた。 ※解離性障害とは、神経症性障害の一類型。症状としては、解離性健忘、解離性遁走、解離性昏迷、解離性運動障害、解離性けいれん(偽発作)などの多様の症状がある。 こうした症状の原因となる身体的障害がないこと、ストレスや対人関係障害に関連した心理的原因が存在することなどが、解離性障害の診断の条件とされている。解離性けいれんは、てんかん発作に似ているが、重大な症状には結び付かないものといえ、解離性障害には死に至るような危険はない」(判決文より) |
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学校・教師の 対応 |
舎監3人、養護教諭、担任教師とも、智和くんが夜中にけいれん発作を起こしたこと、体調不良でひとり帰寮したことを知っていた。 | |||||||||||||||
裁 判 | 両親は、教職員らに安全配慮義務違反があったとして、学校法人を相手に民事裁判を起こす。 | |||||||||||||||
原告の主張 | 両親は、教職員らは少なくとも、智和くんの「発熱、当日午前2時頃の痙攣発作、高校入学以来の早退の申出、体調不良の訴えという症状を認識していたと思われ、寮でインフルエンザ患者がいたこを知っていたのであるから、病院で受診せずに早退し、約20分かけて1人で徒歩で帰寮し、暖房が入っていない2月の寒い自室で1人きりになり、経過観察もされなかった場合、死亡し得ることを予見できたと主張。 | |||||||||||||||
生徒らの陳述 | 生徒らは、智和くんの当日の様子を「顔色が真っ青で、ふらふらしていて歩くのもおぼつかない様子だった」と証言。 | |||||||||||||||
争 点 | @担任、養護教諭、舎監A、B、Cに、智和くんの両親に、病状や早退の事実を連絡する義務があり、違反したかどうか。 A養護教諭及び舎監Cに、智和くんを病院で受診させるべき義務があり、違反したかどうか。 B養護教諭、C舎監、B舎監に、智和くんが早退して帰寮したあと、十分な経過観察をし、病状悪化を防ぐ十分な措置をとる義務があり、違反したかどうか。 C教職員らの注意義務違反と智和くんの死亡との因果関係の有無。 D原告(智和くんの両親)らに生じた損害。 |
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判 決 | 2010/2/15 札幌地裁で、原告の訴えを棄却する判決。 | |||||||||||||||
判決要旨 | ・教職員らは、智和くんの様子から重大な異変を感じていなかった。 ・友人らの陳述書等は、智和くんの死亡後に両親との会話に基づいて、あるいは要請に基づいて作成したものであることから、友人らが述べている内容どおりの事実を認定することはできない。 ・「解離性けいれんは、てんかん発作に似ているが、重大な症状には結び付かないものといえ、解離性障害には死に至るような危険はなく、被告教職員らが特別な配慮をしなければならないものではなかった。 ・本人から、両親に連絡してほしい旨の申告や医師の診察を受けたい旨の申告、その他病状悪化の申告はなかった これらのことから、被告教職員らに注意義務違反があったと認めるに足りる証拠はない。 ・死亡原因は不明であり、死亡に至る機序も不明である ・急性心停止を発症して死亡するまでの時間は「数分と推定される」 ことから、被告教職員らにおいていかなる措置をとっていれば智和の救命が可能であったかも明らかではないというほかなく、被告教職員らの不作為と智和の死亡との間に因果関係があるということも困難である。 |
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判 決 | 2010/10/26 札幌高裁で、井上哲男裁判長は、学校側に注意義務違反はなかったとした一審札幌地裁判決を支持、両親の控訴を棄却。 | |||||||||||||||
参考資料 | 判決文、http://towanomori-jiko.seesaa.net/?1242483835ほか | |||||||||||||||
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