子どもに関する事件・事故【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
061023 いじめ自殺 2009.3. 2011.12.2 2011.12.5 更新
2006/10/23 岐阜県瑞浪(みずなみ)市の市立瑞浪中学校の女子生徒(中2・14)が、自宅で首吊り自殺。
遺書に4人の女子生徒(中2)の名前があげられていた。
遺 書  遺書に4人の生徒の名前があげられていた。
「部活のみなさん、特に、(4人の名前)、本当に迷惑ばかりかけてしまったね。これで、お荷物が減るからね。もう、何もかもがんばる事に疲れました」などと書いていた。
いじめ態様 上級生が引退した06年7月ごろから、バスケットボールクラブのメンバーから、無視されたり、「うざい」「きもい」「くさい」と言われるなどしていた。
近距離からボールをパスしたり、意図的に強いボールを投げつけてとれなかったら集団で笑った。
練習で、女子生徒からのパスをわざととらなかったりした。
3対3のミニゲームで、「(動きが)違う」と指摘されていた。
練習後に、最後まで後片付けをさせるなど、女子生徒を下級生と同様の扱いにしていた。
女子生徒の体に触れると体育館の壁にこすりつけたりするなどした。
仲間はずれにしていた。

10/23 前日(22日・日曜日)のバスケットボールクラブの朝練習を休んでいたことをチームメートから批判されていた。
被害者 1年時に、カリキュラムに組み込まれた週3回のバスケットボール部に入部。
室長会長などをしていたことから、学級・学年活動に重きを置いた生活をしていた。

2年生になってから、自由参加の課外活動のバスケットボールクラブ(土日に、学校外の一般の指導者が行うクラブ活動)にも入った。

自殺した日は、女子生徒の誕生日だった。

ロッカーの中に、図書館で借りたらしい「生きる」というタイトルの詩集があった。
他の被害者 10/19 同じバスケット部の女子生徒(中1)が、部活内のいじめを学校側に相談し、10/21 部活を辞めていた。
顧問は「練習で生徒に接した限り、明確ないじめは見られない」として、他の部員に具体的な指導をしていなかった。
学校は「いじめはみられない」として、対策をとっていなかった。

校長は、「1年生と(自殺した)2年生の問題が結びつくかどうか、推測の域を出ない」と話した。
親の認知と
対応
女子生徒は普段から母親に、土日のクラブ活動について、チームメート4人に触れて、「一日中あの子たちと一緒にいると気が変になる」と話していた。

10/17 母親がクラブに迎えに行った際、女子生徒は泣き出した。

10/22 自殺前日の日曜日は、「クラブに行きたくない」と言って休んで、入院中の祖父の見舞いに行っていた。

10/28 女子生徒の同級生から、バスケットボール部の4人が、冷たい視線や無視、強いパスで女子生徒を苦しめていたとの話を女子生徒の保護者が聞く。
加害者 4人は1年生時から、部とクラブに所属していた。

10/ 4人は「きつい言葉を投げかけたことはあるが、いじめという認識ではない」と話したという。

2006/11/7 生徒らの動揺が激しく、実質的に活動できないため、バスケットボール部を解散。

2010/3/ 謝罪に来た1人は遺族の提訴後、「(謝罪は)遺族に無理やり言わされた」と態度を翻す。
担任ほかの
対応
10/17 自殺の6日前、母親が「クラブに迎えに行った際、泣き出した。何かあるのでは」「クラブ活動の人間関係で悩んでいる」と学校に相談していたが、学校は何もしていなかった。「この子は強いから『大丈夫』という先入観があった」という。

10/23 自殺当日のクラスの朝の会の際、女子生徒が涙ぐんでいたことに担任は気づいていた。
授業が終わった直後、女子生徒が担当する生活委員の仕事について相談しようとしたが、担任は、「担当の先生に聞くといいよ」と答えていた。帰宅直前にも、この担当教師に話しかけたが、教師は「週初めに説明があるから、心配しなくていいよ」と答えていた。
部活顧問ほかの
対応
2006/10/30 記者会見で顧問は、「いじめが発見できていれば、こういう結果にならなかったかもしれないが、練習のなかでは兆候が見られなかった」と話した。

1年生の女子部員がいじめを訴えていた問題で、校長は「6月頃に担任から聞いた」、担任は「10/19に家庭訪問して初めて知った」などと、食い違いを見せた。
学校の対応・
ほか
10/24 緊急の全校集会を開催。校長は死因を明かさずに女子生徒の死に触れ、命の大切さを訴えた。

10/27 学校は遺族の前で、一旦はいじめを認めていた。

10/28 学年主任は遺族宅を訪問の際、バスケットボール部の4人が、冷たい視線や無視、強いパスで女子生徒を苦しめていたと4人の保護者が認めたことを明らかにしていた。

10/29 記者会見で、校長は「言葉によるいじめがあった」「原因はわからない」「広い意味のいじめはあったが、自殺の原因になったかどうかはわからない」とした。

10/30 2回目の緊急の全校集会を開催。校長が女子生徒の死を「自殺」と表現し、「不安を抱いている子も多いだろうが、より良い学校を目指していこう」とあいさつした。自殺の原因には触れなかった。

10/30 記者会見で教頭は、「現段階でいじめの事実は確認できていない」と話した。
校長は、「『ウザイ』などのからかう発言はいじめに当たると思うが、自殺につながるかは推測の域を出ず、最終的な原因に結び付けられない」「自殺につながるようないじめはなかった」「(学年主任は)長時間にわたるやりとりで、意識がもうろうとして事実を確認せずにいじめがあるように表現した」とした。


10/31 校長は、「これまで発言が二転、三転してきたが、女子生徒の立場に立つと、言葉によるいじめがあったと認めざるを得ない」と述べ、「いじめが自殺につながった可能性が大きい」との統一見解を示した。
アンケート 2006/10/24 全校生徒対象に記名式で実施したアンケートに、いじめと思える事案は見つからなかったという。

10/30 学校側は「犯人捜しが先行すると生徒の間に動揺が広がる」として、今後、全校生徒に無記名のアンケート調査を行うという。

10/31 アンケートに、いじめをうかがわせる記述があったことを理由にいじめがあったと認める。
作 文 自殺直後、学校は生徒らに、「少女への手紙」という題で作文を書かせていた。
他の生徒たちの
認知と対応
2006/10/30 友人たちが、バスケットボールクラブ内で、女子生徒が日常的に受けていたいじめの事実を明らかにした。
友人たちは「同じクラスの人たちがいじめがあったと考えている。可哀そう」「学校は自分を守るようなことばかり言っている。学校が(いじめを)認めないと学校はよくならない」と学校の対応を批判した。
事件のその後 2007/ 学校は女子生徒を3年生に進級させて、机やロッカー、靴箱も用意。修学旅行や体育会など学校行事には同級生に遺影を持たせる。

月命日の毎月23日を「思いやりの日」と名づけ、全校生徒に「心のアンケート」を実施。
民事裁判 2010/3/ 両親が、娘が自殺したのはいじめが原因だとして、同級生4人とその保護者に計約5600万円の損害賠償を求めて民事裁判を提訴。
裁判での
被告側の主張
アンケートについて「無記名で、いじめの具体的な例示もなく、信用性は低い」と主張。
遺書については「部活だけでなく生活全般での疲労や挫折が自殺の原因。4人の名前は迷惑をかけて申し訳ないという謝罪の気持ちで記した」と主張。
判 決 2011/11/30 岐阜地裁で、鈴木正弘裁判長は「同級生らによるいじめの存在を積極的に推認させる事実はない」などとして、両親の請求を棄却。

@「所属していたバスケットボール部で、大声で叱責したり、一緒に行動しなかったりしたことが、ただちにいじめ行為にあたるとは言えない。」
A「学校のアンケートは無記名で、生徒が予断を持って回答した可能性も否定できず、学校の謝罪もいじめと断定した根拠が明らかでない」
Bいじめがなかったとする同級生の証言や女子生徒が部活で活躍していたことに照らし、「遺書の内容についても生徒たちのいじめ行為であったことは認められない」記載を考慮しても認める証拠はない」。
とした。

また、裁判長は、生徒への無記名のアンケートで、いじめがあったとした学校の対応について、「到底理解することができない」とした。
参考資料 2006/10/30毎日新聞、2006/10/30毎日新聞・夕刊、2006/11/1毎日新聞、2006/11/8毎日新聞・夕刊、2007/11/16讀賣新聞、2011/11/30朝日新聞、2011/11/30毎日新聞、2011/11/30時事通信





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