注 : 被害者の氏名は、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。 また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。 |
S.TAKEDA |
911200 | 体罰事件 | 2004.11.3.新規 |
1991/12/ | 東京都品川区の区立小学校の空き教室で、女性教師(35)が女子児童A子さん(小6)の髪の毛を引っ張る、平手打ちをするなどの体罰。女児は鼻血を出して保健室で手当を受けた。 その後、学校に調査にきた区教委の指導主事が、A子さんから事情を聞きながら再現する際、実際にA子さんのことを4、5回殴ったり、髪をひっぱったりした。 |
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経 緯 | 1991/12/ 女性教師(35)が空き教室で、女児(小6)の髪の毛を引っ張る、平手打ちをするなどの体罰を行い、女児は鼻血を出して保健室で手当を受けた。 女児から話をきいた母親が学校に問い合わせたが、「そんな事実はない」と否定。 母親が区教委に体罰の実態について調査を依頼。 1992/2/1 区教委のW指導主事が調査のために小学校を訪問。 会議室に、W指導主事、学校長と教頭、A子さんとA子さんの母親、父母など7人が出席。 午後4時10分頃、W指導主事がA子さんから話を聞いて、メモを取った。 その後、会議室を空き教室に見立てて、A子さんに「どっちの足をどう蹴られたの?」「どれくらいの強さで殴られたの?」と聞きながら、A子さんを4、5回殴ったり、髪をひっぱったりしながら再現。午後4時50分頃終わった。 帰宅後、A子さんの頬は赤く腫れあがっていた。 |
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被害者 | A子さんは教室で、女性教師から「うそつき」呼ばわりされ、同級生らからのいじめにもあい、不登校になった。自殺まで考えたという。 | |
親の対応 | 母親は目の前でW指導主事がA子さんを殴ったりするのを見ていたが、「瞬間的なできごとで、やめてくださいとも言えなかった。ただ、女性教諭の体罰を究明するためならという気持ちでした」と後に語った。 | |
警察の対応 | 1992/2/2 A子さんの母親と同席した母親2人は、調査方法に疑問を感じて、警察署の少年課に相談したが、まともに取りあってもらえなかった。 | |
教育委員会の対応 | 1992/2/ 母親たちが都教委指導部管理課を訪れて相談したが、まともに取りあってもらえなかった。 品川区教委のO学校教育部長は、「会議の出席者、つまり校長、教頭、父母の最低5人に直接話を聞いたところ、『暴行はなかった』と確認した」として、W指導主事がA子さんに触れる程度のことはあったかもしれないが、暴行はなかった、当人も絶対していないと言っているとして、体罰を否定。 また、「(今回のケースに限らず、)体罰があったかどうかは、先生が認めるかどうかが基本。先生が体罰と認めなければ体罰とは言えない」「教育委員会は警察でも裁判所でもなく、事実関係を捜査する権限はない。また、あったかどうかを究明することに教育的な意義があるとは思われない」と話した。 区教委のK指導主事は、取材記者の「教師がウソをついた場合、どうなるのか」の質問に対して、「私も教師。教師がウソをつくなんてことはありません」と回答。 事件後の対応についても、K指導主事は、「A子さんの相談にのり、中学校の転校手続きもとってあげた。きちんとフォローする努力はしている」と話した。 体罰はなかったして、女性教師への処分は一切、行われなかった。 |
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証 言 | 新聞の取材に対して、調査に出席した3人の母親は、「事実、(W指導主事はA子さんを)殴ったり髪を引っ張ったりした」「刑事ドラマの被害者の取り調べのようだった」と話した。 | |
情報公開 | 1992/6/ A子さんの母親らが、女性教師の体罰についての校長報告書と、W指導主事の調書の公開請求を求めたが、区教委は「非公開」決定。 これを不服としてA子さんの母親らは、弁護士、作家など民間人からなる区情報公開審議会に審査を請求したが、「非公開は妥当」と答申が出た。教育長は「非公開」を決定。 品川区では、体罰事件と特定された場合、報告書は公開されることになっている。 しかし、この事件の場合、体罰は空き教室という密室で行われ、A子さんは体罰があったと主張するが、女性教師が「なかった」と否定。2人の言い分が異なるために、O学校教育部長は「体罰事件には当たらない」として、報告書は未公開となった。 |
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背 景 | 「体罰事件」かどうかの調査方法および認定の仕方、処分の基準はすべて各教育委員会に委ねられている。 | |
参考資料 | 1994/6/21東京新聞(月刊「子ども論」1994年8月号/クレヨンハウス) | |
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