注 : 被害者の氏名は、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。 また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。 |
S.TAKEDA |
891128 | 学校災害 | 2002.1.13新規 |
1989/11/28 | 兵庫県尼崎市の県立こやの里養護学校高等部で、ダウン症の清水正烈(きみやす)くん(高3)が、ダウン症児には危険とされるマット運動を補助者なしでさせられて、頸椎の関節を脱臼、9カ月入院。 | |
経 緯 | 89/11/28 正烈くんは、教師の補助なしで、マットの上で前転した直後、頸椎の関節を脱臼して倒れた。教師は単なるショックと考えて、約40分間放置。救急車も呼ばなかった。 | |
被 害 | 正烈くんは一時、両手足の運動機能がマヒ。1990/8/末までの9カ月間入院。 ある程度までは回復したものの、両手にしびれが残り、首が回らないなどの後遺症が残った。 |
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学校側の対応・ほか | 両親が「ダウン症児の首の骨が弱いのは常識。なぜ、首に負担がかかる運動を補助者もなしにさせたのか」と追及したことに対して、学校側は「ダウン症の子どもは首が弱いとは知らなかった。教師は単なるショックだと思っていた。やむをえない処置だった」と説明。 | |
事故報告書 | 学校側は、「清水さん夫婦は『やむをえない事故だった』と言っている」と事実に反する報告書を提出。 | |
ダウン症について | ダウン症は染色体の異常が原因とされ、筋肉の緊張力が弱いことなどが特徴。骨と骨とをつないでいる靱帯(じんたい)が健常者より柔らかいため、骨折や脱臼を起こしやすい。 「首への衝撃はダウン症の子どもに最も危険。首の周辺の筋肉を鍛える運動は必要だが、その人にどんな運動なら無理がなく、適切かを把握して指導しなければならない」(兵庫県立塚口病院・大阪市立大遺伝学教授・藤田弘子さんの話) (1991/10/11讀賣・大阪・夕) |
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裁 判 | 1991/10/11 このままでは「事故の責任がうやむやにされる」として、清水正烈くんが両親とともに、兵庫県を相手取り、361万円余りの損害賠償を求めて提訴。 | |
原告の主張 | 県教育委員会体育保健安全係・主任指導主事は、「気の毒な事故ではあったが、ダウン症についてはまだ一般的によく知られておらず、学校に落ち度があったとは言えない」と話した。 | |
参考資料 | 1991/10/11讀賣・大阪新聞・夕(月刊「子ども論」1991年8月号/クレヨンハウス) | |
TAKEDA 私見 |
学校というところは、教師は、子どもたちの命を預かっているのだということを認識してほしい。 まして、養護学校の体育教師が、障がいについて「知らなかった」では済まされない。まして、事故後の対応を見れば、危機管理が足りないことは一目瞭然。 障がいを持つ子の多くの親は、障がいがあるのだから、迷惑をかけているのだから、多少のことは仕方がないと泣き寝入りしていることだろう。そんな中で、声をあげるのは、とても勇気がいると思う。障がいがあってもなくとも、人としての正当な権利、安全であること、教育を受けることの権利を子どもたちのために勝ち取っていきたい。 一方で、こういうことになるから、障がいを持つ子どもたちを普通学級には受け入れられないとする考え方も本末転倒だろう。障がいのあるなしにかかわらず、教師が児童生徒の安全に配慮する、そのために生徒のことを良く知り、勉強するのは当然のことだ。 社会のひずみはまず、一番弱いところに現れる。それを放置しておけば、必ずや全体に広がる。その時には取り返しかつかないほど、多くの大切なものが失われているだろう。 (2002/1/13) |
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