子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
860731 シゴキ死 2002.7.16 2002.10.18更新
1986/7/31 千葉県船橋市の小学生ソフトポールクラブで夏休み、対抗試合に負けた罰として全員に、指導教師(28)が炎天下(同日、船橋地方の最高気温は32.4度)で猛練習をさせたところ、近村力也くん(小5・11)が意識を失って倒れた。8/1重度の熱射病で死亡。
経 緯 7/31 午前8時に市立法典小学校(力也くんたちが通う学校)に集合。K教師の指導で、運動場カ(1周約200メートル)を20周した後、M小学校まで約3キロメートルを走る。

水分補給をしてすぐに午前9時から10時半まで地域のM小学校と試合をして負ける。

指導のK教師は、約30人のクラブ員全員に、「ペナルティー」としての猛練習を課した。
・約40分にわたり、校庭(約400メートル)を10周走らせる。
・すべり台の階段の昇降を10回。
・約200メートルの校庭ダッシュを約20回。
・朝礼台までのダッシュを繰り返させる。

この間、4人の部員が「頭が痛い」「水を飲みたい」などと訴えたが、K教師は水を飲ませず、怒鳴りながら水をかけて練習を続けさせた。

休憩になり、全員が約3時間半(資料によっては2時間)ぶりに水を飲む。
10分間ほど休憩したあと、力也くんはフラフラし水飲み場で泡を吹き、タンを吐いた。

K教師が、さらにダッシュ練習をさせようとしたが、力也くんがいないため探した結果、水飲み場で倒れているのを見つけた。
K教師は力也くんに水をかけたりしたが回復せず、50分後に救急車を手配し近くの病院に運ぶ。

8/1 午前6時45分、重度の熱射病で死亡。
診 断 力也くんが搬送された病院の院長は、「脳がふくれあがる脳浮腫を起こし、けいれんと脱水状態がひどかった。水を飲んだときは遅かったようだ」と診断。
それまでの経 緯 8/30 前日、法典小学校で行われた近くの小学校との対抗試合で三振。そのことをK教師に怒られて、試合後、力也くんは他の児童とともに、小学校の周囲(約900メートル)を5周、トラック(約200メートル)を10周、ダッシュを10回させられた。
力也くんはかなり疲れた様子で、弁当にはほとんど手をつけずに帰宅。
背 景 このソフトボールクラブは、スポーツクラブの一つとして、10年前に法典小の校区内の父母を中心に結成された。
指導は、会長(父母)に委嘱された同小教員がすべてあたり、同小の施設が使われている。
スポーツクラブは、ソフトボールのほか、バレーボール、ミニバスケット、サッカー部がある。
指導教師 K教師は、過去にも、クラブ員をバットで殴るなどの体罰を加えていたという。
学校ほかの対応 8/1 スポーツクラブ役員は校長らと緊急会議を開き、各部の夏休みの合宿を中止するなど、活動の自粛と、力也くんの補償問題などを話し合った。
事故報告書 8/9までに、学校側は、「当日の練習は通常通りだった」との報告書を船橋市教育委員会に提出。
教育委員会の対応 船橋市教育委員会の学校教育部長は、学校の事故報告書に基づいて、
いつも、事故当日と同じぐらいの練習をしており、オーバートレーニングではない。子どもの健康、発達状態、個人の体調も、大方承知して指導していたはずで、学校側にも、指導した教諭にも過失はない。それでも死亡したのは、暑かったりいろんな事情があったからだろう。また教諭が過去に部員をパットで殴り、あざができたという事実もないと聞いた」として、学校、教師の過失責任を否定。学校教育の場での関係者の処分はしない方針。
保険による事故補償 「学校教育外のスポーツ活動の事故補償を扱う文部省の外郭団体、財団法人スポーツ安全協会(本部・東京)によると、スポーツ安全保険が規定する傷害保険は、熱射病については突発的な事故のように避けられないものではないので、保険の適用から除外され、賠償責任保険は、指導者が事故の過失を認めた場合のみ適用される。このため、同協会は、『過失が認められなければ、裁判で明らかになってから支払われることになる』という」(1986/8/9朝日新聞・夕)
遺族の対応 K教師を刑事告発。
参考資料 1986/8/5朝日新聞、8/9朝日新聞・夕(縮刷版)、(川西市子どもの人権オンブズパーソン作成資料からの抜粋)「船橋・小学生『部活』死亡事件」/近村美智子/「子どもの人権と体罰」/1987年草土文化



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