子どもに関する事件【事例】



注 :
告発した被害者の勇気をたたえます。そして、二度と同じ悲劇を繰り返さないために、あえて事例としてここに掲げました。被害者がこれ以上、傷つことがないよう留意を願います。
学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
961200 性的暴行 2001.2.20. 2001.9.9.更新
1996/12/ 北海道の市立中学校の女子生徒(中3)が、同学年の男子非行グループ11名から繰り返し性的暴力を受け、強姦にまで発展する。
経 緯 中学1年生の2学期頃から放課後、女子生徒Xは、学校内の教室や特別活動室などで、特定の男子生徒11名から服の上から触られるなどの被害にあっていた。中学3年生になって、性暴力はエスカレートした。

6/ 女子生徒が担任に被害を告げたのを境に、さらにエスカレート。事件発覚まで少なくとも6回にわたり、学校内やその周辺で複数からわいせつ行為を強要されるなどの暴力を受けた。

12/ 女子生徒は学校内で10名の男子生徒に取り囲まれた。至近距離を部活顧問の女性教師が通りかかったために助けを求めたが、男子生徒から脅され、「何もない」と言わされているうちに、女性教師は立ち去った。その後、男子トイレに連れ込まれ、6名が身体を触るなどし、1名が女子生徒を強姦した。被害直後、Xが友人の女子生徒と泣いている姿を見た教師の通報で、事件が発覚する。
加害者 加害者の男子生徒たちは、中学1、2年に10人ほどのグループを結成。他校生徒とケンカしたり、喫煙や窃盗などの行為を繰り返していた。

女子生徒Xと両親が告訴後、警察が捜査を行い、加害生徒たちは少年審判を受ける。
3人が少年院送致6人が試験観察1人が保護観察処分。少年事件の過程で、示談金860万円を支払うことで示談成立。
ほかの被害者 X以外にも、被害にあった女子生徒がいた。
学校・ほかの対応 学校側は、同グループの男子生徒たちを問題生徒たち、あるいは問題グループとしてとらえ、事例検討の課題として取りあげていた。

Xは教師たちに何度か被害を訴えていた。教師は、女子生徒Xが加害者の生徒たちと教室内にいるところを目撃していた。

教頭は、集団暴行事件について、被害者の両親に暴行の事実を隠し、「胸などを触らせただけ」と説明した。
担任の対応 中学3年生の6月、女子生徒Xは自ら、担任教師に何度か被害を訴えた(最初、担任は否定。後に6月の1回のみ認める)。しかし、女子生徒が「笑みを浮かべながら」「男子生徒が胸やお尻を触ってくる」という言い方をしたため、深刻なものとは受け止めなかった。

担任教師は、Xから、加害生徒の名前や被害の場所、他に被害を受けた女子生徒の名前を確認したにもかかわらず、養護教師にしか話をしなかった。加害男子生徒は複数のクラスにまたがって存在していたが、学年主任や他クラスの担任に相談することをしなかった。

担任教師は、2〜3日様子をみたが何もなかったため、クラスの生徒全員に「生徒同士でも身体をさわったらセクハラになるから止めるように」と注意しただけで、加害生徒に個別に確認したり、加害・被害生徒両方の両親に報告するなどの対応を一切とらなかった。この6月を境に、男子生徒らの行為は更にエスカレートする。
裁 判 1998/4 最終事件から約1年4ヶ月後、12月の強姦事件後に学校側がとった対応に不審を抱き、被害女子生徒Xとその両親は、市と教師の給料を負担している道を相手に、慰謝料などを求めて、総額4400万円の損害賠償を求めて提訴。

・学校内で、性暴力が特定の加害生徒から反復繰り返しおこなわれていたこと
・教師の一部が一緒にいるのを見ており、かつ、X自身が何度か教師たちに訴えていること
・担任も一度は訴えを聞いたと認めていること
から、学校の安全配慮義務違反は明らかであるとした。
被告の言い分 学校側は、
・Xが担任教師に相談したのは一度だけであり、その際も「笑みを浮かべながら」であったため、深刻には受け止められなかったと、Xの過失
・Xが加害生徒と仲良くしていたこと、被害を「笑っていた」ことなど、事件後の聞き取りをもとにXにも落ち度があった
・加害生徒たちとの示談成立
を理由に、損害は補填されたと主張。
裁判での証言 教育委員会が、提訴後に加害生徒やその他の同級生等から聞き取り調査。その中には、「Xは嘘つきである」「加害生徒のほうがかわいそう」などの記述もあった。また、担任教師の陳述書には、Xの性体験について、事件後に他の生徒から聞いた話というのが記載されている。

一方で、X側に立って証言をしてくれる同級生を確保すること、協力を得ることは至難。また、Xが、非公開とはいえ、男性裁判官、男性の学校側弁護士の前で被害の詳細について証言したり、立証することは困難。
裁判の結果 2001/1/30 地裁で判決。

斉木教朗裁判長は判決で、「学校が加害男子生徒の指導を徹底すれば、女子生徒が悲惨な性暴力にさらされることはなかった」「少なくとも相談を受けた98年6月時点で予見は可能だったが、詳しい事情聴取をせず、指導強化も怠った。女性はこの相談以降、少なくとも6回の暴行を受けた」「女子生徒から相談を受けた教諭らには深刻な性的暴力事件に発展する予見可能性があった」とし、「学校側に助けを求めたにもかかわらず、被害に気づかなかった過失がある」として、学校側の管理責任を認めた。

また、集団暴行事件について「教頭は両親に暴行の事実を隠して胸などを触らせただけと説明し、教諭らは被害者の親に事実を隠し、事件は闇に葬られる危険性もあった。これだけでも重大な違法行為にあたる」と、学校側の対応を厳しく批判した。

少女の事件全体の慰謝料を「1千万円が相当」と認定し、すでに加害少年グループとの間で成立している示談金860万円を差し引いたうえ、弁護士費用などを加味して、少女に対して170万円、両親に対しては30万円を算定、市と道に計200万円の支払を命じた。
参考資料 季刊教育法2000年9月臨時増刊号「いじめ裁判」の中の『旭川市立中「性的いじめ」事件』/高橋司(弁護士)/2000年9月エイデル研究所、2001/1/30日本経済新聞・夕、2001/1/30朝日新聞・夕、2001/1/30読売新聞・夕



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