子どもたちは二度殺される【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
960108 いじめ自殺 2001.8.1.2003.6.22 2003.7.1 2003/8/更新
1996/1/8 兵庫県立神戸商業高校の女子生徒Aさん(高1・16)が、神戸市須磨区のJR神戸線の踏切で飛び込み自殺。
遺書・ほか 3通の遺書があった。

「Dear 家族へ 突然こんなことになってごめんなさい私が死のうと思った理由は、いじめです。私をいじめたのはX、Y、Z。はじめはすごく仲良かったけど、それがくずれはじめたのは夏休み前ぐらいからつらくてもうたえられへんねん。今まで何回か死のうかと思ったけど、たえてきてん。相談しようかと思ったけど心配かけたくなかったし、できへんかってんごめん。」「暴力でなく態度のいじめです」などと書かれていた。また、3人と一緒にカラオケに行ったとき、Aさんが好きな曲を歌おうとしてなじられたことも書いてあった。

死後、本のなかに3人にあてたB5判レポート用紙1枚のメモがあるのを、父親が発見。
「3人へ かなり命令したよな。私はあんたの家来ちゃうねん。今では友だちとも思わへんわ」と書いていた。
親の認知と対応 Aさんは同居している祖母に昨年暮れ、「先生が嫌い。学校へ行くのはいや」と漏らしていた。
いじめられているとは、全く気づかなかった。
被害者 さんは活発で明るい性格。成績も上位だった。家庭科クラブに所属して調理などの研究をしていた。
調 査 「口デカ」「デコピカ」などのあだなをつけられ、言葉によるいじめを受けていた。

2学期終了時に英語の教師に提出された宿題ノートには落書きがあった。
黄色の鉛筆で口の絵が大きく書かれ、下には「(Aさんの愛称)ちゃんのくち」と書かれていた。
ピンクの蛍光ペンなどで、「口デカ」「デコピカ」「いちびって しっこ もらすなよ」「くさーい くさーい くさーい よらんとって」などと書かれ、文末には「BY○○」と片仮名2文字の名前が書いてあった。
このノートは2学期終了時に生徒に提出させ、この日(1/8)の始業式のあと、英語教師が担任を通じて各生徒に返却していた。英語教師は「落書きに気づかなかった」と話しているという。
学校・ほかの対応 学校側は、「遺書は遺族の要望で公表しない」と言ったが、遺族が要望していたのは、名前を伏せてほしいということだけだった。
学校側は3人から事情を聴く。

2/21 教頭が女子生徒宅を訪れ、「知っていることがあれば話してほしい」と話したので、両親は調査してほしい項目をまとめ再調査を求めた。
教育委員会の対応 兵庫県教育委員会は、生徒指導担当職員2名を学校に派遣して調査。
事故報告書 2/22 学校は「事故報告書」を兵庫県教育委員会に提出。

3/13 両親は学校側がすでに「事故報告書」を作成し提出したことを初めて知らされる。

3/18 県教委に内容の開示を請求するが、「公文書なので、両親といえども、公文書公開条例の手続きをしてもらわないと公開できない」と言われる。


4/3 県教委が両親に学校から提出された調査報告書を公開。報告書はA4用紙に16行程度。
学校側は遺書で名指しされた3人から事情を聴いた結果、「3人にいじめの心当たりはなく、友人の気持ちの行き違いが自殺の一因となったのでは」という報告書を県教育委員会に提出していた。県教育委員会も「いじめの事実はない」とした。
親の対応 1997/1/8 両親は人権擁護委員会に人権侵害の救済申し立てを行った。
1999/1 両親は提訴を検討したが、時効を迎え断念。
人権擁護委員会の対応 2001/3/8 兵庫県弁護士会の人権擁護委員会は、「自殺の動機は、同級生3人からのいじめの可能性が高い」と判断。同校に対して、「学校側は時間的にも十分な調査を行わず、いじめを否定する内容の報告書を県教委に提出するなど極めて不誠実な対応に終始した」と指摘、「親が子どもの死亡原因について知る権利を著しく侵害した学校側行為は、人権侵害に当たる」として、警告書を手渡した。
また、県教委にも、同校に再調査を指導することなどの内容の要望書を提出。
参考資料 神戸新聞ニュース20010309/神戸新聞WebStudio、兵庫学校事故・事件遺族の会(http://www.winwin.ne.jp/~mochi/izokunokai.html)、1996/1/24朝日新聞(「いじめ問題ハンドブック」/高徳忍著/つげ書房新社)、1996/1/11中国新聞・夕刊(月刊「子ども論」1996年3月号/クレヨンハウス)1995/3/22朝日新聞・大阪(月刊「子ども論」1996年5月号/クレヨンハウス)



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