子どもたちは二度殺される【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
950205 いじめ自殺 2003.7.21 2004.9.20.更新
1995/2/5 静岡県浜松市の市立東部中学校の男子生徒Aくん(中2・14)が、自宅近くのマンションから飛び降り自殺。
遺書ほか 家族にあてて「お世話になりました」と、紙1枚に走り書きされた遺書があった。
1.物を買いに行かされる「使い走り」をさせられた。
2.万引きをさせられた。
3.髪を染めさせられた。
4.食べ物をおごらされた。
などの内容が書かれていた。
経緯といじめの態様(生徒らの証言から) 1994/ 1年生のとき、部活の友人関係で悩んでいた。

2年生になってからAくんは、同級生グループから、「お前の金で何か買ってこい」と言われて使い走りさせられていたり、休み時間や放課後に暴力をふるわれたりしていた。

2学期になっていじめはエスカレート。
プロレスごっこと称して、10人くらいで取り囲み、「5分勝負」「Aを強くしてやる」と腹を何度も殴られていた。Aくんも自分から「殴ってみろ」と言っていたが、仕返しはしなかった。
Aくんは同級生らに髪の毛を茶色に染められていた。いじめていた生徒の家で、耳にピアスの穴を開けられていた。

1995/1/下旬 いじめが激しくなった。

1/20、21 Aくんは学校を休んだ。
1/23− 2泊3日のスキー教室を風邪で欠席。3日目に登校して自習。

通学用のAくんの自転車が蹴飛ばされて、ボロボロにされていた。パンクさせられていた。

Aくんは友人数人に、「おれ、自殺しそうだよ」と笑いながら話していた。

2/2-  自殺する3日前から学校を休んでいた。

ほかにも、万引きをさせられたり、祖父の金がなくなることもあった。
学校の対応(事件発覚前) 大河内清輝くんのいじめ自殺を契機に文部省から各県教委に出された局長通知を受けて、教師の目配りや保護者との連携など7項目の再確認をしていた。

1994/12 ある保護者から「Aくんがお金をたかられている」という情報提供が学校にあった。
学年主任が、Aくんに聞いたが「たかられているのではない」と答えた。また、相手の生徒も「おごってくれたんだ」と答えた。金額は数千円。中学生にふさわしくないとして、指導。

12/13 中野三枝子・浜松市議の元に、「地域の者」と名乗る女性から留守番電話で「今の東部中はとても悪い状況。このままだと大河内くんのように自殺者を出しかねない。第二、第三の被害者が出る前に対処してほしい。お願いします」とメッセージが入っていた。
中野市議が市教委に言ったところ、「校長会で徹底させる」との回答。1月に東部中の校長が電話で、いじめは具体的にない感じだと話した。

1/9 中野市議がいじめ問題の申し入れ書を教育長あてに提出。
担任の対応 ある生徒がAくんの給食のプリンを取り上げてしまったため、担任が自分のプリンをAくんにあげていたこともあった。
教育委員会の対応
(事件発覚後)
市教委は、「教職員からの話を総合すると、昨年(1994年)10月に使い走りや教室移動の際に友人の荷物を持たされるなどの『いじめ的な現象』が目立たない形であった。だが、自殺と直接結びつくかどうかは言えない」と説明。
教育長は「いじめと『いじめ的現象』は分けて考える必要がある。軽度ないじめはあったが、金品の強要や恐喝など明らかないじめはなかった」「重大な死に至るいじめはなかった」「自殺の原因は多角的に調査し、慎重にやらねばならない」として、「原因不明」であることを強調。
学校の対応(事件発覚後) 学校側は「現在、調査中」とし、「現時点でいじめと認識、判断していいのかどうか」と話した。

浜松市内の男性教師が、「マスコミから電話があったら、居留守を使うように校長から言われた」と「静岡県民間教育研究団体連絡会」の管理教育を考える集会で発言。
背 景 浜松市は管理教育の土地。非行の子どもが悪いことをしないように部活に入れて、押さえ込んでしまう」という。
参考資料 1995/2/7朝日新聞・夕刊、1995/2/9東京新聞(月刊「子ども論」1995年4月号/クレヨンハウス)、「いじめ自殺 子を亡くした親たちのメッセージ」/野口清人・折出健二・堀尾輝久著/1998.8.20かもがわ出版



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