子どもたちは二度殺される【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
940629 暴行傷害 2004.11.3新規
1994/6/29 長野県北安曇郡池田町の小学校校庭で、宮田稔之(としゆき)くん(高3・17)と弟の透(とおる)くん(高1・16)が、少年8人(16-17)に集団暴行を受け、稔之くんが翌日、クモ膜下出血および硬膜下出血で死亡。
経 緯 1994/6/27 少年たちのたまり場になっていた仲間の家で、主犯格のAが、「最近、頭にきてしょうがなねえからけんかでもしてえな。おまえら、最近、むかつくやつはいないか?」と言ったところ、透くんと同じ学校の1年先輩のBが、「そういえば宮田透がむかつく」と言った。
Aは「電話をしてオレがシメてやる」と言って、透くんに、「おい、調子づいているんじゃねえぞ。お前のことはみんながむかついているんだ」と電話した。

透くんから電話のことを聞いた兄の稔之くんが、何のための因縁なのか確かめようとAの自宅に電話をしたが、Aは留守だった。Bから事情を聞こうとして、透くんにBを呼びだすよう伝えた。

6/28 学校で透くんがBに、「放課後、来てもらえませんか」と話した。Bは、透くんの胸くらをつかみ、「あいさつはどうした。ムカツクんだよ」と怒鳴った。

夜10時、少年たちはビールを飲みながら、宮田家に電話。「アニキじゃねえ、弟を出せ」「バカヤロー」「出てこい」などと代わる代わる脅しをかけ、小学校まで来いと呼びだした。
稔之くんは、「2人で来いというなら、お前たちも2人だぞ」と言った。
母親には、ジュースを買いに行くと言って、弟と2人で出かけた

小学校に8人の少年がおり、兄弟に殴るけるの集団暴行。
稔之くんは、「土下座して謝れ」と言われても従わなかった。一方で、Aは暴行中に「兄貴は謝っても許さねえ」と言っていた。
稔之くんは仰向けで鼻血を出し、最初はいびきのような息をしていたが、やがて鼻血がのどに詰まって息をしなくなった。弟の透くんが何度か口で鼻血を吸い出した。

少年たちは約1時間、稔之くんを放置。その間、地面についた血を洗い流したり、口裏あわせのための相談をしていた。

現場にはA(16)だけが残り、傷害(後に傷害致死)容疑で逮捕された。その後、他の少年7人も関与していたことが判明。
加害者 8人の加害少年らは、稔之くんとは全く面識がなかった。
グループの1人(高2)が弟の透くんと同じ高校の1年先輩で、顔を知っている程度だった。しゃべったこともなかった。他の少年たちについても顔もみたことがなかった。
警察の対応 けんかによる傷害致死事件として処理され、家庭裁判所で審判。
暴行に加わらなかった1人を除き、2人が少年院送致、5人が保護観察処分。
誹謗・中傷 やられた側にもそれなりの過失があったという噂が地域で流れる。
裁 判 1995/8/ 遺族は加害少年7人を相手に損害賠償を求めて提訴。
原告側は「負傷して無抵抗の被害者を執ように殴るなどしたうえ、意識を失ってから救急車を呼ぶまで約50分間放置するなど、加害者には殺人の未必の故意があった」とし、事件は「集団リンチによる殺人」と主張。
証 言 法廷では加害少年7人全員が証言に立った。加害者側は、少年らの行為の違法性については「執ような暴行性が否定できない」などと損害賠償の必要性を認めたが、「被告らは被害者に殺意を抱いていない」「事件は少年たちによるけんか」と主張。「被害者側にも挑発的行動をとったなど過失がある」と主張。賠償金の3割の過失相殺を求めていた。
判 決 1 2000/3/28 長野地裁松本支部は、加害者側に約1億500万円の支払い命令。

太田武聖裁判長は、稔之くんにも過失があったとする被告側の主張を退け、「ほとんど一方的な暴行で被害者を死なせた。被告らは適切な救命措置をとらず、証拠隠滅工作もした」と指摘した。
その後 控訴審後、加害少年側が7000万円を支払うことで和解。
参考資料 少年犯罪被害当事者の会サイト(http://www4.justnet.ne.jp/~takatora/welcome.htm)、
2000/3/29讀賣新聞「話を聞いてください」少年犯罪被害当事者手記集/少年犯罪被害当事者の会著/2002.4.15サンマーク出版、ほか



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