子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
910900 いじめ退学 2001.10.17. 2001.10.22 2002.1.13 2003.7.21更新
1991/9/ 埼玉県大宮市の私立埼玉栄高校の相撲部の寮で、平塚秀樹くん(高2・16)が、同級生の部員(高2)らにいじめを繰り返し受けて、登校拒否になり退学。
経 緯 1990/4 秀樹くんは相撲部の監督にスカウトされて、スポーツ特待生として同校に入学し、大宮市内の相撲部の寮で合宿生活をしていた。
5/ 頃から、いじめられていた別の部員をかばったことをきっかけにいじめられる。
7/ この頃から、ほかの部員にトランプや花札などの賭博行為の仲間に入れられ多額
の現金をとられた。また、就寝中にライターで手足に火をつけられる、急所を蹴られるなどのいじめを繰り返し受けた。
1991/9/ 登校拒否をするようになった。
12/ 末 退学。
いじめの主な内容 所持品を勝手に調べられる。プロレスごっこと称して苦しめられる。ライターの火をかかとに押しつけられる。ガス銃の標的にされる。とばくを強要される。制服を新調するために親が持たせた20万円を脅し取られる。キャッシュカードを盗まれる。40回以上にわたって計約110万円を脅しとられる。熱いシャワーをかけられる。など
背 景 同相撲部は1991/3の全国高校新人先取権で準優勝、1992/10の石川国体少年の部でベスト8に入るなど、実力は全国レベルだった。
親の対応 1991/8 両親が監督に改善を求めたが、とりあってもらえなかった。
1992/9/下旬 秀樹くんの両親は弁護士と連名で、「安心して通えるよう処置してほしい」との要望書を学校に提出。
加害者の処分 1992/11/ 学校側は、いじめや賭博行為の負け分などで約20万円を払わせていたことを認め、加害生徒1人を1週間の停学処分。4人を訓戒処分。
警察の対応 秀樹くんの両親は学校の処分を不服として、大宮西署に被害届けを提出。
1992/2/3 大宮署は、部員の男子生徒(高2・17)を盗みと暴行容疑で書類送検。
同生徒は、合宿所で秀樹くんのバックの中から、親が制服を新調するために持たせた20万円を盗んだ(1991/2/頃)ほか、秀樹くんが就寝中に手や足にライターでやけどさせた(1991/6/-7/)疑い。
裁 判 1992/6/25 秀樹くんが、同校事務職兼相撲部の監督(26)と学校法人「佐藤栄学園」、加害同級生2名に対して、計456万4000円の損害賠償を請求。

原告側は、
1.学校は安全配慮義務に反した
2.監督は部の責任者なのに、調査もせず、いじめを放置した
3.2人の部員のいじめはしつこく、損害賠償責任がある
などと主張。
裁判結果 1995/12/22 浦和地裁 一部認容(確定)。
合宿所でのいじめを認定。加害者本人の責任肯定。相撲部監督および学校法人の監督責任および使用者責任肯定。
相撲部の監督、学校法人、加害同級生1名に対して、55万円の損害賠償を認容。
判決要旨 「本件高校の相撲部の活動は、課外のクラブ活動とはいえ、本件高校の教育活動の一環として行われていたものであり、かつ、前示のとおり、本件合宿所は、相撲の強い学校にして欲しいとの本件高校からの要請の下に、被告Y2(相撲部監督)において、これを実現するべく設置したことなどに照らして、本件高校の相撲部の活動と密接な関係にあることも明らかである。

そして、被告Y2が、部室における部員の生活はもとより、右のとおり、本件高校の相撲部強化という目的の下に設置し、運営してきた本件合宿所における部員の生活についても、本件高校の相撲部の監督として、これら部員を指導監督すべき立場にあったことは明らかであり、殊に、本件合宿所においては、未成年者である部員らを親権者から預かる立場にあったのであるから、より一層注意深く指導監督すべきことが求められていたというべきであり、本件合宿所における部員による他の部員に対するいじめ、加害行為等についても、その発生を未然に防止し、部員の生命、身体、財産など保護すべき注意義務をも負っていたと解される。

加えて、被告Y2は、前示のとおり、○○から、相撲部におけるいじめの事実の有無について確かめられ、かつ、それまでの言動等を通して原告、被告Y1(加害者)ら部員の性格を把握していたと考えられることからすると、被告Y1による原告に対する加害行為を認識ないし予見することは十分に可能であったと解される。

しかるに、被告Y2は、これらの部員の観察等の注意義務を怠った過失により、被告Y1による原告に対する加害行為の継続を放置し、その結果、原告は、後記損害を被ることになったものであるから、被告Y2は、民法709条に基づき、原告が前示の加害行為により被った後記損害を賠償すべき義務を負う。」
参考資料 1991/12/29讀賣新聞(月刊「子ども論」1992年2月号/クレヨンハウス)、1992/2/4朝日新聞(月刊「子ども論」1992年4月号/クレヨンハウス1992/6/26日経新聞月刊「子ども論」1992年8月号/クレヨンハウス、1991/12/29讀賣新聞(月刊「子ども論」1992年2月号/クレヨンハウス)、1994/12/20毎日新聞・夕刊(月刊「子ども論」1995年2月号/クレヨンハウス)、1995/12/23毎日新聞(月刊「子ども論」1996年2月号/クレヨンハウス1995/12/23毎日新聞(月刊「子ども論」1996年2月号/クレヨンハウス、季刊教育法2000年9月臨時増刊号「いじめ裁判」/2000年9月エイデル研究所、「イジメと子どもの人権」/中川明編/信山社、「いじめ問題ハンドブック」学校に子どもの人権を/日本弁護士連合会/1995.6.10.こうち書房発行/桐書房発売



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