子どもに関する事件【事例】



注 :
被害者の氏名は、一人ひとりの墓碑銘を私たちの心に深く刻むために、書籍等に掲載された氏名をそのまま使用させていただいています。ただし、加害者や担当教師名等については、個人に問題を帰すよりも、社会全体の、あるいは学校、教師全体の問題として捉えるべきではないかと考え、匿名にしてあります。
また、学校名については類似事件と区別するためと、隠蔽をはかるよりも、学校も、地域も、事実を事実として重く受けとめて、二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しいという願いを込めて、そのまま使用しています。
S.TAKEDA
690425 いじめ報復
殺人
2002.12.16 
1969/4/25 神奈川県川崎市の私立サレジオ高校の男子生徒A(高1・15)が、同じ寮に暮らす同級生の男子生徒Kくん(高1・15)を登山ナイフで刺し、首を切り落とした。
経 緯 日頃Kくんとは仲が悪くなかったが、中学時代からKくんにいつも馬鹿にされたり、いじめられていた。
万引きした登山ナイフで刺し、ナイフだけで首を切断した。
殺害までの経緯(A少年の供述より) 4/25 この日に、AはKくんから辞書に毛虫をはさまれた。

放課後、午後3時過ぎにAとKくんは「山に行こう」と言って、植木畑に遊びに行った。
Aは万引きしたナイフをKくんに見せた。しかし、Kくんはナイフには関心を示さず、「なんだそんなもの。やっぱりおまえはチビのブタだな」と言った。

Kくんが高さ2メートルくらいのがけをかけ登ったり、降りたりしている後ろ姿をみているうちに、これまで受けていた悪ふざけ(当時は「いじめ」という言葉を使わなかった:TAKEDA註)を思いだし、急ににくらしさがこみあげてきた。後ろ向きのままがけから下りてきたKくんの首を持っていた登山ナイフで刺した。

Kくんが後ろを振り向いたので、仕方がないと思い夢中で刺した。倒れたKくんを見て、こうなったら殺してしまおうとまた刺した。首を切り落とした。なぜ切ってしまったのかわからない。(後に生き返ると困るので切断した」と自供)

ナイフは現場近くの土のなかに埋めた。

犯行後、こわくなって逃げ出したところ、現場近くで乗用車に出合い、乗っていた男性の運転手が血を見て「だれにやられた」と聞かれたので、とっさに「2人組の不良にやられた」と答えた。
警察の対応と取り調べ 4/25 Kくんが殺害された当日の午前11時すぎから一緒にいて、左腕の付け根に2筋の切り傷をつけて怪我をしていたAを父親つきそいのもと取り調べた。

当初は「4人組におそわれた」と話していた。
父親がいる間はAはこれまでの供述の辻褄をあわせようと一生懸命だった。付き添いの父親が帰ったあと、巡査部長ら3人に「これまでの話はおかしい点だらけだ。良心的にほんとうのことを話さないか」と繰り返し言われ、「10分ぐらい考えさせてくれ」と答えた。

午後6時15分、Aは突然、両眼に涙を浮かべ、イスから立って机のまわりを行ったりきたりしたあと、「Kくんを殺しました」と自供をはじめた。

取調官が「何回くらい刺したのか」と聞くと、「夢中で覚えていない」と答えた。
「Kくんは痛いといったろう」と聞かれると、「痛い、痛いといった」と答え、顔をゆがめた。

Aは取り調べの最後に「Kくんのために一生泣いても泣ききれない気持ちだ。学校や友だちに申し訳ない」と話した。
学校の対応 カトリック系の学校。当初は警察の捜査に協力的ではなかったという批判もある。
それに対して学校側は、「カトリックの学校では教師と生徒は父と子の関係だ。子どもが被害のショックで疲れていたから沈静させたもので、捜査に非協力的だったわけではない」と弁明。
凶器 登山ナイフは山に行くということで学校の寮を出るときに持って出ていた。
加害者 小柄で小太り。性格的には内向的。事件以前の非行歴なし。知能指数は130と高かった。
父親はインテリで精力的な実業家。経済的にも豊かだった。父親との間に複雑で深刻なコンプレックスがあった。小学校の途中から父親がその教育方針に共鳴する私立サルジオ学園にあずけた。

事件後、3人の精神科医が精神鑑定。「少年の精神状態(軽うつ状態、分裂病質)とその資質(早幼児期脳障害)を考慮すると、少年院より精神科病院に送るのが適当であろう」として、意見書を出した。(「子どもの脳が危ない」/福島章 著より)
加害者の処分 初等少年院送致。

少年院の矯正プログラム「批判集会」のなかで、ほかの少年から仮借ない攻撃と批判を浴びせられた結果、Aは「この少年院では、職員も少年たちもすべてが自分に悪意を持っていて、自分をいじめ、殺そうとしている」という被害妄想を持つようになり、さらには自分を非難し、威嚇する幻聴も生じた。そしてついに、自殺をはかるまでになった。その後、医療少年院に移送され、2年ほどして仮退院した。
(「子どもの脳が危ない」/福島章 著より)
参考資料 1969/4/26、4/27朝日新聞、「子どもの脳が危ない」/福島章 著/2000.1.10 PHP研究所発行 



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