わたしの雑記帳

2006/10/11 千葉県浦安市立小学校養護学級でのわいせつ事件の民事裁判傍聴報告


2006年10月11日(水)、千葉地裁405号法廷で午前10時30分より、千葉県浦安市立小学校養護学級でのわいせつ事件の民事裁判(平成18年(ワ)第978号)の第2回、口頭弁論が行われた。
傍聴席は全部で36席。満席になってもまだ支援者であふれていた。裁判官(長谷川誠裁判長・高橋彩裁判官・泉寿恵裁判官)の特別のはからいで、法廷内に待合室の長いすが持ち込まれて、10人ほどが座ることができたが、それでも何人かは傍聴できずに、廊下で待っていた。

裁判長から準備書面についての確認が行われ、原本の回覧が行われた。
そのあと、原告弁護団のひとり、樫尾わかな弁護士が裁判長に、提出書面の要約を口頭で述べたいと申し出て、許可された。(報告会での補足説明を加えて記載)

1.大空学級(特殊学級)の特殊性から、教員らは担当児童から常に目が離せず、他の児童や学級全体に目を配るのが困難な環境にあった。被告Kは「他の教員がいる前で(わいせつ行為が)できるわけがない」と主張しているが、他の教員がいることが抑止力にはなりえなかった。

2.被告Kは幼児性愛傾向があったことは、刑事事件の家宅捜査で、女児の裸体や性交などわいせつ画像の入ったDVDが押収されており、本人も幼児性愛者であることを認めている。
また、職場の同僚に「出ているところが出ており、引っ込んでいるところが引っ込んでいるからドキドキしちゃうよ」「普通の小学生とはちがう」「抱きつかれると犯罪者みたいな気分になっちゃうよ」などと話していたことも刑事事件で証言されている。

3.被告Kは、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待を行っていた。
身体的虐待については、プールのところでA子さんが担任のKにグーで殴られていたのを妹が偶然、目撃していた。刑事裁判ではKは、A子さんの手がめがねに当たったことで感情的になって殴ったことは認めている。A子さんは、顔面を殴られたり、スタンガンを押し当てられたり、階段から突き落とされたり、髪の毛を引っ張られたりしたと証言している。

心理的虐待については、「トイレに流すと言われた」「家族みんなを殺すと言われた」とA子さんは証言。また、Kに「ふくらはぎが豆腐のように白くてやわらかい。触ってみろ」とふくらはぎや太ももを無理やり触らされ、「ゲボが出るほどいやになった」と証言している。
そして、そのことのトラウマから、A子さんは、豆腐が食べられなくなってしまっている。

性的虐待については、他の児童もいる前で陰茎を見せたことは、刑事裁判で本人も認めている。「トイレに行ったあと、収まりが悪くて直しているのを児童らに見られた」とKは主張しているが、通常、ありえない。しかも、A子さんは「白いおしっこが出た」と証言している。
そして、「おっぱいをぎゅうされた」と家族に話している。

4.被告側は否認の理由として、
@目撃者がいない。A状況が明らかでない。ことをあげている。
しかし、わいせつ行為が目撃者のいないところで行われるのは通常であり、いつでも2人きりになれる環境にあった。状況が明らかでないというのは、知的障がいの特性を悪用している。

なお、今回の裁判で、A子さんが夏休みに田舎の祖母の家に遊びに行っていたとき、祖母に被害の具体的事実を訴えていたことが判明。しかも、そのことを元教員でずっと日記を書き続けていた祖母が、日記に書き留めていた。その日記の現物が証拠として、回覧された。

当時、A子さんの母親と祖母は、電話でこのことを話していた。しかし、また被害についてあまり知らなかった母親は、祖母の「A子ちゃんが、先生の悪口ばかり言ってたいへん」という話を、日頃からA子さんが担任をよく思っていないことを知っていただけに、相づちを打って終わってしまっていたという。日記に記載があることは、今年の2月になって知ったという。そのことを知った弁護士からの要請で、日記のコピーをFAXして送ってほしいと伝えたところ、祖母は日記を切り取ってFAXしてしまった。そのため、裁判所に証拠提出されたときにも、肝心の記述部分は日記帳から切り離してあった。
そのことの理由を文書と口頭で、原告側は説明した。


裁判はイスの移動などの含めても20分程度で終了。その後、裁判所前の弁護士会館に場所を移して、弁護団から説明があった。
今回は、原告側は訴状内容と裏づけとなる証拠の整理をしたという。
一回分で提出された文書は高さ30センチ近くもある膨大なものだった。ほとんどが刑事裁判での記録だという。

Kは当初は女児へのわいせつ行為を認めており、最初の段階の自白調書も残っている。弁護士がついたあとも自白は続いていた。しかし、妻が初めて面会した日に「やっていない」と言い出し、公判ではずっと否認続けた。
そういう意味では、Kの口から何も語られていないわけではない。しかも、その自白内容は、被害女児らが話した内容と酷似していた。

今回は被告Kへの反論だった。今後の予定としては、市と県への反論が残っている。
市側が、反論の準備書面に約2か月半かかるということで、次回の口頭弁論は12月20日、13時15分から、千葉地裁405号法廷で行われることになった。次回は被告側も口頭で書面の概要を説明させてほしいと、被告弁護士が最後に主張した。


裁判を傍聴するにつれ、女児らが受けた虐待の内容が次々と明らかになる。
現在、民事で闘っているのはAさん家族だけだが、ほとんどの児童が虐待を受けていたと刑事事件では証言している。小学校4年生の女児が、小学校6年生の女児が、学校で、自分たちを守り育ててくれるはずの教師から様々な虐待を受けた。それらは大人でさえ、一般的な感覚でいえば、とても想像だにできないような内容だ。どこをどうみても、児童らの作り話には思えない。また、誰が好きこのんで、自分の子どもをこのような被害の当事者に仕立てたがるだろう。

裁判は、金銭面だけとっても、一般で思われているほど割のよいものではない。裁判所の支払う印紙代。弁護士費用。今回は特に、知的障がいのある女児が被害者ということで、その困難性から、子どもの人権のことをやっている弁護士7人で弁護団を組んでいる。たとえ勝訴したとしても、原告側の持ち出し分のほうが、多くなるだろう。

なぜ、裁判に訴えなければならなかったか。もちろん、自分の子どもの被害をきちんと認めて謝罪してほしい気持ちはあるだろう。しかし、それ以上に、このような虐待が教育現場で放置されていることへの危惧。何もしなければ、Kは再び現場に戻り、児童を受け持つだろう。また、被害者が出ることは目に見えるようだ。

奈良県奈良市で、2004年11月、誘拐され、殺害された有山楓(かえで)ちゃん(7歳)事件。犯人の小林薫(37)は大阪高裁への控訴取り下げ、死刑が確定したという。
「刑務所を出たらまたやる」と公言して憚らなかった小林薫。
小児性愛に関連する事件が、残念なことに非常に更生が難しいことを私たちは多くの事件を通して知っている。

刑事裁判の原則は「疑わしきは被告の利益に」。しかし、教育現場でこれをやられてはたまらない。
あなたは、自分の子どもを、孫を、「小児性愛」と自分自身も認めている、知的障がいのある児童を感情に任せて殴ったりする教師に安心して任せることができるだろうか。
大人たちには子どもを守る義務があり、子どもたちには守られる権利があるはずだ。
「すべては子どもたちの利益のために」。少子化うんぬんを言う前に国は、これを原則としてもらいたい。

子どもは、なかなか被害を口にできない。まして、性的虐待については、大人でも、子どもでも一番、言えない。
勇気を出して、子どもが被害を訴えたとき、大人たちが真剣に取り合わなかったらどうだろう。そのまま放置され、うそつき呼ばわりされたとしたらどうだろう。

当事者だけでなく、それを見ていた子どもたちは、どれだけカウンセラーを増やし、相談窓口を設け、「何かあったら大人にいいましょう」と喧伝したところで、悩みを話しに来るだろうか。大人たちを信用できるだろうか。

いじめも、体罰も、性的虐待も同じだ。どれだけ相談窓口を増やしたところで、本気で問題解決していく気がないのであれば、意味がない。私たちが本当に求めているのは、そこに相談すれば一つずつ丁寧に、そして確実に問題解決してくれる対応機関だ。
教師、学校、教育委員会が、一緒になって隠ぺいに走るなかで、弁護士や警察でさえ太刀打ちできない。いったいどこに相談すればよいのか。相談窓口が単なるアリバイ作りのためだとしたら、ないほうがましだ。

深い心の傷は、そのひとの一生を台無しにしかねないほど深刻なものだ。家族もまた、甚大な被害を受ける。そして、被害のうえにさらに、二次被害にされられている。
隠ぺい体質が、新たな被害者を生んでいることに、いい加減、気づいてほしい。
隠ぺいする県・市教委、学校は、加害者だということに、気づいてほしい。

なお、最後に被告弁護士が、次回は口頭で説明させてほしいと言ったことが少しひっかかる。
過去にも、同級生の男子生徒らからの性的被害にあった女子生徒を法廷で、同級生らにとったというアンケートを根拠に「うそつき」だとあげつらった担任教師がいた。リンチで殺された男子生徒の「悪性立証」を口頭でさせろと主張した学校があった。施設内虐待を受けた原告側の証人尋問に立った元入所者の子どもの頃の非行を並べ立てた児童養護施設もあった。なりふりかまわず、原告を攻撃してくることは考えられる。

性的被害を受けた側には落ち度はないにもかかわらず、証言内容にいたたまれない思いをするのは、被害者側だ。裁判とはこういうものだと頭では割り切っても、心はそう簡単に受け入れられるものではない。
そういう意味では、このサイトでもどこまで書いてよいものか、迷う部分もある。しかし、それをあいまいにすることで被害を大したことではないと思われることが怖い。
なぜ被害者側がここまでしなければならなかったかを理解してもらうためにも、書かせていただいている。




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