長い間中断されていました岡崎哲(さとし)くん(中3・14)の民事裁判・第二次訴訟(警察=国・県に対する裁判)が、水戸地裁で再開された。
2004年5月7日に水戸地裁で、加害者(元少年)の証人尋問が予定されていたが、裁判所からの再三の出廷要請にも応じなかったために、民事訴訟法199条により裁判の中の裁判が行われていた。
水戸地裁においては岡崎さん側が敗訴。東京高裁で勝訴。そして最高裁で2005年12月9日に加害者側の抗告棄却。
岡崎さんが、加害者とその両親を訴えた第一次訴訟でも、学校設置者である牛久市を訴えた第三次訴訟でも、現場に居合わせた他の同級生や教師、関係者が多く出廷したなかで、今まで一度も法廷に立つことのなかった加害者。 ついに岡崎さんらの長年の願いであった加害者への証人尋問が行われることになった。
5月24日(水)、水戸地裁302号法廷で13時30分。裁判長は、前裁判官が自己都合で辞めたとうことで新しい裁判長になっていた。担当は、志田博文、中川正充、木村匡彦、裁判官。
すでに予測がついていたことではあったが、加害者は証人としての出廷を拒否し、来なかった。
証人尋問ができなかったため、法廷で今後の進行について話し合われた。
加害者は出廷する意思がない旨の上申書を裁判所あてに出してきていたという。
すでに出廷拒否を予測して、岡崎さん側も、ぜひ証人尋問を望むという趣旨の上申書を改めて提出。
裁判官が尋ねる、原告側はまだ加害者の証人尋問を求めるのかと。
原告代理人弁護士は「東京の民事裁判でも、牛久でも、証人尋問を申請して、実現しなかったので、ぜひ証人の尋問をしたい」「捜査官は加害者の供述に基づいて捜査をしたと法廷で証言している。しかし、矛盾がたくさんある。本人としてはどう答えたのか、供述書と照らし合わせて、どうだったのかぜひ聞きたい」という。。
一方で、被告人代理弁護士は、口々に「必要なし」と言う。しかし、最高裁でまで争われて、証人尋問が認められた今、語気はけっして強くない。
被告人代理弁護士は言う。本人の出る気は全くないという意思は固く、かなり強く主張していると。
「本人は今更なんで出なければならないのか。さんざんひどい目にあった。中学時代のことなので、もういいやというようなことを言っているとちらりと聞いた」と。
本人を無理やり出廷させても、証言を拒んだら意味がないのではないかという。
しかし、原告側は、自分の言ったことの確認作業を行うだけだから、それは大丈夫なはずと主張。
原告側は、水戸地裁が難しいなら、東京で出張尋問ということでもかまわないと譲歩している。その場合、非公開となるので、他人の目を気にしているというなら、それで出られるのではないかという。
しかし現実には、それもすでに1回試みて、結局は本人は来なかった。
出廷しない場合には罰金を科すなどの科料を決めるのはどうかと裁判官から打診があった。
原告側としては、出ないことへの制裁よりも、現実に証人尋問を実現させたいと言う。勾引(無理やりひっぱってくること)も視野に入れてほしいという。とりあえずは、裁判所や原告側が再度働きかけるなどの段階を踏んだうえで、それでもだめならと。
その状況を見極めたうえで、次回の法廷の期日は後日、決められるという。
閉廷後、原告代理欄弁護士から説明があった。これまでの簡単な経緯の説明と、加害者が自筆で裁判所に出廷する意思はないと書いて出してきたこと。しかし、そこには理由は一切、書いていないという。
ただ、加害者側の元代理人弁護士から聞こえてくるのは、「十分にきつい思いをしたので出ない」と言っているという。
民事裁判上では、加害者による腹部への暴行が哲くんの死因であると認定された。しかし、少年審判段階では、一対一のけんかの末の病死扱いになっており、保護観察のみ。
中学時代のことというが、ひとりの命を奪っておきながら、もう過去のことだと言うその感覚。その間、本人からも両親からも謝罪はない。むしろ、被害者遺族に対する恨みつらみばかりが聞こえてくる。
大人たちが寄ってたかって守り抜いた結果が、ここにあると自覚してほしい。
本当に、後ろ暗いことが何もないのであれば、法廷で真実を述べればいいと思う。どのみち、たった1回、決められた時間内の決められた範囲内の質問を受けるだけ。自分自身が訴えられた裁判は終了している。今更、その内容が覆ることもない。そして、岡崎さんにしても、制裁として法廷に呼びたいわけではない。ただ、真実を知りたいだけだと訴えている。だからこそ、非公開でもいい、一度話を聞きたいとすがった。
小さい頃から知っていた。哲くんの友だちだった。サッカーの指導をしたこともあった。
しかし事件後は、一度も顔を合わせていない。直接、話を聞く機会も一切なかった。
本当は、自分のやったことをすべて話して、哲くんと両親に謝ってほしかった。
哲くんは二度と戻らない。その結果は変わらないにしても、もし、加害者の口から真実が語られ、心からの謝罪があれば、この年月は哲くんの両親にとっても、子どもの死を悼むこととに専念できる、もう少し平穏な日々だったろうと思う。十分すぎるほどきつい思いをしているのは、被害者の両親ではないだろうか。
今だ、事件が起きるたびに、警察の体質は変わらないと知る。自分たちの過ちを絶対に認めようとはしない。警察といえど、ミスはある。間違いはある。それは仕方がないにしても、その後が肝心だ。嘘の上をまた嘘で塗り固めることで、被害は確実に拡大する。多くの犯罪者を取り締まってきた警察になぜそのことがわからないのだろう。罪を認めて相応の刑に服す。そこから、二度と同じ過ちを繰り返さない強い決心が生まれるのではないのか。
過ちを素直に認めないところに真の反省はなく、再発防止も危うい。
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