わたしの雑記帳

2015/5/2 さいたま市立小学校での教師による虐待裁判の傍聴報告

5月1日(金)、10時30分から、さいたま地裁105号法廷で、小学校2年生時に担任の女性教師から、暴力や暴言などの虐待を受け、PTSDと診断されて不登校になっている少女の民事裁判(平成25年(ワ)第2603号)を傍聴した。
裁判官は、前回傍聴したさいたま市の特別支援学校における女性教師による障がいのある男児(当時小1)の裁判(雑記帳4/28付)と同じ針塚遵裁判長。左陪審も同じ佐藤知弥子裁判官。右陪審は森剛裁判官。

私がこの裁判を最初に傍聴したのは、2014年3月7日の第1回から。当時は別の男性弁護士2人が担当していた。他の用事で行けないこともあったが、継続して傍聴してきた。
裁判の途中から、原告代理人は、子どもの人権問題に詳しく、全国学校事件事故弁護団の事務局をつとめる杉浦ひとみ弁護士と丸田憲和弁護士、柳原由以弁護士に代わった。
今回からさらに、高辻庸子弁護士、片岡麻衣弁護士、山本高興弁護士が加わり6人り弁護団になった。

以前は数名しかいなかった傍聴人が、杉浦弁護士になってからは、積極的に傍聴を呼びかけ、傍聴席の7割方が埋まるようになった。
この日は、かつての同級生のお母さん方を中心に、70席ある傍聴席のうち62席ほどが埋まった。

傍聴人が増えるに従って、裁判長の雰囲気が変わった。
早々に終わらせましょうという雰囲気で、市側の代理人のやる気のなさそうな雰囲気と迎合するかのようだったのが、今までのようなのらりくらりの返事では許さなくなってきた。
市側は、こういう裁判では珍しく、弁護団を組むことなく、比較的若い弁護士がひとりで担っている。


事案概要は、原告弁護団のひとり、杉浦ひとみ弁護士のフェイスブックから引用。

<事案>
当時小2だった原告女児は、GW明けころから週に何度も、女性担任によって座席から腕と髪をつかんで教室から引きずり出され、教室前ローカを挟んで下駄箱の並ぶ昇降口に立たされるという虐待を受け、授業を受けさせてもらえないことが続きました。虐待を受けた女児は自らも自信を失い、他の児童からも「そのように扱われる子」という目で見られ、保育園や小1のころ仲のよかった友だちからも声をかけてもらえなくなりました。やがて女児は2学期に入り不登校になってしまい、「死にたい」ということも口にするようになってしまったのです。



今回、原告側は医師の意見書を追加で出した。裁判長から「証拠説明書の差し替えか?」と聞かれて、原告代理人からは、「差し替えではなく補完、追加です」という説明があった。
また、裁判長から、原告代理人が変わったことで、主張が少しずれてきているのではないか、使用者責任の主張など、内容について再度検討したほうがよいのではないかというような提案があり、原告のほうで再検討することになった(武田の理解では)。


原告側は女性担任の虐待を具体的な内容をあげて訴えている。
少女は、女性担任にいろいろされたなかでも、腕と髪をつかんで教室から引きずり出されたことが一番辛かった。しかも、そのようなことは何度もあったと主張している。
一方、
被告のさいたま市側は体罰など一切なかったと否認している。
しかし原告親子らが、今年に入ってから当時の同級生の家を訪問するなどして聴き取りをした結果、他にもこの女性担任から体罰を受けたり、暴言を受けたりした子どもたちが何人もいることがわかった。
そして、子どもたちからは、学校管理職が女性教師の問題行動について聞き取りをし、その時にメモを書いていたことの証言もあがった。

原告側は、メモや児童のアンケートなどの開示を求めているが、とくに今回、聴き取りメモの開示について、原告と被告が口頭でやりあった。
市側は@子どもたちのプライバシーにかかわる、A見せることを想定していない、B内部文書である、ことを理由に拒否。
対して、原告側は、学校のクラスというのは密室である。そこで行われた内容の証明は学校が証拠を出すべきではないかと主張
もし、被告が言うように一切の体罰がなかったとしたら、子どもたちは今だに体罰があったと「勘違い」していることになる。それはそれで不幸なことなので、他の子どもたちのためにも体罰があったかなかったか、明らかにしてほしいとした。
また、原告側からは、個人名が見たいわけではないし、公開するつもりもない。原本を確認したうえで、誰が証言したかマスキングをしたものを出してもらってもよいとの提案もあった。

一方、被告代理人は、それであれば、原告側に協力している子ども側から、名前を明らかにして「私はこういう話をしているはず」と言われれば、その人の分だけ出しましょうという回答があった。
対して原告側は、被告側は「原告側の聞き取りに協力した児童に対して、教委や学校が報復的な対応をとるはずがない」と言っているが、子どもたちは現在中学1年生で、同じ教委のもと、やはり不安に思うだろう。証言者を守るためにも、協力者の氏名は明かせないと突っぱねた。
また原告側は、証言者のプライバシーを守るため、本来、元児童本人に陳述書を書いてもらうところを、弁護士の聞き取りという形で証拠提出しているという。

被告は、名前をマスキングしても、並んでいる順番で、誰が何を言ったかわかってしまうと主張。そしてなぜか、「裁判長だけがみる」方式にこだわったが、裁判長に「聞き取りメモは存在するのか?」と聞かれて、被告代理人は「今日、ここに持っている」と回答。
ならば、非公開の場で、裁判官と被告代理人、原告代理人だけで、そのメモを元に、出す出さないを検討してほしいという原告代理人の強い要望に、急遽、場所を移して三者で検討することになった。
次回の日程を決めて、一旦、口頭弁論は終了した。

今回、開示を争われているメモを被告代理人がこの場に持ってきていること自体が驚きだった。もし、持ってきていたとしてもふつうは、「今はない」ととぼけるだろう。
ただし、メモと言ってもいろんな段階のものがある。児童の話をその場で聞き取った詳細な個人メモから、報告書を書くときの下書きまで。大人のメモは、あとからでもいくらでも書けてしまう。だからこそ、多くの被災者側は、改ざんすることが難しい子ども自身が書いた作文やアンケートの開示を求める。
また、多くの場合、出してはまずいメモほど廃棄したと言われるが、大津事件のように警察による強制捜査でもない限り、それが事実かどうか知ることは、難しい。

予想したとおり、どうやら今回、核心に触れるような詳細なメモではなかったようだが、原告側に開示されることになったという。


次回、口頭弁論は、7月3日(金)午後2時から、さいたま地裁105号法廷にて。



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