わたしの雑記帳

2015/4/10 学校等の事件事故第三者委員会の新しい資料をUPしました。


オリジナル資料に保育・児童施設及び学校における事件事故の調査・検証委員会(第三者調査委員会)一覧を更新。新聞報道やネット情報から拾った調査委員会は95件にも上った。
NPO法人ジェントルハートプロジェクトの「親の知る権利」シンポジウムでは、弁護士会や法務局に人権侵害の申し立てをしての調査も同じ表にまとめていたが、今回は分離した。
人権侵害申立てによる学校事故事件に関する調査(20150410jinken)は現時点で13件。
実際にはもっとかなり多いと思われるが、メディアもあまり関心がないだけに、拾える情報が極めて限られている。

2011年11月10日に滋賀県大津市の男子生徒(中2・13)が、同級生グループからのいじめを苦に自殺し、遺族が学校設置者と加害生徒たちを訴えていた民事裁判で明らかになった、衝撃的な内容がメディアの関心を呼び、その1年後の2012年11月10日に大津市が設置条例を公布して第三者による調査委員会を設置。
230頁を超える調査報告書ができあがり、3人の同級生の内2人の男子生徒のいじめと自殺との因果関係が認められた。

また2013年6月23日、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)が成立したことをきっかけに、
http://www.jca.apc.org/praca/takeda/pdf/20130921boushihou.pdf
http://www.jca.apc.org/praca/takeda/pdf/2013ijime_judaijitaihenotaisho.pdf
ますます各地で、第三者調査委員会が設置されるようになった。
http://www.jca.apc.org/praca/takeda/pdf/20150410_chousaiinkai_sechi.pdf

子どもが学校が原因と思われる自殺をして、遺族が事実調査をしてほしいと、学校や教育委員会にお願いしても、アンケートひとつとってもらえなかったり、おざなりな調査だけで、「いじめはなかった」「原因はわからない」「家庭に原因があったのでは」と結論づけられた時代に比べて、いじめや指導死の可能性についても、随分と認められるようになってきた。
http://www.jca.apc.org/praca/takeda/pdf/20150410%20ijime%20shidoushi%20chousa.pdf


私が把握している範囲で、現在95件。
同じ事案で複数の調査委員会が立ち上がっている場合があるので、事案としては91件。
(学校主体で、外部の専門家等の協力を得た形の調査委員会を含む)

学校種類別 公立 私立           自殺事案 いじめ いじめと
指導
指導
 幼稚園・保育園 7  3  3  1         
 学童保育 2  1  1           
 小学校 15  15      3  2    1 
 中学校 43  42  1    30  26  2  2 
 高校 18  17  1    12  9  1  3 
 大学 5  3  2    2  2     
 その他 1       1  1       
91  81  8   2  48  39  3  6 

自殺事案48件のうち、いじめ原因の疑いが41事案43件。内7件は調査中。
うち3件はいじめと、教員の指導の問題が指摘されていた。
いじめだけの事案45件中、いじめの存在を認めたのが23件、一部認めたのが3件、認めなかったのが10件。
いじめと自殺との因果関係を認めたのが4件、関連ありとしたのが5件、一部影響を認めたのが12件。

いじめと教員の指導原因が疑われる3件中、いじめが認められたのは2件。ただし、この2件では教員の不適切な指導は認められなかった。残る1件は、教員の不適切な指導は認めたが、いじめの存在は認めなかった。
3件共に自殺への影響を一部認めている。

教職員の指導や体罰が原因ではないかとされた自殺事案は6件。内3件が調査中。
3件中1件(桜宮)で体罰と自殺との因果関係が認められた。2件は一部、不適切な指導が認められ、1件は自殺との因果関係が認められ(ただし、予見は不可能)、残る1件も影響を一部認めた。

いじめ自殺も、指導死も、遺族が主張しても、学校や教委が否定し、文科省統計に反映されることの少ないいじめ自殺や指導死(20140327jisatu 20140508toukei )だが、外部の人間が入って調査した結果、今までよりは認められやすくなっているといえるだろう。
また、以前に比べると、2012年頃から、報道と統計との差が縮まってきたのも、こうした調査委員会の設置や世間の関心が高まっていることが影響しているように思う。

それでもまだまだ玉石混淆(ぎょくせきこうこう)で、メディアがどれだけ注目しているかによって、被害者側の意見をどの程度、取り入れるかが左右されている。
調査期間が極めて短かったり、報告書の枚数がほんの数枚だったりする調査委員会もある。

千葉県館山市の事案のように、2008年9月10日に男子生徒(中2)が亡くなって、その後の学校の調査では、「からかいなどいじめにつながる事実はあったが、死に直接結びつく要因は分からなかった」と結論。
保存期間中に、遺族が情報開示請求することが用意に想像されるアンケートを後任の校長が廃棄。
父親が再調査の求めに、市教委が小中学校時代の同級生にアンケートを実施したが、「いじめと自殺との因果関係は判断できない」と結論。
2市民団体が情報開示請求した文書に、教委実施アンケートに「臭い、うざい、死ね」と言われていた等の記述があったが公表されなかったことが判明。
抗議を受けて、事件から6年もたって2014年9月に、第三者委員会を設置することを決めたが、この期に及んで、遺族側の委員の推薦を、団体推薦ではないという理由で、内諾をすでに得ている委員のリストさえ受け取ろうとしない自治体もある。

強気といえば、2011年9月1日、鹿児島県出水(いずみ)市の市立米津中学校の吹奏楽部の中村真弥香(まやか)さん(中2・13)が自殺した事案では、第三者調査委員会は教育委員会メンバーを中心とした身内が大方を占める事故調査委員会が出した報告書案を検討するだけで、わずか3回の会議で、いじめを認定せず、「学校での出来事が自殺のきっかけか確認できなかった」との結論を出した出水市は、遺族の再三の請求にも一切、アンケートを開示しようとしなかった。2014年4月には、アンケートの開示を請求して遺族が訴訟を起こさざる得なくなった。

そして、他県に比べてもいじめ問題に熱心に取り組んでいるように見える熊本県で相次ぐ、いじめが原因と思われる自殺。
第三者調査委員会の調査や提言が生かされていないことの証なのか、あるいは、きちんと対応することで、他県では原因不明とされたり、調査されない自殺事案が表に出ているだけなのかは、まだわからない。

なお、あるメディアが文科省に問い合わせたところ、文科省は各地の第三者調査委員会の設置や結果を把握していないと回答したという。
いじめ防止対策推進法第5条には、「国は、第3条の基本理念にのっとり、いじめの防止等のための対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」とあるが、「いじめの防止等のための基本的な方針」を有識者らに策定( http://www.jca.apc.org/praca/takeda/pdf/20131011ijimeboushi_kihonhoushin.pdf )させたら、責務を果たしたつもりでいるのだろうか。
道徳教育推進や地教行法改訂に、いじめ問題を利用するだけ利用して(me140514参照)、あまりに無責任だと思う。
(もっとも、2007年頃に何度も国会に通った頃、ある国会議員が文科省の官僚からもらったという全国に設置された第三者委員会のリストをチラリと見せてくれたことがある。その後、知り合いの議員さんを通じて手に入れたいと思っていたが、ついに手に入らなかった。あれはなんだったのか。あそこには、第三者委員会の名を借りた隠ぺいの歴史がつづられていたのではないかと、個人的には今も密かに思っている)

第三者委員会は、言葉だけが独り歩きしがちだが、まだまだいくらでも、学校側に都合よく運用する手立てはある。(me141218参照)
メディアをはじめ、世間の関心がある今こそ、きちんと被害者や遺族が知る権利が獲得できるような現状分析や提言をしていきたいと思う。
いろいろリンクを貼っているので、古いデータを残したまま、新しいデータを加えていきたい。


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