わたしの雑記帳

2007/2/18 自閉症児Nくん転落事件の第二回口頭弁論


2007年2月15日(木)午後3時半から、八王子地裁401号法廷で、自閉症児Nくん転落事件の民事裁判の第二回口頭弁論が行われた。(裁判官:河合治夫・茂木典子・本條裕)
原告弁護団は、清水建夫氏、児玉勇二氏、杉浦ひとみ氏、岸本史子氏、高根秀樹氏、清水夏子氏。
これだけの人数で弁護団を組むというのは、やはり学校相手で、かつ、障がいのある児童の裁判が非常に困難であるからではないかと思う。

今回はほとんど書類のやりとりだけで終わったが、原告側の出した準備書面に対して、被告の小金井市側は全面的に争う構えを見せているという。

すなわち、
@事故の具体的経過は特定できない
(倉庫内での転倒か、窓から落下したのかわからない)

A本件事故について、適切に対処した
(事故後のタクシーでの搬送、事故原因の調査・説明)

B学校側の体制に不備はない
(教諭の専門知識、体育倉庫の管理)



原告の弁護士は法廷で、「もう少し、学校・教師は謙虚に事実を認めるべきだと思うが、残念だ」と述べた。それはNくんの両親からしても、ほんとうに悔しい思いでいることだろう。
Nくんは校舎2階の約5メートルの高さから下に転落したと見られている。
結果、奥歯5本を折り、あごを15針縫うほどの大けがをしている。自閉症のNくんにとって、体の傷だけでなく、心にも大きな傷が残った。
そして、何より両親をぞっとさせたのは、打ちどころが悪ければ、Nくんは死んでいたかもしれないという事実だろう。2階から落ちても、一生寝たきりになったり、死ぬこともあるのだから。

学校などで児童・生徒の転落事故は多い。「子どもは思わぬ行動に出る」ものだと大人たちが予測するべきだと思う。
1986/12/4 東京の私立高校で、男子生徒(高3・17)が放課後、卒業アルバムのスナップ写真を撮影中、校舎屋上から転落死した事故で、東京地裁は「学校は、生徒が学校の管理下にある間は、学校の施設・設備によって生徒の生命・身体に不測の事態が生じないように日常から生徒に対して危険性の高い施設・設備に関して注意を呼びかけ、生徒がその施設に近寄らないよう措置を講じるとともに、教職員に対し、生徒が危険な設備に近寄らないように監督するよう指導する義務がある。したがって、学校の施設・設備による生徒の事故については、基本的に学校に責任がある」と判断している

小金井の事件の場合、Nくんでなくとも、体育館に閉じ込められたら逃げようとして窓から転落する可能性はあったのではないか。転落の原因がNくんの障がいにあるとはいえないのではないかと思う。大人でも子どもでも監禁された場所から逃げようとして転落死したり重傷を負う事件が発生している。

この事件が起きるほぼ1年前には、川崎市の児童預かり事業「わくわくプラザ」での男児転落事故が起きている。
2003年11月11日、神奈川県川崎市の東大島小学校「わくわくプラザ」で、男児(小1・6)が二階から転落し頭蓋骨を骨折した事故があった。
2004年7月12日に両親は川崎市を業務上過失傷害で刑事告訴し、川崎署が市課長ら3人を書類送検。その後示談が成立。

この事件の場合も被害にあった男児が小学校1年生ということで、当時の状況は正確にはわかっていないようだ。当時、預かり児童約80人のうち約20人が2階で遊んでおり、1人しかいない2階担当の運営スタッフが事故当時、1階に降りていて不在だったという。
いわば普通に遊んでいての過失による事故でさえ、これだけの責任が問われている。一方で、小金井市の場合、教師が自閉症のNくんを体育館倉庫に閉じ込めて、意図的にひとりにさせた、いわゆる事故ではなく、事件だ
しかし、Nくんの場合は自閉症のため、何があったかを伝えることができない。唯一、伝えることができた担任教師が保身からウソをついた。川崎市の「わくわくプラザ」よりずっと罪は重いと考えられるが、実際には、被害者に障がいがあるということで教師の責任が問われない。
明らかな障がい者差別ではないだろうか。

多くの障がい者が、不当な目にあっても、「どうせ裁判をしても勝てない」と泣き寝入りを強いられている。そして、それをよいことに、ますます権利がないがしろにされている。
児童にしても、障がい者にしても、高齢者にしても、本来は、自分で自分の権利を守ることができない人にこそ、権利擁護の仕組みは手厚くあるべきだと思う。

次回は3月29日(木)10時00分から、八王子地裁401号法廷。次々回は5月17日(木)13時10分の予定。


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