わたしの雑記帳

2005/5/20 小野朋宏くの裁判、傍聴報告。 


今日(2005/5/20)、午前10時から横浜地裁503号法廷で、小野朋宏くんの裁判の口頭弁論が行われた。
多くの裁判では、口頭弁論と言っても、書類のやりとりだけで、その内容を口頭で弁論したとみなされる。書類の内容を見ることのできない傍聴人には何がやりとりされているかわからないことが多い。
しかし、河邊義典裁判長は今回も、弁護士に「口頭で補足することがあれば」と発言の機会を与えてくれるおかげで、概略が傍聴人にもある程度わかる。

今回、原告側から出された書類は2つ
1つは、原告側が主張している学校側の「注意義務違反」の論拠を後押しするものとして最高裁判例が提出された。急性脳症の患者を開業医が漫然と点滴などの処置をしただけで、すみやかに高度医療機関に転送することをしなかった結果、後遺症が残った。開業医には転送すべき注意義務違反があったと認められた例。
もう1つは、学校の注意義務違反と朋宏くんの死との因果関係について。これも医療裁判から、患者に適切な検査をしなかったために癌を見落として発症し、死亡した例について、やるべきことをやらなかったことの因果関係を立証するのに、やるべきこと(検査)をなしていれば、患者が亡くなったその時点では生きていたはずだと言えればいい。その後、どれくらい生きていればいいと立証する必要はないと認めた最高裁の判例

一方で、被告の県側が今日までに出すはずだった朋宏くんの死因についての医師の意見書は提出されなかった。そのことについて、被告弁護士が口頭で説明。
当初、被告の県側は、朋宏くんの死因をインフルエンザ脳症という前提のもとに、医療機関に学校の措置と死亡との因果関係のあるなしを医師に意見書として出してもらう予定だった。ところが、医師は所見をみて、インフルエンザ脳症にかかっていたということには疑問があると言ったという。むしろ、急性心筋炎もしくは心臓疾患が原因で死亡したのではないかと思われるという。ただし、自分はその方面の専門医ではないので、循環器系の医師に意見書を書いてもらうようアドバイスをされたという。

被告弁護士は、裁判所のほうで死因を科学的に究明、鑑定してほしいという。
そのうえで、朋宏くんの症状は急激な経過を辿ったことを理由に、どの時点で救急搬送したとしても、救命の可能性はなかったと主張。
要するに、どのみち助からないような病気だったのだから、学校側が何もしなかったとしても関係がないという。
いつの時点で救急車を呼んだとしたら、朋宏が助かったのか、因果関係を立証するのはむしろ、原告側の課題だろうと言った。

対して裁判長は、因果関係を否定するような被告側の発言に対して、学校で倒れて、すぐに死亡という結果が発生しているのだから、ふつうに考えて因果関係はあると認められるのではないかと、言葉を選びつつ述べた。
また、原告弁護団も、医学的に、脳浮腫のあと、急性脳症で死亡している。医療機関に運びさえしていれば、脳浮腫、すなわち脳が腫れている状態であることはすぐに診断がついただろう。その原因が何かを特定できなかったとしても、薬を投与して脳の腫れを押さえることはできたはずだと主張。それは、大量出血している患者に対して止血するのと同じくらい当然な対症療法であるとした。
さらに、原告側の主張としては、不法行為(やってはいけないことをやった)で訴えているのではなく、債務不履行(やるべきことをやらなかった)として訴えているのであるから、ここで死因について究明し争うつもりは当初からないということを強調した。

裁判長は、改めて意見書としてきちんと提出するように被告側に要望。裁判所の鑑定が必要であるというなら、その論拠ももっと具体的に出してくるようにと言った。
この書面を待って、次回は7月8日(金)、午前10時30分から、横浜地裁503号法廷にて開催。


少し内容がわかりにくいかもしれない。私自身が内容を正確に捉えているかどうか自信がない。
ただ、被告側の「何をしてもしなくても、どのみち死んだんだから、学校側に責任はない」というような主張には、怒りがわく。医者だって、目の前の患者が助からないと思っても全力をつくす。最初から放置したりはしない。それは、医師の措置によって生死が分かれるような病気であっても、助かる見込みのほとんどない病気であっても、どちらにも最善をつくすのが医者の義務だろうと思う。
それが、教育現場で、やるべきことを尽くしてもいないのに、「死んだのは病気だから仕方がない」という。生きていたかもしれない可能性はまるで見ようともしない。その時に、最善を尽くさなかったことへの後悔は感じられない。生徒の命を簡単にあきらめてしまうような学校に、わが子を果たして安心して預けられるだろうか。





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