2003/12/14 | 「カンボジアの人身売買・人身売買とNGOの取り組み」についての講演会 | |
国際子ども権利センター代表の甲斐田万智子さんがカンボジアから一時帰国をしているということで、フォーラムよこはまにて講演会があった。 タイトルは「横浜会議から2年!カンボジアの子どもとともに人身売買・子ども買春に立ち向かおう!」。 カンボジアの子どもの性的搾取・人身売買は近年、沈静化するどころか、ますます拡大、深刻化しているという。 その背景にはもちろん、貧しさがある。カンボジアの首都・プノンペンに住むストリートチルドレンの数は、約1万人から2万人と言われる。カンボジアから毎月、性的搾取のために海外に売られる子どもと女性の数は400人から800人。また、カンボジアはタイやマレーシアなどからの主に性的搾取を目的とする人身売買の受け入れ国であるのと同時に、ベトナムからカンボジアを経由してタイなどに売られている中継国でもあるという。 2003年10月17日付けカンボジアデイリー紙によれば、半年で57件、ひと月に約10件の人身売買が行われている。カンボジアからタイへ行くひとのうち1日100人は戻って来ないという。 近年、タイやペトナム、フィリビンなどでは子どもの性的搾取や人身売買への取締りが強化された。それらの国で、今まで通りに性的搾取や虐待をすれば逮捕される確率が高くなってきたため、規制の緩いカンボジアに流れてきたという。司法の腐敗、汚職が進むなかで、人身売買業者は有力者によって守られ、起訴されない。警察官が売春宿から金をもらってボディーガードにつく(金を払わない宿だけが摘発される)。 対象になる子どもの低年齢化も著しい。かつては13、14歳だったのが、今は7、8歳の子どもが性的搾取の対象とされる。なかには5歳前後ですでに何人もの客をとらされている子どももいる。 処女とセックスをすると若返るという迷信。HIV感染への不安。 幼い子どもたちがまるで拷問のような暴力的なセックスを強いられ、それを撮影したものが、また売買される。 日本のポルノが与える影響も大きい。人びとは子どものセックス場面、ポルノが金になると知る。インターネットを通じて、ここではしたい放題のセックスができるという宣伝が流される。産業のない国で、セックスツーリストが観光資源の一部となっている。日本からも大量の男性客が訪れている(警告!すでに何人もの日本人逮捕者が出ている)。そして、児童ポルノの多くは日本からインターネット配信されているという。 人身売買、性的産業は巨大な利益を生む。マフィアなどが関与している。 かつては電気ショックを与えるなど暴力で子どもたちを支配していたのが、今では麻薬を打つ。わからなくなった状態で抵抗をなくさせる。また覚醒作用のあるものでは、夜通し働かせることが可能になる。それは児童労働にも使われる。 子どもたちは麻薬で体をボロボロにされ、HIV感染率も高い。ココン州では、売春宿で働く人たちの61%が感染していると言われる。カンボジアでこれまでにエイズで亡くなった子どもは約2500人いると言われている。 子どもたちは貧しい親の手で売られる。50ドル(約6000円)という現地の人たちの給与の約2カ月分でブローカーに売られる。また、親がだまされて、工場で働くなどの仕事を紹介すると言われて、50ドルから70ドルの仕事紹介料まで払ったうえで売春宿に売られる例や、なかには結婚しようと言われて結納金を受け取り金持ちに嫁いだつもりが人身売買だったということもあるという。 こうした状況下、現地NGOは様々な取り組みを行っている。 客を装っての売春宿への潜入し救出を行う。しかし、救出された子どもたちには受け入れ先がない。親元に帰ってもまた売られるだけだ。避難場所と同時に自立支援、性を売る以外の生活方法をみつけるための職業訓練も行われている。また、なかには精神科医による心のケアだけでなく、ピアカウンセリングと言って、被害を受けた子どもたち同士が互いに傷を癒しあうという方法も取られている。 こうした被害を受けた子どもたちへの直接支援だけでなく、被害の多い農村地域のキーパーソンへの参加型研修ワークショップも実施されている。だまされないための啓発活動や人身売買、性的搾取撲滅を訴えるポスターや広報資料の作成。警察官に向けての啓蒙活動。HIVに関する教育。母子家庭などハイリスク家族に対する収入向上プログラムや職業訓練、子どもポルノ規制法整備の訴え等々、様々なNGOがそれぞれの特徴を生かして活動している。ただ、いずれも金がかかるため充分とは言えず、国際子ども権利センターもその支援の一部を担っているという。 一方で、こうした活動はマフィアなどの組織と対立する。そのために「殺す」などという脅しを受けたり、実際に家を焼かれた例もあるという。まさしく、命がけで活動を行っている。 スライドで売春宿から逃げようとして、経営者に車ではねられ、側頭部に大きな傷痕のある少女の姿が紹介された。 同じ人間として生まれながら、ここでは命の値段、性の値段があまりに安い。子どもたちは、命としてではなく、消耗品のごとく扱われている。散々、搾取されたあげく使い道がなくなれば、死が待っている。 それでも、買う側の理論は、「自分たちは、この子どもたちのために金を落としてやっている」。そこにはなんら罪悪感もない。 今回は、個々の子どもたちについて具体的な話はほとんどなかったが、かつて読んだ本には、10歳にも満たない子どもたちが、大人たちの性的興奮のためだけに、ムチで打たれたり、性器に棒を突っ込まれたりと悲惨な現状が紹介されていた。山奥から騙されて売られて、あるいは誘拐されきて、売春宿で働かされて、心身ボロボロの状態になって救出されても、手の施しようがないこともあるという。HIV感染により、元の村には受け入れてもらえず、心に深い傷を負いながら、やがてはエイズを発症して死んでいく。親を頼りたい時期に親の愛情さえ知らず、ただ嵐のような暴力にさらされて、安心して眠ることさえ許されず、自分が稼いだ金を使うことさえなく、死んでいく。生まれる国や親を選べない子どもたち。幸せになる権利も生きる権利さえ奪われた子どもたちがいる。 もちろん、カンボジアのあまりに悲惨な状況は日本のそれとは比べものにはならない。しかし、遠い国の出来事とばかりは言っていられない状況が日本国内でも進行している。 大人たちの甘い言葉で騙されて、いいように利用されていることにさえ気づかずに性を売る日本の子どもたち。 ヤクザには「制服少女攻略マニュアル」があるという。最初はただ1日中、黙ってその子の話をウンウンと聞いてやるだけでいい。そうすれば次には何でも言うことを聞くようになるという。誰だって下心があれば、優しくなれると気づかない。やさしくされることに飢えている子どもたち。 経済的に貧しいカンボジア。そして同じくらい精神的に貧しい日本の国。性的対象の低年齢化。今では中学生はおろか小学生までが性の対象とされる。性的搾取がまん延する国では、レイプも当たり前のようにまん延する。 子どもたちを意のままに扱うために麻薬が使われる。そしてHIV感染。知識では知っていても、自分は大丈夫と多寡をくくって、自己防衛しない少女たち。感染しても、親にSOSを求めることはできない。高い薬代を得るために性を売る。こうして、搾取する大人側にも感染が広がる。 子どもを大切にしない国に未来はない。やがて日本も、援助する国からされる国へとなるかもしれない。海外のNGOの手が必要になるかもしれない。いつまでも今の位置にいられるとは限らない。そうなった時に、世界から見放されないためにも、今、私たちができることをやるべきだろう。そして、先進国からだけでなく、今、たくさんの問題を抱えている国からも私たちが学ぶべきことはたくさんあると思う。 現在、カンボジアの子どもの性的搾取・人身売買についてプロジェクトを立ち上げている国際子ども権利センターの情報はサイトをご参照ください。 http://www.jca.apc.org/jicrc/ 甲斐田万智子さんの講演は来年、2004年1月12日に京都市中青少年センター(ウィングス京都3階)にても開催される。
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