わたしの雑記帳

2003/6/25 岡崎哲くんの裁判、加害少年と両親を訴えている裁判の控訴審(6/25)の報告


今日、午後4時から、東京高裁の817号法廷で標題の控訴審があった。傍聴人は16名ほど。
まずは書類の確認から。前回約束されていた遺体のネガは現像が間に合わず、連続写真のカラーコピーが証拠提出された。
その内容を確認した裁判官は、次回、終結の予定だと言う。
控訴人である加害少年側が出していた、@三澤教授(遺体を解剖し鑑定)や、A石山教授(死因はストレス心筋症で病死であるという鑑定を出し、一審で裁判所が認定した暴行によるショック死を裏付けた遺体の鑑定に添付されていた写真は全く別人のものであると主張)、また、一審のときからずっと岡崎さん側が切望してきたB加害少年証人尋問は、いずれも採用されないまま、この裁判が終わろうとしている(どうしてもということがあれば、その時、判断しないでもないという言い方だったが)。

被控訴人は、証人が採用されないのであれば、H少年の父親の陳述書を提出したいと言ってきた
少年の父親が今さら、何を言おうとしているのだろう。少年側は一審の加害行為と死因との因果関係を認めた判決を不服として控訴してきている。一度も謝罪がなかったことの言い訳や亡くなった哲(さとし)くんや両親に対する謝罪の言葉が述べられているとは考えにくい。現場にいなかった父親が、わが子の正当性を主張できるはずもなく、いかに更正しているかということでも書いてくるつもりなのだろうか?
いずれにしろ、遺族の感情を逆なでするような内容であることは想像に難くない。
どんなことを書いてくるのか見てみたいものだと思う反面、もうこれ以上、被害者の名誉や親の気持ちを傷つけないでほしいと願う。

岡崎さん側の弁護士の解説によれば、今回、高裁の裁判官たちの関心は、控訴人の主張、三澤教授の鑑定に使われた写真は別人のものという説(特に右下腹部への暴行が致命傷になったということの説明に使われた24番、25番の写真について)の前提が、間違いであることを立証することだけにあるという。従って、今回、提出された三澤医師を通じて、警察から証拠提出されたネガフィルムによって、遺体の写真の差し替えなどあり得ないことがわかればいいということだった。岡崎さんの方では、念を入れて、一審の法廷で証言してくれた上野医師の石山教授の説に対する反論を新たに陳述書として提出したという。
おそらくは、一審判決が覆ることはないだろうという見通しだ。岡崎さんにしても、加害少年を法廷に呼べないのであれば、この裁判を続けることの意味はない。

岡崎さんが言う。この裁判で、一審判決、暴行と死亡との因果関係が認められた内容が確定したとしても、少年審判の判断が間違っていたということが立証されても、結局は誰も責任をとらないシステムになっていると。
病死扱いで保護観察になった少年の処分が、死因の判断が間違っていましたということで、審議のやり直しが行われるわけではない。そして、仮に、もうひとつの裁判で、確かに警察の身内かばいがありましたということが立証されたとしても、少年にはすでに関係のないところでの争いになっている。
そこに、民事裁判の限界を感じる。
ただ、その限界のなかで何ができるかを考えたときに、加害者の人権は守られているのに被害者の人権が何ひとつ守られないのはおかしいと言い続けることで、人びとがこの矛盾に気づいて次のステップに進むための自分たちは捨て石になるつもりだと岡崎さんは言う。
そして、自分自身に言い聞かせるかのように、どれだけ生きている人間が歪めようとしても、真実はどこにもいかない。そこにある。そのことにいつか加害少年も気づいてくれるのではないか、と言った。

その岡崎さんが今、一番心を砕くのは、事件のあとわずかで学校に復帰したH少年が、同級生の言を借りれば、むしろ「英雄気取りであった」ということ。子どもに対して誰も責任をとらない社会のなかで、少年犯罪の再犯率があがっているということだ。
特に茨城県内の少年の再犯率はここ4年間で倍増。東京新聞に掲載された茨城県警の白書の概要によれば、1998年の再犯率が12%、1999年が16.3%、2000年が22.6%、2001年が23.4%。2002年は23.9%で、ほぼ4人に1人が再犯しているという。しかも、2002年検挙された2321人中555人が再犯者で、再犯率は98年の約2倍。特に強盗や放火などの凶悪犯が66.7%。内非行歴5回の少年が2人いたという。
1回目の少年犯罪できちんと更正させていれば、被害にあわずにすんだひとがそれだけいるということだ。少年犯罪によって、岡崎さんたちのように人生を狂わされた人びと、地獄に叩き落とされた人びとが、被害者とその家族に、それだけ生み出されたということだ。

子どもの死が教訓として生かされず、再び被害者が生まれる。そのことは遺族にとって、再びわが子が殺されることに等しい。

次回、結審(予定)は8月6日(水)午前10時から、東京高裁817号法廷にて




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