わたしの雑記帳

2001/12/20 第2回 「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」
子ども公聴会(2001/12/19)の報告


財団法人日本ユニセフ協会主宰の第2回「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」が、2001年12月17日から20日まで、横浜で開催された。
昨日(12/19)は、日本ユニセフ協会大使のアグネス・チャンさんの基調講演と、各国代表の子どもたちが会議で話し合った内容の発表・アピールが行われた。

この問題に詳しいひとにとっては、ごく当たり前の内容だったかもしれない。しかし、私のようにあっちで聞きかじり、こっちで聞きかじりという者には、問題を整理して考えるよい機会となった。

子どもたちの発表のなかで、何度もCSEC(シーセック)という言葉が登場した。私にとっては初めて耳にする言葉だった。資料を繰ると説明があった。
CSECとは!?
・商業的な目的で性的に子どもたちを利用して、心や体を傷つける行為である。
・子どもの買春、子どものポルノまた、そうした目的のための人身売買。すべてこの「子どもの商業的性的搾取」に当たる
のです。最近では、コンピューター技術の発展により、インターネットを使った子どもポルノ(サイバーポルノと呼ばれている)が急増し大きな問題となっている。」
つまり、標題にある「子どもの商業的性的搾取」のことを言うらしい。

アグネスさんの講演では、ユニセフ親善大使として、タイ、フィリピン、マニラで出会った子どもたちの話が出た。
信頼していたおばから、売春宿に売られたタイ山岳地帯の少女の話。言葉が通じないために逃げ出すことさえできなかったこと。やっと逃げ出して村に帰り着いたときにはHIVに感染していて、村を追い出された。そして、その後NGO施設に入っていた少女に話を聞いたという。
彼女は、「できれば結婚して、子どもを持ちたい」しかし、それは「思っちゃいけない」こと、自分は「ひとを好きになってはいけない」のだと言ったという。

金を持っている人間たちが、子どもたちを使って金を稼ぐ。子どもたちは、騙されたり、家族に売られたりして、買春宿にやってくる。あるいは、大人も仕事がない、貧しい経済状況のなかで、家族を助けるためにストリートで買春をする子どもたち。家庭内虐待でストリートに飛び出し、お腹が減ると体を売る子どもたち。少女も、少年もまた性的搾取の対象となる。彼女彼らは、学校に行っていないから、就職もできない。体だけではなく、青春も、命も奪われていく。心に大きな傷が残る。

買うのは大人。子どもたちがオモチャにされている。もうける人がいるから続く。
日本は加害国であるということを自覚して、加害者を出さない、被害者も出さないよう、しなければならない。ひとつの国だけでは解決できない。国際協力が必要。

パンフレットに、児童の商業的性的搾取の要因というのがあげられていた。

・貧困や不公平な社会・経済構造
・家庭の機能不全
・教育機関の欠如
・増大する消費主義・物質主義
・グローバリゼーションとIT革命
・犯罪組織の活動
・一部男性の無責任な行動
・性差別
・武力紛争

など。

対して、各国の子どもたちがブロックごとに、自分たちで話し合った内容というのは、およそ次のようなことだった。

児童買春の禁止を法制化すること
児童の商業的性的搾取を予防する取り組みの必要性
傷ついた子どもたちの保護、安全に避難先と回復プログラムの実施。専門家の手助け
こうした取り組みへの若者、被害を受けた子どもたちの平等な関係・パートナーとしての参加と、それに対する大人たちの支援
政府・NGO・他のすべてのコミュニティ、ネットワークとの連携
学校での教育や社会全体への性教育、自分たちの権利教育、性的搾取をしないための啓蒙活動。
被害にあった子どもたちが、メディアを通して意見を表明する機会を得ること
インターネット、サイバーポルノの監視
加害者への厳罰化
リサーチし、データを蓄積すること
家庭の役割の強化管理
子どもたちがセックス産業以外の仕事につけるようすること

など。

それ以外に、家庭の崩壊や麻薬との関連が言及された。
HIVとの関連では、アフリカの少女が、今、アフリカでエイズが蔓延していることで、性的の話のタブー感が薄れ、大人たちが公の場で話せるようになったことと、赤ん坊や処女とセックスをすればエイズが治るという迷信から、子どもたちに大きな被害が出ていることが報告された。子どもとのセックスなら、エイズ感染をしないという迷信から、子どもたちを性の対象にする大人たちが増えているという話を聞いたことはあったが、「エイズが治る」と信じている大人たちの話は衝撃的だった。本当だとしたら、命に替えて、他家に侵入してでも、赤ん坊や子どもを襲おうという気になるだろうと思うとぞっとした。啓蒙活動、教育の大切さを実感する。

それから、日本の援助交際はCSECにあたるかどうかというところで、会場で白熱した議論となった。
CSECの条件とは、1.対象が子どもであること、2.お金のやりとりがあること、3.性的行為を行っていること、4.搾取されているかどうか。
4の搾取をどう考えるか。傷つくか、傷つかないかの問題だとしたら、自ら望んでいる、傷つかない者もいる。第1回会議でも、日本の援助交際は世界の人びとがすでに知るところで、論争を呼んだという。
これに対してアグネスさんは、「間違った夢や要求を覚えさせられてしまっていること自体、搾取である」と言った。相手の男性に「愛」はない。子どもはただ、オモチャにされているだけなのだと。「18歳までは、自己決定権があると言っても、絶対に体を売らしてはいけない」と。「援助交際も商業的性的搾取という認識を持たなければいけない」と声を大にして訴えた。
会場の拍手は2つに割れた。

私自身は、まだどう考えたらよいか正直、わからない。自分の子どもには絶対してほしくない。しかし、いくら親が、大人たちが口を酸っぱくして言ったところで、本人がそう思わなければ止められないのではないか、大人たちの意見を押しつけても何も変わらないのではないかという思いがある。
一方で、大人たちがはっきりと、「いけないことは、いけない」と道を示してやれなければ、どうなるだろうという思いもある。子どもの顔色を窺って、きちんとしたことを教えてやらなければ、大人たちが共通した認識を持たなければ、子どもたちは混乱するだけだと思う。

今回の公聴会への参加は、日本の子どもたちの問題、大人たちの問題を考えるうえでも、そして、メキシコのストリートチルドレンの問題を考えるうえでも、とても勉強になった。そして改めて、世界に共通する問題はいっぱいあることに気付かされる。人間の暮らし、文明の進み行く方向に立ちこめる暗雲。それを払うのも、真っ暗にしてしまうのも、私たち自身だと思い知らされる。

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