Children's eyes
東 京 イ ベ ン ト

小池 彰



 イベント「children's eyes」の東京イベントが、7月19日より21日まで、東京ユニオンチャーチと神田パンセホールで行われました。ブラジルの児童劇団「エストレラ・ジ・アマニャン」の公演、カンデラリア虐殺事件を描いた「リオの路上から」の著者イヴォネ・ベゼラ・デ・メロさんと、上智大学助教授の三田千代子先生によるシンポジウム、劇団のこどもたちとの交流会と、多角的にストリートチルドレンの現状を知ることのできる企画でした。



 劇団員の子どもたちは、サンパウロ中心地のセ広場に出かけ、ストリートチルドレンたちと会い、話を聞くことで演劇「R.U.A.1997 〜道で〜」を作りあげてきました。内容は、貧しさと両親による暴力から逃れるために路上(RUA)に出た少女が、子どもたちのグループから、盗むことや、シンナーやマリファナを教わり、警官に強姦され、最後には銃で殺されるという救いようのない劇です。しかしこれは、単なる劇ではなくブラジルの路上で日常的に起きている事なのです。舞台の上で力強く演じている少女たちにとっても、劇中の子どもたちを襲う事柄は、けっして他人事とは思えないことなのでしょう。イヴォネさん、三田先生の講演も、直接路上の子どもたちと深い愛情をもって接してきた方、長年ブラジルを研究してきた方でしか話せない、貴重なお話でした。

 子どもたちとの交流会も、初日は小さな会場に移り、グループを作って直接彼女たちと話を聞くことができる形がとられ、とても好評でした。3日目は会場の都合上、舞台の上と客席と、距離はできてしまいましたが、熱心な質問が飛び交いました。

 例年にもまして暑い7月でしたが、多くの方がいらっしゃいました。広い会場で、客席がまばらだったら、舞台上の子どもたちもがっかりするのではないかとの心配も、杞憂になりました。会場で配られたアンケートにも、それぞれの方が感じられたであろう想いを、しっかりと書き込んでくださいました。



 交流会で子どもたちはこんなことを話してくれました。



「昼は事務手伝いで働いて、夜高校に行ってるの。週末に劇の練習。大変だけど、なんとか続けたい」

「将来?みんな女優になりたいと思ってる。本当はこの劇団がプロ化してこのまま劇団として仕事になれば一番うれしい」

「この劇は、プラサ・ダ・セ(サンパウロの中心にある公園)の子どもたちのところへ取材に行って、それを元にみんなで話し合いながら作ったの。私たちが住んでいる所はファベーラ(favela=スラム)だけど、ファベーラの中に居る間はまだ大丈夫なの。街に出てプラサ・ダ・セとかで暮らすようになると、本当に酷い。犯罪に巻き込まれて、いつ殺されるかわからない」

「日本の天皇夫妻がサンパウロに来たでしょ?あのとき、プラサ・ダ・セの子どもたちは目障りだからって、警察に捕まえられて FEBEM(少年院)に入れられたの。FEBEMではろくに食べさせてくれないし、虐待されるだけなんだって。子どものことなんか考えてくれない。それで、天皇が帰国したら釈放されて、また道の暮しに戻ってる。外国の偉い人が来ると、いつもそうなのよ」

「大阪や東京の大きな駅で、ホームレスの人がたくさんいてびっくりした。日本みたいに豊かな国にも、やっぱり問題があるのね。でも、ブラジルの問題よりは解決しやすいと思う」

「日本では、受験に失敗して自殺する子がいるって聞いたけど、ホント? そういう子どもに、私たちの劇を観てほしい。死にたくないのに死んでいく子どもがいることを知ってほしい」

「ブラジルでつらいのは、ブラジルが貧しい国だからじゃないの。ブラジルは豊かで美しくて、素晴らしいものがたくさんある。美しい国歌もある。でも、その豊かな国に貧しい人がたくさんいる。それがつらいの」




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