路上の子どもたちと出会うための旅 |
メキシコのストリートチルドレン |
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スタディツアーを終えて |
久保沢 晶子 |
◎メキシコはパンドラの箱今回のツアーでは、メキシコシティとオアハカの2都市だけの短い滞在なので、多くのことは語れないけれど、メキシコ、特にメキシコシティの人々の表情に、社会に対する不信感や経済的困難からくる疲労感のようなものが浮かんでいるように思えた。私の見た人々はせいぜいメキシコシティの街なかですれ違った人とか、地下鉄の中の人々、通りで子どもたちと絵を描いたりお話をしたりしていたときに遠巻きに見ていた人達ぐらいだが、私たちが異邦人であるためでもあるのか、こちらから世間の人々を見渡すと、何か表情が暗く、変なことを考えているようで不気味だった。けれども、スラム街“2 DE OCTUBRE”のマヌエルさん宅を訪ねた日、その暗いイメージは一掃された。 楽しく明るいメキシコ人がいた!決して生活は楽ではないが、みんなで力を合わせて前向きにがんばっている。政治や一部の豊かな人達など、嫌いなところもたくさんあるメキシコだが、愛すべき庶民の皆さんにはエールを送りたい。子どもたちが通りで暮らさなくてもいいメキシコに、一日も早くなってほしい。希望はあると信じたい。 ◎ “No debe estar en la calle”私の“CASA ALIANZA”訪問のなかで、特に心に残った言葉は、所長さんの「子どもたちは通りで暮らすべきではない」という、単純にして説得力あるものです。彼らの用意する子どもたちの成長に合わせた完璧なプロセスを実践しても、どんなに愛情に満ち、子どもたちに対する尊敬の気持ちに溢れた環境を用意しても、通りに追いやられた子どもたちの問題を根本から解決することはできないことを、彼らは知っている。たとえそうでも、この言葉を忘れずに最善の行動を続けること。これしかない。所長の気持ちも、私たちの気持ちも同じなんだ。“CASA ALIANZA”は今後も支援を続けるだけの信頼に足る団体だ、と思いました。 私が見学したプロセスは、“EDUCADOR DE LA CALLE(ストリートエデュケイター)”“HOGAR DE TRANSICION(一時定住施設)”“HOGAR GRUPAL(グループ定住施設)”の3つでしたが、それぞれの簡単な感想を付け加えておきます。 ストリートエデュケイターの仕事は、とても興味深いものでした。やりがいを感じることも多い反面、無力感にとらわれることも多いと思います。また、危険な場所も多いのでは・・・と心配します。現在私たちの会(編集者注:ストリートチルドレンを考える会)が実行しているように、この人たちの支援を一番力を入れてやってゆきたい、と個人的には思いました。 一時定住施設は、施設での定住生活に慣れるための通過点ですが、家の雰囲気もとても良く、子どもたちも生き生きとして活発でした。非常によく機能していると思いました。 最終プロセスのグループ定住施設は、建物があまり気に入りませんでした。政府が建てた収容施設的なもので、“HOGAR=家”という名には相応しくないものでお金があればもっと家庭的な暖かさのあるものに内装だけでも変えたい感じでした。それと、ここの子どもたちが学校を卒業してから働けるような店とか工場とか農園とかを、“CASA ALIANZA”が持っていたら、先に希望が持ちやすくていいのに、と思いました(メキシコは失業者が溢れているので)。 ◎言葉よりパフォーマンス子どもたちと、何らかの交流が持てたかどうか、という点については、私の側から一方的に「交流できた」などと言い切ることはできないけれど、少なくとも私にとっては、忘れられない思い出を残してくれた子供たちがたくさんいました。小さな子どもたちとの触れ合いでは特に、スペイン語会話の必要性よりも、自分はこの子どもたちに何を伝え、何をしたいのか?ということが大切だと思いました。子どもたちを笑顔にさせるようなパフォーマンスが何かできたらいいのになあ、と感じました。この次に訪問するときには、何か芸を仕込んでから行こうと思っています。子どもたちが心待ちにしていてくれるような、そんな関係をつくっていけたら最高だと思います。 最後に、今回のツアー全体の感想として、これだけ充実した内容でありながら低価格。今まで感じたことのない充実感のある素晴らしい旅でした。ぜひまた有志を募って、“CASA ALIANZA”再訪問を実現したいと思います。 |