TURMA DA TOUCA |
サンパウロのこどもたちと 私たちを結ぶ糸 |
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劇団sei:TURMA DA TOUCA 公演 |
日本の劇団が こどもたちに芝居をプレゼント |
劇団sei 安藤 |
ブラジルでの思い出は、きっと語り尽くすことは出来ません。その中の一つカンポリンポで素晴らしい体験をしました。 そのカンポリンポとは、ファヴェーラという所があって、そこは貧しい人達が多く、一日の食事も満足にとれないというような子供たちがたくさん住んでいるのです。その子供たちが1000人以上も小さな劇場に集まってくれました。 始めは、まずまず乗りがいいかなという期待を持ちながら舞台にあがったのですが、芝居が進むにつれてなんだかとんでもない状態になっているのに気付きました。子供たちが芝居に飽きてしまって、芝居そっちのけで遊んでいるではないか。劇場が遊戯場と化して、その騒々しさときたらもう芝居どころの騒ぎではない。役者同士も相手のセリフが聞き取れない程で、こんな事は初めてでした。舞台監督や照明さん、音響さん達も悪戦苦闘しているのが分かりました。役者もかなり参ってました。流石にもうだめだ、これ以上続けられないとめげそうになったその時、一番前で観ている一人の子供に目をやると、その子は目を輝かせ、身を乗り出し舞台にかじりついて観ているのです。「あっ!」と思いました。その隣の子を見ると、その子も同じように、そしてその隣の子も、よく見ると最前列にいるほどんどの子供たちがみな真剣に観てくれているのです。その子たちの澄んだ大きな瞳を見た瞬間「よし!やるぞ」と心から思いました。僕はこの子のために演じるんだと、すぐ目の前にいるこの子たちのために。 役者とはどんなことがあっても途中で芝居を投げ出してはいけない。一人でも観てくれる人がいる限り、と。自分では分かっているつもりだったのに、それがどういう事なのか、今正にそれを体験し実感したのです。それを教えてくれたのは、ブラジルのカンポリンポのファヴェーラのあの子供たちなのです。 芝居が終わると子どもたちが楽屋の回りに集まりサインを強制するのです。その子たちは、紙やペンなど高価なものは無論持てず、故にその手を示してここにしてくれというのです。その手にサインをしてあげると、それをもう片方の手で大切そうにしっかりと握りしめて帰って行くのです。その姿はなんだかもの寂しくも感じました。でも貧しくても心の豊かさを感じたのも確かです。一人の少女が一輪の野花をプレゼントしてくれました。その花を胸に付けて見せるとその子は照れくさそうに笑ってました。その心のこもった一輪の花はどんな高価な花束よりも僕にとっては、すばらしくありがたく、嬉しいものでした。 僕はあの芝居で子どもたちからエネルギーをもらい、信じることを教えられたように思えます。正に心で感じた体験でした。あの事がこれからの僕の人生に生きる大きな糧となる事と思います。 |