彼は男性、22歳、最重度精神発達遅滞の障害を持っています。しかし彼は元気に楽しく施設(入所)の中で生活しています。彼の生活を追ってみよう。
朝6時半に起床します。彼は服を脱ぐことはできても着ることは不得意です。しかし入所してからパンツとシャツを着ることにトライしています。よくパンツ、シャツを前後に着たり、パンツの片方に両足を入れたりして何度も注意されましたが、今ではなんとかできるようになってきました。しかし、点検は必要です。
食事の時なども、彼なりに食事をします。トレイに出ているものを口に運び、好き嫌いがなく楽しんで食事をします。時々間違ってか近くにある人の物にまで手を出すこともあります。歯みがきも毎食後やります。彼なりに一応歯を磨き、うがいもします。でも上手とは言えません。時々人の歯ブラシや人のコップに手を出します。ですから彼の歯ブラシもコップも白色で、場所も決めて一定の所に置いてあります。すると間違えることなく区別します。ほめてあげるとうれしそうに満足しています。
朝の掃除の時間は、廊下の雑巾がけをしています。彼は必ず自分の掃除場所に来るとは限らず、他の場所へ行っては話しをしています。指導員に呼ばれて注意をされると、彼は「そうか、ちがうのか」とか「掃除する」とか言って自分の掃除の場所へ行きます。時々指導員に「ぼくさぼっている」というので、「さぼらないでやったら」と言うと、ニコニコしながら雑巾をかけます。
次に作業に入ります。午前・午後に90分間の活動があります。軽度・中度・重度の三段階に分かれて、それぞれ各所生のニ−ズに合わせて活動のメニュ−が決められ活動をします。彼は重度に属し、くじけずにウォ−キング、水泳、個別指導に参加しています。ウォ−キングでは仲良く手をつないで歩き、交通ル−ルを守り、社会性を養います。彼は自分勝手にさっさと歩いてしまいます。しかし声をかけると反応してなおします。水泳は気分転換をし全身運動で体を鍛えます。彼はとっても好きで、水中歩行・片足ジャンプ・輪くぐり・顔つけなどをします。時々自分勝手に遊んでいるので、指導員から「まじめにやれ」と注意を受けると、彼は「ハイ」と返事をします。指導員が声を出すと彼も同じ様なことを言って笑わすのです。個別指導は所生のニ−ズにあったメニュ−を考え、集中力を養い、楽しい活動にと考えています。彼は指導員と一対一でボ−ル移動とか形分けなどを行うが、上手にはできません。集中力が長く続かないのです。
活動が終わると入浴です。入浴は彼の楽しみの一つでもあります。彼は生き生きとしています。大きな浴槽にゆったりと身体を入れ「ああ、いい気分」、「うれしいな」と声を出します。介助する指導員の心をほっとさせる光景です。彼はよく「風呂にはいるか」とか「身体を洗うか」とか言いますが実際には身体の一部しか洗えません。指導員がタオルを渡すと一応は他の所生のまねをします。最後は介助してあげます。入浴は毎日必ず実施されます。ただし日曜日だけは入りません。
入浴した後は夕食を済ませ、消灯の9時までフリ−タイムです。この時間も彼にとっては楽しみの一つです。他の所生と話したり、指導員と対話したりしています。指導員や他の所生の話したことを繰り返すことが多く、それに彼なりの抑揚をつけるので疑問文になったり、否定文になったりしますが、それなりに会話して成り立つこともあります。 施設で生活していても地域との交流はあります。文化祭、地元の小学校との交流会、運動会、地元の招待でバ−ベキュ−大会、施設内では、イモ掘り、社会見学(一泊)、クリスマス会、誕生日会等楽しい行事があり変化に富んでいます。彼はどの行事にも参加して楽しい体験を積んでいます。
彼は家族に恵まれてのびのびと育ったせいか、人なつっこい所があります。今彼は一つでも「自分のことは自分で」できることを増やして行こうと努力しています。
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