マリイちゃんの友だちといっしょに

『作って食べてきました!』

渋谷 知範



 3月17日の今日は、朝から小雨がぱらついて、あいにくの天気となってしまいました。僕は相変わらず雨男だなぁと思いつつ、マリイちゃんと一緒に中野区の沼袋地域センターに向かいました。
 『作って食べる会』という交流会は月に1度、日曜日に開かれます。僕が着いた頃にはすでにたくさんの元気な子どもたちとおとなたちが集まっていて、にぎやかでした。僕は初めてこの会に訪れたのですが、みんなとても暖かく迎えてくれました。



 今日のメニューは、ハンバーグとポテトとフルーツポンチです。小学校の家庭科以来台所に立ったこともない僕にいったい何ができるのか、実は不安でした。まず僕とマリイちゃんはじゃがいもを洗ってゆでることになりました。え?そんな難しいことできないよ、とおろおろしている自分に、一人の女の子が「こうやるんだよ」と見本をみせて教えてくれたので、助かりました。

 子ども達は料理がうまい! キウイやバナナをひょいひょい切っていく。あるいは手伝ってもらいながらきれいに丁寧に切っていく。僕も危なっかしげだけど頑張って切っていく。最後のパイナップルを切り終わったとき、「すごいぞ〜、やったー!」と歓声が上がり、みんなで喜び合いました。

 一番の難関はやはりハンバーグを焼くところでしょうか。もう2時を過ぎ、熱気と食欲で調理室はむんむんしています。僕が挑戦したハンバーグはひっくり返そうとした時に、ぼろぼろに砕けてしました。でもお母さん達から焼き方のこつを教えてもらったので次からは失敗しない自信があります。



 わいわい、がやがや。この楽しげな雰囲気を誌上ではみなさんにお伝えしきることができず残念です。マリイちゃんやケントくんはわずかな光しか感じることのできない重い障害を持っていますが、きっとこころの深いところでこの楽しい気分を感じているのでしょう。会には障害を持たない子ども達も来ています。時には料理に飽きて、廊下で追いかけっこをしている子もいます。その追いかけっこには子どもに負けじと本気で走り回っている大学生(→僕)も交じっています。ここではみんなが同じ対等な主人公なのです。

 このようなみんなが楽しめる、お互いにクリエイティブなイベントがあちこちでたくさん開かれたとしたら、どんなに素晴しいでしょうか。障害者と健常者が身近に接して交流する機会は少なすぎます。多くの人がこのような交流会に参加し、障害者に対して漠然と抱いているイメージを変えていったら、私たちの社会もこれまでとは違ったものになっていくはずだと思います。

 それにしても子ども達は、みんな、障害があるとかないとかに関係なく、本当に奇麗で無垢なこころを持っているんだなぁ。おとなになるとどうしてそれを忘れてしまうのだろう。今日、子ども達と遊んだり料理を作ることを通して、最近忘れかけていた大切なことを改めて教えてもらったような気がしました。僕もこれからどんなに年を重ねていったとしてもこころは少年のままでいたいものです。



 あのぼろぼろのハンバーグの味ですか?もちろん超・おいしいに決まってるじゃないですか!! マリイちゃんは体の緊張がこのところ強かったため、薬を飲んでいる関係でむせてしまい多くを食べることはできなかったのですが、きっといつまでもこころに残る味になったことでしょう。

 反省会も終って、車椅子を押してマリイちゃんを家まで送ろうと外に出ると、いつの間にか雨は上がっていて、夕日が輝いていました。明日はいい天気になりそうだ。




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