バングラデッシュの路上の子どもたち
   〜厳しい少女たちの現実〜

A Case Study  (Part II)

バブル・ラーマン



幼児虐待、児童売買と児童売春

 今日の子どもたちは、明日の未来であると言われます。しかし、現実はどうでしょうか?今日、子どもに対する性的虐待と暴力は、世界的に日常茶飯事となっており、特にバングラデッシュのような第三世界に多く見られます。

 第三世界の国々において、貧困が存在する限り、子どもの性的搾取という重大な問題はなくなりません。多くの人々が、より良い機会を求めて農村から都市へ出ていきます。

 都市生活のための知識を持たない子どもたちは、新しい生活になじむことができません。このため、ある者は現実逃避を試み、ある者はセックスを強要され、売春婦(夫)にいきつきます。

 他の国々のように、バングラデッシュでは貧困が子どもたちに大きな影響を与えています。特に女の子は、社会のなかで最も攻撃され、軽視されやすい立場にあります。極貧の状況のなかでは、選択が許されません。どんな申し出が来ようとも、女の子はそれを受け入れ、自分自身の将来を考える余裕などないのです。

 バングラデッシュにおける児童売買は急増しています。子どもたちは売春、労働力、アラブの国々でのらくだレースといった様々な理由でインド、パキスタン、アラブ諸国連邦などの国々に売られていっているのです。政府の児童売買の取締への動きは、まだ十分ではありません。児童売買の正確な統計は、とれない状態です。

 女の子はよく誘拐され、売春宿に売られます。かわいそうな女の子たちは、まず仕事を紹介され、後に売春宿に売りとばされます。売春斡旋業者たちにだまされてしまうのです。10歳以上の子どもたちの売春宿での生活は地獄です。彼女たちは心身ともに拷問を受けます。愛情も十分な食べ物も与えられない。病気にかかっても治療を受けることもできず、自由もありません。こんな彼女たちの将来を想像することは難しいことではないでしょう。

 ほとんどどの家でも使用人は、性的虐待を受けています。政府の活動は、これらの不幸な子どもたちにより良い環境を作るには、まだまだ十分ではありません。

 バングラデッシュには、政府で運営している「貧困の子どものためのセンター」があります。そこにいる女の子の数は約400人です。

 孤児院は子どもに適した生活の場所とはいえませんが、状況によっては避けられないのです。【表(1)】

表(1)
孤児院と孤児の数(1994年)
政府の孤児院 : 73NGOの孤児院 :  798
孤児の数 : 9,500孤児の数 :  64,000





ケース・スタディー

 衣料工業は、貧しいバングラデッシュにとって、最も外貨を得ることのできる工業です。15歳以下の何千人もの子どもたちを雇い、20億ドルの衣料を毎年輸出しています。アメリカの買人からのプレッシャーのため、バングラデッシュでは1993年から子どもの労働者の数を減らし始めました。5万人近くの子どもたちが2千の衣料工場から解雇されたのです。これは国際的な児童労働の廃止を求める動きによるものでした。

 この結果、仕事を失くし犠牲になった子どもたちは将来に不安を抱き、女の子たちは食べ物を得るため売春せざるを、得なくなりました。現在、彼女たちは「ストリート・チルドレン」と並んで「ストリート・ガール」と呼ばれています。しかし、実際のところ根本的には、両者とも同じ状況のなかにいるのです。

 1995年7月から10月にかけて、4人の調査団が5つのバングラデッシュの市と町で、ストリート・チルドレンの調査を行いました。そして、4か月にわたる調査の間、1500人の全国各地のストリート・チルドレンにインタビューをしました。調査団のメンバーは、パルル・アクタールさん、アナル・コリさん、シャミマ・アクタールさんとシャー・ナズムル・カリムさんでした。【表(2)】は、ストリート・チルドレンの状況を示すものです。

表(2)
市/町ダッカからの距離女の子(9〜15歳)男の子(8〜15歳)合計
ダッカ−−−500300800
チタゴング262 km100125225
ラジシャヒ268 km75100175
ミメンシング192 km100100200
チュワダンガ276 km4555100
  8206801,500



調査に関連した問題点

a.インタビューのとき、ほとんどの子どもたちはどんな援助を後に受けられるのかということを聞いてきたが、調査団は子どもたちを満足させるような答えを出せなかった。

b.子どもの障害者化防止、リハビリテーションや介護などの分野における不十分な取り組み。

c.農村と都市の両方におけるストリート・チルドレンに対する基本的な人間としての生活の援助が足りない。

d.ストリート・チルドレンに関する包括的な研究が国内で行われていない。

e.政府とNGO間の協力不足


調査の結果

a.インタビューした1500人の子どものうちの犠牲者の大半が女の子であった。

b.ほとんどの子どもたちは、8歳から15歳の間であった。

c.多くの子どもたちがダッカ市内に身寄りがおらず、女の子たちは、社会から見捨てられ、性的虐待を受け、そして孤立していた。このような痛ましい状況が、子どもたちをダッカ市に追いやり、遂には売春をするに至らせてしまうのである。

d.ほとんどの子どもは、農村の貧しい地域の出身である。

e.すべてのことが栄養失調、フラストレーション、失望を生み出しているのである。

f.ストリート・チルドレンは、売春仲介人、警備員、小売店、トラックの運転手、人力車夫、地方の政治活動家や法執行機関などの人々によって支配されている。



いくつかの提案

a.人道的な観点から、路上で生活し、働く子どもたちを救うために「子どもたちの家」を直ちに地区レベルで設立すること:住居の確保、食べ物、教育、技術向上のための職業訓練、ビデオによる健康と環境プログラムへの意識向上。

b.農村と都市の両方におけるストリート・チルドレンへの基本的な援助のための設備の増加(リハビリテーションと収入の安定含む)。

c.ストリート・チルドレンの権利と彼等が何を必要としているのかということを人々に理解させようと促す社会的な動きを起こすこと。

d.あらゆる分野のストリート・チルドレンを調査し、彼等の実態と直面している問題の本質と深さを理解する。

e.家族と地域社会を基礎にしてハンディキャップのある子どもたちに対するリハビリテーションを奨励する。



まとめ

 今日、子どもたち、特に女の子は最も傷つけられやすい立場にあります。議会や首脳会談は子どもたちを助けることができません。それは、具体的な長短期のリハビリテーションや向上プログラムの実施の設定が国内でも国際会議でも何も行われていないためです。

 バングラデッシュでは、子どもたちの発展の可能性が限られています。子どもたちの権利の保障が現実化するためには、有効な熟慮された実行プランが不可欠です。これらの目的を達成するためには、以下のことが必要になってきます。

@:人的、経済的、物質的資源の支援の取り組み

A:国際組織の多国間または二国間の援助

B:政府のあらゆるレベルでの政治的公約

C:一般市民の認識と支援



References:

1. State of Human Rights: 1994: Banbladesh; Coordinating Council for Human Rights in Bangladesh(CCHRB), Dhaka.

2. The State of the World's Children 1995, UNICEF; New York.

3. John Thor Dahlburg, Los Angeles Times suppliment published in the 'Daily Yomiuri';December 18, 1995; Tokyo.

4. Zakia Banu, Bangladesh Observer, January 24, 1994; Dhaka.

5. State of Human Rights: 1995: Bangladesh; CCHRB; Dhaka.



Bablu Rahman
(Journalist, Writer and Development activist)



翻訳者 : 大野 京子

       山田 新吾



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