子どもたちがカメラを持った!
レンズの向こう側に見える世界
フォトジャーナリスト・ナンシーの試み

Nancy McGirr (photographer)



OUT OF THE DUMP について

 グアテマラ・シティーのゴミ捨て場にはおよそ3500人が、そこで生き、食べ、そして働いている。その多くは子どもたちだ。

 ゴミ捨て場は、虐げられ、地方での暴力から逃れ、職を求めることもできず、深刻な貧困により苦しめられている家族にとっての、最後のつながりを持つための場所となっている。

 子どもたちはゴミをあさって家計の手助けを行い、また、親たちが作業しているあいだ、ゴミ捨て場から拾いだしたものの入っている麻袋を見張っている。弟や妹たちの世話もしなければならない。こうした仕事から開放され、学校に通うことは不可能だ。

 ユニセフの統計によると、グアテマラでは学校に入学したその年の内に、64%の子どもが学業を放棄し、6学年まで進む者は残った者のうち36%にしかすぎない。

 子どもの写真プロジェクト「OUT OF THE DUMP(ゴミ捨て場からの脱出)」は、そうした子どもたちが「新しい可能性」を見つけだす機会を提供している。

 道具として写真を用いることで、子どもたちは考えていたことを、視覚的表現に置き換える方法を学べる。写真を撮影する過程は、独自性、創造性、そして何よりも自信を生みだす。


 写真に熱中し、そのことを学ぼうと望む子どもたちは、学校に通いつづけることも十分可能となる。



 私は、アメリカ合州国生まれで、職業はカメラマンです。91年にロイター通信を辞めて、ストリートチルドレンを題材にした写真を撮ろうと思いました。

 ストリート・チルドレンは、グアテマラ・シティでは400人ぐらいいます。彼らが路上へと出ていく理由は、ほかの都市と同じでしょう。ゴミ捨て場から逃げるため。親から逃げるため。そして、親に捨てられたため。そうして路上に出ざるをえなかった少女たちは、8才ぐらいから売春をしている状態です。あるスラムでは、子どもたちはとてもひどく悲しい状態になっていました。ただそのスラムの人たちはそのことを決して口外しないでくれといっています。なぜなら、そのことが政府に知れると、自国の恥部を隠すために「私服に身をつつんだ警察官」たちによって、子どもたちが清掃(殺害)されてしまうからです。

 わたしはまずストリート・チルドレンたちにカメラを持たせてコミュニケーションをとろうとしました。またそれだけではなく、写真を撮ることで他の世界を知って欲しいとも思いました。けれどカメラを売ってお金にしてしまったりしたため、彼らを対象にして写真を教えることは、とても難しいことだと感じました。ほかに教えるところはないかと探していましたが、そんな時、スラムに入ってボランティア活動 をしていたカトリックの修道女の方から「ゴミ捨て場のスラム」を紹介されたのです。それがきっかけでした。スラムで生活している子どもたちは、明日にでもストリート・チルドレンになってしまうかもしれません。そうならないように何とか学校教育の機会を与えたいと思ってはじめたプロジェクトです。

 私たちのプロジェクトの名称は、「OUT OF THE DUMP(ゴミ捨て場からの脱出)」といいます。ゴミ拾いではなく、もっと別の生活を子どもたちが過ごせるよう望んでいるからです。先程も述べました、グアテマラ・シティの「ゴミ捨て場のスラム」と「線路ぎわのスラム」で活動しています。総合市場を立てるために「線路ぎわのスラム」は強制立ち退きを迫られています。そのスラムの人たちは、旧市場で働いていた人が多く、政府の代替地は市場から非常に離れた場所となり、市場への通勤が不可能となるため死活問題となっています。

 カトリック教会の一部屋を借りて、教室としています。けれど、教会の保守派の人たちが、犯罪者になるような子どもたちを入れるわけにはいかないと言っているので、教会の部屋を借りられなくなるかもしれません。

 週3回、写真教室をひらいています。写真を撮るということで、お互いの信頼を結ぶことと、スラムの外の世界を知ってもらうことができたらと思います。外の世界を知ることで、勉強をするようになったり、ゴミ捨て場から脱出できる可能性が出来てくるからです。「ゴミ捨て場のスラム」と「外の世界」の間の扉の役割ができたらと望んでいます。

 写真教室には21人の子どもたちが来ています。この子たちは全員学校に通っています。なぜなら、写真教室に参加したいなら必ず学校に行くという条件を付けているからです。ただ、子どもたちが学校には通わず働いて得ていたお金があります。親にしてみると、学校に通ったがために収入が減ってしまうわけです。そのぶんのお金を親に支払っています。また、かばんや、本や、ノートなどもすべて無償です。

 子どもたちの写真はカードにして販売しています。その売上金は、子どもたちの教育費や、写真の消耗品代にあてています。また、写真展もおこなってきました。92年12月、東京のコニカ・フォト・ギャラリーで初めての写真展が開かれました。ロイター社時代からの友人だったデニス・バット・グレイさんが日本に在住していて、コニカ社に交渉してくれたのです。その後、アメリカ合州国、ロンドン、パリ、オランダなどで、開催してきました。写真集もアメリカ合州国で近々発売される予定です。

 もし可能ならば、また日本で写真展を開催したいと望んでいます。写真展が開催され、子どもたちの何人かでも、一緒に日本に行くことができれば、その子たちにとって素晴らしい可能性がまた一つ開かれるのです。その時にはどうぞ協力してください。



『OUT OF THE DUMP』 子どもたちの写真集



写真とは扉です。
ゴミ捨て場から大きな可能性を秘めた
外の世界へ出ていくための

子どもたちに様々な感動をもって欲しい。
それがこのプロジェクトの目的の一つです




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