ポコ・ア・ポコ(少しずつ、少しずつ)
ハンバーガーとストリートチルドレン



風が吹けば・・・

 ハンバーガーとストリート・チルドレン。何のことだとお思いでしょう。別に、ストリート・チルド レンはお金がなくて、ハンバーガーを食べられないということではありません。彼らにしたって、ハン バーガーを食べたければ、いろいろな方法でお金をつくるでしょう。そうではなく、もっと別のかたち でハンバーガーとストリート・チルドレンの関係を考えたいのです。
 「風が吹けば、桶屋がもうかる」というはなしがあります。一見何の関係もなさそうな二つのことが、 実はつながっているというはなしです。風が吹くと埃がたつ。埃がたつと目に入る。目に入ると痛くな る・・・と、続いていって、最後には桶屋にいきつくのです。ハンバーガーとストリート・チルドレン。この二つの言葉も実に見事に結びつきます。

安くておいしいハンバーガー

 私たちは『M』というハンバーガー店にいけば、「バリュー価格でお得です」という宣伝どおり様々 な種類のハンバーガーを安く買うことができます。これはアメリカ合州国の牛肉が非常に安価だからで す。なぜそんなに安いのでしょう。私が子どものころ「ローハイド」というテレビドラマがありました。 カウボーイたちが苦労しながら牛を追って、生産地から消費地へと運ぶドラマです。カウボーイの人件 費も随分とかかったでしょう。そうなれば牛肉の価格もそれを反映することになります。今はどうでし ょうか。冷凍技術の発展で、移送の手間賃はかからなくなっても、やはり同国内での人件費は高いはず です。

アマゾンが牧場に

 アメリカ大陸の森林や農場が少しずつ牧場に変わりつつあることをご存じでしょうか。アマゾンの原 生林も焼き払われ牧草が植えられます。そして、そのことにはアメリカ合州国の意向が大きく働いてい ます。大量の肉を消費する同国にとって、安い牛肉の確保は大切なことです。土地改革の遅れている中 南米の国々は、小数の大地主と大資本によって土地がにぎられています。かつてそこでは、コーヒーや サトウキビ、ゴムなどが生産されていました。しかし、広い土地さえあれば人手がかからず、アメリカ 合州国という確かな取引相手がいるのですから、大地主にとって牧畜業の方がずっと魅力的なものにな ります。それに大資本とは、アメリカ合州国系の企業が多いのです。彼らは、価格を低く抑えてもなお、 大きな利潤をあげることができます。それはアメリカ合州国の利益でもありますし、私たちが安くハン バーガーを買える理由でもあるのです。
では、牧場となった土地にいた、小作農やゴム労働者はどうなったのでしょうか。暴力によって生活 の場を追われ、都市へと流入し、スラムやファベーラを形成します。都市にしてみれば、多少治安は悪 くなっても、安くていつでも切り捨てることのできる労働力が確保できます。これも大企業にとっては 喜ばしいことのはずです。そしてもうお解りのことと思いますが、小作農やゴム労働者の子どもたちは、 最終的には路上へと出ていかざるをえないのです。

ハンバーガーを食べると・・・

 アメリカ大陸の森林や農場が少しずつ牧場に変わりつつあることをご存じでしょうか。アマゾンの原 生林も焼き払われ牧草が植えられます。そして、そのことにはアメリカ合州国の意向が大きく働いてい ます。大量の肉を消費する同国にとって、安い牛肉の確保は大切なことです。土地改革の遅れている中 南米の国々は、小数の大地主と大資本によって土地がにぎられています。かつてそこでは、コーヒーや サトウキビ、ゴムなどが生産されていました。しかし、広い土地さえあれば人手がかからず、アメリカ 合州国という確かな取引相手がいるのですから、大地主にとって牧畜業の方がずっと魅力的なものにな ります。それに大資本とは、アメリカ合州国系の企業が多いのです。彼らは、価格を低く抑えてもなお、 大きな利潤をあげることができます。それはアメリカ合州国の利益でもありますし、私たちが安くハン バーガーを買える理由でもあるのです。
 これは一つの例にしかすぎないでしょう。しかし、私たちが安くておいしいハンバーガーを一個食べ るという日常的な行為が、一人のストリート・チルドレンを生むということも事実なのです。ハンバー ガーを食べるのをやめようなどというのではありません。ただ私たちのしているちょっとしたことが、 第三世界の人たちの生活を脅かすのではないかという問を、常に忘れたくないのです。


小池 彰



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