インドにおけるストリートチルドレン |
(第一部) |
ラジャニ・ペランジペ |
はじめに ストリートチルドレンの問題は、世界的に広く大都市部の現象となってきています。世界の大都市の多くでこの問題に直面しています。とりわけ開発途上国の場合は深刻です。
ストリートチルドレンとは誰か ストリートチルドレンの人数を確かめるのが難しい理由は二つあります。 |
都市名 | 調査例合計 | それぞれの割合 | |
---|---|---|---|
路上にいる子ども | 路上の子ども | ||
カルカッタ | 2301 | 97 | 3 |
マドラス | 2000 | 90 | 10 |
カンプール | 1250 | 84 | 16 |
インドール | 300 | 71 | 29 |
ここでは「路上の子どもたち」について検討してみたいと思います。 ~~~~~~
なぜ子どもは通りへ行くのか 他の要因と分けてこれらの子どもたちについて話していると、まず始めに頭によぎる疑問は、「なぜ、彼らが自分たちの家庭から離れていくのか」ということです。 路上での生活 上述したいくつかの事例では、子どもの路上生活にどのような試行錯誤があるのか、までは描いてはいません。 ストリートチルドレンの特質ストリートチルドレンには主に二つのものが必要であるといわれています。子どもたちはグループで生活しながら同時に自分たちの自由を保とうとします。これは逆説的なようですが、本当です。ある子どもがある町にやってくると、すぐにどこかのグループに属するようになります。駅に着くと同時に、すでに組織こ入っている子どもたちが声をかけてきます。他にもこのような子どもたちがいるので先を争うのです。ギャングの子どもたちが声をかける前に、警察が新しくその町に移ってきた子どもたちを捕まえることもあります。また、「優しい大人」が近づいてきて、その大人の犠牲になってしまう子どももいます。子どもたちの未来は、誰が最初にその子どもに接するかに大きくかかっています。多くの子どもたちは、警察の保護下から逃げ出しますが、その頃までには彼らは施設内で友だちをつくっています。子どもたちは自由を何よりも大切に思っています。彼らは大人が束縛しようとすることに拒否反応を示します。大人たちと経験した多くのことは、彼らにとってよいことではありませんでした。子どもたちは元来、頑周者です。一度は家族から離れて知らない人たちのところへ飛び込んでいった勇気の持ち主でもあります。彼らは当然のことながら、知っている悪魔(自分たちが接してきた大人たち)が知らない人たちより良い存在であるとは考えません。子どもたちはグループの一員になることを望みます。グループは精神的安全という、彼らが必要としているものを与えてくれるからです。グループのメンバーは選択することができ、構造はゆるいものです。これが子どもたちにとって欠かすことのできない自由を与えてくれるのです。子どもたちがこのような特質を持っていることを頭に入れて、子どもたちのためのリハビリテーションのプログラムは作られなければなりません。 ストリートチルドレンが直面している問題ストリートチルドレンが直面している問題は、彼らの状況に直接結びついてきます。子どもたちは住む家を持たなくなると、雨、風、暑さ、寒さなどにさらされ、気侯の変化に極端な影響を受けるようになります。 第二に、彼らは簡単な料理を作る所もないため、これらの子どもたちはレストランからの食物に頼らなければなりません。彼らは十分なお金を持っていないので、安くて質の悪い食物に頼らなければなりません。彼らはしばしば残り物を乞い、時々は特定の日に食物が配られる宗教的な場所で食べます。たとえ彼らがそのような物で空腹をしのいでも、栄養摂取は充分ではありません。第三に、インドの都市は、トイレや公共の風呂などの設備がとても限られているので、風呂に入ったり、身体を洗う適切な場所がありません。また、彼らには適切な水飲み場もありません。 はっきりと健康を害している状態であることで、もう一つの問題に直面するわけです。例えば、もし、彼らが病気になればそれを治療するのは難しくなります。ここでの問題はお金というより、むしろ彼らの独特な状況にあります。公立病院や珍療所は利用できるけれども、気づかれるのを恐れてそこに行くことができないのです。何故なら、大人が付き添っていない子どもであることが、即座に気づかれてしまうからです。これらの子どもたちは、絶えず警察に捕らえられることを恐れています。だから目立ちたくないのです。診療所や病院で彼らは必ず両親の名前か、住所などを聞かれるため、子どもたちはそのような場所に行くことを避けたいのです。結果として、彼らの病気は治らないままです。彼らはどちらにしても、ほとんど休養する余裕がありません。何故なら、頻りにする貯金がないからです。つまり、横になる場所もなく、面倒を見てくれる人もいないのです。もし、その病気が本当に重大であれば、その時はもちろん、彼らは友だちに助けられます。それゆえ、グループの一員であることは、彼らにとって最も大事なことです。絶えず不潔で汚く、洗濯も行き届かず、質の悪い食事という環境のために、しばしば寄生虫病や「かいせん」のような病気にかかってしまいます。寄生虫はすでに栄養不良状態の彼らの体調をさらに悪くします。 問題は住む家を持っていないためにおこります。家族がないこと、指導したり、管理したりしてくれる大人がいないことが、さらに問題を悪化させるのです。このことは、常に不安を生じさせることになります。それは警察に捕らえられる恐れによって一層悪化させられます。警察が彼らを検挙するのは、青年法(the Juvenile Justice Act〉のもとでは、保護者のいない子どもたちは国家の責任になるからです。国家は彼らの両親を確認したり、家族に彼らを返す努力を期待されています。また、警察はちょっとした口実でも彼らを捕らえます。例えば、盗みやスリのような小さな犯罪がおこり、その場所に集まってくる子どもたちが、最初の容疑者になるようなときです。時々、警察は彼らを放って置くことを条件に彼らを脅し、金を抜きとります。これらの理由と彼ら自身、家庭と群れていることの罪の意識から、子どもたちは不安と恐れの感情に悔まされています。このことはさまざまな問題をもたらしています。子どもたちは、喫煙や飲酒、麻薬、また早すぎて不自然で危険なセックスなど、さまざまな悪い習慣の犠牲となっています。 彼らは簡単に反社会的な集団の手先となることができます。彼らは映画を見ることやカードで遊ぶこと以外に遊びがありません。これらの映画は小さな部屋で、比較的安い料金で見ることができるビデオです。映画館で上映される映画は高すぎます。この私的な映画見物は、結果として、子どもたちがポルノ映画を見ることになります。カード遊びはギャンブルにつながります。要するに、一度家を離れると、不健全な大人に成長する危険をはらんださまざまな状況にさらされるのです。 インドでは多くのNGOや、また政府がこれらの子どもたちのための活動をしています。この論文の第二部では、そうした運動について検討しましょう。 ------------------------------ 参考文献 I) Press, M. Robert "On The Road", Indian Express, New Delhi, India, March 20, l994. 2) P.Smith "Butterflies in the Streets" The Statesman, Calcutta, India, March 5, 1994. 3) Ghosh, A. "Street Children of Calcutta", 4) Arimpur, J. "Street Children of Madras", 5) Pandey, R. "Street children of Kanpur", 6) Phillips, WSK. "Street Children of Indore", (3 to 6 All Published by The National Institute of Labour, India, in 1992-93). 7) Mishra, S. "Street-Children", Government of Maharashtra. India. 1989. ------------------------------ 翻訳監修:恩田英一 翻訳協力:大野京子 篠田美恵子 松下美代子 森克明 |