1999.12.18
PRTR対象物質・事業者等への意見


市民フォーラム2001
環境法制プロジェクト




 対象物質の選定にあたり、諸外国の基準や制度を丹念に調べて記されたことには敬意を表する。但し、事業者の選定などの結論は大変問題が多く、特定の製造業者以外は排出データが管理も届出もされず、将来に禍根を残すことが懸念される。以下に意見を述べるので、当制度が少しでも環境負荷の低減に寄与するものになるよう、結論に反映してほしい。
 なお、、対象物質の選定以外のデータは、「ある自治体」などとされて当該地域が普遍的条件を備えているかどうかなどの検証を阻んでおり、議論の対象とするデータとは到底言えない。国民に議論を求めるべき基本的要件を備えていないので、この部分は出し直していただきたい。

1.対象物質について
 今回は有害性の高い物質が選ばれているが、将来的には安全確認がされていないものを全て選択すべき。
 科学的知見が得られていないからADI等の指標が不明な物質と、既に十分な知見が得られてADIがかなり高いものとは異なるはずだが、今回は同じ扱いになっている。
 第一種物質で年間で生産・輸入量100トン以上という選定基準は大きすぎる。
 今回除外されている物質には、硫黄酸化物や窒素酸化物がある。類似の制度で情報が管理され、市民の求めに応じて事業者ごとの情報が開示されるならともかく、そのような制度はない。
 また、代替フロンのHFC、PFC、SF6も、類似の制度で情報が管理され、市民の求めに応じて事業者ごとの情報が開示されるならともかく、そのような制度はないし、こちらは事業者ごとに情報が管理されているかも怪しいと考えられる。
 大気汚染防止法に公開規定を設けたり、地球温暖化対策推進法に事業者の測定義務と届け出・開示義務が導入さっれない限り、これらの物質を除外する必要はないと考えられる。

2.対象業種について
 この制度では特に「対象業種」を指定する必要を感じないが、仮に指定するなら、明らかに排出のない業界以外は全て対象業種にすべきである。
 製造業以外は大半が除外になっており、これでは化学物質の排出状況の片鱗すらつかめないと考えられる。
 丸ごと除外された建設業には、解体業が含まれ、アスベストやフロンを扱う。また、冷凍空調設備業界が含まれ、フロンを扱う。
 運輸業は鉄道以外が除外された。倉庫業も食糧倉庫や液体・気体を扱う事業者を除いて除外された。運輸や倉庫業では事故等による有害物質の排出が相次いでおり、また日常的に有害物質を使用することも多い。

 卸・小売業も大半が除外され、有害物質やフロンを取り扱う事業者の大半が除外された。
 サービス業も大半が除外され、病院、ゴルフ場など薬品や農薬を大量に使い、有害廃棄物を大量に排出する業界が除外になっている。
 公務は対象業界に準ずるようだが、警察や自衛隊が対象業界に入るのか不明である。
 これらの業界がなぜ除外されたのか合理的理由を示されたい。この規定はとりわけ問題が多いので全面的に策定し直し、全業種を対象とするよう求める。

3.対象商品について
 対象事業者を限定してしまう「対象商品」も大変問題の多い制度である。対象物質を少しでも含んでいれば全て対象商品とし、当該物質の含有量に応じて取扱量を計量すればすむにも関わらず、わざわざ範囲を狭めているのは、薬品や農薬、洗剤などを扱う、あるいはフロンを使用した冷蔵庫を扱う運輸業、倉庫業、卸・小売業などの業界を除外するための抜け穴をつくるためだとすら考えられる。
 この規定はとりわけ問題が多いので全面的に策定し直し、有害物質を検出限界以上含む商品は全て対象商品とすることを求める。

4.対象事業者について
 対象事業者を、常勤雇用者21人以上で、いずれかの対象物質を1トン以上扱っている者としてその対象を著しく狭めたのは問題である。
 雇用者数は、中小企業に負担だということで設けられたようだが、問題の多い決め方になっている。常勤雇用者は少なくなっており、極端な場合、事業所長1名が常勤で、残りがフルタイムの非常勤職員の場合は雇用者が1万人いようと対象外になる。また、21名という基準も大きすぎる。卸・小売業、サービス業などでは中小企業の定義も雇用者5人以下と、比較的規模の大きい製造業と区別されているが、当制度では一律に21人以上を適用するとしている。個人商店などを除き全て対象にするためにも、職員数が6人以上(商店は3人以上)などとし、職員は非常勤を含み、週40時間を基準に人数をカウントすればよいのではないか。
 いずれかの対象物質(全物質でなく)の取扱量が事業所(事業者でなく)当たり1トンと、対象要件を著しく狭めたのも問題である。そもそも雇用者の要件があればこの要件は不要だと考えるが、最低限、全ての物質の合計が、当該事業者の全ての事業所で1トンとすべきである。
 なお、1トン以上という基準を決めた根拠として、環境庁パイロット事業の例が示されている。しかし、この事業の対象地域である神奈川県、愛知県、北九州市は製造業が多く、事業所あたりの化学物質取扱量が多いからである。東京や、札幌市、福岡市など製造業の少ない都市で同様の結果が得られるか、というと、そうはならないと考えられる。またどの物質でも同様の結果が得られるのかのデータがない限り、厳しめに足切り基準を設定するのが当然である。


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