中央環境審議会企画政策部会事務局御中

                       1999年1月29日

「地球温暖化対策に関する基本方針(素案)」に対する意見・提案

市民フォーラム2001地球温暖化研究会
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 98年10月に成立した地球温暖化対策推進法は、京都議定書の批准を担保する法律でもなく、行政以外の義務規定や数値目標が全くない。通産省との調整で内容が大幅に後退したと言われる。さらに今回の基本方針案も当初中央環境審議会に示されたものから後退している。このように温室効果ガスの実効的な削減には程遠い法律であり、その基本方針は単なるお題目に過ぎないとも言える。しかし私たちは気候変動/地球温暖化問題に取り組む環境NGOとして、この法の施行に向けて、それを少しでもより良いものとするために、素案への意見・提案を提出する。

(数字の1〜4は素案に対応)




1.基本的方向

(A)京都議定書の目標とその後

 削減目標は第1約束期間の瞬間達成では意味がない。早期にIPCCの言うように50〜70%の削減に進む必要がある。それには第2約束期間以降(2012年以降)につながる、削減の道筋の整合性・継続性が必要不可欠である。

(B)目標設定を明確にする

 京都議定書の6%削減をすべてを国内で達成する目標としてきちんと位置付け明記すべきである。その上で目標年は2008〜2012年だが、2008年に1990年比94%になるように対策を取っていくべきである。また議定書は「2005年までに明らかな進捗を実現してい
る」こととしており、2005年=100%程度の目標とする。これだとほぼ毎年2%ずつ削減していくことになる(毎年の目標も設定すべきである)。

(C)今までの政府の温暖化政策の問題点をきちんと踏まえる必要がある

(1)地球温暖化防止行動計画の反省と総括
 1990年に地球環境保全に関する関係閣僚会議が決定した地球温暖化防止行動計画は、二酸化炭素排出量を2000年に90年比安定化という目標を立てたが、96年時点で既に9.8%増と完全に破綻している。しかし素案には、必要不可欠と思われるこの失敗への反省と総括がない。地球温暖化防止行動計画には実効的な温室効果ガス排出削減の仕組みがなかったから何も出来なかったのは明白である。地球温暖化対策推進法や基本方針もその点は同じであり、今のままでは同じ轍を踏むことになろう。

(2)地球温暖化対策推進大綱の諸問題
 この基本方針案では「大綱」との関係は曖昧である。地球温暖化対策推進大綱は地球温暖化対策推進本部という政府の一部の決定に過ぎない。その中にそれぞれの法律が位置付けられているなど極めておかしい。今回も、国会で作られた法に基づき閣議決定される基本方針より上位にあるかのようになってはならない。
 内容的にも、COP3後に政府が示しその後大綱に明記された「6%の内訳」は「抜け穴」頼みで、実質的に議定書改定をもくろむ吸収源で3.7%を稼ぐなど非常識であり、削減の意欲が疑われる。エネルギー起源のCO2対策は長期エネルギー需給見通しをそのまま受けたもので、基本的に国内でのCO2の削減対策はCOP3前のままというのも全くもって信じ難い。
 それにも関わらず素案では大綱を引きそれに盛り込まれた施策を実施するとしているのは極めて問題であり、大綱を引くことはすべてやめることを強く求める。
 現時点での最新の温室効果ガス削減政策を市民参加で新たに検討し基本方針に盛り込むか、基本方針を受けて市民参加で新たな政策の検討を行うことを明記するか、どちらかにすべきである。



2.それぞれが講ずべきGHGの排出抑制用のための措置に関する基本的事項 
及び 3.政府の事務・事業の計画に関する事項

(A)原子力発電について

 「地球温暖化対策推進大綱に盛り込まれたエネルギー需給両面の対策」には原発が含まれるとされている。放射能という最悪の環境負荷を生じる原発をCO2削減の手段と位置付けることは絶対に反対である。私たちは温暖化も放射能もない未来を目指すべきであり、それは十分に実現可能である。
 また原発は大綱に書かれているので政府の合意となっているというが、大綱はただの推進本部の決定であり単なる役人の作文である。私たちは主権者としてその代理人の集まりである国会を通じてこれを認めた覚えはない。また、総合エネルギー調査会や原子力政策円卓会議の場で議論したからといって、十分な議論を行ったとは到底言えない。
 さらに97年6月の総理府の世論調査によると、温暖化防止のためのエネルギー対策として何を行うべきかとの質問に対する回答は、自然エネルギー推進49.3%、省エネ推進23.5%、エネルギー源転換13.1%となっており原発の推進は5.9%に過ぎない。「温暖
化対策に原発」には「国民的合意」は存在しないのである。
 このように、「温暖化対策に原発」には国民的合意は存在せず他の手段の方がはるかに支持されていること、反対・賛成の両論があり議論が全く不十分であること、今後きちんとした議論を市民参加の下に行う必要があることなどから、今回の基本方針においては原発については記さないことにすべきである。


(B)チェック&レビューの仕組みを導入する

 中間点検を行い、それを受けて施策を強化して行く仕組みを入れること。チェックによる修正を行うことが必要である。出来れば毎年点検を行い、目標達成が難しい時は追加施策を実施するなど強化の仕組みを入れること。これがないと、また「結果できませんでした」になってしまう。


(C)公共事業の温室効果ガス排出アセスメント

 「事業」の中には当然公共事業も入ることを明記すること。温室効果ガス排出増を促す公共事業の放置は許されない。公共事業に対する温室効果ガス排出面からのアセスメントやチェックの機能が必要である。


(D)きちんとしたチェック機関を設けレビューを行うこと((B)(C)など)

 環境問題に関する専門家や環境NGOメンバーを含む各セクターのメンバーから成る第3者機関を設け、温室効果ガス排出削減対策のレビューを行う仕組みが必要である。


(E)自治体の積極的な対策を奨励・促進すること

 自治体の事業にも当然公共事業も入る。国は温室効果ガス削減における自治体の裁量を広く認めるべきであり、上乗せ・横出し的に意欲的に取り組む自治体を国が締め付けるようなことがあってはならない。


(F)炭素税の導入に向けた検討を明記すること



4.事業者の計画に関する事項

 環境NGOを含む各セクターによる外部からのレビューの仕組みを導入すること。

      

                      以上


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